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病理の結果とその後の治療について

[管理番号:6142]
性別:女性
年齢:48歳
田澤先生 
数か月前に再発の告知を受けてから、たびたびこちらのサイトを訪れ勉強をさせていただいています。
治療と今後の予後の見通しについてご意見を聞かせていただきたくよろしくお願いいたします。
経緯
12年前に最初の右乳がん部分切除手術。
(腫瘍径8mmと記憶しています)
位置は乳房下の外側。
センチネルリンパ節生検(RI・色素)実施。
病理結果;硬癌、リンパ節転移なし、脂肪織浸潤(+)、ER(+)、PgR
(+)、HER2 (0)、断片陰性。
術後療法はホルモン療法(ゴセリン・タモキシフェン)。
(放射線照射は実施されませんでした。)
術後10年の経過観察中は異常無し(ただし最後の検診となった2年前の春はマンモのみで、超音波検査が実施されていません。
その半年前の超音波では異常無しでした)。
昨年秋に右乳房の上の外側、かなり脇に近い箇所のしこりに気づき前回手術をした病院で検査。
画像と細胞診(組織診は受けていません)の結果乳がんの確定診断。
術前診断は、直径16mm、超音波上の脇のリンパへの転移の確認は無しと言うことでstage1。
ただし、画像上で筋膜(前鋸筋)に隣接し、食い込んでいるようにも見えるが可動性があるため、詳しい状況は手術してみないとわからないと言うコメント。
今年1月に温存による摘出手術。
術中のリンパ節検査は陰性とのことでした。
病理の結果は以下の通りです。
充実腺管がんと硬がんの間の浸潤がんで、腋下リンパ節再発(今回の病変とあわせて2個)。
多発性がんの可能性も検討されたようですが、
In situ(-)、前回の組織像と類似、位置関係からリンパ節再発と診断されました。
病変乳頭側リンパ節の被膜内リンパ管にがん細胞確認され、また胸膜に1mm浸潤していたそうです。
ER(+),PgR(+)、HER2(0)、浸潤径11mm、脈管侵襲 無、核異形度
 1、断片陰性
前回確認できなかったリンパ節に転移していたがん細胞が成長して今回の病変になったと考えられるという説明でした。
術前に腫瘍のある場所が乳腺ではなくリンパ節であることが確認できず且つ術中のリンパ節検査でも転移が認められなかったため腋下リンパ節の郭清はされませんでしたが、今回の結果を受けてレベル2までの郭清手術を追加で行うこととなりました。
全摘の提案は受けておりません。
術後療法としては、抗がん剤(AC 3wks ×4、ドセタキセル3wks×4)、放射線照射、ホルモン療法(内容未確認)を提案されています。
質問
1)レベル2(場合によってはレベル3までと言われています)までの腋下郭清手術、術後の療法、特に抗がん剤の内容及びについて先生も同じご意見でしょうか。
特に郭清後の後遺症が気になりますので、お考えをお聞かせいただければと思います。
2)胸膜への浸潤はめったに起こらない、また浸潤があると予後に影響するという印象がぬぐえないのですが、1mm程度の浸潤の持つ意味を教えてください。
血行性転移の可能性はかなり高くなるのでしょうか。
3) 今回の再発は、ステージとしてはどう捉えれば良いでしょうか。
2センチ以下のしこり、2個のリンパ節転移であれば2aと言うことになるかと思いますが、胸膜の1mmの浸潤は「胸壁の固定」となり、3bになってしまうのでしょうか。
また、右鎖骨上に非常にちいさなしこりを感じます。
一連の検査では指摘されていないのですが、たとえばレベル2に転移がなくても鎖骨には転移しているということはあるのでしょうか。
4)今回の病変は前回の手術で取り残されたがん細胞が時間をかけて大きくなったのだと理解しています。
これは先生がコラム#119でおっしゃっているケースかと思うのですが、現段階で腋下郭清・術後の療法をきちんとすることで遠隔転移を十分に防げると考えても良いのでしょうか。
それとも胸膜に浸潤していることで状況は大きく変わるのでしょうか。
今週のコラム 119回目 『(エコーで認識されてから、腋窩郭清されるまでの)「3年間が勝負(その後の遠隔転移の出現の有無)を決めた」私は、そう考えるのです。
術前の予想と違っていたことも多く、来週に手術を控えてとても不安な気持ちで過ごしておりますが、わからないことを整理してできる限り納得して前向きに治療を受けたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「初回手術でセンチネル陰性」⇒(10年以上経ってから)「腋窩再発」『今週のコラム117回目』をご参照のこと。
今週のコラム 117回目 更に、術中に『出血しながら手術している』医師の場合には「血液も視野の妨げ」となるので、ますます、「SNの誤認のリスクが増す」のです。
「術中のリンパ節検査は陰性とのこと」
⇒そもそも…
 初回手術で「センチネルリンパ節生検している」のだから、「センチネルリンパ節生検はできない筈」ですが…
「1)レベル2(場合によってはレベル3までと言われています)までの腋下郭清手術、術後の療法、特に抗がん剤の内容及びについて先生も同じご意見でしょうか。」
⇒全く違います。
 あくまでも「初回手術の取り残し」を(10年過ぎて)「切除しただけ」の話です。
 「更なる局所療法(手術)」も「全身療法(抗癌剤)」も不要です。
「2)胸膜への浸潤はめったに起こらない、また浸潤があると予後に影響するという印象がぬぐえないのですが、1mm程度の浸潤の持つ意味を教えてください。」
⇒「胸」膜ではなく「(前鋸)筋」膜ですね?
 ○前回手術している影響がありそうですね。
「血行性転移の可能性はかなり高くなるのでしょうか。」
⇒不明ですが…
 「長期間放置」されていたわけではない(術後10年まではチェックされていた)とすれば、あまり問題無さそうです。
「3) 今回の再発は、ステージとしてはどう捉えれば良いでしょうか。」
⇒「遠隔転移再発」ではありません。
 あくまでも「局所」再発です。 ステージに変更はありません。
「一連の検査では指摘されていないのですが、たとえばレベル2に転移がなくても鎖骨には転移しているということはあるのでしょうか。」
⇒おそらく「考え過ぎ」です。(担当医に超音波をしてもらいましょう)
「現段階で腋下郭清・術後の療法をきちんとすることで遠隔転移を十分に防げると考えても良いのでしょうか。」
⇒そもそも…
 純粋な「局所再発」で「追加治療が必要なのか?」そこから疑問です。
「それとも胸膜に浸潤していることで状況は大きく変わるのでしょうか。」
⇒考え過ぎです。
 術後だから(脂肪が剥げたりしているので)そもそもから「接していた」可能性もあります。