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トリプルネガティブ乳癌の術後抗がん剤について

[管理番号:1587]
性別:女性
年齢:34歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1788「適応外診療

 
 
はじめまして。
トリプルネガティブ乳癌で術前化学療法(EC×4,パクリタキセル×12)の後、乳房温存術を受けました。
手術は無事に終わり、病理がでたのですが、残念ながらPCRではありませんでした。
約2cmだったものが0.9cmまでは小さくなっており、リンパ節転移、脈管侵襲は0でした。
今後は25回の放射線治療になるのですが、それが終わった後について悩んでいます。
術前はPCRまでいってなかったので、再発予防の為経口抗がん剤をする予定になっていましたが、病理の結果をみて主治医はリンパ節転移も脈管侵襲もなかったので、無治療でいくのがいいのではないか?とおっしゃっています。
術後抗がん剤をしなくても、再発の可能性は20%といわれましたが、20%という数字が多いのか少ないのかがわかりません。
エビデンスがないので主治医も術後抗がん剤をしたら何%再発率を下げられるとは言えないとはわかっているのですが、副作用が少ないとはいえ0ではないとのことですし、エビデンスのない治療をする事への不安と、無治療の不安、どちらもあって決めかねています。
顔つきグレード3、ki67ー65%、トリプルネガティブ、ということで、再発しやすく、再発したら予後が悪いと思うので、今はとにかく再発が怖くて、少しでも希望があるなら術後抗がん剤治療を受けるべきなんだろうか…と悩んでいます。
今の病院で術後にも経口抗がん剤治療をされた患者さんは2~3年再発されていないそうですが、まだ症例が少なく、術後抗がん剤の効果により再発していないのかはわからないそうです。
2~3年とはいえ、トリプルネガティブ患者にとっては大切な2~3年だと思うので、やってみるべきでしょうか?
ちなみに主治医はXC療法を検討されています。
先生なら何を勧めますか?
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

回答

「手術は無事に終わり、病理がでたのですが、残念ながらPCRではありませんでした。約2cmだったものが0.9cmまでは小さくなっており、リンパ節転移、脈管侵襲は0でした
⇒「pathological complete response:pCRでなかった」のが残念とありますが、少し勘違いされている様です。(ネットの影響でしょうか?それとも主治医?)
 勿論、pCRに越した事はありませんが、「術前抗がん剤の目的は、あくまでも小さくして温存」です。
 生存率を上げる意味では「術前でも術後でも全く一緒」です。
 「pCRとなると予後が良い」は当たり前の話であり、逆に「pCRで無いと予後が悪い」と言う考えは誤りです。
 本来なら「術後に抗がん剤を行い、結果は解らない」となるべきものです。 占いのように「pCRだから安心、pCRでないと再発必発」などと考えるのはネットの罪と言えます。
 
「術前はPCRまでいってなかったので、再発予防の為経口抗がん剤をする予定になっていました」
⇒UFTのみが適応ではありますが…
 術前化学療法後に、(内服)化学療法を追加するのは「標準治療」とは言えません。
 
「顔つきグレード3、ki67ー65%、トリプルネガティブ、ということで、再発しやすく、再発したら予後が悪い」
⇒ネットの見過ぎです。
 サブタイプやグレードで予後を決めつけるのは私は反対です。
 化学療法前の状況(画像上、リンパ節転移が疑われていたのかどうか?)が不明な
のでコメントできませんが、「ステージで予後は考えるべき」というのが私の考えです。
 
「2~3年とはいえ、トリプルネガティブ患者にとっては大切な2~3年だと思うので、
やってみるべきでしょうか?」
⇒私は行いません。
 全く「標準治療」ではありません。
 
「ちなみに主治医はXC療法を検討されています」
⇒適応外です。
 カペシタビン(ゼローダ)は「進行再発乳癌にのみ適応」があります。
 質問者の場合には「術後補助療法」となるため、全く「適応外治療」となります。
 
「先生なら何を勧めますか?」
⇒何もしません。
 術前術後の化学療法の適応は厳密に決められているのです。
 エビデンスもないのに「適応外治療」などするべきではありません。
 ♯質問者本人への悪影響(有害事象)もさることながら、保険診療が無駄に行われることでの医療経済の破綻なども考えなくてはならないのです。