乳がん手術は江戸川病院・東京


[管理番号:332]
性別:女性
年齢:42歳

お世話になっります。
乳癌告知を受け、手術待ちの者です。
 

疑問に思ったことがあり、質問させていただいたきます。

リンパ節生検査で転移とは、どのような状態を転移と見なすのでしょうか?

  1. リンパ節内に癌細胞がいくつかいる状態
  2. リンパ節の一定の範囲内に決まった数の癌細胞がいる状態
  3. 癌細胞がリンパ節の壁に定着している、もしくは、癌細胞が増殖を始めて固まりになっている状態。

私は何となく、3と2だと考えていまして、1か2の微妙なラインだった場合に、放射線治療をすり抜けて局所再発するのかな?とかんがえています。

治療方法の選択を患者に任されるようになった今、リスクを正しく理解していないことは恐ろしいと思うようになりました。

きっかけは、放射線治療後の再建は皮膚が固くなる等、正直再建しにくいと、整形外科のお医者様が仰っている動画を見たことです。
再発したら再建すれば良いとばかりに温存を選んだ場合後悔するのでは…と考えてしまいました。

自分自身の手術については、転院先の担当医とも良く話し合いますが、やはりわからないことが多くて不安はあります。
乳癌初心者の学校があったら良いですのに。

宜しくお願いします。

 

田澤先生からの回答

 おはようございます。田澤です。
 すごくいい質問です。
 これは私が多くの「乳がんと診断された」方に伝えたい事でありながら、(内容がやや煩雑なため)「説明しきれない=理解が不十分となりがちな」重要な事項です。
 この機会に「基本から」説明させてください。

 「リンパ節転移の定義」と「センチネルリンパ節生検での取り扱い」の両方の理解が必要です。
 更に、「後半の局所再発のリスク」となるとまた別問題(「腋窩リンパ節再発」と「乳房内再発」は別)である事に注意が必要です。
 やや煩雑になるかもしれませんが、詳細します。

回答

「リンパ節生検査で転移とは、どのような状態を転移と見なすのでしょうか?」
⇒2、3がリンパ節転移(pN1)とされます。

『リンパ節転移の病理分類』

  1. リンパ節に癌細胞が「少数の集団、範囲としては0.2mm以内」の場合:pN0(ITC:isolated tumour cell clusters)と表記され『取り扱い上、リンパ節転移陰性pN0』となります。
  2. リンパ節に癌細胞が「1よりは多いが2mm未満」の場合:pN1mi(micrometastasis微小転移)と表記され『取り扱上、リンパ節転移陽性pN1』となります。
  3. リンパ節に癌細胞が「2mm以上存在する」場合:通常のpN1であり、『macrometastasis:肉眼転移』とも表現されます。

★上記2と3はリンパ節転移(pN1)ですが、『センチネルリンパ節転移の取り扱い』では、実はここにラインを引いています。
 

『術中センチネルリンパ節生検のガイドライン』

  • 術中センチネルリンパ節転移⇒陰性、あるいはpN1miの場合(上記1及び2に相当)には、『追加郭清の省略』
  • 術中センチネルリンパ節転移⇒2mm以上の転移(上記3に相当)には『追加郭清の推奨』

 

「私は何となく、3と2だと考えていまして、1か2の微妙なラインだった場合に、放射線治療をすり抜けて局所再発するのかな?とかんがえています。」
⇒上記記載のように、「リンパ節転移の定義からは3と2」ですが、「術中センチネルリンパ節生検での扱いでは3」となります。

 この文面を読むと質問者が勘違いをしているように思います(私の誤解であったらすみません)
 「センチネルリンパ節」とは「リンパ管から最初に(癌細胞が)到達するリンパ節」であり、(癌細胞は)まず、そのリンパ節に到達して『ある一定以上増殖しないと次のリンパ節へは到達できない』という理論です。
 『術中センチネルリンパ節生検』とは「摘出したリンパ節の評価」です。
※そのリンパ節は「摘出されており」体に戻す訳ではありません。
 

具体的に記載すると、

  1. 術中に「センチネルリンパ節としてリンパ節を1個摘出」
    ⇒「(迅速)病理検索で転移無(pN0)もしくは少数転移pN0(ITC)と評価」
    ⇒(このリンパ節は摘出しているので)『(体に残っている他のリンパ節には)転移はないだろう』と判断(だから追加郭清省略)
     
  2. 術中に「センチネルリンパ節としてリンパ節を1個摘出」
    ⇒「(迅速)病理検索で2mm以内の転移:pN1miと評価」
    ⇒『このリンパ節で癌細胞は食い止められている』(このリンパ節は摘出しているので)『これより先に癌細胞は侵入していない』と判断(だから、追加郭清省略)
     
  3. 術中に「センチネルリンパ節としてリンパ節を1個摘出」
    ⇒「(迅速)病理検索で2mm以上の転移:pN1(macrometastasis)と評価」
    ⇒(2mm以上の明らかな転移があるということは)『(このリンパ節を超えて)その先のリンパ節まで癌細胞が到達している可能性がある』と判断(だから、追加郭清を行う)
     

「再発したら再建すれば良いとばかりに温存を選んだ場合後悔するのでは」
⇒ここでいう「再発」は「乳房内再発」ですね。

 温存術後に「乳房内再発」が起こった場合には「残存(温存した)乳腺全摘」が必要になり、その際には『術後温存照射した皮膚が乳房再建の妨げになる』ということになります。
 ただ、「乳房内再発」と「腋窩リンパ節再発」とは全く意味が異なります。
 

◎「センチネルリンパ節生検を行い、『pN0(ITC)やpN1miとして』それ以降の郭清省略がされても、『(術後温存乳房照射をしたとしても)乳房内再発を起こす』リスクは関係ありません。
「乳房内再発」と「腋窩リンパ節再発」は全く別個の事であり、たとえ、「腋窩リンパ節再発」しても「乳房内再発するわけではありません」
 

★繰り返しになりますが、『センチネルリンパ節生検』とは『摘出したリンパ節の評価』であり、『体に残っているリンパ節の評価では無い』のです。
 ※無論、(調べてみたら、転移が無かったからといって)そのリンパ節を体へ戻すことはありません。

 
 

 

質問者様から 【質問2】

お世話になっております。
大変詳しいご説明ありがとうございました。
確かに対面の診察ではご説明頂くのは難しいで内容すね…。

患者として、いまいち納得しにくい部分が有り、申し訳ありませんが追加質問させていただきます。

>(癌細胞は)まず、そのリンパ節に到達して『ある一定以上増殖しないと次のリンパ節へは到達できない』

先生のご解答から、リンパ節は癌細胞を城壁のように塞き止めていると考えました。

乳房温存を選択した方の場合ですが、隔清でリンパ節を取ってしまうことで、再発した時 に癌が原発から全身に散らばりやすくなってしまわないでしょうか。

また、センチネルリンパ生検の評価の結果、脇下リンパ節隔を行う目的は、局所療法に該当するかと思います。
そして、隔清しても放射線治療が追加されます。(放射線治療を行わない場合の局所再発率は以外と高かったような記憶です…)

これは、乳房再建のために温存を選ばずに全摘を撰んでいた場合、結局放射線をかけるはめになり、乳房も無くすという悲しい結果になります。

リンパ節の局所再発は、隔清ではなく放射線と全新療法で何とかならないものでしょうか?

別サイト上で、摘出リンパ節の評価が、化学療法適用かどうかの判断基準にも関係するから隔清は大切といった記述も見かけましたが、評価目的 で隔清するとは随分乱暴に感じました。
とってしまったら二度と戻せないのですから。

宜しくお願いします。

 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 「再質問」ありがとうございます。

 前回「センチネルリンパ節生検」の定義と取扱いなどを回答しましたので、今回はそれを前提として回答します。

回答

「乳房温存を選択した方の場合ですが、隔清でリンパ節を取ってしまうことで、再発した時に癌が原発から全身に散らばりやすくなってしまわないでしょうか。」
⇒発想としては「考えやすい」と思いますが、ここでは「リンパ行性転移」と「血行性転移」2つを考える必要があります。

  • 「リンパ行性転移」
    :リンパ管の流れにのってリンパ節に転移する。
     乳癌の場合には「腋窩」⇒「鎖骨下」⇒「鎖骨上」や「胸骨傍」など、方向がある。
     
  • 「血行性転移」
    :血管の流れにのって全身臓器に転移する。
     乳癌の場合には「骨」「肺」「肝」などが代表的

 

 このことを前提として回答すると、
⇒(リンパ節を郭清しても)全身に広がる(血行性転移)とは関係ありません。
⇒また「腋窩リンパ節を郭清」しても、「乳腺」から「腋窩」へ流れるリンパ網(リンパの流れ)が全て失われるわけではありません。
 もし「リンパの流れ」が完全にストップしたら「乳腺がパンパンになって」大変なことになる筈です。
 結局、術後に「リンパ管に入った癌細胞」は「腋窩」から「鎖骨下」や「鎖骨上」「胸骨傍」に到達するのです。
 

「リンパ節の局所再発は、隔清ではなく放射線と全新療法で何とかならないものでしょうか?」
⇒代用とすることはありますが、「取れるものは取る」のが原則です。

 放射線照射や全身療法が「癌細胞の塊」を完全に制御できるとは保障できません。それに対し、「その癌細胞の塊」を摘出」する方が確実であることは言うまでもありません。
 

「別サイト上で、摘出リンパ節の評価が、化学療法適用かどうかの判断基準にも関係するから隔清は大切」
⇒もともと、この考え方は「腋窩郭清は予後に影響しない」という統計結果に対して「腋窩郭清の正当性をいうために生まれた言葉」です。
⇒しかし「リンパ節転移の数」が化学療法の適応を決めるというのは「やや古い考え方」です。

 「サブタイプによる治療法の選択」が主流となっている現在、「センチネルリンパ節生検」や「それに引き続いて行われる腋窩郭清」は、やはり「局所制御」の為と「放射線照射の適応」を決めるためです。
 

◎「乳房切除後の放射線照射の適応」は(リンパ節転移を認めた場合には)放射線照射による「局所制御」が「全身に癌細胞が広がることさえも抑制する」という事を意味しているのです。
 乳癌は全身病という考え方はありますが、やはり「局所をきっちりと治療する」ことが最善であることがわかります。

 
 

 

質問者様から 【質問3】

すみません、質問追加投稿後に注文していた
冊子「患者さんのための乳癌診療ガイドライン 日本乳癌学会」が届き、(もっと早くにこの冊子を買うべきでした)また、過去のQAを拝見して、自分が誤解していたことに気がつきました。

過去のQAより:

>リンパ節転移が4個以上の場合には、乳房切除であっても放射線照射をした方がいい 推奨グレードA

このことから、

・リンパ節転移が4個以上あった場合は、再発を防ぐために、「胸壁全体」と「鎖骨上窩」に放射線照射を行う

のだと納得しました。
それくらい危険なのだと…

温存を選択していた場合はもしかして、全摘に変更になるのでしょうか?

冊子から得た情報:

>腋窩リンパ節郭清後、さらに腋窩に放射線療法を追加しても生存率は改善せず、 かえって腕のむくみや肩の副作用が増えるのでお勧めしません。

私は腋窩にも放射線照射するものと勘違いしておりました。

用語の漢字も間違いが多く、分かりにくい質問で失礼いたしました。

 

田澤先生から 【回答3】

 おはようございます。田澤です。
 今回の内容はまさにその通りです。

 「腋窩リンパ節転移」により「放射線照射をする部位」はあくまでも「胸壁+鎖骨上」なのです。
 前回の回答で「重複する内容を回答しています」

回答

「温存を選択していた場合はもしかして、全摘に変更になるのでしょうか?」
⇒変更にはなりません。

その根拠としては
①温存後は必ず照射している。但し照射範囲を「温存乳房+鎖骨上」へ変更します。

②「乳房照射術後の放射線」のターゲットは「乳腺ではなく、胸壁(皮膚や大胸筋)」です。「乳腺を全部切除すべき」という意味ではありません。

 
 

 

質問者様から 【感想4】

ご回答ありがとうございました。
治療を受けるにあたり、必要なだけ理解できたと思います。

こちらのサイトはずっと拝見しておりますが、不安な時期にどれだけ力づけられたかわかりません。
こちら以上にわかりやすく、実際に役に立ったサイトはありませんでした。
本当に有難うございました。
 

<感想です>

治療方法(郭清を行う基準など)に古い新しいがあることに驚きました。

また、手術が終わってみないとリンパ節転移の評価がハッキリとはわからない点には注意が必要と感じました。

全摘再建か、温存かの選択の余地がある患者さんは、術前のエコーなどの診断結果からリンパ節転移の数の予測をたてた上で手術方法を選択できれば、手術後に後悔しなくて済むと思います。

私がそうでしたように、全摘さえすれば放射線治療は必要なくなり同時再建もできると思いがちだと思います。
残しときゃよかった!とならないように…

(告知直後は、なかなかそんなこと考える余裕もないとは思いますが…)

 

田澤先生から 【回答4】

 質問者が「質問を重ねる度に理解が深まる」様子が手に取る様に伝わりました。
 今回の件を通して、「目の前の患者さんには、ここまでは説明しきれないなぁ」というのが実感です。
 「QandAで何度か、やり取りする事の重要性」を確認できたことが私にとっても大きな収穫でした。
 ありがとうございます。

 江戸川病院 乳腺センター 田澤





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