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今週のコラム 105回目 「前医で細胞診良性」を信じられない私をご理解ください。

パルボシクリブ(イブランス)

これが暫くぶりに「鳴り物入り」で登場する薬剤です。(本当に久しぶりに、大物登場です)

通常の抗がん剤とも違うし、分子標的薬でもありません。

CDK4/6阻害剤という全く新しいアプローチで、(ホルモン療法と併用で)かなりの力を発揮します。

 

いずれ、この今週のコラムでも紹介することがあるかもしれませんが、その日本でのお披露目会である「2017イブランス発売記念講演会」(2017/11/11 15:00-18:00 虎の門ヒルズ)

日程的に、(土曜日の市川外来が終わってからなので)時間通りには間に合いませんが… 参加してきます。

 

その分(虎ノ門に宿泊もするため)来週の土日に仕事があまりできない分(土日は私にとって貴重な時間なのです)11/3金曜日(祝日)は仕事の時間がとれて、とても貴重でした。

 

FMから流れたshort story

「もしもし、そちらスマイル小学校ですか?」

「おはようございます。そうです。こちらはスマイル小学校です。」

「今日、4年A組のジャックスミスは今日お休みします。」

「それでは、あなたはジャック君のお父さんですか?」

「そうです。 僕のパパです。」

 

 

前回、生検手技を紹介させてもらいました。

私が主としてお話したかったのは「細胞診の難しさ」についてでした。

 

それでは今回は(特に難しいとされる)腋窩細胞診について実例を挙げて紹介しましょう。

 

Case 1

乳癌術後経過観察中の方

201x/5

検査技師による定期エコーで、腋窩リンパ節を(最初に)指摘される。

 

 

 

 

 

 

 

 

画面上、やや解りにくいですが、「不整形」であることは解ります。(こんな正常リンパ節ありません)

 

ただ(何故か?)A医師は、(自らエコーで確認することもなく)経過観察としています。

♯この要因として…

非常勤医であるA医師にとって、(どこかの政治家のように)「問題はできるだけ、先送りにしたい!」があるようです。

自分が(その病院に)来年もアルバイトしに来るのかは(彼自身にさえ)解らないのです。

(自分が在籍して居る間に問題が起こるのは困るけど)「自分が居なくなった後なら、どうなろうと知ったこっちゃない。」(そこまで酷くはないでしょうが…)

 

(8カ月後)

やはり検査技師による定期エコーですが、「前回より明らかに増大」と指摘されます。

これをもって、初めてA医師は自らエコーしてみますが、(ここでも何故か)「半年後経過観察」としています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは「かなり強烈」な(不整形をした)リンパ節像です。

これを「正常リンパ節」と考える(まともな)乳腺外科医は(日本中どこを探しても)居ないでしょう。

これで「経過観察」とは…

 

 

(更に7カ月後)


 

 

 

 

 

 

 

ここでようやく、A医師は「細胞診」を行いますが…

結果は「検体不良」

しかしA医師は(再検することなく)「反応性腫大(だから、細胞が取れなかったのだ)」という結論としています。

 

(更に1年後)

ここで私が診療する機会を得ました。

私は(A医師とは異なり)技師にエコーさせる習慣が全くないので当然ながら自分でエコーしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ、こりゃ!!」

エコー像は「どう見ても、反応性とは思えない、転移性リンパ節だ!」

「全く、A医師は…」

☆こうして、(発見から2年経過して)ようやく「腋窩リンパ節郭清」が行われることとなりました。

最初から私が診療していれば…

最初の時点で「細胞診class Ⅴ」2年も早く治療ができたでしょう。

この2年がどういう意味を持つのか。(患者さんは医師を選べないのです)

 

Case 2

この方は他院で「局所再発を繰り返す(どう見ても初期治療に不備が有ったのですが)」乳癌として長期間治療されていた方

対側のリンパ節を見たところ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左図)2つの不整形のリンパ節      右図)左図リンパ節の右を別角度からみたもの

「これは、どう見ても正常ではない」「対側リンパ節に転移することは極めて稀(乳腺において右と左は天と地ほど離れているのです)ですが…」

Bさん

「ええ、そう見えるようなんです。」「でも前医で細胞診して良性と解ってます」

(腋窩細胞診が上手くできない医師が多い事を知っているので)「でも、気になります。細胞診しましょう。」

Bさん

「えーっ。私痛いの嫌いなのよ。」(前医で良性だったから)「しなくていいんじゃない?」

「局麻をして細胞診すれば、大丈夫。痛くないです。」

 

☆結局「クラスⅤ」でした。

まぁ、そんなものなのです。

「細胞診」自体難しいのに、「腋窩細胞診」となると…

このような経験を日常的に繰り返している私を想像してください。

「前医で細胞診良性」を信じられない私をご理解ください。