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抗がん剤の使用判断について

[管理番号:4094]
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生、よろしくおねがいします。
Q&Qに出会い、大変勉強になったり、安心できたりしています。
ありがとうございます。
以下、先生からご覧になったお考えをお聞かせください。
これまでの田澤先生の他のご説明から、私の場合の抗がん剤の使用有無はリンパ転移の数(4以上かどうか)で考えるということで良いのでしょうか。
また、こういうケースではセンチネルリンパ節生検は省略してリンパ郭清となりますか。
関西在住のため田澤先生に診ていただけなくて残念です。
・経過
2015/11月 乳がん検診受診
マンモ、エコーで異常なし。
左胸のしこりと違和感を伝えたが、医師は良性で問題なしとのこと。
2016/11/(下旬) 乳腺科受診
1年後なので乳がん検診受診。
自分でしこりが気になったので乳腺専門医のいる病院を受診。
触診でしこりが認められ、マンモ、エコーの結果、画像から悪性の可能性高い。
エコーでは左リンパの画像が腫れて見えるためリンパへの転移可能性はあり。
左乳房のしこり二箇所で針生検を行う。
2016/11/(下旬) 針生検他結果説明
病名:左乳房下外側乳がん、湿潤がん、ルミナルA 型
ステージ:リンパ転移なければ1、転移あれば2a
しこり:17*11*11mm
グレード2(1-3の真ん中、やややんちゃ)
ER 95
PR 80
HER2 0
Ki67 index 5%
目に見えない転移可能性は20%
手術は乳房温存術+放射線治療+センチネルリンパ節生検(腋窩リンパ節郭清)の予定だが、全員検査後に考える。
全身療法は術後ホルモン剤の予定。
ルミナールAはおとなしいがんであり10年生存率は90%とのこと。
2016/12/(上旬) 腹部エコー、CT、MRI、RI検査
2016/12/(上旬) 検査結果説明
腹部エコー: 肝臓、肺転移なし。
CT:左脇の下のリンパに一個、転移を疑う。
MRI:乳房のがんは2cm以内で左のみ。
乳房温存でいく。
乳首からも離れている。
術後放射線で再発率下げる。
RI:骨への転移なし
手術はセンチネルリンパ節生検はせず、リンパ郭清となる。
(ほぼ画像で転移を確認したため)
先に抗がん剤を用いる手法もあるが、それは腫瘍サイズを小さくして乳房を温存したり、よく聞く抗がん剤を見つける目的であるが、ルミナールあには抗がん剤はあまり効かない。
術後の結果を見てから、たちが悪ければ抗がん剤を検討する。
主治医は50代で、その病院では40代の医師とふたり体制で年間70件の乳がん手術をされているそうです。
よろしくおねがいします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「これまでの田澤先生の他のご説明から、私の場合の抗がん剤の使用有無はリンパ転移の数(4以上かどうか)で考えるということで良いのでしょうか。」
⇒ルミナールAの場合は、そうなります。
 ただし、(もしも手術標本全体でもKi67が一桁ならば)実際には「リンパ節転移の個数に関係なく抗ガン剤による上乗せは小さい(殆どない)」と思います。
「また、こういうケースではセンチネルリンパ節生検は省略してリンパ郭清となりますか。」
⇒画像所見次第ですが…
 「明らか」でない限りは「センチネルリンパ節生検してもいい」と思います。
 おそらく「CTで転移が疑われる」というのは「造影CTでリンパ節が造影された」ことを根拠としていると思いますが、絶対的所見ではありません。
 質問者自身に「センチネルリンパ節生検をして(確認して)欲しい」という希望があれば伝えるべきです。
 ○私の患者さんのなかで(偶然、その方も関西でしたが)
   どうしても地元の病院では(センチネルリンパ節生検を拒否されるので)「センチネルリンパ節生検して欲しい。それで陽性ならば郭清に納得するが、最初から郭清は納得しない」という患者さんを手術したことがあります。
   その時私は、「随分、頑固な医師だなー。(希望なのだから)センチネルリンパ節生検くらいしてあげれば良いのに」と思いながら、手術しましたが「センチネルリンパ節生検で転移なし」でした。
   明らかに「転移性リンパ節転移がゴロゴロ」でない限りは、患者さんからの希望があれば「センチネルリンパ節生検をするべき」だと私は思っています。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、毎日このQ&Aを拝見して勉強し、主治医からの説明の理解の助けや、自分の状態・治療についてを自分なりに整理して考えられるようになってきています。
感謝しています。
質問管理番号:4094
再質問タイトル:抗がん剤の使用判断について
先日は上記へのご回答をありがとうございました。
田澤先生にアドバイスいただいた通り、術中のセンチネルリンパ節生検を主治医に再度希望しましたが、画像から転移1個はほぼ確実のため最初からリンパ郭清すると言われ、納得した上でリンパ郭清で手術できました。
ありがとうございました。
また、術前画像からリンパ転移確度が高いという事から、術後治療は抗がん剤上乗せを勧められていましたが、田澤先生の『ルミナールAでの抗がん剤による上乗せは「リンパ転移の数(4以上かどうか)で判断。
たが、もしも手術標本全体でもKi67が一桁ならば)実際には「リンパ節転移の個数に関係なく抗ガン剤による上乗せは小さい(殆どない)」』の回答から、効果を数値で見て主治医と話ができるように、術後のオンコタイプDXを事前に依頼しました。
1/(中旬)に乳房温存手術が終わり、病理結果待ちですが、新たに田澤先生にお教えいただきたい点が出てきましたので、追加質問させてください。
主治医は術後何度も部屋に診に来ていただいてますが、ゆっくりとは話ができていません。
(まだ入院中です)
なお、依頼しましたが受診している病院では術前、術後の病理結果のコピーはいただけず、患者向けの説明書と口頭説明だけとなるきまりのようです。
ですので、以下の術前判断のステージ以降の数値は口頭説明と説明時のパソコン画面を私がメモしたものです。
このあたりも私がオンコタイプで数値を見たい理由の一つになります。
■術前判断
左乳房下外側乳がん、湿潤がん、ルミナルA 型
ステージ:リンパ転移可能高いため2a
しこり:17*11*11mm
グレード(異形細胞): 2
ER 95, PR 80, HER2 0, Ki67 index 5%
■術後口頭説明
術中、切除予定の腫瘍(乳首から離れている)の乳管の延長(同一乳管との事)で乳首近くにもしこりを1つ見つけたのであわせて取り除いた。
新たな発見分は周囲もキレイに取れた。
術前にはわからなかったもの。
いずれも病理結果できちんと同じものかどうかわかる。
リンパはレベル1を郭清した。
1つ転移していたが、他は検査しないとわからない。
転移数は1~3個の範囲の可能性は高い。
「オンコタイプは検査は出せるが私(閉経前、リンパ節転移陽性)の場合
は対象外になるがよいか?」と尋ねられ、このQ&Aで私の場合も十分結果が参考になると理解していたため「参考にするのでお願いします」と主治医に伝えました。
しかし主治医からは、高額であることと、もしリンパ転移数が多ければやはり抗がん剤はした方がよいので(オンコタイプが無駄になるから)、病理結果を見てからオンコタイプに出すよう勧められ、2週間の事なので病理結果後にオンコタイプを出す事に納得しました。
病理結果は1/31頃に出るそうです。
ただ私の心の中は病理結果によらず、やはりオンコタイプお願いしようと考えています。
■田澤先生にお尋ねしたいこと
画像やエコーでわからず、術中にしこりが見つかる事はあるのでしょうか。
それほど小さかったと喜ぶべきでしょうか。
同一乳管で新たに見つかったという事は乳房に局所転移を他にもしている可能性があり怖いです。
追加全摘か温存のまま術後放射線かは病理結果で判断するものですか。
温存の場合、局所再発率は多少上がるが、生存率はほぼ同じと考えてよいですか。
新たな二つ目が局所転移ではなく、ルミナールAではない別タイプの癌の可能性は低いと考えてよいででしょうか。
例えばホルモン依存性が陰性でHER2が陽性などの場合、二つ目の腫瘍径が小さくてもオンコタイプは出す意味が無くなってしまいますか。
思いもよらず術中に別しこりが見つかった事から不安がつのり、病理結果が出る前ではありますが、質問させていただきます。
なにとぞよろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
まず私が指摘しなくてはならないことは、「乳腺内転移は絶対にない(ちなみに、右乳癌が左に転移などもない)」ということです。
癌が2箇所に有った場合は以下の2つのどれかに相当します。
1.乳管内進展  これは、腫瘍が乳管内を(非浸潤癌として連続し)その同一乳管内で(浸潤を起こし)腫瘍を形成するものです。
  ♯イメージで言えば「団子3兄弟」のように串(この場合は非浸潤癌)で連続している一つの腫瘍(この場合も浸潤径が腫瘍の大きさなので、非浸潤癌で連続していても「2つの腫瘍」と表現されます)
2.同時性多発  これは(文字通り)「たまたま、同時期に全く別個の癌が乳腺内にできた(それぞれは無関係)」
通常、1であれば「温存適応内」ですが、2は「温存適応外(時として守られていないケースも散見されますが…)」となります。
質問者は1の可能性が高そうですが、担当医が言う「病理結果できちんと同じものかどうかわかる」というコメントは、このことを言っています。
「画像やエコーでわからず、術中にしこりが見つかる事はあるのでしょうか。それほど小さかったと喜ぶべきでしょうか。」
⇒通常はMRIで解りそうなものですが…
 解り難い所見ということなのでしょう。
「同一乳管で新たに見つかったという事は乳房に局所転移を他にもしている可能性があり怖いです。」
⇒理解していただけましたか?
 「乳腺内の局所転移」など、そもそも「ありえない」ことです。
 
「追加全摘か温存のまま術後放射線かは病理結果で判断するものですか。」
⇒1であれば、それは「よくあること(言いかえれば、その可能性を考えて、そもそも全例で乳頭方向に大きく切除すべきもの)」です。
 何も特別なことではありません。
「温存の場合、局所再発率は多少上がるが、生存率はほぼ同じと考えてよいですか。」
⇒1であれば、(きちんと)切除すれば、「局所再発も無関係」です。
「新たな二つ目が局所転移ではなく、ルミナールAではない別タイプの癌の可能性は低いと考えてよいででしょうか。」「思いもよらず術中に別しこりが見つかった事から不安」
⇒上記コメントどおりです。
 何も特別なことではありません。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

前回の管理番号:4094 で田澤先生にわかりやすく、かつ詳細にご説明いただき不安な気持ちを払拭して病理結果を待つことができました。
ありがとうございました。
1月中旬に乳房温存手術を終え、病理結果とオン
コタイプ結果が出ましたが、オンコタイプで中間リスクとなり、抗がん剤の有無について悩んでいますので、質問させてください。
??病理結果
左乳癌  pT2 pN1a M0、stage2B 、ルミナールA
・浸潤径     2.2cm
・ER 95、PgR 80、HER2 0、Ki67 index 5%
・核グレード   2
・リンパ節転移  1/9 (PN1)
・リンパ管侵襲  ly0
・血管侵襲    v0
気にしていた術中に同一乳管延長に見つかった乳首近くのしこりは、田澤先生のおっしゃる通り「乳管内進展」であり元々あった腫瘍と同じタイプでした。
この乳首近くのしこりについて「断端にはがん細胞はなか
ったので怪しいところは取れているが(断端陽性ではないと言われまし
た)、断端陽性の可能性がある」と説明受けました。
乳頭から5mmより
短い部分があるので、乳頭にブースト照射で多め(通常2 5回+プラス5回)
に放射線をかけることでよいと説明を受けました。
10枚ほどの切断画像を見せてもらいましたが、一番両端の画像にはがんを示す赤色はありませんでした。
??オンコタイプ結果
・再発スコア結果 30
・5年再発または死亡率
  タモキシフェン単独 18%
  タモキシフェン+化学療法 14%
・ER=8.2陽性、PR=6.7陽性、HER2=9.0陰性
Kiが5%であったため低リスクを想定し、抗がん剤なしにする裏付けとしてオンコタイプをしたつもりでしたが、結果が中間リスクの一番高い数値になりました。
抗がん剤の上乗せは5年で4%と出ました。
主治医からは基本的にはルミナールAは抗がん剤いらないのだが、私の数値は中間ゾーンで抗がん剤をするかどうか悩ましい結果だと言われました。
抗がん剤をすると白血病リスクが0.5%あるなどリスクもあるが、私の年齢とリンパ転移があったことから、もし私が主治医のご家族であれば抗がん剤を行うとのご意見でした。
放射線が終わる3月末までに考えてこ抗がん剤を行うかどうかを考えてくるようにと言われています。
オンコタイプでは再発スコア18-30が中間リスクとされていますが、「中間RS群に対する化学療法の効果検証のTAILORx」という試験では再発スコア11-25が対象とされているようであり、さらに「中間リスク群では再発リスク値が高いほど科学療法利用率が高まる」という下記URLのに掲載されているグラフではRS30では半数が抗がん剤を選択しておられるようであり、抗がん剤の有無を悩んでいます。
https://gansupport.jp/article/cancer/breast/breast01/15468.html
再発率そのものが予想より高く、子供の寝顔を見ると副作用が残っても抗がん剤をしようかとも考えることもあります。
自分自身でも抗がん剤の副作用と再発リスクを天秤にかけて悩んでばかりです。
??今後の治療予定
放射線 30回
抗がん剤(する場合)TC(ドセタキセル、シクロフォスファミド) 3週毎×4回
ホルモン療法 タモキシフェン(ノルバテックス)+LH-アゴニスト
オンコタイプDXの検査を結果を待つ間に先に放射線を行ってはどうかと主治医より提案があり、現在は放射線治療を3月末までの予定で先行しています。
ちょうど半分終わりました。
????質問
1) 私の場合、Ajuvant Onlineでのホルモン療法のみを行った場合と、ホルモン+化学療法を行った場合の、5年、10年生存率、再発率はどのくらいですか。
抗がん剤の上乗せ効果が数%の場合は、田澤先生のお考えは抗がん剤不要と理解し私もそのように考えていましたが、それは10年の再発率でお話いただいているように理解しています。
オンコタイプ結果(リンパ転移あり)は精度高いですが5年再発率しか値がありません。
ですので私の10年再発率を予想したいので参考値としてお教えいただけないでしょうか。
ルミナールAは晩期再発が多いとのことなので、私の場合、10年後だと上乗せ効果が10%以上になる可能性はありますか。
2) 私のオンコタイプ結果と病理結果を踏まえて、田澤先生でしたら抗がん剤はどうするのがよいと思われますか。
これまでQ&Aで田澤先生が回答されている通り「ルミナールAでは腫瘍径によらず、またリンパ転移数1-3では抗がん剤の効果は低い」さらに「オンコタイプで中間リスクならホルモン療法単独とすべき」という内容は私の場合も同様とお考えになりますか。
3) 抗がん剤(する場合)、ホルモン剤は田澤先生も同じものを選択されますか。
閉経前です。
4) 田澤先生から見て、他にもし何か気になる点があればお教えいただけないでしょうか。
湿潤径が術前1.7cm→術後2.2cmになりstageが2Aから2Bに変わりショックを受け、オンコタイプが想定外に中間リスクになったことから、さらに落ち込んでいます。
ですが、みなさん前向きに治療を頑張っておられますし、田澤先生がいつも書いておられるように「やるべき治療をきちんとする」ことを頑張り、根治を目指したいと思います。
Q&Aでの田澤先生のみなさんへの回答に、日々励まされています。
ありがとうございます。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「Ki67が一桁」であれば、「RSも低リスク」となりそうですが、(相関関係にはあるとしても)「当然ながら、比例関係では無い」ということです。
OncotypeDXは(Ki67を含む)「16の癌関連遺伝子と5の対照遺伝子の発現量での評価」なので、当然と言えば当然です。
 ♯逆にいうと、「Ki67とRSが綺麗な比例関係」であれば、(Ki67を測ってしまえば)「OncotypeDXは無用な検査」となるのですから…
 ただ、(思っていたほど)RSが低く無かったとしても、結局「上乗せは僅か
4%」にすぎないことを考えれば(もしも)「Ki67だけで化学療法をしないことにしていても、大事には至らなかった」とも言えます。
物事はシンプルに考えましょう。
「中間リスク」とか「低リスク」など「レッテル」は、時として便利ですが、「物事の本質」を見るべきです。
○今回悩む理由が(私には)不明です。
 「Tam Alone」と「Tam + Chemo」の差が4%
 ♯私の感覚では「5%以下」は化学療法を勧めませんが(極めて感覚的な話で申し訳ありませんが、8%以上位が境界でしょうか…)
 (勿論)質問者は(私と)「感覚が異なる」ことは十分に承知しています。
  だから、ご自分で「4%の上乗せと化学療法による不利益を天瓶にかける」極めてシンプルな話です。(ここに「中間リスク」などというレッテルは全く不要です)
「1) 私の場合、Ajuvant Onlineでのホルモン療法のみを行った場合と、ホルモン+化学療法を行った場合の、5年、10年生存率、再発率はどのくらいですか。」
⇒OncotypeDXをしたのにNeoAdjuvant.comの数値など何の意味もありません。
 
「10年後だと上乗せ効果が10%以上になる可能性はありますか。」
⇒それは絶対にありません。
 乳癌で「5年までの再発」と「5年以降の再発」では圧倒的に前者が多いからです。
「2) 私のオンコタイプ結果と病理結果を踏まえて、田澤先生でしたら抗がん剤はどうするのがよいと思われますか。」
⇒物事はシンプルに考えましょう。
 私にとって「4%」は(化学療法をするのに)値しないし、要は「質問者にとって4%がどうなのか?」ということです。
「抗がん剤(する場合)、ホルモン剤は田澤先生も同じものを選択されますか。閉経前です。」
⇒(抗癌剤をするにしろ、しないにしろ)
 タモキシフェン+LH-RHagonistです。
「4) 田澤先生から見て、他にもし何か気になる点があればお教えいただけないでしょうか。」
⇒特にありません。
 あまり、迷路に嵌らない様に「シンプルに」考えましょう。