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多形性小葉癌 トリプルポジティブの全身療法について

[管理番号:5710]
性別:女性
年齢:46歳
多形性小葉癌、トリプルポジティブの全身療法について
46歳、閉経前。
がんを告知されてからいつも参考にさせていただいております。
早期に見つかったことから右乳房温存切除の手術を受けましたが、その後の病理にて腫瘍が多形性浸潤性小葉がんであること、また、断端陽性でありリスク因子である非浸潤性小葉がんの広がりが見られたことから、後日右乳房全摘出手術を受けました。
リンパへの転移は確認されませんでした。
1度目の温存手術での病理結果は以下のとおりです。
(2度目の全摘手術での結果はまだ出ていません。)
浸潤径: 6x6x8mm
Invasive lobular carcinoma, pleomorhpic type E-cadherin(-), b-catenin(-) Nuclear grade 2相当 (atypia: score 3, mitosis; score 1)
ER: score3b (95%, 強)
PgR: score 3b (98%, 強)
HER2: score 2+, FISH HER2増幅比 2.25 判定(+)
MIB1: 10%
ly0, v0, g
EIC(+)
Intraductal spread 3+
Plemorphic lobular carcinoma in situ (PLCIS)による広がり
Lymph nodes; SN: 0/2
術前の予想はルミナールAとのことでしたが、上記の通り例の少ない多形性小葉がん、且つトリプルポジティブであることが判明しました。
結果が食い違っており気持ちの整理がついていません。
今後全身療法を受けることを考えますが、以下につき先生から何卒アドバイスいただきたく、お願い申し上げます。
1 どのような抗がん剤が好適か?
主治医から抗がん剤(&ハーセプチンとホルモン剤)の使用を勧められ説明を受けましたが、種類が多くどうしたら良いのか分かりません。
先生ならどのような抗がん剤をお考えになるでしょうか。
2 抗がん剤を使わないことは考えられるか?
吐き気、下痢に弱い体質であること、口内炎も心配です。
仕事を続けるということを考えると、できれば抗がん剤を使いたくないと思っています。
分子標的剤+ホルモン剤のみ、というのは私の病状から考えて妥当な治療と言えるのでしょうか。
(主治医によれば、分子標的剤+ホルモン剤のみの治療は70歳以上の臨床試験が進んでいるのみでありデータがなく勧められないとのことです。どうしてもというのであればやることはできると。)
3 HER2陽性がんに対するホルモン剤の効果についてHER2陽性の場合、ホルモン剤が効きにくいと伺いました。
田澤先生も同じ認識をお持ちでしょうか。
4 多形性乳がんとは?
多形性乳がんについて調べてみようとしましたが、情報が少ないようです。
どのような特徴があるのか、教えていただければ幸いです。
(他のがんとの治療、予後の違いについて分かっていることがあるのでしょうか。)
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
まず一言。
余計な情報に翻弄されずに、物事はシンプルに考えること。
1.超早期乳癌 pT1b=8mm, pN0
2.luminalB(HER2陽性)
3.小葉癌で断端陽性
○乳腺は全摘したことは賢明
○予後良好だが、浸潤径8mmだから抗HER2療法の適応はあり、(必須ではないが)
「1 どのような抗がん剤が好適か?」
⇒非アンスラサイクリンレジメン
 ①TC+HER
 ②weeklyPTX+HER
 ③TCH

「2 抗がん剤を使わないことは考えられるか?」

⇒pT1bの場合には「抗HER2療法は必須ではない」
 その意味ではホルモン療法単独も、許容歯にです。
「分子標的剤+ホルモン剤のみ、というのは私の病状から考えて妥当な治療と言えるのでしょうか。」
⇒そもそも(抗癌剤無しの)ハーセプチンのみと言う治療はエビデンスが無く、勧められません。
 ○「ホルモン療法のみ」もしくは(ハーセプチンやるなら)「(きちんと)抗癌剤+ハーセプチン」としなくてはなりません。
「(主治医によれば、分子標的剤+ホルモン剤のみの治療は70歳以上の臨床試験が進んでいるのみでありデータがなく勧められない」
⇒まさに、その通りです。
「HER2陽性の場合、ホルモン剤が効きにくいと伺いました。」
「田澤先生も同じ認識をお持ちでしょうか。」

⇒無関係です。
「4 多形性乳がんとは?」「どのような特徴があるのか」
⇒顕微鏡的に「多彩」と言うだけです。
「他のがんとの治療、予後の違いについて分かっていることがあるのでしょうか。」
⇒ありません。
 気にする必要は全くありません。