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術前抗ガン剤による腋窩リンパ節について

[管理番号:4369]
性別:女性
年齢:55歳
いつもお世話になります。
おわかりでしたらお教え願います。
以下、日本乳癌学会学術総会でのある報告の抜粋をコピーします。
 「・・NAC後にリンパ節転移が消失する割合、原発巣とリンパ節転移の効果判定の相違、NAC後のリンパ節転移消失例の特徴を解析した。
・・・対象は、・・・NAC前に腋窩リンパ節転移が細胞診もしくは組織診で証明され、NACを行った原発性乳癌165例・・・解析の結果、
NAC後にリンパ節転移が消失したのは、165例中45例(27%)だった。
165例中、原発巣でpCRが得られた症例は18例(11%)で、そのうちリンパ節転移が消失していたpN0は14例(78%)、消失しなかったpN+は4例(22%)だった。
・・・一方、165例中、リンパ節転移が消失した45
例(27%)のうち、原発巣でpCRが得られたのは14例(31%)、原発巣がnon-pCRだったのは31例(69%)だった。
リンパ節転移が消失しなか
った120例(73%)のうち、原発巣がpCRだったのは4例(3%)、non-pCRだったのは116例(97%)だった。
サブタイプ別にリンパ節転移の消失割合を解析した結果、LuminalA 109例では15%、LuminalB 20例では35%、トリプルネガティブ 20例では60%、HER2タイプ16例では63%だった。」
とありました。
原発巣でpCRだった中でリンパ節転移が消失したものは
78%とありますが(22%は消失しないという事)、リンパ節転移が消失しなかったもののうち原発巣がpCR だったのは3%となっていますがどういうことなのでしょうか?
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
なぜ、この報告に質問者が興味を持ったのかは不明ですが…
「原発巣でpCRだった中でリンパ節転移が消失したものは78%とありますが(22%は消失しないという事)、リンパ節転移が消失しなかったもののうち原発巣がpCR だったのは3%となっていますがどういうことなのでしょうか?」
⇒物事はシンプルに考えてください。
 現在のpCRの定義は(リンパ節の効果とは無関係に)「原発巣が(病理学的に)消失した場合」をいいます。
 ただ、この報告では単純に
 「原発巣のpCR」と「リンパ節が消失」したものの数を数えただけの話です。
 つまり
  1.原発巣でpCRとなった数18例⇒これは更に ①「リンパ節も消失」した14例(つまり原発巣もリンパ節も両方消失)
                         ②「リンパ節は消失しなかった」4例(つまり原発巣は消失したが、リンパ節は生き残った)
  2.リンパ節転移が消失した45例⇒これは更に ③「原発巣も消失」した14例=上記①のこと
                         ④「原発巣は消失しなかった」31例(つまり原発巣は消失せず、リンパ節のみ消失)
  
  とすると
  A. 原発巣もリンパ節もどちらも消失 14例
  B. 原発巣は消失したが、リンパ節は消失せず 4例
  C. 原発巣は消失しなかったが、リンパ節は消失 31例
  D. 原発巣もリンパ節もどちらも消失せず(165-14-4-31=)116例
  更にいうと
  E. 原発巣が消失しなかったもの(総和)=D+C=147例
  F. リンパ節が消失しなかったもの(総和)=B+D=120例
 以上のようになるわけです。
 質問者のいう「リンパ節転移が消失しなかったもののうち原発巣がpCR だったのは3%」というのは 
   「リンパ節転移が消失しなかったもの=F(120例)」の内で「原発巣がpCRはB(4例)」となるので 4÷120=0.3333…≒0.03(3%)となるわけです。