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ルミナルA ステージ3Aの術後治療について

[管理番号:1301]
性別:女性
年齢:39歳
田澤先生、はじめまして。
乳腺専門医にて、毎年、マンモグラフィー、エコー検査を受けておりましたが、5月
に乳房に違和感があったため別の総合病院を受診したところ、8月に乳がん確定(ルミ
ナルA、ステージ3A)となりました。
今後の治療方針につきまして、何とぞご教示ください。
乳がんの状況につきましては、大きさが超音波画像で36ミリ(MRIでは71ミリ)、リン
パ節転移はN1です。また、針生検でのサブタイプは、ルミナルA(ER陽性100%、PgR陽
性100%、HER2陰性(IHC1+)、Ki67 8.6%)です。
総合病院医からは、術前化学療法の説明をうけましたが、現況のステージ及びサブタ
イプを考慮して手術先行(全摘)を選択し、10月8日に手術予定です。
術後の治療方針については、組織診断後となるのでしょうが、総合病院医からは、化
学療法が必須であるとの説明を受けています。
そこで、ご意見をお聞かせ願いたいのですが、(1)組織診断の結果が針生検と同様の
結果となった場合、化学療法を行う必要性があるのか?(2)化学療法実施の可否判断
としてオンコタイプDXを受けるべきか? また、 (3)上記の進行状況は、一般的にど
れくらいの年月が、かかるものなのでしょうか?昨年のマンモグラフィー・エコーの
検査結果が、「異常所見なし」であったため、Ki67低位、HER2陰性であっても、進行
の早いタイプかも知れないと心配です。
お手数ですが、よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
MRI上の大きさ「71mm」を採用し、cT3(71mm), cN1, cStageⅢAとしている様ですが、
超音波診断のcT2(36mm), cN1, cStageⅡBの可能性も高そうです。
「手術先行を選択」したことは賢明だと思います。
浸潤径が71mmかは疑問ですが、少なくとも「小さくして温存」というにはリスクのあ
る拡がりです。
しかもKi67=8.6%となると「perfectなluminal A」と言えます。
「術前化学療法を期待」することは困難でしょう。
効果が無かった場合には大変なこととなります。担当医は安易に「術前化学療法を勧
めていた」ようですが、大変問題が有ります。

回答

「組織診断の結果が針生検と同様の結果となった場合、化学療法を行う必要性があるのか?」
⇒現段階では解りません。
 ただ「luminal A」なので、「リンパ節転移が4個以上」でなければ化学療法は不要
だと思います。
 リンパ節転移3個以下であれば「化学療法による上乗せ効果は10%以下」となると
予想されます。
 
「化学療法実施の可否判断としてオンコタイプDXを受けるべきか?」
⇒迷うのであれば、「行ってもいい」とは思います。
 ただ、私の患者さんであれば特に勧めません。
 
「上記の進行状況は、一般的にどれくらいの年月が、かかるものなのでしょうか?」
⇒これは答えにくい質問となります。
 乳癌は「診断可能」となるまでに「癌細胞誕生からみれば、5年は経っている」と
言われています。
 
○想像ですので参考程度にしてほしいのですが、
 「最初にベターとした癌の拡がり」があり、そこから「しこりを形成」したために
「突然大きくなった」ように見えたのだと思います。
 おそらく、昨年のエコー時には「乳腺症所見」としてスルーされた(ベターとした
乳癌の拡がりは認識が時に困難なことがあります)のではないかと思います。
 年齢的には「マンモではそもそも所見が取り難かったと予想」されます。
 
「進行の早いタイプかも知れないと心配です」
⇒恐らく、そうでは無いと私は思います。
○「昨年検診時に、全くのゼロからのシコリ形成」では無いと思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、前回は手術前にご意見いただき、ありがとうございました。
10月8日に、手術先行(全摘、リンパ節切除)し、先日、組織診断の報告を受けました。最終的には、腫瘍の大きさが2.2ミリ(ただし、5×5ミリの広範な広がりあり)、ルミナルA(ER陽性90%以上、PgR陽性90%以上、HER2陰性(IHC1+)、Ki67 7.6%)、リンパ節転移1箇所ありとのことで、ステージ2Bの結果でした。
主治医からは、リンパ節転移が認められたことや腫瘍の状況から、化学療法(TC使用予定)は必要であるとの説明を受けましたが、Ki67低位、HER2陰性の状況から、化学療法を受けるか否か、躊躇しています。
そこで、ご意見をお聞かせ願いたいのですが、(1)完全なルミナルAでリンパ節が1箇所であっても、長期間ガンが浸潤していると認められる場合、TC使用で予防の上乗せ効果がありますか? (2)化学療法実施中は、ホルモン療法を中断する説明がありましたが、並行して治療できないのでしょうか?
お手数ですが、よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
pT2(22mm), pN1(1個), luminal A
○私であれば、決して「化学療法は勧めない」と思います。

回答

「主治医からは、リンパ節転移が認められたことや腫瘍の状況から、化学療法(TC使用予定)は必要であるとの説明」
⇒化学療法を勧める根拠に乏しいと思います。
 Luminal Aで抗がん剤を勧めるには「リンパ節転移4個以上」となります。(St.Gallen 2015) 
 ♯担当医の言う「腫瘍の状況」とは「非浸潤癌で5cmの拡がりがあった」ことですか?
 全く無意味です。あくまでも「最大浸潤径」で考えてください。
 
「(1)完全なルミナルAでリンパ節が1箇所であっても、長期間ガンが浸潤していると認められる場合、TC使用で予防の上乗せ効果がありますか?」
⇒「長期間ガンが浸潤していると認められる場合」という記載が意味不明です。
 普通に考えて「luminal A」で「リンパ節転移1個」では「化学療法の適応ではない」と思います。
 よって「化学療法による上乗せ効果」は期待できません。
 
「(2)化学療法実施中は、ホルモン療法を中断する説明がありましたが、並行して治療できないのでしょうか?」
⇒全く問題ありません。併用できます。
 文献的には「アンスラサイクリンとタモキシフェンの併用が良く無い」となっていますが、それ以外の組み合わせ(TCは勿論OK)に問題点などありません。
 
○私は「全く化学療法を勧めません」
もしも迷うのならば「OncotypeDX」してもいいのでは?