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her2 陽性 ステージ3 ガンのタイプ、今後について

[管理番号:5127]
性別:女性
年齢:45歳
はじめまして。
乳がんの治療が始まってから、田澤先生の丁寧な回答を何度か見ては励まされ、近くであれば是非診ていただきたかったと何度も思いました。
残念ながら、東海地区なため叶いませんが…。
長くなりますが、経緯を説明させて頂き、今後について田澤先生の見解をお聞かせ頂ければと思います。
昨年10月に乳がんと確定されました。
その2年前より、シコリが気になり乳腺外科専門病院に受診し、マンモは年1回、超音波は半年に1度受診していました。
シコリは嚢胞(だったと記憶しています)と言われ、検査のたびに毎回数が増えているが、体質かな?心配ないものだと言われていました 。
1度だけ細胞診をしましたが、癌ではありませんでした(乳がんと診断された所とは別の場所)。
マンモにも、いつも異常は認められないとの事でした。
昨年5月の時には、今度11月の診察で何もなかったら、1年おきの検査にしましょうと言われ、安心しきっていました。
ところが9月末に右胸の外側下部に固い物を感じ、最初は肋骨?生理だから?と思いましたが、脇にもシコリを見つけ、定期診察を早めて貰おうと連絡したら、予約が早まらず、心配で別の病院で細胞診を行い、乳がんと診断。
10月初旬に大学病院へ紹介して貰い、その時にはシコリは6センチ、脇には6個のシコリがあると診断されました。
その後、色々検査をしましたが、他に転移はありませんでした 。
そうこうしてる間に大きくなってる感じがあり、手術となると先になりそうであったため、かなり焦りがあり、すぐにでも治療を始めたかったので、術前化学療法を選択しました。
化学療法を始めたのは11月(中旬)日で
その際には8センチにもなっていました。
田澤先生の今までのコメント
をこの時に見ていたら、手術までは抗がん剤を行ない、手術、その後に残りの抗がん剤をするべきだったかもと後悔しております。
大学病院での最初の針生検の結果は
浸潤性乳管ガン
her2 3+
ホルモン受容体 -
グレード3
Ki-67 53%
術前化学療法は
AC療法 3週に1回4クール
毎回、抗がん剤投与の時に触診で確認して頂き、途中までは柔らかく、
小さくもなり、効いてる感じがありましたが、4クール以降で、また急に大きくなった感じがし、次の抗がん剤の診察時には元の大きさより大きくなっていました。
脇のシコリも最初0.7センチが1センチに。
大きいしこりはエコーのグローブには収まらないために、いつも物差しで測っていたので曖昧だと思いますが…。
その後
ハーセプチン+ドセタキセル 3週に1回4クール
かなり小さくなった感じがあり、脇のしこりも触れなくなり、効果もあったのかと期待していました。
主治医もエコーなどの検査結果で、ハーセプチンの効果が出ていると説明がありました。
6月(上旬)日に右乳房全摘手術、腋窩リンパ郭清を行う。
病理検査結果は
浸潤径 1.6センチ
拡がり 9.5センチ
リンパ節転移 1/11 1.6ミリ
グレード3
Ki-67 67%
脈管侵襲 リンパ、血管とも有り
術前化学療法の効果判定 グレード1a
現在はパーセプチン 3週間1回
放射線治療 25回を行なっています。
術前化学療法の効果が思っていた以上に悪く、また脈管侵襲も有り、かなりショックを受けています。
田澤先生への質問ですが、
① 乳がんと確定した際、それまで異常はなかったのに、半年もしないうちに、癌が6センチもあり、そこまで急に大きくなるということはあるのでしょうか?最初の病院で診て貰えば経過が分かったかもしれないのですが、今まで一度も触診もせず、パソコンに向かうばかりの先生だったために、不信感があり、治療は大学病院に決めてしまいました。
実際に大学病院で受診中も急に大きくなっているので、増殖率も高いし、やはりそういったタイプの癌なのでしょうか?
主治医の先生に最初の病院が見落とした事も考えられるのか聞きましたが、何とも言えないが、私自身が急に大きくなった感じがあったということなら、そういう事なのでしょうとしか言われませんでした。
田澤 先生が以前回答されているように、非浸潤の部分が元々あり、いっきに浸潤したと考えた方が良いのでしょうか?
② 浸潤癌が術後1.6センチとなり、脇のしこりも6→1個に、大きさも小さくなり、最終的には抗がん剤やパーセプチンの効果があったのだと感じていたのですが、効果判定がグレード1aとなった事にかなりショックを受けています。
術前に6センチや8センチと感じていたシコリは浸潤癌だったと考えていいのでしょうか?それが術前化学療法で1.6センチまで小さくなったのか、それとも拡がりの9.5センチをシコリとして感じており、効果がなかったということでしょうか?
この判定にかなりショックを受けましたが、そもそも今後の転移について考えるのに、この判定自体をあまり気にしなくてもいいのでしょうか?
田澤先生が以前回答されていましたように、化学療法本来の目的で ある、再発予防に効果があるかどうかと考えたなら、原発ガンにはグレード1aだったとしても再発予防には効果がないとは限らないと思ってもいいのでしょうか?
間違っていましたら、すみません。
③ただ、このような病理の結果で今後転移しないケースもあるのでしょうか?脈管侵襲や増殖率など、かなり悪い条件が揃っている気がして、不安で仕方ありません。
転移の可能性が高いと覚悟はしなければと思っていますが、ずっと定期診察をしていての結果に、なかなか受け入れられずにいます。
④ 他に何か別の治療も検討が出来るのでしょうか?
子供も小学生で、まだまだ生きていたく、不安で仕方がありません。
主治医からは、悪い方へ考えても仕方ないので、やれるだけの事は全てやっているのだからと言われましたが、なかなか気持ちが前向きになれず。
お忙しいところ、長々と申し訳ありませんが、ご意見よろしくお願いできればと思います。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「増殖率も高いし、やはりそういったタイプの癌なのでしょうか?」「非浸潤の部分が元々あり、いっきに浸潤したと考えた方が良いのでしょうか?」
⇒その通りだと思います。
「そもそも今後の転移について考えるのに、この判定自体をあまり気にしなくてもいいのでしょうか?」
⇒予後とは無関係です。
「原発ガンにはグレード1aだったとしても再発予防には効果がないとは限らないと思ってもいいのでしょうか?」
⇒その通りです。
 
「このような病理の結果で今後転移しないケースもあるのでしょうか?」
⇒??
 そんなに転移が多いと思っているのですか?
 通常は転移しない確率の方が圧倒的に高い事は、統計学的に解ると思います。
「他に何か別の治療も検討が出来るのでしょうか?」
⇒ありません。
 標準療法をきちんとやっているのだから、それでいいのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

パージェタについて
性別:女性
年齢:45歳
先日はいくつもの質問にお答えして頂き、ありがとうございました。
前回の質問で、her2 陽性 ステージ3 術前化学療法 全摘リンパ郭清術後、現在放射線治療とハーセプチン単独治療中で相談させて頂いた者です。
今後の治療に特に追加するものはないとのお返事を頂いているのですが、「her2 陽性早期乳癌でリンパ節転移ありの場合、ハーセプチンにパージェタを追加する事で生存率が上がった」と今年6月に発表されたと
の記事を最近見つけたのですが、私の場合はパージェタの追加は出来ないのでしょうか?
日本では発表があったからといって、すぐには承認されず標準治療として取り入れられないのでしょうか?
それとも病院によって、異なるものでしょうか?
お忙しいところすみませんが、よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
質問者は大きな勘違いをしています。
まずは、『今週のコラム76回目 「手術不能乳癌と転移再発乳癌」は添付文章では「手術不能又は再発乳癌」と一括りにされていることからも解るように、『手術不能乳癌と転移再発乳癌の扱いは一緒』なのです。』をご一読ください。
☆それを読み進めればpertuzumab(パージェタ)の適応が『HER2陽性の手術不能または再発乳癌』であることが解るでしょう。
 薬剤の適応は「絶対(法律)」です。
  適応外診療をすることは、(その医師も、患者さんも)法律に守られない(適応外診療)となります。
  決して行ってはいけないのです。
「すぐには承認されず標準治療として取り入れられないのでしょうか?」
⇒(標準治療どころか)「適応でさえない」のです。
  ♯標準治療とは「適応薬剤が大前提」なのです。
   標準治療となる前に、(そもそも)「薬剤の適応拡大」という大きな壁があるのです。
「それとも病院によって、異なるものでしょうか?」
⇒法律です。(日本全国です)
 
 

 

質問者様から 【質問3】

皮膚転移
性別:女性
年齢:45歳
以前にお世話になっております。
今回乳がんの皮膚再発と診断されました。
昨年10月に乳がんと告知
her2 陽性、HR陰性
術前化学療法AC療法4クール、ハーセプチン+ドセタキセル4クール
今年6月(上旬)日右乳房全摘手術、腋窩リンパ郭清
その後、放射線療法25回
現在単独ハーセプチン療法8回目です。
術前化学療法前にはしこりは6センチ、リンパ節転移は6個ありました。
術後の病理結果は
浸潤径 1.6センチ
拡がり 9.5センチ
リンパ節転移 1/11 1.6ミリ
グレード3
Ki-67 67%
脈管侵襲 リンパ、血管とも有り
術前化学療法の効果判定 グレード1a
皮膚再発の経緯です。
9月5日頃より、胸と胸の間に小さな赤みを見つけ、徐々に大きくなってきました。
現在10センチと5センチの楕円形に皮膚の赤みがあり、皮膚生検の結果、皮膚再発と診断されました。
盛り上がりは、ほとんどありません。
ネットで皮膚転移で調べると炎症型?の皮膚転移かと思います。
今後、タイプについて詳しく調べ、全身の転移がないか調べる予定でいます。
こんなに早く再発するとは思っておらず、また皮膚の赤みの広がりもあっという間に大きくなり、全身にも広がっているのではと、とても心配しています。
今後の治療は詳しい検査結果をみてとの事ですが、手術の可能性について主治医に尋ねると、かなり大きく切り取らなければならない事や少し離れた場所(3センチ程)に2箇所ある事から今回切除しても、また他に出てくる可能性があると言われました。
遠隔転移していたら、手術はせず、化学療法のみだそうです。
放射線についても、前回の照射部位にも転移が見られるために効果はないと思われるのとの事でした。
そこで、田澤先生の意見をお聞かせ願いたいのですが、
①この場合、手術は無理でしょうか?
やはり、手術した所で他の皮膚にまた再発してしまうと考えられるため、化学療法のみのが良いでしょうか?
化学療法のみの場合はこの先ずっと行なっていく事になるのでしょうか?
②化学療法のみの場合、her2 陽性だった場合は、
・ハーセプチン+パージェタ
・ハーセプチン+パージェタ+ドセタキセル
・カドサイラ
と提案されましたが、田澤先生でしたら、どういった治療を選択されますか?
ハーセプチンが効かなくての再発なら、カドサイラのが良いように思うのですが、そうでもないのでしょうか?
③もしトリプルネガティブの場合、どの抗ガン剤を使うのが一番良いでしょうか?
術前のAC療法では、あまり効果はなく、腫瘍が大きくなってきていますし……
効果があるかどうかは行ってみないと分からないのでしょうか?
④他に良い治療法があるでしょうか?
⑤この場合は完治はないでしょうか?
ステージ4になってしまったということですか?
やっと抗ガン剤から解放されたために出来れば、抗ガン剤は使いたくないですが、まだまだ子供のために死ぬ訳にはいかないので、頑張れるだけ行ないたいと思っています。
検査結果を見てから質問しようかと思いましたが、不安で不安で…。
また、検査結果が出たら質問してしまうかもしれせんが、どうぞよろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「①この場合、手術は無理でしょうか?」「化学療法のみの場合はこの先ずっと行なっていく事になるのでしょうか?」
⇒化学療法で小さくしてから(コントロールしてから)手術を考えます。
「②化学療法のみの場合、her2 陽性だった場合は、・ハーセプチン+パージェタ・ハーセプチン+パージェタ+ドセタキセル・カドサイラと提案されましたが、田澤先生でしたら、どういった治療を選」
⇒上記どれも選択しません。
 「再発治療」となるので、無論pertuzumabは用います。
 但し、術前化学療法で使用したdocetaxelよりはeriblinを選択します。(無論、
docetaxel使用中に増悪したわけではないのでdocetaxelが効かないとは限りませんが)
 ☆つまり trastuzumab + pertuzumab + eriblinです。
「ハーセプチンが効かなくての再発なら、カドサイラのが良いように思うのですが、そうでもないのでしょうか?」
⇒違います。
 trasutuzumab単独で効かない場合には、むしろ「組み合わせる抗癌剤を変えるべき」なのです。
 Trastuzumab emtansineが悪いとはいいませんが、明らかにpertuzumabが第1選択なのです。
「③もしトリプルネガティブの場合、どの抗ガン剤を使うのが一番良いでしょうか?」
⇒迷うことなく bevacizumab + paclitaxelです。(今回 pertuzumab +trastuzumabに組み合わせる抗癌剤としてpaclitaxelではなくeriblinを候補としたのは、bevacizumab + paclitaxelとして使えるようにpaclitaxelを温存する意味もあります)
「④他に良い治療法があるでしょうか?」
⇒上記抗がん剤でまずはコントロールすることです。 そして最後に切除(手術)
「⑤この場合は完治はないでしょうか? ステージ4になってしまったということですか?」
⇒皮膚転移は、臓器転移とは異なり「局所としてコントロールできる」可能性があります。
 
 

 

質問者様から 【質問4 her2 陽性 皮膚転移 今後の治療】

性別:女性
年齢:45歳
いつもお忙しい中、丁寧に回答くださりありがとうございます。
今回が3度目の質問になります。
今までの経緯
H28年10月に乳がんと告知
her2 陽性、HR陰性
術前化学療法AC療法4クール
ハーセプチン+ドセタキセル4クール
H29年6月8日右乳房全摘手術、腋窩リンパ郭清
その後、放射線療法25回
単独ハーセプチン療法8回目で皮膚転移。
H29年9月初旬 右胸発赤 皮膚転移 この時点では他に転移なし
11月カドサイラ減量にて治療開始
乳がんの病理結果は
浸潤径 1.6センチ
拡がり 9.5センチ
リンパ節転移 1/11 1.6ミリ
グレード3
Ki-67 67%
脈管侵襲 リンパ、血管とも有り
術前化学療法の効果判定 グレード1a
皮膚転移の病理結果
原発巣と同様her2 陽性 HR陰性
ki-67 50%
主治医との相談の結果、カドサイラを行なう事になったのですが、ハーセプチン単独なのに白血球が2000前後と少なく、すぐには治療が出来ませんでした。
骨髄に転移がないか調べたりなどしましたが、特に異常はなく、昨年11月よりカドサイラを減量し開始しました。
その頃には右胸全体と脇の方まで赤みが全体につながり広がってしまいました。
(20センチ以上×15センチ程)
3回目のカドサイラを行なった時点でほぼ赤みが消えてきれいな状態になりましたが、4回目を受ける1週間前より赤みがポツポツと出てきています。
とりあえず様子を見ようとカドサイラの4回目はそのまま行なっています。
田澤先生に質問です。
①白血球が上がらない原因は以前の抗ガン剤の副作用で骨盤が疲弊しているためだろうとの事ですが、田澤先生もそのように思われますか?
血液検査の結果を見ていると、術前のACの時は骨髄抑制があり、ジーラスタを打つなどしていましたが、ドセタキセル+ハーセプチンの時には下がっていないのに、本当に抗ガン剤の影響なのでしょうか?
放射線治療の前に血液検査をしていないので、どの時点で白血球が減ってしまったのか分かりませんが、放射線の当たる場所を考えると放射線の影響ではないだろうと言われました。
手術の影響で白血球が下がるということはありますか?
②このまま白血球が上がらない場合は、カドサイラに耐性が出来てしまったとすると抗ガン剤は何を勧められますか?
出来れば脱毛しない方がいいのですが、そのような選択は効き目が低いでしょうか?
③主治医は手術しても、また他に出てくるからっと否定されています。
再び出てきた赤みも1箇所ではなく、あちらこちらという感じなので、やっぱり手術は難しいのでしょうか?
他に転移がないため、このまま抗ガン剤だけで効かなかった場合、他に転移してしまうのではと不安で毎日を過ごしています。
回答よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「①白血球が上がらない原因は以前の抗ガン剤の副作用で骨盤が疲弊しているためだろうとの事ですが、田澤先生もそのように思われますか?」
⇒骨盤ではなく「骨髄」ですね。
 術前のECとDTXだけでですか?
 そんなことはありません。
 其の程度の白血球低下はむしろ「放射線による影響もありそう」です。
 ただHER2陽性の再発first lineは「pertuzumab」となります。
 術前抗がん剤で用いたDTXを用いるか、eriblinを用いるかですが、(前回回答したように)「eriblinがいい」と思いますが、(白血球が低めならば)「trastuzumab+ pertuzumabは通常量」+「eriblin減量」投与とします。
「放射線の当たる場所を考えると放射線の影響ではないだろうと言われました。」
⇒実際には…
 やや低めとなります(暫くは)
「手術の影響で白血球が下がるということはありますか?」
⇒ありません。
「②このまま白血球が上がらない場合は、カドサイラに耐性が出来てしまったとすると抗ガン剤は何を勧められますか?」
⇒前回も回答した筈ですが…
 そもそも私ならカドサイラでは無く
 Pertuzumab+trastuzumab+eriblinです。
「出来れば脱毛しない方がいいのですが、そのような選択は効き目が低いでしょうか?」
⇒その通りです。
「再び出てきた赤みも1箇所ではなく、あちらこちらという感じなので、やっぱり手術は難しいのでしょうか?」
⇒全てを一度に判断すべきではありません。
 幸い、HER2陽性乳がんは武器が多いので、まずは抗癌剤によるコントロールを図ること。
 その先に手術があるのです。
 (私であれば)勝負どころと捉えて、「pertuzumabを含んだ抗癌剤」⇒長期コントロールを確認後⇒(敢えてtrastuzumabを休めて)「bevacizumab + paclitaxel」⇒これで半年以上のcCRを得れば、手術する価値ありと思います。