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乳房外側上部乳首から3cmに8mmの浸潤癌

[管理番号:5941]
性別:女性
年齢:63歳
昨年10月上旬、2年ぶりの乳がん検診で要精検、すぐに乳腺専門開業医にて視触診及びマンモグラフィーで異常なし、エコーにだけ左乳房上部外側、乳首から3cmに縦約8mm横約3mmの影が見つかり(影の上部1~2mmは乳管基底膜を突き破って上に飛び出し、その部分だけ上部に基底膜1~2mmがちぎれて帽子をかぶったように乗っかっている状態)。
先生曰く、「なにか上から引っ張られたような・・・」(←ここ2~3か月間、胸に食い込むほどきついゴムの入った下着をつけて、毎日両手にペットボトルを持ってエアロビクスをやっていました。)その場でエコーガイド下組織診(ばね式針生検で、ベッドに仰向けになり私もエコー画面を見ながら確実に腫瘤内上部中部下部のそれぞれ中心3か所から組織を採取)した。
10月末、結果は癌の確定診断はつかず、粘々していて、ADH。
大きな病院でMRI検査を受ければ確定できるから(?半信半疑)と勧められる。
11月上旬、紹介先の病院で、造影剤を使ったMRI検査の予約を入れられ、(←この「乳がんプラザ」のコラムにてMRIでは確定診断はつかないし不要。
「マンモトーム生検」か「切開手術による腫瘤の摘出生検」による組織診で確定出来ると知った。)12月上旬受けたくなかったが受ける。
12月下旬、結果は、先ず開業医から持って行った組織診検体パックを「ここでも検査すると、まあ同じような結果でした。」今度はMRIの画像の白い部分(腫瘤とそこから上部に扇型に手足の様に伸びた乳腺?を眺めながら、「ここですよ!わ~!凄いな~!」。
ただ大げさでどういう所見なのか言ってくれない。
「白い部分は左乳房にもありますけど?」と言って、 「組織診には3種類方法があるみたいですが、前回受けたのは?」とお聞きすると、「針生検」とのこと。
そういえばガチャガチャと針の装置が音を立てていたので、あれが「ばね式針生検」。
それで「マンモトーム生検」を希望すると、「12月(下旬)日に検査します。それで癌が出たら手術ですよ!」(返事はしていない)
1月上旬、検査結果は、「浸潤性乳がん。
1期、手術で腋窩リンパ節も取ります!」私、「リンパ節まで取るんですか!?」、「じゃあ、センチネルリンパ節生検しましょうか?!」。
癌ではないだろうと信じていたので、愕然として、「セカンドオピニオンを受けたいのですが!」。
「それもいいですよ!別の病院で手術しますか?!」「いいえ、手術はこちらでするつもりですけど・・・」(冷汗)
自分で触ってもシコリはなく、自覚症状もないのに、組織診2回受けて乳房が痛くなり、この後3か月位元の状態に戻るまでそっとしておくことは出来ないのでしょうか?出来ることなら手術は受けたくないし、受けてからでは遅いので気が気ではありません。
帰りに癌の手術入院の
セットパックなる全ての検査を予約して、入院手続きをとって帰るよう言われましたが、看護師に話したら、入院手続きは2月上旬の診療日の時でも良い、とのことで手続きはせずに帰って来ました。
骨シンチ・造影剤を使ったCT検査が1月末にあります。
質問① 下着の長期に及ぶ締め付けで、エコーに影が映ることはありますか?
② 基底膜を突き破っている最初のエコー画像で、浸潤癌が疑われますか?
③ 縦長の腫瘤内(上中下部の中心3箇所)から針生検をすると、縦長だった腫瘤が崩れていびつになってしまいました。
これで異型だということで癌なのでしょうか? (マンモトーム生検の検査結果を聞きに行ったのに、先生はパソコンのこのエコーの画像を見て、癌だと言っていた。)
④ セカンドオピニオンを希望すると、その後のお医者様との信頼関係は崩れて、そこで診療は続けにくくなるでしょうか?すぐに病院をかわった方が賢明ですか?
⑤ セカンドオピニオンを受けるタイミングですが、今月末の検査の前までの今ですか?それとも全ての検査を受けて2月上旬の診療日に、詳しいマンモトーム生検の「診断結果報告書」なるもののコピーアウトを
お願いして、どういう手術になるのか聞いた上で、セカンドオピニオンの話を先生にするべきでしょうか?
  1月末の検査を受ければ。
ベルトコンベヤーに乗ることになりそうで・・・
  ⑥ この病院では最初から「くりぬき術」なる摘出生検があるのに(この病院ではしていないのか)、どういう方法が私にとってベストなのかも説明してくれませんでした。
浸潤癌だと言って、「癌のガイドブック」を渡されましたので、今後の治療方法は2月上旬に話すつもりでいるのでしょうか?エコーの画像・MRI造影でおおよそ癌だと分かっていたので、「くりぬき術」による摘出生検は勧めなかったのでしょうか?癌だとしてもまだ小さいので、摘出生検後ならもうそれ以上の手術も必要なしで、こちらの傷も小さかったのでは・・・?と聞いたことがありますが、もしも、摘出生検後の病理診断で浸潤癌だと確定するとやはり同じ手術になったのでしょうか?
  ⑦ 田澤先生にセカンドオピニオンをお願いできますか?
組織診(針生検とマンモトーム生検)の検体パックと造影剤を使ったMRIの画像を持って診察していただくことは可能でしょうか?するとしたら、今すぐですか?骨シンチ等を嫌々受けて、2月上旬の詳しい手術の説明を受けた後が、ベターでしょうか?やはり手術が必要な場合、その手術にもよるでしょうが、その後の通院等(片道でそちらまで4時間弱かかります)が大変になるのかもお聞きしたいのですが・・・手術後ウィークリーマンションを借りられる患者さんもいるそうですが・・・。
こうして悶々としていてもなんの解決にもならずに、心配で質問させていただきました。
宜しくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「この後3か月位元の状態に戻るまでそっとしておくことは出来ないのでしょうか?」
「出来ることなら手術は受けたくない」

⇒とんでもない選択をしようとしていることを自覚すべきです。
 せっかく「早期」でみつかっても、「進行させるだけ」であり「百害あって一利なし」です。
「骨シンチ・造影剤を使ったCT検査が1月末にあります。」
⇒早期乳癌に、これらの「無駄で被爆するだけの検査は不要」です。
「質問① 下着の長期に及ぶ締め付けで、エコーに影が映ることはありますか?」
⇒ありません。
 
「② 基底膜を突き破っている最初のエコー画像で、浸潤癌が疑われますか?」
⇒浸潤癌の所見です。
 ちなみに(エコー所見では)「前方境界線の断裂」といいます。
「これで異型だということで癌なのでしょうか?」
⇒質問の意味が必ずしもはっきりしませんが…
 病理医の診断です。
「④ セカンドオピニオンを希望すると、その後のお医者様との信頼関係は崩れて、そこで診療は続けにくくなるでしょうか?」
⇒それは、その医師によるでしょう。
「すぐに病院をかわった方が賢明ですか?」
⇒それは「ご本人次第」です。
「それとも全ての検査を受けて」
⇒CTも骨シンチも不要ですが…
「どういう手術になるのか聞いた上で、セカンドオピニオンの話を先生にするべきでしょうか?」
⇒タイミングは何時でもいいと思います。
「摘出生検後の病理診断で浸潤癌だと確定するとやはり同じ手術になったのでしょうか?」
⇒摘出手術のやり方次第ですね。
 最初から(癌を前提として)「癌だとしても、これで手術を終えられるようにマージンをつけた部分切除」とすれば手術は1回で終える事もできます。
 ♯浸潤癌だとしても(外科的生検でようやく、診断できる)程度のものは、センチネルリンパ節生検は不要と(私は)思います。
「 ⑦ 田澤先生にセカンドオピニオンをお願いできますか?組織診(針生検とマンモトーム生検)の検体パックと造影剤を使ったMRIの画像を持って診察していただくことは可能でしょうか?」
⇒可能です。
「するとしたら、今すぐですか?骨シンチ等を嫌々受けて、2月上旬の詳しい手術の説明を受けた後が、ベターでしょうか?」
⇒骨シンチやCTは不要です。
 身体のためにも「不要な検査は断る」勇気も必要です。
「やはり手術が必要な場合、その手術にもよるでしょうが、その後の通院等(片道でそちらまで4時間弱かかります)が大変になるのかもお聞きしたいのですが」
⇒「手術にもよる」とありますが…
 当院では「部分切除でも全摘でも」通院に変わりなし(1カ月後の病理結果まで外来通院は不要です)
「・・・手術後ウィークリーマンションを借りられる患者さんもいるそうですが・・・。」
⇒放射線照射のことですね?(それ以外では考えられません)
 放射線照射は「地元で行う」方が圧倒的に多い事は事実です。(月~金 5週間で25回ですから)
 
 

 

質問者様から 【質問2 早期の摘出手術】

性別:女性
年齢:63歳
先生こんにちは。
とても解かりやすい御回答を下さり、お忙しいのに大変ありがとうございました。
がん検診で要精検と出てから、どういう展開になるのか全く分からず、
このQ&Aにたどり着き、なんとなく先が見えてきた気がします。
自分の判断が正しかった、と後で悔いのない治療を選択したいと思っています。
質問の続きですが、どうぞお願い致します。
早期発見の場合の摘出手術のやり方のご説明で、(こちらの管理番号のバックナンバー内にもADHの摘出生検奨励を読んで理解を深めました。
3か月前にこのQ&Aのことを知ってこの部分を読んでいたら、今頃はマンモトーム生検を受けずに(追加手術のない一度で済むようなしっかりマージンをとった摘出生検を終えていたであろうに・・・、と。)
  最初から(癌を前提として)「癌だとしても、これで手術を終えられるようにマージンをつけた部分切除」とすれば手術は1回で終える事もできます。
 ♯浸潤癌だとしても(外科的生検でようやく、診断できる)程度のものは、センチネルリンパ節生検は不要と(私は)思います。
 (そういえば、これと同じような内容を最初に訪れた開業医が話してくださいました。
こんなに小さい影でリンパ腺転移なんてありえないし、今のうちに摘出生検で取ってしまいなさい、と。
そこは外科がないので、私の希望した紹介先がブランド病院だったためか、予期せぬ展開になってしまって・・・、これからでも間に合うかと・・・)    
                     
●「ADHの摘出生検奨励」というのはガイドラインに書いてあるのですか?そうだとしたらどうして紹介先の乳腺外科医はその話を私に勧めなかったのでしょうか・・・?
●この摘出手術ですが、腫瘤の場所やMRIで広がり診断をして不可能な場合もありますか?摘出生検は、マンモトーム生検を受けて「癌」の診断が下った後では受けられないということですか?摘出生検後の病理診断で「癌確定」となると、生検後の治療は癌患者扱いですか?検査目的の「摘出生検」でも十分なマージン(6mmですか?)をとって手術すれば、追加手術は必要ないということですね?「摘出手術」は治療目的であって、「部分切除(=温存術)」と全く同じですか?或いは、「摘出手術」なら術後の放射線治療も必要ないのでしょうか?例えば、私がこれからこの「摘出手術」を受けることは可能ですか?不可能な場合はどういった場合でしょうか?1cm未満の腫瘤ですが、MRIで広がりを見てみないと「摘出」可能かどうか分からないかもしれませんが、これなら通常の「部分切除+センチネルリンパ節生検」の手術よりは体に負担もなく、また同じ治療効果ありで、通常の癌としたうえでの「部分切除手術」よりも乳房の整容性は保てますか?通常の部分切除手術は腫瘤が1cm未満であっても、2cm~3cmであっても、切除する範囲はほぼ同じでしょうか?術中センチネルリンパ節に転移する可能性もあるとこちらで読んだことがありますが、センチネルリンパ節生検しないで摘出した場合のデメリットというとこれくらいでしょうか?最近になってやっと針生検とマンモトーム生検(7枚も組織を取りました)後の痛みが和らいできた今日この頃ですが、この2回の検査でリンパ腺転移はゼロと信じて良いのですよね。
お忙しいのに、大変長くなって申し訳ありません。
 宜しくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
○重要な事は
 1.癌の診断となった以上、手術術式(保険点数)は(腫瘍摘出ではなく)「悪性腫瘍乳腺部分切除(所謂「温存術」)」となる。
 2.上記術式に「実際のやり方には差異はない」(葉状腫瘍のように、「良性でも大きく切除することはある」し、癌でも「小さければ、小さな切除で済む」こともあるのです。)
 
「●「ADHの摘出生検奨励」というのはガイドラインに書いてあるのですか?
そうだとしたらどうして紹介先の乳腺外科医はその話を私に勧めなかったのでしょうか・・・?」

⇒ガイドラインにはありません。
 ただADHの概念には、そもそも歴史的背景があります。
 ADHとは、かつて「針生検(広範囲を切除できるマンモトーム生検も含む)の無かった時代」にできた概念だからです。
 端的に言えば…
 (ADHの概念自体は) 外科的生検で病変全体(少なくても大部分)を切除した際に「極めて異型の低い癌が2mm以下」をADHとしたのです。(組織診の無い時代に敢えて「外科的生検で切除した場合に限る」などと注釈が無いのは当然です)
   外科的生検ではその「極めて異形の低い癌」の周囲も広範囲に切除されているなかで「2mmしか病変がない」ことが前提なのです。
 それが、現在では
  石灰化に対するST-MMTにしろ、MMTEにしろ 「病変の中心のみ(もしかしたら端かもしれない)」を採取して「極めて異形の低い癌が2mm以下」だったのです。
 
★ 前者と後者の違いが解りますか??
  ⇒前者では「本当に2mm以下しか病変は無いから(これで)OK」といえますが、 後者では「病変全体を摘出してみなければ、(そもそも)2mm以上の拡がりが有るのか解らないし、(それ以上に)もっと異型の強い病変(つまり癌)が併存している可能性も十分にある」
★★ そのことを理解していない乳腺外科医は「ADHは前癌病変」という誤った理解(外科的生検でのADHであれば、それで正しいとも言えますが、組織診でのADHでは「それは通用しない」)をしているのです。
「摘出生検は、マンモトーム生検を受けて「癌」の診断が下った後では受けられないということですか?」
⇒そもそも「用語の使い方」が誤りです。
 「生検」とは「診断をつけるため」なのです。
 癌の診断がついているのに「生検をする」という事自体が矛盾しています。
「摘出生検後の病理診断で「癌確定」となると、生検後の治療は癌患者扱いですか?」
⇒その通りです。
「「摘出手術」は治療目的であって、「部分切除(=温存術)」と全く同じですか?或いは、「摘出手術」なら術後の放射線治療も必要ないのでしょうか?」「例えば、
私がこれからこの「摘出手術」を受けることは可能ですか?不可能な場合はどういった場合でしょうか?」「1cm未満の腫瘤ですが、MRIで広がりを見てみないと「摘出」可能かどうか分からないかもしれませんが、これなら通常の「部分切除+センチネルリンパ節生検」の手術よりは体に負担もなく、また同じ治療効果ありで、通常の癌としたうえでの「部分切除手術」よりも乳房の整容性は保てますか?」「通常の部分切除手術は腫瘤が1cm未満であっても、2cm~3cmであっても、切除する範囲はほぼ同じでしょうか?」

⇒完全な勘違いをされています。
 「摘出術」も「温存術」もやることは一緒です。
 たとえば、「摘出術」だから○cm以下とか「温存術」だと○cm以上取らなくてはいけない。というようなことはありません。
 ★やることは一緒ですが、保険診療上「癌と診断がついて行う摘出術は温存術となる(料金が違う)」のです。
「センチネルリンパ節生検しないで摘出した場合のデメリットというとこれくらいでしょうか?」
⇒メリット:転移が無い事を(顕微鏡レベルで)確認できる。
 デメリット:それができない。
「この2回の検査でリンパ腺転移はゼロと信じて良いのですよね。」
⇒ゼロとは(さすがに)言えません)
 
 ただ「ほぼゼロ」でしょう。