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今週のコラム 119回目 『(エコーで認識されてから、腋窩郭清されるまでの)「3年間が勝負(その後の遠隔転移の出現の有無)を決めた」私は、そう考えるのです。

FMからながれたshort story 面接の一風景

「えーっ、では面接の最後にあたなの一番の長所をおっしゃってください。」

「はい。今まで15回クビになったことです。」

「えっ、(驚いて)長所ですよ?」

「だって、(胸をはって)私から諦めて仕事を辞めたことは一度もないんです。」

 

 

前前回(117回)は「リンパ節再発」、前回(118回)は「局所再発(温存乳房内再発及び胸壁再発)を取り上げました。

今回は、これらと「遠隔転移再発」の違いを解説します。

 

 

<再発>

まず、誤解を与えやすいこの表現について…

実際には「手術時にすでに身体の中に潜んでいた癌細胞」が(徐々に大きくなり)画像で可視化したことをいうのです。(決して「新しく(再度)」癌細胞が生まれたわけではないのです。)

 

つまり、

「腋窩リンパ節再発」⇒(手術時に)腋窩リンパ節に潜んでいた癌細胞が(経過中に)増大して可視化した。

「胸壁再発」⇒(手術時に)胸壁側もしくは皮膚側に「取り残されていた」癌細胞が(経過中に)増大して可視化した。

♯「乳房内再発」は「乳腺が残っている以上、乳腺から新規に癌が発生した可能性」も除外できない(勿論、手術時に取り残されていた癌細胞が増大した可能性もあり)

 

「遠隔転移再発」⇒(手術時に)「血管を通って」臓器に潜んでいた癌細胞が(経過中に)増大して可視化

 

☆「胸壁再発」が純粋に「局所」であることはイメージし易いと思いますが、「リンパ節再発(リンパ行性)」を「遠隔転移再発(血行性)」と混同している方が多くいらっしゃいます。

 

例えば「リンパ節転移があるということは、もう全身に廻っているということですね?」みたいな質問をされることが、「その誤解」を物語っていると言えます。

 

★リンパ節転移は「リンパ管を通って、先へ進むだけ」なのです。

‐ リンパ節転移 ‐

第1段階 「リンパ管への侵入」

癌細胞がリンパ管へ侵入します。

 

 

 

 

第2段階 「リンパ節への生着」

癌細胞がリンパ管へ侵入したからといっても生着するとは限りません。

ただ、その中で無事?生着するものが現れるのです。

♯この時期が「微小転移」だとすると、「微小転移では、そのリンパ節に留まっている」ことが視覚的に理解できますね?

 

 

第3段階 「リンパ節内での増殖」

これで「リンパ節転移が成立」します。

この(最初の)リンパ節は「センチネルリンパ節」と呼ばれます。

 

 

 

 

 

第4段階 「次の」リンパ節へ

リンパ節転移は「方向性」をもって進みます。

 

 

 

 

第5段階 「次のリンパ節への転移」の成立

時間経過とともに②⇒③ ③⇒④へと「方向性」を持って拡がっていきます。

 

 

 

‐ リンパ節郭清 -


通常は、転移しているリンパ節だけを郭清(左図)するのではなく、

 

 

 

 

 


このように、転移しているリンパ節(①及び②)の先のリンパ節③まで郭清します。

♯ 腋窩郭清の標準術式が「レベル2(まで)」となるのも、同様です。

センチネルリンパ節(senntinel lymph node:SNと略します)は、(ただ一番腫瘍に近いリンパ節だからSNと名付けられいますが、)実際は「レベル1リンパ節」の一員です。

つまり「SNに転移」がある=「レベル1に転移」がある⇒「レベル2まで郭清」しましょう!

となるのです。

★ と、ここまで(長くなりましたが…)リンパ節転移が、あくまでも「局所転移」だということをイメージできましたね?

大原則として「リンパ節転移から遠隔転移は起こりません」

 

ただ、(これとは、矛盾するようですが)リンパ節転移も「あまりにも長期間」放っておかれると、「リンパ節の殻を破って」周囲へ浸潤し、そこから「血管にのって(つまり血行性転移)遠隔転移の原因となる」ことはあるようですが、これは「かなりの長期間(おそらく数年)」だと想像できます。

 

♯私が、「これは、リンパ節からの遠隔転移かな?」と想像しているケースは…

(過去の)エコー写真をみるかぎり「数年間も放っておかれた」リンパ節(其の当時の担当医は非常勤であり、「先延ばし」にしていたのです。

私が手術した際には、複数のリンパ節に転移を起こし、周囲への浸潤も認めていました。

それまでは(初回手術から、10年経っていて)遠隔転移は無かったのですが、それから1年のうち「遠隔転移が出現」した際には、(初回手術時に、潜んでいたというよりは)「あのリンパ節からの浸潤か?」と、思いをめぐらせました。

○このケースを分析すると…

手術時(10年前)「リンパ節に癌転移が取り残された」

⇒(5年後)「リンパ節内の癌細胞が増大してエコーで認識」された。

♯ この際に、「きちんと診断され、腋窩郭清されていれば、(その後の)遠隔転移は起こらなかった可能性」は十分にあります。

⇒(そこから3年後)腋窩郭清されるまでの期間に、そのリンパ節から周囲へ浸潤した癌細胞が(その後の)遠隔転移の原因となったのでは?

 

○つまり、(エコーで認識されてから、腋窩郭清されるまでの)「3年間が勝負(その後の遠隔転移の出現の有無)を決めた」私は、そう考えるのです。

 

★話が逸れてしまいましたが…

手術時のリンパ節転移が「遠隔転移の原因」となることは決してないのです。

リンパ節転移は、きちんと(初回手術時に)「郭清」してしまえばいいのです。

ただ、初回手術時に「いい加減な手術をされ残されてしまったリンパ節が、その後(増殖しているのに)長期間放っておかれたら、上記の実例のように(もしかして)遠隔転移の原因となるかもしれません」

それだけは注意が必要なのです。(「半年に1回」、腋窩を主治医から超音波してもらえば十分と断言します)