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ステージ3A以上

[管理番号:1257]
性別:女性
年齢:45歳
 
初めまして、田澤先生。
9月に乳癌の疑いがあると診断されてから結果が出るまで、田澤先生のQ&Aで元気をいただき、また勉強をさせていただいております。
毎年エコーで検診をしていましたが、8月にしこりに気づき9月に受診、
乳腺外科の先生のいる病院に紹介してもらい28日に詳しい検査結果がでました。
画像検査
腫瘍の大きさ 26mm
リンパ節転移 5以上
他臓器転移  明日検査
  
浸潤性乳管癌
エストロゲン プロゲステロン マイナス
HER2   3+
Ki67   53
グレード   3
治療スケジュール
術前化学療法
FEC4回 ハーセプチン+ドセタキセル4回 
手術後 ハーセプチン
 
結果がでるたびに状況が悪くなっているようで、なかなか心が立て直せません。
もし転移していたらと思うと明日の検査も逃げ出したい気持ちです。
田澤先生は転移している可能性があると思いますか?
 
化学療法に使う薬剤と副作用について教えていただけますか?
来週の月曜にいろいろ決まると思うのですが、担当医に確認したほうがよいことがありましたら教えてください。
 
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
 
「毎年エコー検診していた」のに「26mmの大きさで見つかった(しかも自覚で)」というのは残念に思います。
やはりエコー検査には「術者による差が存在すること」に注意が必要です。(某芸能人のケースと似ているように思います)
HER2タイプですね。
「抗HER2療法」は「最強のターゲット療法」です。
「モチベーションをしっかりもって」頑張ってください。

回答

「術前化学療法」
⇒「小さくして温存」が目的でしょうか?
 HER2タイプだからといっても「術前化学療法の絶対的適応が小さくして温存だけである」ことをもう一度確認してください。
 もしも「どちらにしても全摘」なのであれば、「術前化学療法は無意味」です。
(抗癌剤が最も効き易い)HER2タイプだからといって、「化学療法の効果が必ずある」わけではないのです。
 術前化学療法中には「腫瘍が増大しないか?」必ず3週毎にはチェックしてもらってください。
 
「田澤先生は転移している可能性があると思いますか?」
⇒26mmの腫瘍で、「遠隔転移」はありません。
 心配無用です。
 ★毎年エコーで検診していたのに「遠隔転移がある」などは決してあってはいけない事とも言えます。
 
「化学療法に使う薬剤と副作用について教えていただけますか?」

  • FEC
    これは5Fuとファルモルビシン(アンスラサイクリン系)とエンドキサンの組み合わせです。
    中心となる薬剤(key drug)はファルモルビシンです。
    副作用は「吐き気」「脱毛」「粘膜障害(口内炎)」「便秘」となります。
    但し、「吐き気」はアプレピタント(イメンド)の登場で「劇的に改善」されています。(昔はアンスラサイクリンは見るだけで吐くと言われたものでした)
     
  • ドセタキセル
    これはタキサン系であり、「アンスラサイクリン系と並ぶ2大スター(Key drug)」です。
    副作用は「全身倦怠感」「脱毛」「筋肉痛」「痺れ」などです。
    副作用を抑える決めては「ステロイドの(比較的)長期投与」となります。
     
  • ハーセプチン
    言わずと知れた「HER2受容体」に対する「ターゲット療法の主役」です。
    コレ自体に(自覚する)副作用は無く(初回のみ一時的なアレルギー性の発熱が唯一と言えます)
    ♯但し、心筋毒性があるので「半年に1回の心臓超音波のチェックはmust」です。
    アンスラサイクリン系の心毒性とは異なり、可逆性なので「中止すれば、完全に戻ります」
     

 
「担当医に確認したほうがよいことがありましたら教えてください」
⇒これは大事なところです。
 ①術前化学療法を選択した理由
 たんに「HER2タイプだから抗がん剤が効きそう」とか「リンパ節転移があるので、手術をしたくない」とか「どうせ術後に抗がん剤をやるのだから先にやりましょう」などの理由ではなく、
 きちんと「小さくして温存手術ができる」見込みだから行う、つまり「手術は温存を考えている」ことを確認しましょう。
 ★リンパ節転移にかんしては『まともな乳腺外科医』であれば、手術に何ら支障はないのです。
 術前化学療法をして「リンパ節が見えなくなった」としても「郭清範囲は全く同様」であることを確認してください。
 
 ②腫瘍の評価をどの程度の頻度で行うのか?
 術前化学療法が「無効で腫瘍が増大するリスクがある」治療である以上、3週間に1回の「担当医自らの超音波による評価」が必須です。
 ★これを怠り「3カ月も放っておいて」いざ手術の際に「ごめん、大きくなっちゃた。珍しいケースなんだよね」などは『決してあってはいけない』ことです。
 
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生こんにちは。
 
先日はQ&Aにて詳しくご教授いただきありがとうございました。お礼が遅くなり申し訳ございません。
遠隔転移はないと断言していただき、本当に安心しました。
 
担当患者でもない私のために、先生にとっては何百回と繰り返してきたであろう説明
を丁寧にしていただき、不安な心に寄り添ってもらえたようで涙があふれました。
造影剤を使ったCTの結果、先生のおっしゃるとおり遠隔転移はありませんでした。
胸にしこりが一つと腋下リンパ節に数個転移、ステージでいうとⅡ~Ⅲと説明を受けました。
 
主治医には毎回の腫瘍のチェックをお願いし、来週から化学療法がはじまります。
また心細くなったら先生のパワーをわけてください。
 
本当にありがとうございました。寒くなってきましたのでお身体ご自愛ください。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
 
「抗HER2療法」は「長期間で、先が見えない様で不安」になるかもしれませんが、
「ハーセプチン単剤」となれば、副作用もなく「あっという間」です。
最も効果が期待できる治療法なので、がんばってください。

 
 

 

質問者様から 【質問3 脳転移の治療】

性別:女性
年齢:48歳
病名:
症状:

田澤先生
その節は大変お世話になり、ありがとうございました。

残念ながら脳に転移してしまい、年始から治療をしています。

主治医から新たな提案があり、どうしたら良いのかわからなくなっています。

今までの経過です。
箇条書きで失礼いたします。

2015年 9月
浸潤性乳管癌
腫瘍の大きさ 26mm
リンパ節転移 5以上(後に放射線科医に画像上9個といわれまし
た。

他臓器転移  なし(頭部検査はしていませんでした)
エストロゲン プロゲステロン マイナス
HER2   3+
Ki67   53
グレード   3

2015年10月より術前化学療法
FEC4回 ハーセプチン+ドセタキセル4回 

2016年4月
温存手術
リンパ郭清レベル1
(主治医は難色を示しましたが、転移のあった所の切除を強く希望。
後に放射線科医より上記の診断を聞き、事前に田澤先生にアドバイスをいただいて本当に良かったと思いました。)
術前化学療法の病理検査はリンパ節、原発巣とも病理学的完全奏功でした。

2016年5月
胸部、腋窩、鎖骨上、放射線治療 25回
ハーセプチン単剤 14回

2017年11月
動悸と脱力感(一瞬だったのであまり気に留めませんでした。)
2017年12月
動悸と右手の脱力感(この時も数分程度でした。)
(夜間の救急外来(主治医ではない)に行きましたが異常なしのと診断でした)
2017年12月30日
若干のふらつきを感じ、他の病院の脳外科を受診、右頭頂葉、小脳に
35mm強の脳転移が判明しました。
(後で主治医に確認したところ腫瘍マーカーの異常は全くなかったそうです)

年末年始を挟んだため主治医には連絡が取れず、独断で上京し某脳外科外来を受診しました。

大きな転移巣が2個所で手術もガンマナイフも適応外、全脳照射をすすめられましたが、どうしても最後の手段として残しておきたかったの
で、ガンマナイフ分割照射をする先生を紹介していただき1月中旬より2週間おきに3回の照射を受けました。

2018年3月
PET検査 異常なし
カドサイラ開始 (9/5に8回目を減薬投与、その後はずっと中止になっています)

2018年8月
小脳、頭頂葉ともに約15mmに縮小 新たな転移巣はなし。
瘢痕化?といわれました。

2018年8月~現在
血液検査
WBC 25~30 PLT 5.5~8 AST 49→55 
GGT 34→100 ALP305→488 

内服薬  デパケンR 200mg

上記検査結果をふまえ主治医より11月の上腹部エコー、頭部MRIで異常がなければ休薬の提案がありました。

説明が長くなり先生の貴重なお時間をいただいてしまいましたが、田澤先生でしたらどの様な治療方針をお持ちでしょうか?
無治療で経過観察、薬剤の予防的投与、どのような検査をどれ位の頻度で、今後脳に再発した時の治療方法、どんな些細なことでも良いのでご教授いただけたら幸いです。

根治は無理でも共存はできると信じて生きようと思っています。
よろしくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。

「田澤先生でしたらどの様な治療方針をお持ちでしょうか?」
⇒脳転移には薬剤は無効です。

 γナイフで、その都度対処します。