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浸潤性小葉癌について

[管理番号:4678]
性別:女性
年齢:43歳
先日検診でマンモグラフィーとエコーを受けました。
マンモは異常なし
でしたが、左乳房の乳頭より外側、やや上に、エコーで少し気になるものがあるとクリニックの先生に言われ、二週間後の針生検を実施。
その後結果やはり乳がんで、「浸潤性小葉癌」とわかりました。
ホルモンレセプターはどちらも90%、Her2 は1+、異形度はグレード1、Ki67は未実施です。
その後受けたMRIで、乳頭より外側(最初にエコーで見つけたもの)が1.7cmほどのものと、その隣に別の小さなものが隣り合っていること、
乳頭を挟んで反対に小さな病巣とみられるものが写っていると言われました。
リンパには転移してなさそう、とも。
その後治療のため大学病院を紹介頂き、昨日初めての診察でした。
MRIの画像なども確認する前に、小葉癌の特性として散らばるように広がるので、数個離れてあるなら全摘の可能性が高いと言われました。
この診療までに、ガイドブックや再建に関する本も読んでいましたし、『胸にボリュームがある方ではないので、いびつに変形するなら全摘、再建したい。』とは思っていましたが、全摘するなら複数ご意見を伺い、納得した上でしたいとも思いました。
『全摘するにしても、大きな傷ならなるべく目立たないところにしたい』『可能ならば自分の乳頭乳輪を残したい』と思っていましたが、『乳腺医としては、癌の取り残しは避けたい。癌の細胞は乳頭に向かってからリンパに乗り広がるので、乳頭も残せない』と、結局乳頭乳輪は皮膚とともに切除し、傷は胸のど真ん中に大きく残るような手術になると言われ、明後日形成の先生の予約が入りました。
長くなりましたが、先生も浸潤性小葉癌が乳房内にいくつかみられた場合、全摘の選択をなさいますか?
また、傷を例えば脇の下のラインだとか外側にするなどは難しく、乳頭乳輪を残すのは厳しいでしょうか?乳頭から何センチ離れていると可能、など基準があるのでしょうか?
全摘から再建とは覚悟はしていましたが、取り残しは避けたいので』と、希望していたことが次々却下されて、落ち込みました。
画像などは
見ていない段階でそう言われたので、暫定診断?なのか、小葉癌と言えばそのような治療が既定路線なのか悩み、小葉癌の情報が多くないので
田澤先生に質問させて頂きました。
手術後は全摘ならホルモン治療に入るイメージでしょうか?
長々とすみません。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「先生も浸潤性小葉癌が乳房内にいくつかみられた場合、全摘の選択をなさいますか? 」
⇒別の乳管系であれば、そうなります。
「また、傷を例えば脇の下のラインだとか外側にするなどは難しく、乳頭乳輪を残すのは厳しいでしょうか?乳頭から何センチ離れていると可能、など基準があるのでしょうか?」
⇒「腫瘍径が十分小さく」「乳頭から十分に離れている」場合には適応となります。
 ♯乳頭からの距離などは「乳房の大きさにより、相対的に異なる」ため、具体的な数値はありません。
「手術後は全摘ならホルモン治療に入るイメージでしょうか?」
⇒luminalAの場合はそうなります。
 ただ、手術標本でKi67を確認する必要があります(核グレード1の小葉癌はluminalAの可能性が高い事は間違いありませんが)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

非浸潤性小葉がんの断端陽性と言われました。
性別:女性
年齢:43歳
田澤先生、いつも拝読させていただいています。
前回の質問にご回答いただきありがとうございました。
お礼が遅くなり申し訳ありません。
再度質問させて下さい。
6月下旬に浸潤性小葉がん左全摘手術を受けました。
リンパ節転移なしだったので再建のためエキスパンダーを入れました。
手術一ヶ月後の病理検査の結果は
HER2は1+陰性
1.7cm
PT1cN0M0 Stage1
ER90%
PgR90%
Ki67 20%
HER2については、最初に針生検をしたクリニックも同じでしたが、手術をした大学病院での最初の診察では2+だったので念のためFISH検査となり、結果陰性のため化学療法なしホルモン治療単独となり、現在ノルバデックスを毎日服用しています。
ただ、浸潤性小葉がんから離れたところにあった小さなものは、『LCIS非浸潤性小葉がん』で、(全摘して良かったですと言われました。)私は皮下脂肪がとても薄いらしく、かなり皮膚に近いところにあったそうで、インプラント入れ替え手術をする際に追加切除させてほしいと言われました。
断端陽性かを聞くとはっきりした答えはなく、『とても近いということです。』と。
後日の診察で電子カルテのモニターが見え、『断端1mmの露出』とあり、再度確認すると断端陽性であったと言われてしまいました。
1)全摘をしたのに断端陽性?これはよくあることですか? 非浸潤がんは乳腺の中にとどまっていると思っていたので、乳腺を全摘して非浸潤がんが露出とは意味がわからないんです。
『非浸潤性小葉がんについてはそもそも治療の必要はないです。
最悪切除できなかったら放射線がありますし。』と言われました。
2)ネットで調べたところ、確かに非浸潤性小葉がんは経過観察でも良いと書いてあるサイトもありますが、そこから浸潤性に変化することはないのですか?(全くの別物ですか?)
もし、非浸潤性小葉がんが浸潤性にならないのであれば、そもそも大きかった病巣の浸潤性小葉がんは非浸潤性とは全くの別物で、発症した時から浸潤していたのでしょうか?非浸潤が進行して浸潤していくと思っていたのですが。。
3)今後どのように対応すれば良いのか悩んでいます。
全摘したのに放射線とか気分が滅入ります。
田澤先生ならどのような処置をなさいますか? お忙しいところ恐れ入りますが、ご回答いただけるとありがたいです。
長くなり申し訳ありません。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「1)全摘をしたのに断端陽性?これはよくあることですか?」
⇒良くあっては困ります。
「 非浸潤がんは乳腺の中にとどまっていると思っていたので、乳腺を全摘して非浸潤がんが露出とは意味がわからない」
⇒その答えは
『今週のコラム 85回目 ○この層構造の理解が、「皮膚側断端」「深部側断端」の理解に役立つのです。
『今週のコラム86回目 このようにすれば、全摘で深部側断端が陽性となることはないのです
をご一読いただければ解ります。
 簡単に言えば「乳腺に切り込んでいる」可能性があるということです。
「そこから浸潤性に変化することはないのですか?」
「非浸潤が進行して浸潤していくと思っていたのですが。」

⇒ご本人が正しい。
 これを理解するには「非浸潤性小葉癌は必ず浸潤性小葉癌になるとは限らない=(言い換えれば)浸潤性小葉癌になるリスク要因にしかならない」ということです。
 ♯同様のケースを当て嵌めると
   非浸潤性乳管癌は「かなりの確率で」浸潤性乳管癌になるが、非浸潤性小葉癌は(非浸潤性乳管癌ほどには)「浸潤癌になる確率は高くない」と理解してください。
   
   より細かく言えば、「非浸潤性乳管癌」の中でも
             低異型度(所謂low grade DCIS)は浸潤癌になるまで時間がかかる(寿命の中で、浸潤癌にならないままのこともある)のに対し、高異型度(high grade DCIS コメドなど)は浸潤癌になり易い(もしくは、すでに一部で浸潤している頻度も高い)ということなのです。
「今後どのように対応すれば良いのか悩んでいます。」
⇒ホルモン療法するのだから・
 担当医に(ホルモン療法で受診するたびに=3カ月毎に)診察してもらえばいいのです。