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トリプルネガティブの乳がんについて

[管理番号:2939]
性別:女性
年齢:50歳
こんばんは。
先日、左胸乳頭した辺りにしこりを確認して
総合病院で受診したところ、乳がんと判明しました。
しこりの大きさは1センチ~1,7センチくらいのものが
4個くらい多発しています。
超音波(エコー)では今のところリンパ節転移はなさそうとのこと。
ステージ1か2の早期がんですと言われました。
来週からCT。
MRI等全身の検査(遠隔転移していないか)をして来月から術前化学療法だそうです。
理由は、私のがんのタイプがホルモンに受容がないタイプの
トリプルネガティブで化学療法が有効であること。
それと、今なら全摘出術だが、術前化学療法でしこりが小さくなれば
温存も可能だし、なにより抗がん剤の効果もわかるからだそうです。
私としてはトリプルネガティブのタイプのがんをそのままにしておくより先に手術でとって、化学療法を・・・と望んでますが、先生はやはり術前のほうがいいとおもわれますか?
あと、トリプルネガティブのがんって治りにくいんでしょうか?
とても不安です。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「トリプルネガティブだから…」とか、「抗ガン剤が効き易いから…」などの安易な発想での術前抗がん剤には注意しましょう。
 それらの事(トリプルネガティブだから結局、術後に抗ガン剤が必要になる。とか、抗ガン剤が効き易い事が多い)を参考にしてもいいですが、決して「術前化学療法を勧める第1義的理由」としてはいけません。
 ○「術前抗がん剤の目的」は、あくまでも「小さくして温存」なのです。
  
「理由は、私のがんのタイプがホルモンに受容がないタイプのトリプルネガティブで化学療法が有効であること。」
⇒これを「術前化学療法の理由」としてはいけません。
 あくまでも「参考」にすぎません。
 
「それと、今なら全摘出術だが、術前化学療法でしこりが小さくなれば温存も可能だし、なにより抗がん剤の効果もわかるからだそうです。」
⇒一見、良さそうに見えますが…
 「4個くらい多発」というのが気になります。
 1箇所に「かたまっている」のであれば、「小さくなり温存」も視野に入りますが、
「多発」の場合には「それぞれが小さくなっても、切除範囲は一緒となり、(一見小さくなったようにみえるだけで)温存は危険」なのです。
 ○本当に、「多発している腫瘍がそれぞれ小さくなった場合に温存が安全にできるのか?」担当医に確認しておく必要があります。
 ♯一つの大きな腫瘍が「1点に向かって縮小する」のとは異なり、多発の場合には「星座のように複数の点に離れ離れになる」だけなのです。
 
「私としてはトリプルネガティブのタイプのがんをそのままにしておくより
先に手術でとって、化学療法を・・・と望んでますが、先生はやはり術前のほうがいいとおもわれますか?」
⇒上記コメントの通り…
 無意味な術前化学療法を勧めることは(私は)決してありません。
 
「あと、トリプルネガティブのがんって治りにくいんでしょうか?」
⇒それは誤解です。
 万が一再発してしまった際に「有効な治療法が少ない(他のサブタイプのように、ホルモン療法やハーセプチンが使えない)」ということは言えます。
 ただし、再発してしまえば(ルミナールタイプであろうとハーツータイプであろうと)結局は根治は困難であることに変わりはありません。
 ○だから、術後補助療法として「きちんと再発予防をしておくことが重要」であることは「どのサブタイプでも一緒」です。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

こんにちは。
先日、トリプルネガティブの乳がんについて質問したものです。
丁寧な回答ありがとうございました。
先生の回答を読み、やはり手術先行の方が・・・と思い、今の先生に相談しましたら、他の病院の先生を受診してみては・・・と勧められ、紹介状を持って5月(中旬)日に○○○市立医療センターに受診しました。
そこでのお話は、左乳首下辺りに4~5個の腫瘍があり小さいものは1センで大きいものは1.7センチ程度だが、ガッと固まってあり境目不明。
なのでそれをひと固まりとみて大きさは3,7センチ程度ですと言われ、触診で触った感じではないがエコーで左わきに1センチくらいの腫れがあるのでリンパ転移もあるかもしれないそうです。
手術をしないと最終的なステージ等はでないが、今のところステージ2bかリンパ転移が多ければステージ3だと言われました。
私が手術先行を希望しているので、今月中に全身の検査等をして来月中旬くらいに乳房全摘手術、その後化学療法(半年くらい)をするそうです。
先生にまた質問です。
私はまず、最初の病院でしこりが多発の場合、数じゃなく一番大きいしこりでステージをみるのでステージ1かな?と言われてたのに、ひと固まりでみて3,7センチでステージ2bかリンパ転移でステージ3かも?と聞いてショックを受けました。
ステージ2bかステージ3リンパ転移していると、完治は難しいのでしょうか?この場合、遠隔転移の可能性もおおきいのですか?
先生はステージ2も初期としてもいいと言っておられましたよね?
それと、知り合いがやはりステージ2bかステージ3リンパ転移している乳がんで術前化学療法をしたそうなのですが、理由の中に、リンパ転移しているので1ヶ月先の手術(局所治療)を先にするより化学療法(全身治療)を先にした方がいいと言われたそうです。
それなら私もリンパ転移があるなら、術前化学療法の方がいいのですか?
看護師さんにチラッと聞いたら、トリプルネガティブは悪性度が高いので・・・と言われてましたがそうなのですか?
今まだ治療や手術もできるのだからと思い直し、暗い気持ちになる必要はないのでしょうか?
先生、教えて下さい。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「癌が体に散らばっているかもしれないから、(手術先行ではなく)抗癌剤で先に叩く」
よく使われるコメントですが、全く根拠がありません。(抗癌剤は術前も術後も効果は同等)
それよりも「本当にある、その癌(乳腺にある癌)」をまずは治療すべきでは無いですか?
 
「私はまず、最初の病院でしこりが多発の場合、数じゃなく一番大きいしこりでステージをみるのでステージ1かな?と言われてたのに、ひと固まりでみて3,7センチでステージ2bかリンパ転移でステージ3かも?と聞いてショックを受けました。」
⇒最初の病院の方が正しいです。
 
「ステージ2bかステージ3リンパ転移していると、完治は難しいのでしょうか?
この場合、遠隔転移の可能性もおおきいのですか?」
⇒ステージは病理結果がでてから考えましょう。
 ただ、たとえステージ3でも「きちんとした術後療法」をすれば「完治する方が多い」という事実を直視してください。
 
「理由の中に、リンパ転移しているので1ヶ月先の手術(局所治療)を先にするより化学療法(全身治療)を先にした方がいいと言われたそうです。それなら私もリンパ転移があるなら、術前化学療法の方がいいのですか?」
⇒冒頭にコメントした通りです。
 術前化学療法を勧める医師の「常套句」です。全くエビデンスがありません。
 そんな「根拠のない」幻よりも「乳腺に癌がある」現実を直視すべきです。
 
「看護師さんにチラッと聞いたら、トリプルネガティブは悪性度が高いので・・・と言われてましたがそうなのですか?」
⇒トリプルネガティブは(既存のマーカーである)「ER, PgR, HER2が全て陰性」という性質を持った「雑多な集団(つまり均質ではありません)」です。
 サブタイプで予後を云々するのは止めましょう。
 
「今まだ治療や手術もできるのだからと思い直し、暗い気持ちになる必要はないのでしょうか?」
⇒その通りです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

こんにちは。
トリプルネガティブ乳がんについて質問したものです。
前回も丁寧な回答ありがとうございました。
来週金曜日に左乳房切除手術をすることになり、今日、術前検査の結果
と手術説明がありました。
病名は、浸潤性乳管癌。
左乳房のほぼ中央部を中心に触診で3.7センチの腫瘤を触知し、エコーでは最大約2センチの腫瘤が数個集まったようにみえます。
左腋窩リンパ節はやや腫大しているようにみえますが、細胞診では悪性所見はみられませんでした。
遠隔転移の所見も認められません。
術前検査から予測される病期は、ステージ2aだそうです。
そこで、先生に質問ですが、
私のように細胞診検査で転移がなくても、センチネルリンパ節生検でリンパに転移がある場合もあるのですか?
先生は手術してみなければわからないけど、1,2本あるかも?と言われてましたが、それでもリンパ節を全部取るのですか?
リンパ節を取った場合、全部取るのと数本取るのとでは術後の回復が違うのですか?
入院期間もそれだけ長くなるということですよね?(病院では最長2週間と言われましたが)
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「左腋窩リンパ節はやや腫大しているようにみえますが、細胞診では悪性所見はみられませんでした」「私のように細胞診検査で転移がなくても、センチネルリンパ節生検でリンパに転移がある場合もあるのですか?」
⇒普通は無い筈ですが…(本来、そのために行っている筈だから)
 ただ「細胞診の技術精度」には、かなり差があります。(つまり、上手く採れていなかっただけという可能性はあります)
 
「先生は手術してみなければわからないけど、1,2本あるかも?」
⇒リンパ節は「個数」です。
 1,2「個」転移が有る可能性があるようです。(自分の細胞診の精度を信頼して欲しい所ですが…)
 本当は「細胞診で陰性だったから大丈夫ですよ」と言ってほしいものです。
 
「それでもリンパ節を全部取るのですか?」
⇒全部取る訳ではありません。
 追加郭清の範囲は「画像所見」も参考に決めます。
 
「リンパ節を取った場合、全部取るのと数本取るのとでは術後の回復が違うのですか?」
⇒実はそれほど変わりません。
 私は「郭清しても入院期間は一緒(温存なら2泊3日、全摘なら3泊4日)としています」
 要は、「どれだけ余計な損傷を与えずに追加郭清ができるか?」「精度の問題」です。
 
「入院期間もそれだけ長くなるということですよね?(病院では最長2週間と言われましたが)」
⇒2週間は長すぎます。
 ドレーンを入れて、リンパ液が沢山漏れるということです。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

こんにちは。
トリプルネガティブ乳がんについて質問したものです。
いつも丁寧な回答ありがとうございました。
6月(中旬)日に左乳房切除手術を終了し、今日、病理結果の説明と今後の再発予防の治療についてお話がありました。
術後のステージは2a、やはりリンパ転移はありませんでした。
癌の浸潤は24ミリ、グレード3と顔つきが悪く、トリプルネガティブのタイプで抗がん剤しか効かないので、FECとドセタキセルを3週に1回を4回づつ投与します。
抗がん剤をしなければ再発率は25パーセント、すればその再発率が半分の13パーセントくらいになります。
と説明されました。
私が悩んでいると、これは確率の問題ですが、癌の顔つきも悪いし、
何かの数値のパーセント(増殖度?)も95パーセントくらいで高いので、した方がいいと思いますよ・・・と勧められました。
最後に、再発したら助かりませんよ・・・とも言われました。
先生に質問です。
やはり私のステージとタイプの癌は抗がん剤をした方がいいと思われますか?
するとしないとじゃ本当に再発率が違い安心ですか?
こんなにグレードが高い(増殖率が高い)癌だとやはり他のタイプより再発率も高いのでしょうか?
根治は難しいのでしょうか?
再発したら助からないのですか?
主人は少しでも再発リスクが低下するなら絶対に抗がん剤をして欲しいと言います。
とても悩んでいます。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
pT2(24mm), pN0, pStage2A
結局、早期乳癌でしたね。
いろいろな病院で「余計な心配」をさせられて苦労させられたようですが、「全くの杞憂」でしたね。
「やはり私のステージとタイプの癌は抗がん剤をした方がいいと思われますか?」
⇒当然、抗ガン剤すべきです。
 ○トリプルネガティブでは「例え早期であっても」抗がん剤は必須となります。
(5mm以下ならば適応外ですが)
 
 
「するとしないとじゃ本当に再発率が違い安心ですか?」
⇒それは間違いありません。
 
「こんなにグレードが高い(増殖率が高い)癌だとやはり他のタイプより再発率も高いのでしょうか?」
⇒関係ありません。(ステージの方が重要です)
 
「再発したら助からないのですか?」
⇒前(質問1)にも説明していますが…
 (回答1の抜粋)
 万が一再発してしまった際に「有効な治療法が少ない(他のサブタイプのように、
ホルモン療法やハーセプチンが使えない)」ということは言えます。
 ただし、再発してしまえば(ルミナールタイプであろうとハーツータイプであろうと)結局は根治は困難であることに変わりはありません。
 ○だから、術後補助療法として「きちんと再発予防をしておくことが重要」であることは「どのサブタイプでも一緒」です
 
「主人は少しでも再発リスクが低下するなら絶対に抗がん剤をして欲しい」
⇒当然です。
 
「とても悩んでいます。」
⇒「何」を悩んでいるのですか?
 「抗ガン剤すべき」というのは、日本中どこへ行っても同じです。
 乳癌の治療では「再発予防が重要」なのです。
 (万が一)再発してしまうと(他のサブタイプとは異なり、)「ホルモン療法やハーセプチンなどの武器が使えない」という点で「より強く勧められる」のです。
 
 

 

質問者様から 【質問5】

こんにちは。
トリプルネガティブ乳がんについて質問したものです。
毎回、丁寧な回答ありがとうございます。
先生からの回答を読み、やはり抗がん剤は必須だと再確認しました。
わかってはいたのですが、リンパ節転移がなかったのでもしかしたらしなくても再発の確率は少ないのでは・・・と考えてしまいました。
家族や職場の人とも相談して、今月下旬から抗がん剤を始めることになりました。
そこでまた先生に質問です。
最初の総合病院ではki67が50%だったのに、最終的に術後病理結果では96%だったみたいですが、そんなに変わることはあるのですか?
最初の診断から術後までの1ヶ月ちょっとでそれだけ増殖したということですか?
ki67が高いほど抗がん剤の効果は期待できますか?
手術から8週以内に抗がん剤を開始しないと効果は低下するのですか?
再発率は抗がん剤投与でどれくらいになりますか?
同じステージでもトリプルネガティブだと他のタイプの癌より再発率が高いと主治医から言われたのですが、そんなに確率が違うのですか?
私のようなグレード3でki67数値が高いトリプルネガティブ癌でも、リンパ転移もなくステージ2aなので早期がんと考え根治の可能性はあるのでしょうか?
たくさん質問してすみません。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答5】

こんにちは。田澤です。
「最初の総合病院ではki67が50%だったのに、最終的に術後病理結果では96%だったみたいですが、そんなに変わることはあるのですか?」
⇒Ki67は(術前、針生検による)サンプリングと(術後の)「病変全体」では異なるのが当たり前です。
 だから「手術標本で病変全体での評価が重要」なのです。
 
「最初の診断から術後までの1ヶ月ちょっとでそれだけ増殖したということですか?」
⇒完全な「勘違い」です。
 「Ki67は細胞分裂期の細胞の割合(%)」です。
 増殖したから「増える」というものではありません。(無関係です)
 
「ki67が高いほど抗がん剤の効果は期待できますか?」
⇒その可能性はあります。
 
「手術から8週以内に抗がん剤を開始しないと効果は低下するのですか?」
⇒そんなことはありません。
 
「再発率は抗がん剤投与でどれくらいになりますか?」
⇒24%です。
 
「同じステージでもトリプルネガティブだと
他のタイプの癌より再発率が高いと主治医から言われたのですが、そんなに確率が違うのですか?」
⇒そんな「馬鹿馬鹿しい」ことをいう担当医の言葉は無視してください。
 それぞれに適応の有る治療を行えば(トリプルネガティブなら抗ガン剤、ルミナールAならホルモン療法のように)それ程違いません。
 
「私のようなグレード3でki67数値が高いトリプルネガティブ癌でも、リンパ転移もなくステージ2aなので早期がんと考え根治の可能性はあるのでしょうか?」
⇒上記数値で示した様に…
 76%は再発しません。
 「3/4以上は根治」するのです。
 それでも「根治の可能性はない」と思いますか???
 
 

 

質問者様から 【質問6】

こんにちは。
おひさしぶりです。
昨年、トリプルネガティブ乳がんについて質問したものです。
術後の抗がん剤治療が12月末に終了し、先月(6月末)に術後1年検診があり、転移所見なしと言われ一安心。
心配していた抗がん剤の副作用も思ったより軽く(髪の毛は完全に抜けましたが)無事に終えることが出来、ホッとしていました。
そしたら昨日、左の鼠径部が赤く腫れているのに気付きました。
触ると痛みもあります。
よく見ると、腫れている所の真ん中にニキビのしんのような白い点があります。
気になったので、近くの内科外科クリニック
に受診しましたら、触診と血液検査をしてくれ、やはり汗をかいたりし
て無意識にかいたりして細菌が入ってリンパが腫れているんでしょう、
と抗生物質と炎症止めを処方してくれました。
多分、乳がんとは無関係だと思うよ、腫れている所も堅くなくて柔らかいし、、、でも1週間して腫れが引かなかったら細胞診をしてみようか?と言われました。
帰って、乳がんの主治医の先生にもその旨お話しましたが、鼠径部なら乳がんとの関連はかなり低いから様子見ていいよと言われました。
確かに薬を飲みだして、昨日より今日は腫れが少しづつひいてきているようですが、、、乳がんからは鼠径部リンパには転移しないのでしょうか?
腋や首のリンパに転移していないのに鼠径リンパに転移とは考えすぎでしょうか?なんだか心配で先生にご意見をお聞きしました。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答6】

こんにちは。田澤です。
「左の鼠径部が赤く腫れている」「触ると痛み」「腫れている所の真ん中にニキビのしん」
⇒粉瘤の炎症のようです。
「抗生物質と炎症止めを処方」「昨日より今日は腫れが少しづつひいてきている」
⇒明らかに炎症です。
「乳がんからは鼠径部リンパには転移しないのでしょうか?」「腋や首のリンパに転移していないのに鼠径リンパに転移とは考えすぎ」
⇒全くあり得ない事です。
 そもそも、どう見ても「炎症」です。