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浸潤性小葉癌 6cmについて

[管理番号:3280]
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生の希望のあるお答えに生きる望みを与えられることが多いです。
いつもありがとうございます。
先月(中旬)日に乳癌と告知を受け、(下旬)日に左胸全摘、リンパも取り結果を(下旬)日に待つ身です。
発見されたとき、6cmと非常に大きくまたリンパにもいっているということ。
小葉癌ということで予後がとても心配になっています。
質問ですが、
1.右胸にも転移する可能性。
 右胸も全摘するべきだったのでしょうか。
(知人がそうしていました)
2.どういうような治療法が待っているか。
教えていただければと思います。
お忙しいところ、恐縮ですがよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「小葉癌ということで予後がとても心配」
⇒勘違いです。
 小葉癌は大人しい物が多いです。
 ただ「乳腺内に多発し易い」点に注意が必要ですがその点では「質問者は全摘している」ので何ら問題ありません。
 
「1.右胸にも転移する可能性。 右胸も全摘するべきだったのでしょうか。」
⇒完全な勘違いです。
 乳癌は絶対に(1000%)対側乳腺に転移することなどありえません。(乳腺の右と左は天と地ほどに遠いのです)
 小葉癌の多発とは「あくまでも同側乳腺内」の話です。
 
「2.どういうような治療法が待っているか。」
⇒サブタイプが不明なのでお答えできません。
 術後補助療法は「サブタイプで決まる」のです。
 決して「組織型やステージで決まる」ことは無いのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

いつもたくさんの詳細をわかりやすく説明していただきありがとうございます。
ようやくサブタイプがわかりましたので、記載いたします。
海外在住のため、英語の内容となりますため内容が把握できず困っております。
お手数をおかけしますが、状況を教えていただければ嬉しく思います。
Invasive Lobular Carcinoma
Glandular Differentiation: Score 3
Nuclear Pleomorphism: Score 2
Mitotic Rate: Score 2
Overall Grade: Grade 2 : Scores of 6 or 7
Ductal Carcinoma in Situ
Nuclear Grade: Grade 2
Lobular Carcinoma in Situ: Present
Size of Largest Invasive Carcinoma: Greatese Diminsion: 65 Additional
Dimension: 35 Additional Dimension: 22 Multiple foci of invasive carcinoma Lymph-Vascular Invasion: not identified Dermal Lymph-Vascular Invasion: not identified Lymph Nodes LN with Macrometastases: Number 3 Largest Size: 7(mm)
Biomarker Studies
Block/Tumor Stained: Block: -1/N and -1/R *ER status-Positive Tumor cells with Nuclear Positivity-91-100% Average Intensity of Staining: Strong *PgR
Status: Positive Tumor cells with Nuclear Positivity-81-90% Average Intensity of Staining: Moderate Primary Antibody-16 *Her2-Negative Uniform intense complete membrane staining: 0% Primary Antibody- 4B5
質問は
1.とても大きな癌だと強調されたわけですが、やはりリスクは大きいでしょうか?
2.リンパの大きさは大きいですか?
3.来週からケモ、そして放射線、ホルモン療法と続いていくわけですが先生の場合は
どうされますか?
4.おへその横に小さなできものができています。
皮膚に転移しているという可能性はありますか?
大変お手数をおかけします。
 よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「1.とても大きな癌だと強調されたわけですが、やはりリスクは大きいでしょうか?」
⇒これまでも「小葉癌」が大きくなりがちであることは、再三このQandAでコメントしてきました。
 小葉癌での「浸潤径の大きさ」は、通常の乳管癌とは全くの別物です。
 問題ありません。

「2.リンパの大きさは大きいですか?」

⇒7mmとあるので、それ程ではありません。
「3.来週からケモ、そして放射線、ホルモン療法と続いていくわけですが先生の場合はどうされますか?」
⇒抗ガン剤の適応が本当にあるのか?
 というところが焦点となります。
 Luminal typeですが、「Ki67の測定」はしていないのですか?
 本当に抗ガン剤の必要があるのか0ncotype DXもご検討を。
「4.おへその横に小さなできものができています。皮膚に転移しているという可能性はありますか?」
⇒全くありません。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

いつもわかりやすく、的確なご回答をありがとうございます。
先生のご回答に本当に感謝をしています。
先生からいただいた回答のもと、主治医に質問をしてみました。
(海外在住です)
こちらでは癌と判明すれば、すべての人に抗がん剤、放射線、ホルモン療法を勧めているとのこと。
 OncotypeDxはほとんど取り扱っていない。
がっかりしましたが、強く拒否することもできず、抗がん剤治療を先週から始めました。
抗がん剤はAC 2週に1度を4回。
その後、毎週のTを12回となります。
この抗がん剤がとてもきつく、めまいと吐き気で最初の数日、何もできなかったこと。
体温が36.5度から35.8度へと下がってしまい、身体が冷たくなってしまいました。
あと、血圧も下がったようです。
現在、持ち直してきましたが、(5日後)まだ目まいと吐き気が少々あります。
そこで、質問です。
それとも、あと3回何とか頑張っていくべきでしょうか?
軽減をお願いするということは、再発のリスクも増えるということだとは思いますが、
先生ならばこういう患者の場合、どう対処なされますか?
お忙しいところ大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
Oncotypeどころか、「Ki67も測定しない」のであれば、「luminal AとBをどう区別しているのでしょうか?」
それでは「かなりの無駄な(上乗せの殆ど無い)抗ガン剤がなされてしまう」ことになります。
「それとも、あと3回何とか頑張っていくべきでしょうか?」
⇒そもそも化学療法の適応に対する根拠に乏しいので、止めるべきでしょう。
 Weekly PTXならば、そんなことはなく続けられるでしょう(ただし、そもそも本当に必要か?という問題は残ったままですが)
「軽減をお願いするということは、再発のリスクも増えるということだとは思いますが、先生ならばこういう患者の場合、どう対処なされますか?」
⇒そもそも化学療法が必要か?が焦点となります。
 (化学療法が必要と仮定の上であれば)dose dence ACなど止めてweekly PTXへ変更します。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生、早速の回答をありがとうございました。
1週間たたない間に再度質問をすることをお許しください。
先生からのご回答から、次の主治医との面談に準備をしていきたいと思っています。
(火曜日に控えています)
次は主人にもついてきてもらい、言葉の不自由さをカバーしてしっかり私の意思を伝えたいと思っています。
1. Ki67の測定が本当に不可能であるか? もしその測定が可能であるならば、測定値がでるまで抗がん剤はストップすること。
 でいいでしょうか?
2. 測定ができてもしルミナールBであった場合、(もしくは測定ができなかった場合)
抗がん剤を続けようと思っていますが、DoseDenseACをやめてWeeklyPTXのみとした
合、再発率はどう変わりますか?
3. 攻撃的な癌であるので脇に進出したと主治医に言われたわけですが、私の癌は攻撃的であると思われますか?
4. たとえ、ルミナールAであったとしてもリンパノッドが4つ以上の場合、抗がん剤を適用との回答を先生がされているのを読みましたが、3つと4つの違いでこのように効用を分けることのリスクはどんなものなのでしょうか?
5.   St.Gallen(2015)の内容を先生はよく出されていますが、どうしてこのような最新の内容を医療が進んでいるはずの北米で重視されていないのでしょうか?
これは日本のほうが癌治療については進んでいると言えるということでしょうか?
先生のような信頼のできる方が主治医だったら、どれだけ恵まれていることでしょう。
遠くに住んでいることがとても残念です。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「1. Ki67の測定が本当に不可能であるか? 
もしその測定が可能であるならば、測定値がでるまで抗がん剤はストップすること。 でいいでしょうか?」

⇒是非、そうすべきです。
「2. 測定ができてもしルミナールBであった場合、(もしくは測定ができなかった場合)抗がん剤を続けようと思っていますが、DoseDenseACをやめてWeeklyPTXのみとした場合、再発率はどう変わりますか?」
⇒直接比較はありません。
 参考に)
 Dose denseは「ホルモン受容体陰性」ではより有効ではなるが、「ホルモン受容体陽性」では(非dose denseと比較して)「有意差は無い」という解析もなされています。
「3. 攻撃的な癌であるので脇に進出したと主治医に言われたわけですが、私の癌は攻撃的であると思われますか?」
⇒「リンパ節転移と攻撃的」とは無関係です。
 グレード2なのだから極めて「普通」です。
「4. たとえ、ルミナールAであったとしてもリンパノッドが4つ以上の場合、抗がん剤を適用との回答を先生がされているのを読みましたが、3つと4つの違いでこのように効用を分けることのリスクはどんなものなのでしょうか?」
⇒実際には「リンパ節転移4個以上」でもルミナールAであれば、「上乗せが無い」ことは報告されています。
 「リンパ節転移4個以上」はあくまでも「リスクが高ければ抗ガン剤もやむなし」という基準の一つです。(実際には)「3個と4個では大した差はない」でしょう。
「医療が進んでいるはずの北米で重視されていないのでしょうか?これは日本のほうが癌治療については進んでいると言えるということでしょうか?」
⇒日本のように「国民皆保険」との「保険制度の違い」も大きいのだと思います。