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今週のコラム 81回目 肺転移が出現した。もう手術はできない。

昨日、土曜日。

全国的に「夏到来!」(早すぎる)

市川帰りのランニング、暑かったなぁ。(遠回りして、1hかけて江戸川病院へ走って帰るのですが、まるで「真夏」の日差し!)

昨年夏、「39回目」でも書いたけど、今年初の「上半身裸ランナー」を河原で目撃してしまいました。

またまた登場「裸のランナー」

 

 

 

 

 

 

 

 

○術前化学療法

5/20「術前化学療法とトリプルネガティブについて」の中に、以下の質問がありました。

『・術前にする抗がん剤をして、あきらかな転移がないのに転移してしまったり、腫瘍が大きくなる事はないのでしょうか?』

 

是非、参考にしてください。(以下、実例です)

 

(前医にて)

・理由も説明されずに強引に始まった術前化学療法

♯どうやら「トリプルネガティブだから」という、”しょうもない理由”だったと推測されます

・「大きくなってるみたいで心配だ」と訴えても(途中では)超音波してくれず、ようやく検査したのは「半年後のCT」

・そのCTで「肺転移が出現した。もう手術はできない。」と宣告された。

 

以上の状況で、当院を受診されました。

Aさん

「術前抗癌剤終了後のCTで肺転移が出てきたから、“もう手術できない”って言われました。 それで今ゼローダ(経口抗癌剤)飲んでます。」

 

「術前抗がん剤は、抗癌剤中に病勢が進行するリスクを認識すべきで安易に行うべきではない。そして、もしやるなら“きちんとしたフォロー(3週間に1回程度の超音波検査)が必須です。病勢が進行した場合には間髪空けずに手術をするためです。」(少しの油断で”手術不能へ追い込まれる”事があるからです)

 

Aさん

「腫瘍がだんだん大きくなっているのが嫌なんです。手術できませんか?」

 

そこでAさんを診察して「意外?」と大した局所(腫瘍とリンパ節)ではないことを確認しました。

(腫瘍:28mm)  手術不能ではない                  (腋窩リンパ節)転移ではない?

 

 

 

 

 

 

 

上図:左(化学療法前)よりは右(化学療法後)では、確かに「腫瘍は増大」しています。

 

下図:しかし、腋窩リンパ節は、それほど変わりない(転移はないのでは?)という所見です。

 

 

 

 

そして「肺転移」なる(化学療法後の)肺CTを見ましたが…

 

赤丸で囲んだ所見が「肺転移?」なる所見。

確かに、化学療法前のCTにはない。

ただし、「小さな所見」であり「手術不能」とするほどの理由になるだろうか??

 

 

「肺も大した所見ではないですね。これで“手術はできない(手術しても仕方がない)”というのは…」

 

Aさん

「でも、前の病院では“絶対手術しない”って。ゼローダ飲んでも全々効かないのに“それしかない”って。」

 

「そもそも、この肺の所見は“転移でない可能性もありそう”だし、“効かないゼローダ”を(漫然と)飲むよりも手術すべき。」

○それこそ、「この機会」を逃したら本当に「手術不能」に追い込まれてしまう。

「手術自体」が、その「肺転移」に悪影響を及ぼすわけでもないのだから、「やれる治療は(時期を逃さずに)やるべき」それが大事なのです。

 

 

★実際はというと…

手術は(勿論)問題なく終了。♯センチネルリンパ節生検も陰性でした

術後に「PET」を撮影してみましたが、「(肺を含め)全身に病変なし」

 

術後に撮影したPET所見

uptake(取り込み)があるのは「心臓」と(排泄の経路である)「腎と膀胱」だけ。

つまり正常所見です。(肺も含め全く異常なし)

 

 

 

 

 

そして、肺CTも撮ってみましたが…

Aさん

「あれっ 何も無い!」

 

そうなのです。

肺は(まるで何事もないかのように)きれいな状態でした。

 

あのあと、抗癌剤をしているわけでもないので(治療で効いたわけでは無く)『単に、(肺転移だと思っていたのは)実は抗癌剤により誘発される局所的な炎症だった』のです。

♯結構、抗癌剤した後(比較的直後)に(あたかも転移に見間違えるような)局所的な炎症所見が現れる事があります。私は、それを知っていたので最初から「肺転移には懐疑的」だったのです。

ただ、このケースでは(たとえ、本物の肺転移だったと仮定しても)「手術はやるべきだった」そう、今でも確信しています。

 

ひとりごと

もしも、あの時Aさんが(当院を受診せず)前医でゼローダを飲み続けていたら…

いずれ「コントロールを失った」局所(乳癌)が(今度こそ本当に)「新たな転移を生み出した」ことでしょう。

☆Aさんにとって、最大の「turning point」となったのは間違いありません。