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全摘出手術について

[管理番号:1307]
性別:女性
年齢:51歳
全く面識もないのにかかわらず、このような質問に応じて頂けることに、心より感謝いたします。
2013年5月に都内の病院で乳がんのため右全摘出手術を受けました。
その際の病理結果に不安を抱き、当時の担当医に執拗なまでに質問を繰り返しましたが、もやもやが残ったまま不安が解消せず、こちらで質問させて頂くに至りました。よろしくお願いいたします。
1.私の病巣は病理結果では「大胸筋に接していた」そうで、深部側断端が0.3ミリ(センチではありません)でした。このような場合、アメリカでは大胸筋を一部とるそうですが、日本では大胸筋を切除するのは一般的ではないのでしょうか。また、放射線治療は断端がクローズでも行わないのが通常でしょうか。(腫瘍経は4ミリ×4ミリです)
2.手術医ではなく、お若い担当医からの説明でしたが、「この病院の手術は、病理に出すまでに摘出したものの下の組織が、ポロポロと落ちてしまう状況なので、たとえ0.3ミリであってもおそらく実際にはそうではないと思います」と言われましたが、そのようなことは考えられますか。ど素人で手術を見たことがないので、それが真実なのかわかりません。乳がんの手術症例数は、当時全国2位の病院でした。
3.取り残しがあり、今後再発するとしたら、どのような形で再発することが多いでしょうか。
お忙しいところ大変恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
<以下、参考までに・・・>
術前は、腫瘍が非浸潤部分含めて2.6センチ程度と言われており、温存、部分切除を勧められましたが全摘出術を選択しました。(もとの胸自体が小さいです)
術前はグレード、KI67の値(50%)などから、がんの顔つきが悪く、おそらく抗がん剤は必須、フルコース治療になるかもしれないと言われていました。
海外に住んでいるため、できるだけ東京での治療にかかる時間を短くする目的もあり、全摘を選択しましたが、0.3ミリという断端の狭さが不安になり、放射線治療を私の方からお願いしましたが、「標準治療ではない、この病理結果で放射線治療を行うなら、院内の先生方の多くを集めて会議にかけなければいけない」とのことで、却下されました。
「追加再手術」もすぐにお願いしましたが、「今となってはもうできない」と言われました。
切除断端とは無関係ですが、その後お願いしたオンコタイプDXの値は13。手術の病理結果は「グレード3、コメドタイプ若干あり」でした。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
術後2年ですね。
大病院では「手術の担当医」とその「お若い担当医」と、他にもいろいろ居そうですね。
やはり「術前検査から手術、術後治療」全てを一貫して責任を持つ事。これが大事だと思います。

回答

『「大胸筋に接していた」そうで、深部側断端が0.3ミリ(センチではありません)』
⇒通常は「腫瘍床の大胸筋を盆状切除(くっついている大胸筋を有る厚さで合併切除)」します。
 
「放射線治療は断端がクローズでも行わないのが通常でしょうか。」
⇒乳房切除は「乳腺を完全に切除すること」を前提としています。
 通常の「乳房切除後照射の適応」は「リンパ節転移」です。(4個以上:推奨度A, 1~3個:推奨度B)
 もしくは広範なリンパ管侵襲を認めるような際には「考慮」します。
 ○大胸筋浸潤している場合には(今回は「接しているだけで」胸筋への直接浸潤無しのようですが)大胸筋を「盆状合併切除」するので、「治癒切除となる」ために「術後照射の適応」とはなりません。
 
『「この病院の手術は、病理に出すまでに摘出したものの下の組織が、ポロポロと落ちてしまう状況なので、たとえ0.3ミリであってもおそらく実際にはそうではないと思います」』
⇒「執刀医ではないから」仕方が無いかもしれませんが、「人ごとのような、無責任なコメント」と言えます。
 ○重要なことは「執刀医自身が、腫瘍と大胸筋の位置関係を認識したうえで、それに対処した手術をしているのか」執刀医自身の説明が必要です。
 
「乳がんの手術症例数は、当時全国2位の病院でした」
⇒沢山の医師が居て件数が多いようですが、手術技術の担保とはなりません。
 
「取り残しがあり、今後再発するとしたら、どのような形で再発することが多いでしょうか」
⇒胸壁再発(大胸筋浸潤)の形です。
 
「院内の先生方の多くを集めて会議にかけなければいけない」
⇒大きな病院にありがちな「患者さんに向き合わず」「組織内のメンツを重視する」医療といえます。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

早速のご回答を頂きまして有難うございました。
術中のセンチネルリンパ節生検は、転移なし。病理結果では、リンパ管、脈管侵襲、
ともにスコア0でした。
○大胸筋浸潤している場合には(今回は「接しているだけで」胸筋への直接浸潤無し
のようですが)大胸筋を「盆状合併切除」するので、「治癒切除となる」ために「術
後照射の適応」とはなりません。
術後の病理結果が、術前のものと大きく変わったため、不安を抱き、すぐに某大学の
病理医教授にセカンドオピニオンを求めたところ、「胸筋近くにあったが、取り切れ
たと判断してよい」とのお答えを頂きましたが、それでも不安が止みません。
○重要なことは「執刀医自身が、腫瘍と大胸筋の位置関係を認識したうえで、それに
対処した手術をしているのか」執刀医自身の説明が必要です。
不安を取り除くことができない理由の一つは、手術直後の夫への説明の中で、執刀医
が「ガンが皮膚側にあったため、皮膚側を丁寧に取り除きました」と言われたそう
で、病理結果は逆側(深部、胸筋側)で、執刀医が腫瘍の位置を間違ったまま手術し
たのではないか?と考えてしまうのです。(腫瘍の大きささえも、術前2.6センチ
の予測が0.4センチだったので・・・・)
そのため肉眼では見えない小さながん細胞が、接していた胸筋にこぼれ落ちたので
は・・・と想像してしまうのです。
このことについて、夫も私もかなり心配になり、執刀医や担当医に質問を繰り返しま
したが、前回の質問に書いたような「ど素人相手の責任逃れ」のようなご回答しか頂
けませんでした。
「画像診断の限界」とも言われました。(確かに、手術までに3つの病院へかかりま
したが、どの病院のマンモにも映りませんでした)しかし、術前のMRI結果レポート
には、「ガンは胸筋近くに有る」と記述されていました。
私個人の単体に関していえば、日本にいた3年前まで自治体の検診(市川市)で、マ
ンモでの検診を受けていました。(当時マンモのみでエコーはなしでした)
結局それは無意味どころか、「検診を受けているので大丈夫だ」と思い込んでしまっ
たことにつながり、その結果、発見が遅れて浸潤癌となってしまったと思います。
検診を受けていなければ、もっと感性鋭く気をつけていたと思うので、浸潤しなかっ
たかもしれない・・・と「たら、れば」のどう変えることもできない過去への後悔を
ぬぐえません。
術後の検診で1年ごとにマンモの撮影をしますが、ど素人の考えでは「無駄な被爆」
(自分に関しては)ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
現在3か月ごとに帰国して通院しています(ホルモン治療中です)ので、エコーでの
検診を3ヶ月ごとに行う方が、私に関していえば有効ではないかと素人なので考えて
しまいます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
『某大学の病理医教授にセカンドオピニオンを求めたところ、「胸筋近くにあった
が、取り切れたと判断してよい」とのお答えを頂きました』
⇒病理医が想像することには限界があります。
 ただし、今回は「担当医が方向を勘違い」している(少なくとも大胸筋面への認識
が低い)ようなので、「ぎりぎりとなっていた」と思います。
 そうなると「大胸筋膜への直接浸潤がなければ、通常は(意識していなくても)断
端は陰性となる筈」であることを信じるしかないと思います。
 
「術後の検診で1年ごとにマンモの撮影をしますが、ど素人の考えでは「無駄な被
爆」(自分に関しては)ではないかと思うのですが、いかがでしょうか」
⇒エビデンスで言えば、「術後検査の中でマンモグラフィーのみが有効」となっています。
 その意味では「やっておくべき」だと思います。
 「次に出るかもしれない」癌が「今度もマンモで解り難い」とは限らないのです。
 
「エコーでの検診を3ヶ月ごとに行う方が、私に関していえば有効ではないかと素人
なので考えてしまいます」
⇒これは正しい考え方です。
 小さい病変は「エコーの方が圧倒的に検出率が高い(検査精度の問題もあります
が)」のです。
 ただし、「石灰化」のこともある(石灰化はマンモでしか解らない)ので「マンモ
は(エコーとは別に)1年に1回」した方がいいと思います。