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リンパ転移トリプルネガティブ乳がん

[管理番号:1043]
性別:女性
年齢:42歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
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管理番号:1166「EC後のTC?

 
 
はじめまして。
42歳妻が現在術前化学療法中です。田澤先生のQ&Aコーナーで勉強をさせてもらっています。ご多忙極めてらっしゃる中、大変恐れ入りますが、ご回答を頂けるとありがたいです。
・病気の内容
右乳癌、最大約2cm+小さいものが点々と。腋窩リンパ転移あり(他転移は肉眼上なし)。HER2陰性。女性ホルモン感受性低くほぼトリプルネガティブで非常にたちの悪いがんとのこと。ステージや各数値(グレード、ホルモン感受性、Ki、がん個数や転移個数)の説明と記載はありませんでした。
・治療方法
化学療法必須で、術前をすすめられました。治療成績は変わりないが、おくすり効果の推測ができること、完全消失時に予後がよいとのことがメリットで、小さくして温存可能にする理由は今回のケースは100%当てはまらないとも言われました。
・現在状況
現在は、3週間毎の前半EC+後半ドセタキセルで、EC3回終わったところです。初回化学療法から来週で2ヶ月、EC4回目を控えています。
・不安・疑問点
1 術前療法は癌が大きくなってしまうケースがあるようですが、現在主治医からの評価チェックやいつどう行うという説明も含め一切ありませんので大変不安に感じております。
2 主治医からの病状説明の話と書面共に、「非常にたちの悪いタイプの乳がん」という言葉が耳と目から離れません。その時は何を聞いていいかもわからない状況でしたが、「たちが悪い」というのは、がんがすでに散っていて、リンパ転移もしていて、(ほぼ)トリプルネガティブなので再発可能性が高く予後不良ということを意味しているのでしょうか?
3 「ガイドライン」という言葉を主治医は連発します。乳がんの治療法はガイドラインに沿っているので治療方針にはどこの病院も大差は出ないとの説明ですが、このような『たちの悪いがん』に立ち向かうにあたり、少しでも最善の(再発リスク低いと考えられる)治療法を望むのですが、現在の治療法については田澤先生はいかがお考えでしょうか。
主治医の説明時には夫婦とも何を質問しようにもそれすら分からなく、恐怖と不安を感じる言葉を聞きながら、何も言葉が出ない状況(半年前マンモで異常なしから一転の動揺もあり)でしたので、聞くべきことを聞けなかったこともあり、今回田澤先生にこのような質問をさせていただくにあたっても、病状内容の把握や知識も不足した状態であるご無礼、また漠然としてとりとめもない内容であることをお許しください。田澤先生のご意見を教えてください。何卒よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
「ほぼトリプルネガティブで非常にたちの悪いがん」
⇒患者さんにむかって「このようにコメントする医師」の気がしれません。
 患者さんを「脅かしたり、絶望させたり」する事に何のメリットがあるのでしょうか?
○そんな「くらだらない」コメントを気にする必要は全くありません。
 サブタイプなど、「同じステージで比べれば、差がある」かもしれませんが、「たちが悪いだの、予後が悪いだの」そんな意味ではありません。
 あくまでも「治療法と関連づける」ことが大事です。

回答

「治療成績は変わりないが、おくすり効果の推測ができること」
⇒「効果を推測」して、どうするつもりでしょうか?何か意味があるのでしょうか?
 「良く効いている」と解ったからと言っても、やる治療は「アンスラタキサン」に決まっているのです。
 「あまり効かない」と解っても、「他の薬剤は(術前術後の)適応は無い」のです。
 
「完全消失時に予後がよいとのことがメリット」
⇒これが本当にメリットですか?
 良く考えてみてください。
 「術前に抗がん剤が良く効いて、完全寛解となった人」がいるとして、その人が「もしも術後に使えば」やはり良く効いて『やはり、予後がいい』にすぎません。
 「やっている治療は同じ」で「術前に行っても術後に行っても効果は同じ」なのです。
 ★「術前に行ったから」予後が良くなった訳では無くて、(その人にとっては)「術後に行っても」同様に予後がいいのです。
 
「小さくして温存可能にする理由は今回のケースは100%当てはまらないとも言われました。」
⇒それであれば、『本来、術前抗がん剤の適応ではありません』
 上記に挙げた様な「無意味な理由」で行ったばかりに、「抗がん剤が効かなくて、進行してしまった=手術不能となり緩和医療となってしまった」としたら、どうするつもりでしょうか?
 そうならないためには、「抗がん剤が効かずに増大してリスキーな状態となる可能性」について、『きめ細かい配慮(具体的には、超音波での評価)が必要な筈』です。
 その労力を惜しんで『術前抗がん剤をして放ったらかしにする』ことは厳に慎まなくてはなりません。
 
「来週で2ヶ月、EC4回目を控えています」「現在主治医からの評価チェックやいつどう行うという説明も含め一切ありませんので大変不安に感じております」
⇒その間、全く「評価していない」のですか?
 とんでもない話です。
 もしも、「抗がん剤が効果が無くて増大していた」らどうするつもりなのでしょうか?
 「大変危険」です。
 ○私は「術前抗がん剤」をする際には『必ず3週間に1度は超音波で自ら評価』していました。
 それでなければ、「安心して抗がん剤を継続する」などできません。
 私のように「3週間毎に評価」していても、「増大して、準緊急手術となる」ケースが何度もありました。
 ましてや「数か月も放ったらかし」では「増大していても気づかない」場合がある筈です。
 
『「たちが悪い」というのは、がんがすでに散っていて』
⇒そう言う意味ではありません。
 ただ単に「トリプルネガティブ」だとか「核グレードが高い(説明がなされていない様ですが、推測です)」とかで、「そのような無意味なコメント」となっていると思います。
 全く気にする必要はありません。
 「拡がっている」訳でも「予後不良」という訳でもありません。
 ○「トリプルネガティブ」などというサブタイプを「予後と関連付ける」必要はありません。
 治療法(抗がん剤の選択)とのみ関連付けてください。
 
「現在の治療法については田澤先生はいかがお考えでしょうか」
⇒私は全く「たちが悪い」などとは思いません。
 
 乳癌は「他の癌腫に比べて」基本的に予後は良いのです。
 あくまでも「治療法の選択」で考えるべきです。
 私であれば、(抗がん剤が効かなくて、増大するリスクのある)術前化学療法など選択しません。(小さくして温存のみが術前化学療法の適応です)
 手術(先行)⇒術後「アンスラタキサン」⇒放射線(リンパ節転移の個数によります 2個以上で照射するか?3個以上で照射するか? 4個以上なら必ず行います)
 ○アンスラタキサンの中身ですが、
 これは現在の担当医と一緒で、ECx4⇒DTXx4とします。
 ただし、トリプルネガティブではweekly PTX > triweekly DTX > triweekly PTX とのデータがありますので
 ご本人が毎週通院OKならば「DTXx4」の替りに「weekly PTXx12」を選択します。
♯weekly PTX パクリタキセルを毎週投与で12回
 Triweekly DTX ドセタキセルを3週に1回投与で4回
 
★もしも、術前化学療法を勧めるならば、「3週間に1回の評価」が医師としての責任だと強く思います。