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検査で様子観察といわれましたが

[管理番号:260]
性別:女性
年齢:51歳
こんばんは。
3月に右乳房が痛くなり専門外来を受診いたしました。
触診、エコーは特に何もなかったと言われましたが、マンモグラフィーで、左乳房を一枚追加され、石灰化があるとのことでした。
おそらく乳腺症の跡だろうといわれました。
様子観察で1年後受診するように言われました。
その後、少しだけ田舎の方と石灰化について話す機会あり、田舎だとすぐにマンモトームしてもらった。
都会は受診する人が多いので様子観察になる、などいわれ、マンモトームを早く受けるほうがいいのが、マンモグラフィーでも3Dのほうがくわしくわかるなら、設備のある病院で見てもらったほうがいいのか、など不安がつのってきました。
よろしくおねがいします。
(2015年4月の質問)
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「石灰化」についてですね。
 私は自ら、「石灰化の診断(マンモグラフィ読影)」⇒「ステレオガイド下マンモトーム生検(以下ST-MMT)」⇒「手術」⇒「術後フォロー」まで全てを行っているので任せてください。
 なお、石灰化については「QandAでも目立ってきたので」近々(今週中に)「皆が気になる質問」シリーズに挙げる予定です。
 それでは状況確認の上、回答します。

状況確認

 (最初は1方向のみの)マンモグラフィー撮影(MLOのみ)だったようです。⇒そこで左にのみ「石灰化所見を認めた」ので左のみ頭尾方向(CC)を追加したようです。
 ※(最近では)マンモ撮影の際に、最初から2方向(MLO, CC)撮影する方が一般的ですが、ここでは「MLOで所見が有る時のみ」CCを追加するスタイルのようです。
 
「おそらく乳腺症の跡だろうといわれました。様子観察で1年後受診」
⇒(MLO及びCCの2方向で見ると)石灰化の「位置及び分布」が解ります。
 その上で、「石灰化がまばら」もしくは「び慢性」との判断から⇒「乳腺症に伴う石灰化であり、(それであれば、そもそも経過観察も不要ですが)1年後経過観察」となったようです。
 

回答

「田舎だとすぐにマンモトームしてもらった。都会は受診する人が多いので様子観察になる、などいわれ、マンモトームを早く受けるほうがいいのか」
⇒(マンモトームの適応には田舎も都会もありません)
 マンモトームは不要(適応にはならない)と思います。
 
●(状況確認の際にも指摘しましたが)(乳腺専門外来の医師の)「乳腺症に伴うもので、1年でOKとの判断」からすると、質問者の石灰化所見は「カテゴリー1または2」のようです。
 これは(最初から、乳癌と関係の無い石灰化と判断できる=良性の石灰化所見)であり、それ以上の精査(ST-MMTを含め)の対象にはなりません。
 
「マンモグラフィーでも3Dのほうがくわしくわかるなら、設備のある病院で見てもらったほうがいいのか」
⇒これは不要です。
 これはtomosynthesis(トモシンセシス)の事ですが、(角度を変えた多数の像を再構成して)「1方向だけでは不明瞭な所見を」立体として見ようというものです。
 「微妙な腫瘤?」のような所見では役立つ事はありますが、石灰化の分布については全く無意味です。
 

石灰化(ここでは簡単に記載します。)

 石灰化はカルシウムの沈着による「マンモグラフィー」の所見であり、その殆どが「癌と関係の無い原因=殆どが乳腺症」で起こります。
 それでは「検診で指摘される石灰化」の、どの位が「要精査」となり、結局その内どの位が「癌に伴う石灰化」であったのか?
 2014年1年間の江戸川病院附属の検診センター(MAXLIFE)のデータを紹介します。
 受診者総数(1525名)の実に約半数(47%)である721名に石灰化所見を認めました。
 721名の内648名(約90%)は、「カテゴリー1、2として」要精査対象とはなりませんでした。★質問者の石灰化はここに相当すると思われます。
 残りの73名(石灰化所見のある721名の僅か10%)が「カテゴリー3以上:癌の可能性がある石灰化」としてチェックされた訳です。(その内でST-MMTを受けた方の内3名で癌が見つかってます)
 
 お解りでしょうか? (石灰化のある人が実に多いことに気付きますよね。)
 石灰化所見の数(721名)の内、癌の方の割合は実に0.2%にすぎないのです。(石灰化の99%は良性の石灰化である事が解ります)

まとめ

 質問者は「石灰化のある方」の内の約90%を占める「カテゴリー1,2」の石灰化なのです。「石灰化、要精査」の対象ではないのです。
 乳腺症に伴う石灰化だと思います。安心してください。
 「石灰化があるだけ」では(ST-MMTを含めた)精査の対象にはならない。事を確認してください。
 「カテゴリー3以上:石灰化の性状や分布で癌を否定できない」限り、「精密医療機関を受診」しても(それが、たとえ田舎であっても)「精査の対象外、1年後に経過を見ましょう」となるだけです。
※「石灰化のある方」の内の10%の方のみが「カテゴリー3以上:癌の可能性がある」と判断され「要精査」となります。