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腫瘍マーカーの上昇

[管理番号:547]
性別:女性
年齢:67歳

はじめまして。

とても不安な気持ちで、こちらのこちらのQ&Aコーナーに辿り着きました。腫瘍マーカー上昇について田澤先生のご意見をお聞かせいただきたく、質問させていただきます。
母が2013年8月、左乳腺全摘術+腋窩リンパ節郭清を受けました。

病理結果は、導管内進展成分を含めた腫瘍径10cm、浸潤径0.9cm 広範な乳管内進展成分を有する浸潤癌 乳管癌 硬癌  乳管内進展(+)  波及度 f  脈管侵襲 ly0 v0  断端 側方(-)5mm確保 深部(-) 皮膚側(-)
pT1b,pNO
核グレード Grade 2
核異型 3
核分裂像 5/10
Tub&gland from. 3:<10% 組織学的グレード Grade 2 術前バコラ生検時は非浸潤癌でHER2陽性でしたが、術後病理では浸潤部分ER・PgR・HER2いずれも-でki-67は7.5%、トリプルネガティブでした。 化学療法TC4クール受け、現在は無治療です。 TC終了後、2014年2月から3ヶ月ごとのマーカー推移です。 CA15-3・10.4→7.4→7.4→7.4→8.1→13.2 CEA・2.2→2.0→2.2→1.7→2.4→2.9 先月は今までになく上昇し、トリプルネガティブは早い時期の再発転移が多いと聞くので、心落ち着かぬ日々を過ごしております。 (次回検査は8月で、術後2年になります。) 骨粗鬆症のエディロール、4月には胃炎になりタケキャプ等を服用しております。お薬などで上昇する事はありますか?基準値よりはまだ下ですが、上昇傾向という事は転移の可能性があるのでしょうか? (2015年6月の質問)  

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。

 pT1b(9mm), pN0, NG2, ly0, v0, TN, (Ki67=7.5%)
トリプルネガティブではありますが、十分すぎる位早期であり、ki67も低値なので「一般的なTNよりは大人しいタイプ」と思われます。

 術後療法としてTCx4は妥当だと思います(一般的にTNはアンスラ⇒タキサンですが、質問者の場合は一般的なTNに比べて十分ローリスクと言えます)

回答

「CA15-3・10.4→7.4→7.4→7.4→8.1→13.2
CEA・2.2→2.0→2.2→1.7→2.4→2.9」

⇒これは全く心配ありません。
 この程度のマーカーは「私なら」今回も正常ですね。で終わりです。
 気にするような値ではありません。

◎CA15-3は実際のところ、22, 23位までは「気にする必要はありません」
 24以上の際には、念の為「翌月に再検」として「上昇しないか」を見極めます。
 CEAは4.1, 4.2位までは全く問題ありません。
 4.5以上の場合には、やはり念の為「翌月に再検」して「上昇しないか」を見極めます。
 
★腫瘍マーカーの値の読み方は「私の膨大な経験」が役立ちます。
 沢山の患者さんでの経験からすると「正常範囲内での変動」は全く無意味なのです。
 正常範囲上限近くの場合には、「翌月に再検」すれば安心です。
 
 もし「正常範囲を超えて、翌月も上昇」するのであれば、CT、骨シンチなど全身チェックへと進みます。(ここでも異常がでるとは限りません)
 
 

 

質問者様から 【質問2 病理診断】

先日は丁寧なご回答、ありがとうございました。

腫瘍マーカーは重要だと思っているのですが、上昇に必要以上に神経質になってしまうのが現状です。
でも先生のご回答で少し気持ちが落ち着きました。

もう一点、教えていただけませんか?
前回も書いたのですが、手術前にバコラ生検を受けた時、非浸潤がんでHER2陽性と言われました。
(リンパ節肥大で受けた腋下穿刺吸引細胞診は検体不適正)
CTではハイグレードの非浸潤がんなので、浸潤部分があるかもと言われ、その後全摘・リンパ節郭清を受けました。

そして病理結果でトリプルネガティブと言われたのですが、HER2陽性が陰性に変化する事があるのですか?
それとも非浸潤がん部分はHER2陽性で、中心にあった浸潤部分がトリプルネガティブという事なのでしょうか?
術後TC4クール終了しておりますが、HER2に対しての治療が不要だったのか気になっています。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。

 「全摘・リンパ節郭清を受けました」という記述が気になるのですが「当然、センチネルリンパ節生検のみ」ですよね。
 術前腋窩リンパ節細胞診で「検体不良」のようですが、(細胞診で検体不良となる医師が最近は本当に多いのには辟易します)まさか「腋窩郭清はしていない」筈です(確認でした)
 病理レポートを確認すると一つ誤記載があるようです。

核グレード Grade 2
核異型 3
核分裂像 5/10
「核グレード」は「核異型の点数」+「核分裂の点数」です。

○質問者の場合は★に当てはまります。
・核異型 
弱い:1点
中間:2点
強い:3点★

・核分裂 
5個未満(10視野で):1点
5~10個(10視野で):2点★
11個以上(10視野で):3点

・核グレード(NG) 核異型の点数+核分裂の点数
2点、3点 :核グレード1 
4点    ;核グレード2
5点、6点 :核グレード3★
 

回答

「HER2陽性が陰性に変化する事があるのですか?それとも非浸潤がん部分はHER2陽性で、中心にあった浸潤部分がトリプルネガティブという事なのでしょうか?」
⇒これは、「中心にある浸潤癌部分がトリプルネガティブ」と解釈します。
 そもそも非浸潤癌で「HER2の測定」は保険診療外(参考値)となってます。
 あくまでもHER2は浸潤癌における「予後因子、治療関連因子」なのです。
 「非浸潤癌が浸潤癌となる過程」にはいろいろな遺伝子変異が起こります。

 ♯時々、「非浸潤癌を針生検して乳癌が破綻すると浸潤癌になるのでは?」と心配する患者さんがいらっしゃいますが、事実は異なります。
 浸潤癌になるためには「いくつもの遺伝子変異が必要」なのです。その過程で「HER2遺伝子増幅を失う」こともあるのです。

○実際に、非浸潤癌としてHER2陽性だったが(本来非浸潤癌では測定してはいけないのですが…)浸潤癌ではHER2陰性ということは決して珍しくはありません。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生、ご回答ありがとうございました。

先生の回答を拝見し、もっと早くに先生を知り、母をお願いしたかったと思っております。
まさか腋窩郭清はしていない筈です…とおっしゃいましたが、残念ながらしました。
センチネルリンパ節生検をしないのか主治医に尋ねましたが、
非浸潤癌の腫瘤が3.8㎝あった事、エコーとCTでリンパに腫れがある為、郭清すると説明されました。
結果0/18でした。
病理の誤記載のご指摘、ありがとうございます。
私が病理結果を信用しきれず、必要以上にマーカーに敏感になっているのはまさにその点でした。
術後の病理結果を受け取り、私なりに勉強したつもりです。

核分裂像 5/10 Score 1
何を見ても5未満 Score1・5以上 Score2と出ているので、母の場合はScore2のはずが、はっきりと Score 1と記載があるのです。
病理担当者や施設によって基準が違うのかと思い、病理施設へ問い合わせました。

診断内容に関する問い合わせは、個人情報保護の関係上、契約している医療機関からの問い合わせ以外は、対応できない決まりとなっていると言われ、主治医に確認しました。
主治医は間違えだとは言わなかったものの、まったく…と言っていました。
そんなことはあってはならないし、あるはずないと思っていました。
グレード2でもグレード3でも、術後の抗がん剤治療は変わりないとはいえ、不信感がわきました。
核グレードだけでなく、組織学的グレード2との記載ですが、グレード3になりますよね?
病理担当者にしたら、大した事でないかもしれませんが、患者やその家族にとっては重要です。
簡単にミスするようでは、私たちは何を信用していいのか…

ずっと腑に落ちなかった点を田澤先生が指摘して下さった事、とてもうれしく思います。
そして私は、このような病理結果を出す施設を今も信用できずにいます。

長くなってしまいましたが、腋窩リンパ節転移陰性・グレード3の乳癌は術後5年以内の再発率が高くなっているそうですが、先生の経験上、母の再発率はやはり高いとお考えになりますか?
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。

 「術前針生検で非浸潤癌」なのに、「センチネルリンパ節生検をせずに腋窩郭清(0/18 !)」というのには正直驚きました。
 (センチネルリンパ節生検が一般化されていなかった)7~8年前のカルテを見て「リンパ節0/10」とか記載があると、「可哀想だなぁ、今の時代ならセンチネルだけで終わりなのに」と常々思っていたのですが…

回答

「腋窩リンパ節転移陰性・グレード3の乳癌は術後5年以内の再発率が高くなっているそうですが、先生の経験上、母の再発率はやはり高いとお考えになりますか?」
⇒高く無いと思います。
 
 最大浸潤径9mmと言うのがポイントだと思います。
 私の経験上、「再発高リスク」は「最大浸潤径」が大きいものです。
 「リンパ節転移」も、あまり関係無いと思っています。(リンパ節はあくまでも局所因子なのです)
○以上、あくまでも私の「印象」ですが、参考にしてください。

 
 

 

質問者様から 【質問4 】

異時性両側乳がんについて
性別:女性
年齢:72才
病名:
症状:
投稿日:2020年4月21日

以前、田澤先生から丁寧な回答をいただき、もう少しで5年です。

前回同様、母の件で質問させてください。

先週定期検診(血液・エコー)に行き、全摘・リンパ郭清した反対の胸を主治医が触診し、
何もないねと言われた後、違う先生がエコーをしました。
その後に主治医から、エコーで少し硬い部分があるから念の為、細胞診をしましょうと言われ翌日受けました。
(細胞を取ったのは主治医でもなくエコーの先生でもない違う先生でした)その時にマンモもすると言われておりましたが、先に細胞診をして出血がひどかったので(タケルダを服用しています)
細胞診だけでした。

本日結果を聞きに行きましたが、グレーゾーンだと言われ生検の予約をしました。
5日間はタケルダの服用を止め、生検後はさらしを巻くそうです。
今回母に付き添うことができず、
母が主治医に先生から見るとどうでしょうかと聞くと、生検しないとわからないとの回答だったそうです。
グレーゾーンと言うのが、鑑別が難しいという結果なのか、検体不適正なのかも聞けませんでした。
(前回の乳がんの時、わきのリンパ節肥大で細胞診をした時も検体不適正だったので、痛い思いをしてがっかりしたのです)

母は生検の恐怖(前回麻酔を追加しても痛みがひどかった為と、出血が止まらなかったらどうなるのか)、異時性両側乳がんかという不安で、何も考えられなくなっています。

①触診で分からず、エコーで硬い部分があるというのはどういうことが考えられますか?
細胞診のグレーゾーンという結果は鑑別が難しかったととらえるべきですか?
やはり異時性両側乳がんの可能性が高いでしょうか?
②タケルダを中止するのも不安があるようですが、生検で出血が止まらなくなったりしないでしょうか?先週の細胞診後、今も真っ青です。

③ある乳腺外科クリニックのホームページで、両側乳がんは質が悪いと書いている先生がいたのですが、田澤先生はどうお考えでしょうか?
④異時性両側乳がんだった場合、今の病院はセンチネルリンパ節生検できない病院ですし、
また腋窩リンパ節郭清して転移なしでは母の体力的負担も気になります。
入院期間も長いので、転院し手術を田澤先生にお願いすることは可能ですか?

どうか田澤先生のご意見をお聞かせください。

 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。

私は「生検や手術」で抗凝固薬を休薬することはありません。
〇組織診後は適切な圧迫(症例の数だけ「ノウハウ」があります)をすればいいし、
手術は(直視下なので)出血させなければいいからです。
 針を用いる「組織診」は(直視下でないので)多少の出血は避けられず、そのため圧迫が必要なのです。

「①触診で分からず、エコーで硬い部分があるというのはどういうことが考えられますか?」
⇒病変が(触診で解らない程度に)小さいということです。

 「どれだけ怪しいのか?」まではメールから読み解くことは不可能ですが、(担当医の対応から推測すると、「悪性を疑っている」ようにも見えます)

「細胞診のグレーゾーンという結果は鑑別が難しかったととらえるべきですか?」
⇒これは、どちらともとれます。

 質問者のおっしゃるように…
  1.検体不適正だった(細胞診は組織診以上に「技術」が要ります)
  2.鑑別困難(細胞診できちんと採れていたが、細胞異型が弱いなどで確定に至らない)
 上記どちらなのかは(メールからは)読み取れません。

「やはり異時性両側乳がんの可能性が高いでしょうか?」
⇒どの程度「悪性が疑われるのか?」までは読み解けません。
 ただし、(担当医の態度からして)決着つけるべき病変(決して、様子を見ることのないように)

「②タケルダを中止するのも不安があるようですが、生検で出血が止まらなくなったりしないでしょうか?先週の細胞診後、今も真っ青です。」
⇒冒頭で記述したように…

 私は組織診で休薬したりは一切しません。
 組織診は(直視下でなく)「針をずぼずぼ(エコーガイドとはいえ)ブラインドで刺す」ので、検査後の「適切な圧迫」は必須となります。
 
 〇組織診そのもの手技の熟練度(経験値)及び(検査後の)圧迫のノウハウの問題です。

「③ある乳腺外科クリニックのホームページで、両側乳がんは質が悪いと書いている先生がいた」
⇒無責任!

「田澤先生はどうお考えでしょうか?」
⇒全く無関係
 ご安心を。

「④異時性両側乳がんだった場合、今の病院はセンチネルリンパ節生検できない病院ですし、
また腋窩リンパ節郭清して転移なしでは母の体力的負担も気になります。
入院期間も長いので、転院し手術を田澤先生にお願いすることは可能ですか?」

⇒「診断ごと」当院で行うことをお勧めします。(私の家族なら一秒も迷いません)

 ご検討を。