Site Overlay

ステージⅢB 術前化学療法について

[管理番号:3435]
性別:女性
年齢:39歳
はじめまして。
先月左胸のしこりがガンと診断されました。
検査をする度にどんどん悪い結果が出てきて、どうすればよいのかわからなくなってきました。
マンモトーム生検の結果
グレード2
herceptest Score 1+
ER 5+3=8
PR 3+2=5
Ki-67 labeling index
>20%
T1,N3,M0
Stage ⅢB
①これはルミナールB、
her2陰性ということでしょうか?
MRI診断
左乳腺C領域主体に約
16x14x10mm大、約
10x7x10mm大、約9x8x8
大の多発する腫瘤あり。
この他にも多発結節や不整形造影効果あり。
詳細な広がり診断は困難。
②広がり診断が困難と
は、このままでは手術が
できないということでしょうか。
PET-CT診断
腋窩レベルⅠリンパおよび胸骨傍リンパ節転移疑い。
(腋窩リンパは細胞診で悪性確定しました。)
主治医より、ステージⅡまでなら手術先行だか、胸骨傍リンパにも転移しているため、術前に抗がん剤治療(AC→Taxana)を行うと説明がありました。
抗がん剤が効くタイプとも言われました。
手術後、放射線→ホルモン療法といわれています。
まだ2歳になったばかりの子供がいるため、局所再発の可能性を排除するためにも全摘を希望しています。
田澤先生は、私のような場合は、手術先行は無理だと思われますか?
8/(中旬)から抗がん剤が始まります。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
まず率直に疑問に思うのは『胸骨傍リンパ節転移の疑いというPET所見が本当に信頼のおけるものなのか?』という点です。
◎胸骨傍リンパ節は「そう簡単に転移する部位」ではありません。(そんな事くらい、担当医は疑問に思わないのでしょうか???)
 しかも腫瘍がC領域(外側)ですよね?
 『胸骨傍リンパ節転移を起こす典型例(初期治療の段階では殆どありませんが…)は内側(しかも胸骨に非常に近い)の(しかも大きな)腫瘍』です。
  ♯たとえば、内側の5cm以上ある大きな腫瘍であれば、「胸骨傍リンパ節転移が腫れている=転移疑い」だとしても、「その可能性はあるな…」と感じたりはします。
 まずは、本当に「胸骨傍リンパ節parasternal lypho node(PS)」に転移が疑われるのか?
 きちんと担当医は「自ら」超音波していますか?(まさか、PET所見だけで、自分で超音波もせずに、PS転移だから…なんて言っていないでしょうね???)
「①これはルミナールB、her2陰性ということでしょうか?」
⇒Ki67=20%であれば、むしろ「ルミナールA」でしょう。
「②広がり診断が困難とは、このままでは手術ができないということでしょうか。」
⇒違います。
(温存手術はリスクが伴うと言う意味であり)「乳腺を全切除」すれば何ら問題はあ
りません。(あくまでも乳腺の中の話なのです)
「主治医より、ステージⅡまでなら手術先行だか、胸骨傍リンパにも転移しているため、術前に抗がん剤治療」
⇒全くの誤りです。
 本当にPS転移があるのかはこの際置いておくとしても(冒頭でコメントした通り、怪しいものですが…)
 
 ◎もしも「PS転移があると仮定したとして」術前抗がん剤など何の意味もありません。
  手術後に「PSも含めた照射」するというだけのことです。
  ♯それは、たとえ「術前抗がん剤を行い小さくなったとしても」同様に術後照射するのです。
   何のための「術前抗がん剤?」
  あくまでも抗ガン剤は「全身(PSも含めて)の再発予防」であり、局所(PSを含めたリンパ節や乳腺)は「手術+放射線」なのです。
  この全身療法(抗癌剤+ホルモン療法)も局所療法(手術+放射線)も、『術前抗がん剤をしてもしなくてもやる事は同じ』なのです。
「抗がん剤が効くタイプとも言われました。」
⇒これは「全くの誤り」です。
 Luminal type(百歩譲って、たとえBと解釈したとしても)が抗ガン剤が効くタイプ」などと言うのは「100%誤り」です。
「局所再発の可能性を排除するためにも全摘を希望しています。」
⇒それであれば、尚の事「術前化学療法をする意味は1000%ありません」
「田澤先生は、私のような場合は、手術先行は無理だと思われますか?」
⇒とんでもありません。
 全摘なのであれば(多発である以上、そもそも全摘が正しい選択です)「術前抗がん剤など無意味」です。
 ◎再三、コメントしているように「PS転移が本当なのか?」怪しい物ですが、仮にそのように仮定しても「術前抗がん剤をする根拠」には全くなりません。
  普通に「手術先行」⇒(必要なら)「抗がん剤」⇒(PS転移が本当に疑われるのであれば)「PSを照射野にいれた放射線治療(この場合にはトモセラピーを断然お勧めします)」+ホルモン療法です。