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トリプルネガティブでの術後抗がん剤治療について

[管理番号:2419]
性別:女性
年齢:36歳
田澤先生、こんにちは。
先日、乳ガンの手術をして病理結果がでたのですが、抗がん剤をやるかどうかをとても迷っています。
ぜひとも先生のご意見を伺いたく質問させていただきます。
長くなってしまい大変申し訳ないですが、何卒よろしくお願い致します。
●2015/12
針生検およびMRIの結果
・24×20×23mm
・非浸潤がん、ステージ0
・リンパ転移無し
・mitotic score1;Nuclear grade2
・ER(-),PR(-),HER2(-)
広がりが大きかったため、全摘出。
恐らくその後は無治療との診断
●2016/1
左乳房全摘出手術+センチネルリンパ節生検
・リンパ節には転移無し
●2016/2 ガン細胞最終病理結果
・1×1cm(娘結節)、主結節の割面なし
・非浸潤 → 浸潤ガン、ステージⅠ
・rtAC1×1cm, pT1,f, ly0,v0
・atypia3;mitotic score3;
 Nuclear grade3
・SLN(0/2) リンパ節転移無し
・ER(-),PR(-),HER2(-) トリネガ
左乳房上内側部病変に対し、乳房切除術が施行されています。
32切片を作成し検索しました。
既割が水平に入った部分で、#5.8のみに腫瘍が観察された。
直径1cmで中心が壊死に陥った腫瘍です。
辺縁に異型細胞増殖巣が散見されます。
管腔を伴う小索状胞巣が分葉状に増殖し周囲にmyxoid changeを伴っています。
核異型が目立つ腫瘍細胞です。
孤在性の浸潤が胞巣周辺にあり、大型異形核が見られます。
脂肪織内浸潤が見られます。
脈管侵襲は認めません。
断端陰性。
リンパ節転移は認めません。
以上。
この病理結果から主治医からは抗がん剤は「絶対」ではないが、私自身で決めるように言われました。
もし抗がん剤をするのであれば、EC・CEF療法4クール+ドセタキセル4クール 計8クール(半年)だそうです。
抗がん剤を進めた理由は、年が若いこと
(36歳)・トリネガ・顔つきがグレート3であるためだそうです。
私自身、針生検の結果から「非浸潤だから全摘すれば治る」と思って全摘を決心したのにフタをあけてみると浸潤ガン、さらに抗がん剤までしなくてはならない結果に頭が混乱して考えられません。
主治医からは1週間治療方針について考える猶予をもらいましたが、どちらにもふんぎりがつかない状況です。
そこで、田澤先生のお力をお貸しいただけないでしょうか。
何点か質問があります。
① 非浸潤だったものが浸潤になるのはよくあることなのでしょうか。
また、ガンの大きさも針生検の時よりだいぶ小さくなっていますがなぜでしょうか。
針生検後からきのこやにんにくの摂取・ビタミンCの摂取など少しでも食事から免疫力を高めるよう努めていましたが、こちらは小さくなったことに少しは影響があるのでしょうか。
② 進められた化学療法は合っていますでしょうか。
主治医から冊子を2冊渡され「よく読んでから考えて」とだけ言われ、簡単な説明も費用についても聞いておりません。
また、このタイプは一般的な副作用の程度でいうと低・中・高のどれにあてはまりますでしょうか。
治療が終わってもこの薬が効いたかどうかは調べられないのですよね?
③ 田澤先生の御意見としては、私は抗がん剤療法をやるべきでしょうか。
子供がまだ小さいため、やれる治療はしないといけないとは思うのですが、再発率や運よく薬が効いての根治率などを考えてもあと一歩踏み出せないでいます。
④ 無治療で過ごしてもし数年後に再発した場合、その時の治療は抗がん剤になりますか?
やはり術後から時間が経過してるため、効きにくい状態なんですよね?
以上になります。
長々と本当に申し訳ありません。
お忙しくお疲れのところ、大変恐縮ですが御回答お待ち申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(10mm), pN0, pStageⅠ, triple negative
「主治医からは抗がん剤は「絶対」ではないが、私自身で決めるように言われました。」
⇒浸潤径が10mmだとNCCNのガイドラインでは「化学療法を考慮する」となります。
 
「もし抗がん剤をするのであれば、EC・CEF療法4クール+ドセタキセル4クール 計8クール(半年)だそうです。」
⇒ただ、トリプルネガティブに抗がん剤をする場合の「golden standard」は「アンスラサイクリン+タキサン」ですが、「タキサン」としては「weekly PTX」の方が優れていると思います。
「① 非浸潤だったものが浸潤になるのはよくあることなのでしょうか。」
⇒「良くある」とはいいませんが、時々あります。
 「針生検がサンプリング検査」である以上、不可避なことです。
 
「また、ガンの大きさも針生検の時よりだいぶ小さくなっていますがなぜでしょうか。」
⇒針生検の際には「非浸潤癌を含めた(MRIでの)拡がり」だからでしょう。
 
「針生検後からきのこやにんにくの摂取・ビタミンCの摂取など少しでも食事から免疫力を高めるよう努めていましたが、こちらは小さくなったことに少しは影響があるのでしょうか。」
⇒そうではありません。
 
「 ② 進められた化学療法は合っていますでしょうか。」
⇒私であれば「TC」もしくは「EC⇒wPTX」とします。
 
「このタイプは一般的な副作用の程度でいうと低・中・高のどれにあてはまりますでしょうか。」
⇒乳癌で使用するものとしては「強め」となります。
 
「治療が終わってもこの薬が効いたかどうかは調べられないのですよね?」
⇒その通りです。
 
「③ 田澤先生の御意見としては、私は抗がん剤療法をやるべきでしょうか。」
⇒10mmは微妙なラインです。
 ただ「子供がまだ小さいため、やれる治療はしないといけないとは思う」のであれば、やるべきでしょう。
 
「④ 無治療で過ごしてもし数年後に再発した場合、その時の治療は抗がん剤になりますか?」
⇒その通りです。
 トリプルネガティブでは「他の治療法は無い」のです。
 
「やはり術後から時間が経過してるため、効きにくい状態なんですよね?」
⇒「時間の経過」ではありません。
 「術後補助療法」と「再発治療」の違いは、その『腫瘍量の違い』なのです。