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マンモトームの結果から

[管理番号:3598]
性別:女性
年齢:48歳
今年3月マンモグラフィをうけ、微少円形石灰の集族あり(c-3)となり、大学病院を紹介されました。
大学病院で、再度マンモグラフィをし、微少円形石灰化集族(c-3)でした。
エコーも受け、不整形 斑状低エコー域となっています。
しこりはなく、MRIはよく映らなかったといわれました。
白黒つかず、マンモトームを受けることになりました。
病理組織診断法報告書を申請し、以下が書かれていました。
診断名 (First and seconnd report)
Atypical intraductal papillary lesion
所見  
 検体は3片あり、いずれにも病変が見られます。
裏装する乳管上皮の
核には張りがあり、均一な細胞で構成されます。
一部では、内腔へ低乳
頭状に突出しており、時にローマンブリッジ状の橋渡し構造をみます。
乳管内には、分泌型石灰化を認めます。
明らかな間質湿潤は見られませ
ん。
低異型度のDCISを疑う組織所見です。
免疫染色を施行。
乳管上皮は、ERびまん性強陽性、CK5/6陰性。

63は、乳管周囲の筋上皮細胞に陽性。
その一方で、病変中にはただちに悪性と確定できないような異型の弱い
部分が多く、全体を癌と診断することに躊躇します。
さらに検討し報告します。
追加報告
 部内の検討で、少なくとも一部は低異型度DCIS相当であるとの総意を得ました。
診断確定のため、摘出生検による病変全体の検索などにつき、ご検討ください。
診断に変更はありません。
免疫染色 ER:positive(100%)
PgR:positive(90%)
HER2:negative(score0)乳管内病巣であり参考所見
と書かれていました。
①癌なのでしょうか?
②手術(3泊4日)で、部分摘出を勧められていますが、適切ですか?
③切ってみて、結果によっては、放射線(週4日、6週間)もありえます。と言われましたが、どのような場合、必要ですか?
④退院後、職場復帰は、どのくらいでできますか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
石灰化に対する「ステレオガイド下マンモトーム生検(ST-MMT)」ですね。
私は非常にたくさんのST-MMTしているので、質問者と同様なケースは多くの経験があります。
「Atypical intraductal papillary lesion」
⇒平たく言えば「ADH」です。
 まさに「低異型度のDCISを疑う組織所見」であり、「摘出生検で同様な病変が広範囲に見つかる」だけで「low grade DCIS」の診断確定となります。
「①癌なのでしょうか?」
⇒上記コメント通りです。
 ST-MMTで採取した病変が広範囲にあれば「それだけで癌」となります。
 逆に言えば、「追加で切除する病変に全く、同様の病変がない」場合にはAtypical intraductal papillary lesionという診断(癌ではない、異型病巣どまり)となります。
「②手術(3泊4日)で、部分摘出を勧められていますが、適切ですか?」
⇒適切です。
 全麻下にきちっと切除すべきです。(術翌日退院でいいとは思いますが…)
「③切ってみて、結果によっては、放射線(週4日、6週間)もありえます。と言われましたが、どのような場合、必要ですか?」
⇒癌と確定した場合です。
「④退院後、職場復帰は、どのくらいでできますか?」
⇒その日でも可能なくらいです。(2,3日で十分)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

3598番で以前に質問をしたものです。
9月に診断的手術ということで部分切除をしました。
1か月後、病理結果がでました。
(検体)4.5×4.5×1.5cm大の乳房部分切除検体(肉眼所見)肉眼的に腫瘍は明らかではありません。
(切り出し)12分割にて検討。
標本1~12
(組織所見)標本7に、軽度核腫大を伴う比較的均一な乳管上皮が拡張した乳管内腔に低乳頭状に増殖する所見をわずかに認めます。
明らかな、間質湿潤は見られません。
低異型度の非浸潤性乳管癌を疑う組織所見であり、既往生検(マンモトーム)の残存病変として、了解可能です。
DCISと診断可能であると考えますが、判断の難しい病変であり、
expert consultationを追加して、報告します。
断端陰性
有明病院からの結果が、さらに1か月かかり、
追加報告
 外部コンサルテーションを行ったところ、
本検体の1部に低異型度非浸潤性乳管癌と診断可能な病変を認める、との判断をいただきました。
コンサルテーション結果を加味して、当科として、本検体中に非浸潤性乳管癌病変を認めるものと判断します。
①「診断可能」という表現から、真っ黒ではないが、黒と言っても可能な、というようにも聞こえてしまったのですが、ドクターの世界では、どんなニュアンスになりますか?
②放射線治療は、必要ですか?20回(50グレイ)を勧められています。
③手術した大学病院では、受付が速く終わってしまい、仕事との両立が、難しそうです。
地元の市立病院でも治療可能らしいのですが、週2回非常勤医師の派遣しかなく、治療している方もほとんどいないようで、技師さんによる治療の差は、ありますか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「①「診断可能」という表現から、真っ黒ではないが、黒と言っても可能な、というようにも聞こえてしまったのですが、ドクターの世界では、どんなニュアンスになりますか?」
⇒low grade DCISは、かなり微妙な病変となので「念の為、expert cosultation」しますが、(その病理医としては)「診断に自信を持っている」という状況だと思います。
「②放射線治療は、必要ですか?20回(50グレイ)を勧められています。」
⇒「(癌なのか迷うような)低異型度」で「僅かに」しかないのであれば、放射線照射はしないという選択肢は当然あります。
 ♯ガイドラインでは、そこまで踏み込んだ基準はないのであくまでも「必須」とはなっていますが…
「治療している方もほとんどいないようで、技師さんによる治療の差は、ありますか?」
⇒その病院で年間100件程度の乳癌患者さんがいないようでは、(乳腺の)放射線治療は、あまりお勧めしません。