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腫瘍マーカーと、ホルモン量について

[管理番号:1654]
性別:女性
年齢:48歳
2014年9月47歳3カ月のときに右乳房温存手術をしました。1.2x1.0、ホルモン2種類陽性、Ki67 40%,リンパ節転移なしでしたので、ルミナールBタイプとして、抗がん剤EC4クール、放射線50Gray、現在アリミデックス服用中です。
(生理は抗がん剤2回終了後の11月が最後だったため、血液検査により閉経とみなすということになっています。)お聞きしたいのは、腫瘍マーカーの値と、ホルモン量についてです。
他の方の質問の回答なども拝見させていただきましたが、やはり自分にあてはめると不安で仕方がないので、よろしくお願いします。
マーカーは

  2014/8/9(手術前) 2015/3/30 6/15 8/3 10/19
CEA 2.1 2.9 3.6 4.0 3.6
CA15-3 13 15 17 18 20

となっており、正常範囲内ではあるものの、CEAは前回下がったので少しほっとしましたが、CA15-3については上がり続けていて、あと半年もすれば基準値を超えてしまうのではないかと、とても不安です。
主治医に聞いても大丈夫と言われますが、本当のところどうなんでしょうか?こういうタイプの場合まだ10月のCTの画像では異常なしでしたが、やはり少しずつがん細胞が増殖していてあと数年したら画像に映るくらいの腫瘍になると考えるべきなのでしょうか?
ホルモンの量についてです。

  2015/1/19 9/14
黄体形成ホルモンLH 33.9 42.9
卵胞刺激ホルモンRIA(FSH) 88.2 108.4
エストラジオール(卵胞ホルモン) 25 25

という結果から閉経とみなしてアリミデックスを飲んでいますが、LH,FSHの値は間違いないとは思うのですが、エストラジオールについては22以下で閉経とみなすという記事をみかけました。
実際生理が来ていないのでいいとは思うのですが、このままアリミデックスで大丈夫なのでしょうか?私の理解が間違っているのかもしれませんが、アリミデックスを服用するとエストラジオールを出すのを抑えるから、数値がもっと下がってくるのではないかと思うのですが、そういうものではないのでしょうか?
あと8月に3日ほど10月に2日ほどほんのわずかですが、不正出血がありました。
これは念のため8月に子宮体がんの検査はして、陰性だったのですが、この出血について先生だったら理由をどう考えられますか?
乳がんでかかっている病院では、アリミデックスの副作用、子宮がん検診をした病院ではホルモン状態が不安定だから起きているのではないかといわれ、どちらもはっきりしたものがなくなんとなく不安です。
またアリミデックスの副作用の性器出血というのは頻度や量などどの程度なのでしょうか?
いろいろ質問してしまい、お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
○腫瘍マーカー
まずは「腫瘍マーカー」ですが、「全く問題無し」です。
私は自分で診ている患者さんからも「同様なこと」を良く聞かれますが、全く問題ありません。
「腫瘍マーカー」は「再発の監視」のために行っていますが、「このような微増」ではなく、「突然上昇して、天井知らず」となります。
質問者の心配する気持ちは解りますが、これは「沢山の患者さんの腫瘍マーカーの動きを見てきた経験」から太鼓判を押します。
○ホルモン療法の選択
アロマターゼインヒビター(アリミデックス, アロマシン, フェマーラ)の投与には問題があります。
化学療法閉経(chemotherapy-induced amenorrhea:CIA)に対して、「アロマターゼインヒビター」を投与することにより「卵巣機能の回復」が認められ、
しかも「卵巣機能回復がえられた患者群」は「閉経状態であった患者群」と比較して予後不良というデータがあります。
それで「閉経期(最終月経から1年間)」や「化学療法閉経」ではアロマターゼイン
ヒビターは勧められない 乳癌ガイドラインC2  なのです。
♯米国臨床腫瘍学会からも「注意喚起」がでています。

回答

「不正出血がありました。これは念のため8月に子宮体がんの検査はして、陰性だったのですが、この出血について先生だったら理由をどう考えられますか?」
⇒(上記の通り)「卵巣機能が回復してきている」と思います。
 アロマシンは中止し、「タモキシフェンに変更すべき」と思います。
 
「実際生理が来ていないのでいいとは思うのですが、このままアリミデックスで大丈夫なのでしょうか?」
⇒良くありません。
 タモキシフェンとすべきなのです。
 
「子宮がん検診をした病院ではホルモン状態が不安定だから起きているのではないか」
⇒その通りです。
 「化学療法閉経」は「閉経期と同等」と思われ、「ホルモン状態が不安定」なのです。
 その時期に「アロマターゼインヒビター使用」により「卵巣機能の回復」が来ていると思います。
 
「またアリミデックスの副作用の性器出血というのは頻度や量などどの程度なのでしょうか?」
⇒これは状況により異なります。
 「閉経」と判断してアリミデックスを使用した場合には「副作用」というよりも
「卵巣機能の回復」と考えるべきでしょう(それも副作用と言えるかもしれませんが…)
 
◎担当医は「タモキシフェンよりもアロマターゼインヒビターの方が有効」という意識から安易に「アロマターゼインヒビターを使用」したと思いますが誤りです。
 本来ならば、「タモキシフェンが適応」です。
 そして、SOFT試験より「化学療法後に、月経再開した患者群にはタモキシフェンにLH-RHagonistを上乗せすることが有効」というデータからも、
 ★経過を見ていく中で(化学療法閉経から、卵巣機能回復の兆しがみられる場合には)LH-RHagonistの追加をするべきなのです。
 (最初からLH-RHagonistを併用してスタートするか迷うところですが…)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

昨年の11月に不正出血のこと、腫瘍マーカーのことで質問させていただいたものです。
とても参考になりありがとうございました。
先回の先生のお返事を参考にさせていただきアリミデックスをノルバデックスに変え
て服用中です。
幸い生理は今も来ていません。
E2の数値も低いままです。
今回はこのタモキシフェンについて質問させていただきます。
3/1程度の人にタモキシ
フェンの効きが悪く遺伝子のCYP2D6 が関係しているようだというのを見かけました。
乳がん診療ガイドラインでは、この遺伝子検査をすることはC2ということであまり
勧めてはいないようなのですが、長期間服用する薬で、不安なのでできれば効果を確かめたいと思います。
もしこの結果タモキシフェンの効きの悪いほうだったら、生理がきていないことから、トレミフェンにしてもらえばいいのかなと素人考えですが、思ってい
ます。
またつい先日の記事ではTGFBR2というたんぱく質が影響しているのではないかという
のをみかけました。
結局CYP2D6だけではまだまだ検証することはできないから、検査すること自体が無意
味なのか、最終的には主治医にも相談するつもりですが、この検査の有効性と、もし検査をする場合に、効きの悪いという結果が出た場合の対処について先生のお考えを是非お聞かせください。
お忙しいのに申し訳ありません。
宜しくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
CYP2D6ですね。
これについては、過去のQandAでも何度か回答する機会があったので、それらも
覗いてみてください。
 
管理番号1087「CYP2D6で低代謝の場合
管理番号951「CYP2D6テスト結果について
*検索ボックスに「CYP2D6」と入力して検索してください。 ホームページ管理者
「3/1程度の人にタモキシフェンの効きが悪く遺伝子のCYP2D6 が関係している」
⇒正確にいうと…
 タモキシフェンの代謝にかかわる酵素の遺伝子である「CYP2D6には変異がみつか
る」ということです。
 このような「遺伝子変異の率」などは「人種間でかなり異なる」ことが知られてい
ますので(遺伝子変異と交配を考えれば当然ですが)注意が必要です。
 つまり「欧米のデータをそのまま日本人に適応させることは危険」だということで
す。
 それで「乳癌ガイドラインでは(現段階では)推奨しない」のです。
 ただ、この検査はあっという間に拡がり「商業ベース」となっています。
 そのパンフレットというか、「患者さん側に郵送される、結果の用紙」には、(乳
癌ガイドラインで認めていないと言うのに)「さも、当然のように治療変更を勧め
る」ような記載を見かけます。
 これは如何なものでしょうか?
 業者としては「商売」だから、その「必要性を強調したい」のは理解できますが、
その「学問的意義が、学会で確定していない」ことを「声高に主張」するのは如何な
ものでしょうか。
 
「もしこの結果タモキシフェンの効きの悪いほうだったら、生理がきていないことから、トレミフェンにしてもらえばいいのかなと素人考えですが、思っています。」
⇒本来は「トレミフェンは適応外」です。あくまでも「閉経後に適応が通った薬剤」
なのです。
 あくまでも「公知申請されて、適応外だけど使用できる」という状況です。
 
「この検査の有効性と、もし検査をする場合に、効きの悪いという結果が出た場合の
対処について先生のお考えを是非お聞かせください。」

⇒私は基本的に「乳癌学会のガイドラインを重視」しています。
 患者さんに「CYP2D6を勧めることはありません。
 ただ、患者さんが自己判断で「CYP2D6を用いてホモの変異だった場合」には 、原
則として「タモキシフェンの増量」を勧めています。(私は適応外診療を行う事はな
いのです)