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今週のコラム 32回目 術前に「1年以上抗ガン剤を行っている」ことが何を意味しているのか。

皆さん。

小林○央さんの「乳癌告白」

先週木曜日夕方から、QandAが閉鎖され、ご迷惑をおかけしています。

過去にも同様に「アクセスが集中」しすぎて閉鎖せざるを得なかった事がありました。「北斗さん」の告白です。

 

「パンク」する乳腺外来

心配する受診者を納得させられない「取れない予約」

 

○ただ今回は、年齢が若いだけにより興味を引いているようにも思います。

 

「テレビ出演の依頼」

6月9日木曜日、外来診療中のことです。

秘書から突然「テレビ局から出演依頼が来ています。17時に生出演できないか?」との事です。

私は、そこで初めて「小林○央さんの件」を知ったわけです。

その時、すでに15時30分頃 予約患者さんも大勢いるわけですから当然断りました。

 

翌10日金曜日

この日は午前中の枠に加えて臨時で午後の枠も取れたので丸一日手術でした。

そして、そのまま夕方の市川外来へ

市川外来から戻って、院内メールをみたところ

またまた秘書からの伝言

「フジテレビからの出演依頼」

 

  • 東京在住という点も「オファーし易さ」に繋がっているのかもしれませんが…

やはり前回(北斗さん)とは異なります。

また、「手術せずに1年数カ月も抗がん剤をしている」との事(海老蔵氏の会見)

私には状況が「ほぼ完全に」推測できますが…(この場でのコメントは差し控えます)

社会に対する影響は、より強そうです。

 

★日曜日ならいいのですが…

平日・土曜は「手術(月終日+金午前)」「外来(火午前+水木終日+金午後)」「ステレオガイド下マンモトーム生検(火午後)」「市川外来(金夜+土午前昼)」と、時間をひねり出す事ができない状況です。

 

それでも「テレビ出演」には(人並みに)興味があります。

スケジュール的に「不可能を可能」にできれば、この機会に出演するかもしれません。

 

 

さて、本来は「組織診」の続きを予定していたのですが、急遽「乳癌の初期治療」のお話をします。

何故、突然予定を変更したのかは、ご想像にお任せします。

ここでいう「初期治療」の「初期」とは(早期乳癌の意味ではなく)乳癌の診断がついてからの「最初の治療」と言う意味です。

 

考え方のポイントを挙げます。頭を整理してください。

 

①乳癌の治療は「局所(乳腺及び、領域リンパ節)療法」+「全身療法」で成り立ちます。

治療の2本柱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車の両輪のように、必ず両方を行います。

♯ただし、例外として非浸潤癌(0期の乳癌)は局所療法のみです。

 

②局所療法は「手術」±「放射線」です。

手術では「乳腺(部分切除にしろ全切除にしろ)+リンパ節(センチネルリンパ節のみのこともあります)」を取り除くもの

放射線は乳腺内やリンパ節に(局所)「再発させないため」に補助的に行われます。

♯原則として部分切除した場合には放射線は必須となり、全摘の場合でもある条件(リンパ節転移4個以上)では「推奨度が高く」なります。

 

③全身療法には「ホルモン療法」「抗ガン剤(化学療法)」「分子標的薬」があります。

これらをどのように使い分けるかは「その人の腫瘍の性質(サブタイプともいいます)」できまります。

例) ホルモン療法が効く人は(術後)ホルモン療法

ホルモン療法が効かない人は(術後)抗癌剤

分子標的薬(ハーセプチン)に感受性がある人は(術後)分子標的薬+抗ガン剤

♯ホルモン療法と分子標的薬の両方が効く場合には「上記全て」を行います。

ただし、「進行している」場合や「小さくして温存を狙う」場合には(性質がどうであれ)「抗ガン剤の適応」となります。

 

④これら「局所療法」と「全身療法」の順序は、通常は「手術(先行)⇒(術後)全身療法」となります。

 

ただ、例外的に「(術前)抗癌剤⇒手術」となるケースがあります。

その「例外的」ケースを⑤に挙げます。

 

⑤術前に「抗ガン剤を行う」ケース

⑤-1 小さくして温存手術を狙うケース

腫瘍が大きいため、そのままでは「乳腺を残せない」が、(術前に)抗癌剤を使用して十分に腫瘍を小さくして、温存手術(部分切除)を狙うケース

 

⑤-2 ある程度進行(腫瘍が非常に大きい、リンパ節転移が高度)しているケース

主としてリンパ節転移が高度の場合に、手術を安全に行うために行うケース

(次に挙げる⑤-3とは異なり)手術可能な状態ではある。

使用する抗がん剤は決まっており「最長半年間」である。

♯この場合には小さくなっても「全摘」を行うものであり、(⑤-1とは異なり)」「術式変更を狙ってはいない」ことに注意してください。

 

⑤-3 遠隔転移や広範な皮膚浸潤などがあり、「手術不能」なケース

このままでは「手術が不可能」、もしくは「全て取り切れない」ケース

使用する抗がん剤に制限はなく(あらゆる抗がん剤の適応がある)期限が決まっていない。

結局、どんなに長期間抗ガン剤を行っても「手術不能なまま」であり、「抗ガン剤だけが唯一の治療法」となる事もある。

 

 

まとめると

そのままでも手術可能 ⑤-1/⑤-2

そのままでは手術不能 ⑤-3

 

抗がん剤の期間は6ヵ月以内 ⑤-1/⑤-2

抗ガン剤の期間に決まりは無い(エンドレス) ⑤-3

 

使用する薬剤は決まっている ⑤-1/⑤-2

使用できる薬剤に制限なし  ⑤-3

 

★お解りでしょうか?

我々にとって、術前に「1年以上抗ガン剤を行っている」ことが何を意味しているのかは明白なのです。

できるだけ早期に、手術可能な状態となり、そして手術できることを願っています。