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遠隔転移の化学療法について

[管理番号:6533]
性別:女性
年齢:61歳
こんにちは、60代の母の事で初めて質問させていただきます。
よろしくお願いいたします。
今日に至るまでの経過は次のとおりです(主治医は細胞診や腫瘍マーカーなどの数値は気にしない方が良いとほとんど教えてくれません)。
2014年7月に乳がんステージ2b、ルミナルB型、HER2陰性と診断。
右乳房全摘手術。
術後、放射線治療とアリミデックスを服用。
抗がん剤は術前術後ともになし。
2016年11月、胸骨単独転移発覚。
ランマークとフェソロデックスの注射開始。
2018年1月、フェソロデックスの効果が落ちてきたのでエキセメスタンに切り替え。
(現在も服薬中)
2018年1月に骨転移の部位にサイバーナイフの治療を受ける。
胸骨のガンが縮小する。
2018年6月、肺に転移が発覚。
厳しいと言われ、現在に至る。
主治医は、厳しい状況(余命1~2年)だが今のホルモン主体で治療を続けるのが良いとの見解。
抗がん剤治療を一度も受けたことないので、
主治医に聞いたところ、母の様子では体力や免疫力低下が気がかりでどこまで効果があるか疑問。
希望すれば行うといったことを言われる。
また近い将来の緩和ケアのことを視野にとも言われる。
このまま今のホルモン治療をズルズル続けていいのものか家族皆が悩んでいます。
そこで質問です。
1.やせ型(164センチ、50キロ)で体力は60代ではない方(日中もだるい(ホルモンの影響?)と言って横になっている時間が長いです。)だと思いますが、抗がん剤はメリットよりデメリットの方が大きいのでしょうか?
2.田澤先生でしたらどのような治療を考えますか?
3.今の状況は治療を諦めるような状況なのでしょうか?
ご教示いただければ幸いです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
楽だからといって…
ホルモン療法→病状悪化→(病状悪化したから)抗がん剤は体に負担 では…
理論的に考えて、「抗がん剤をする機会を、最初から放棄している」と私には思えます。
私であれば…
そもそも
まずは抗がん剤でたたいて(今回の場合には、まずは放射線→その後抗がん剤となります)、それから(そのいい状態を)ホルモン療法単独(もしくはホルモン療法+パルボシクリブ併用)で維持します。
○「いい状態を維持」これがKey wordです。
「1.やせ型(164センチ、50キロ)で体力は60代ではない方(日中もだるい(ホルモンの影響?)と言って横になっている時間が長い」「抗がん剤はメリットよりデメリットの方が大きいのでしょうか?」
→もちろん。
 このままいくと、病状は悪化していくだけです。
 それに比べ、抗がん剤をすると(かなりの確率で)一度病勢を改善(画像上、完全緩解の可能性もあります)させる力があります。
 まずは、その状態をつくり、その後その「いい状態を維持」しては、どうでしょうか?
 
「2.田澤先生でしたらどのような治療を考えますか?」
→未抗がん剤ですから、アンスラサイクリンも当然効果が期待できますが…
 効果と副作用が高いバランスである「bevacizumab + paclitaxel」を用います。
 ★私の経験上
  PTXを8割投与にして上記治療を3か月行うと、かなりの効果が期待できます。→その後「ホルモン療法+パルボシクリブ」で維持を狙います。
「3.今の状況は治療を諦めるような状況なのでしょうか?」
→上記通りです。
 Bevacizumab+paclitaxel(8割)の3か月投与は、問題なく完遂できるでしょう。
 
 

 

質問者様から 【質問2 遠隔転移の化学療法について】

性別:女性
年齢:61歳
先日は質問に丁寧にお答えいただきありがとうございます。
今回もよろしくお願いいたします。
先日、田澤先生のお答えとコラムを読み、主治医とも話した結果、母は抗がん剤治療を受けることを決意しました。
抗がん剤の種類ですが、最初は副作用が少ないほうが良いとのことでエリブリン+ランマーク(ランマークは継続です)になりました。
来週から家族で頑張る予定です。
そこで質問です。
1.病院でもらった小冊子にはエリブリンは既に抗がん剤治療を受けたことのある患者向けと書いてあったのですが、初めての抗がん剤で問題ないでしょうか?
(主治医は問題ないから治療を勧めたのだとは思いますが…)
またエリブリンは効かなくなるまで「2投1休」で続けるものなのでしょうか?(休薬や減薬、効果持続中での他の薬剤への変更はあるのでしょうか?)
2.私は田澤先生がおすすめされたBevacizumab+paclitaxelが良いと思ったのですが、母は次の治療以降で使いたいと言っております。
可能でしょうか?エリブリンでの治療終了以降の抗がん剤治療のイメージを教えていただければと思います。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「1.病院でもらった小冊子にはエリブリンは既に抗がん剤治療を受けたことのある患者向けと書いてあったのですが、初めての抗がん剤で問題ないでしょうか?」
→抗がん剤は(術後補助療法でも適応のある「アンスラタキサン」が、あくまでも「中心」であり、それ以外の抗がん剤は(あくまでも)「それらの薬剤より先には来ない」という「序列」が存在します。
 ただし、再発治療にはスタンダードはなく「アンスラタキサン(weeklyPTXは除く)」は副作用がきつく、(それを先にやってしまうと)「抗がん剤はもうコリゴリ」となってしまうリスクがあります。
「またエリブリンは効かなくなるまで「2投1休」で続けるものなのでしょうか?(休薬や減薬、効果持続中での他の薬剤への変更はあるのでしょうか?)」
→「効果が無くなるまで」という負のイメージはお勧めしません。
 「画像上消失するまで」継続することを目標とし、それを達成もしくは「副作用がきつく感じた」場合には(よくやるのが)「隔週投与」です。(もちろん「減量」もありです)
「2.私は田澤先生がおすすめされたBevacizumab+paclitaxelが良いと思ったのですが、母は次の治療以降で使いたいと言っております。可能でしょうか?」
→勿論です。
 Eriblinも(今週のコラムに挙げたように)いい薬ですが、一般にbevacizumab +paclitaxelほどではないので、「eriblinが力不足かな?」と感じたなら、(固執せずに)bevacizumab+paclitaxelへ変更すべきです。
「エリブリンでの治療終了以降の抗がん剤治療のイメージを教えていただければと思います。」
→「効かなくなったら」的なイメージが先行しているようですが(担当医の「言い方」もありそうです)
 そうではなく、あくまでも「目標」を決めて、それを達したら「抗がん剤は辞めて、ホルモン療法+パルボシクリブで維持」
 そのような考え方がいいと思います。
 ☆まさに、「今週のコラム123回目の患者さん」のようにです。
今週のコラム 123回目 QOLを保ったまま(胸部Xpも正常だし、無症状)、副作用も問題なく継続できる。