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マンモには写らずエコーで新たなしこりがたくさん見つかった

[管理番号:416]
性別:女性
年齢:45歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
質問者様の別の質問は下記をクリックしてください。
管理番号:1584「ホルモン剤を飲み始めてからの変化

 
 
4年前に乳管内乳頭腫と診断されました。他に、下の方にごつごつした良く動くしこりもあったのですが、触診で乳腺症のしこりでしょうと、細胞診などはしませんでした。
それは今もありますが、大きさが変わったかどうかはちょっとわかりません。痛みはないです。生理が終わると少し小さくなるような気がします。
2か月前に下の内側に急にできた、よく動く5mm位のしこりを見つけ、受診しました。マンモグラフィと超音波、細胞診の検査をしました。最初から太い針でお願いしたいと申し出たのですが、しこりの形が変わってしまうと後で不便が出るということで、針生研からになりました。
マンモグラフィの所見では小さな石灰化は3か所くらいにポツポツとありましたが問題なし。ただ乳腺がまだ若いので、白っぽく写ってしまっているが心配するものは見えないとのこと。
しこりの触診も心配ない(水が溜まっているのだろう)といわれましたが、エコーでたくさんの新たなしこりが見つかったといわれました。
先生と検査技師さんとの会話では血流が豊富だと言うのが聞こえてきました。
そのまま細胞診をし、クラス3bという結果でした。
細胞診をしたのは一つのしこりだけで、同じところから2度取りました。
しこりが散らばっているみたいなので、MRIとバコラ生検をすることになりました。その検査は10日後です。
たくさん見つかったというしこりは乳腺症の物ではないと言っていました。
乳管内乳頭腫と同じ乳管に出来ているものかどうかも分かりません。
大きさもわかりません。
浸潤しているのかしていないのかも、脇と首筋もエコーで見ていましたが、腫れているのかどうなのかも何も言われませんでした。
何かを測っていたようにも見えましたが。
主治医の先生にはいくつか質問をしたのですが、的外れの質問なのか「わからない」を連発され、不安になっています。
この文章もとりとめがなくて分かりにくいかと思いますが、震える手で思い出しながら打っております。
長く放っておいたことは後悔していますが、色々事情がありましたので、もっと早くにがんが見つかっていたら、精神的に耐えられず・・・となっていたかもしれないので、前向きになろうと思っています。
ただ、今の状態が一体どうなっているのかさっぱりわからないので、ただただ不安です。
先生は癌かもしれないし、乳管内乳頭症(乳頭腫がたくさん出来るもの)かもしれないと言っていました。
が、癌である確率も良性である確率も、とにかくわからない、マンモに写らなくても癌だったことはたくさんある等々、私の中の疑問がつながりません。
こんな状況ですが、まずは癌だった場合進行してしまっているのでしょうか?
管理番号223:細胞診→クラス3→針生検、 管理番号412:超音波で発見されたしこり の方の回答を見て、一喜一憂しています。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「沢山のしこり」が見つかり不安な気持ち、お察しします。

回答

「クラス3bという結果」
⇒普通に考えれば「乳頭腫の可能性」が高いでしょう。
 「癌」の場合にはクラス5(最低でもクラス4)が出る筈です。(細胞診の採取技術にもよりますが…)
 当然、「組織診」の対象となります。
 質問者も希望されたように「最初から針生検にすれば、2度手間では無かった」訳ですが…
 しかも「10日後」とは無駄に診断に時間がかかり過ぎであり「質問者の不安な時間を長引かせる」事となっているのが大変残念です。
 MRIはそもそも不要(組織診で癌と診断されたら考える)です。
 
「エコーでたくさんの新たなしこりが見つかった」
⇒「確率的に考える」と、乳癌が「たまたま同時期に多発」している事は少ないので「良性の可能性の方が高い」とは思います。
 いずれにしろ「MRIを撮って」も何ら解決しません。
 私であれば、「代表的な腫瘤を3個位選んで、その日の内に組織検査(マンモトームなど)をしてしまいますが…
 
「まずは癌だった場合進行してしまっているのでしょうか?」
⇒(癌だとしても)早期です。
 (万が一多発だとしても)癌の進行度には関係ありません。
 一番大きな腫瘍の「サイズ」が「進行度には関係」するのです。
 
◎「10日後のMRIとバコラ」の結果には注意してください。
 MRIで「~に見える」というのは「あくまでも参考所見」にすぎません。(MRI所見を決して、組織診断と同列に考えてはいけません)
 私は、「複数個所の組織診断」こそ必要だと思います。(もしかすると、その10日後のバコラでは複数を狙うのかもしれません。それならいいのですが)
 
 

 

質問者様から 【質問2 転院するタイミング】

先日はお忙しい中、しかも自分の状況が掴めていない状況での質問に、真摯に答えて下さってありがとうございました。
病院へ行く前にこのサイトをよく読んで、「初めから針生研を。MRIは癌の診断には無意味」ということを頭に入れて臨んだつもりでしたが、流れに逆らえませんでした。
触診→MRI→エコー→細胞診と4つの検査をしてきましたが、それぞれの検査の所見はどうなのか説明はなく、質問すると「わからない」を繰り返され途方に暮れていました。
悪性の可能性が高いなら、心づもりもしたいし色々と都合をつけなくてはいけないこともあります。
田澤先生からは乳頭腫の可能性が高い、悪性だとしても早期だと言っていただけて少しホッとしておりますが、まだまだ不安でいっぱいです。
本来なら主治医から今の状況を詳しく聞く権利があるはずなのに、はぐらかすような(と私は感じました)答えしか返ってこないため、もし悪性だった場合、前向きに治療出来るのだろうかと考えていました。
たとえ良性であったとしても、私は癌のリスクがあるなら切除したいと言ったのですが、主治医は良性の物は積極的には切らない方針だそうです。(なので、今ある乳管内乳頭腫もそのままになっています)
もし、貴院に受け入れて頂けるなら田澤先生に診て頂きたいです。
(これはドクターショッピングに当たるのでしょうか?)
もしそちらで診て頂けるなら、来週(具体的には26日)バコラ生研とMRIの検査の予約が入っていますが、それらが終わって結果をもらってからの方が良いでしょうか?
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 質問者の気持ちは非常に良く解ります。
 私も、このQandAをして改めて「世の中には、何て無意味な診療が多いのだろう?」と少々驚いています。
 私がかつて長期間勤務していた「東北公○病院」では全く考えられない医療です。(精度とスピードが特徴でした)
 最初から「組織診」をすればいいものを、「細胞診」して、(その結果の日から10日後に)MRIとバコラとは、まるで○研○明病院みたいな「まだらっこしい」やり方です。
 それが正しいと思っているのでしょう。

回答

「たとえ良性であったとしても、私は癌のリスクがあるなら切除したい」
⇒私はご本人の意思を尊重します。
 例えば「乳管内乳頭腫」、「線維腺腫」であったとしても「ご希望があれば」摘出は良い選択だと思っています。
 不安を取り除く事も「大切な医療」です。
 
「貴院に受け入れて頂けるなら田澤先生に診て頂きたい」
⇒是非、受診してください。
 
「来週(具体的には26日)バコラ生研とMRIの検査の予約が入っていますが、それらが終わって結果をもらってからの方が良いでしょうか?」
⇒(勿論、ご本人次第ですが)MRIもバコラも不要です。
 当院受診していただければ、(その日に)私が「超音波ガイド下マンモトーム」を必要であれば複数個所、検査します。
 
 
 

 

質問者様から 【質問3 子宮筋腫も持っています】

先生に診察して頂いた者です。
今日は丁寧に診て下さってありがとうございました。
マンモトームは、今思えばそんなに痛くはありませんでした。
針の太さを見て怖気づいてしまったようです。
麻酔が切れてからは痛みが出てきましたが、市販の鎮痛剤で落ちついています。
乳腺症でしょうと言われていたものが癌かも知れないこと、ショックでした。
思い切り泣きたいのに、涙が出てきません。
一喜一憂を繰り返しているうちに自分の感情がよくわからなくなってしまいました。
でも、今日まで、わずかな情報から真摯に答えて下さっている先生にどれだけ助けられたかわかりません。
そして、ここに書き込んでおられる不安を抱えた方たちと、思いを(勝手にですが)共有出来ていることは、どれだけ救いになっているかわかりません。本当に感謝しています。
それにしても、「良性でしょう」という安易な診断は危険ですね。患者側もその言葉が聞きたいし、安心しきってしまうところもあります。
良性こそ、きちんと良性であることを確定しないといけないのだと思いました。
質問ですが、癌がホルモン陽性だった場合、子宮+卵巣があるのとないのでは予後が変わってきますか?
卵巣嚢腫で片側卵巣全摘、子宮筋腫もあります。
子供も産み終えたので、もう子宮も卵巣も必要なくなりました。まだ閉経はしていませんが、ホルモン療法を行うということは無理やり閉経させてしまうということだと理解しています。
ホルモン療法で、子宮体がんの確率が上がるとも聞いていますので、乳がん手術の際、乳房と子宮と卵巣を一緒に摘出することは無理がありますか?
今は、こんな苦しい思いをするなら、取れるものは全部取ってしまえ~!と少々乱暴な気持ちになっています。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 遠方から来ていただいて、お疲れ様でした。
 私は「画像所見から素直な所見をお話し」させてもらいました
 もしかすると「以前から診ている担当医」は「前とはあまり変化なし」という先入観があったかもしれません。
 画像所見ときちんと向き合って、「その所見に応じた対応(マンモトームなど)」が必要だと感じました。

回答

「良性こそ、きちんと良性であることを確定しないといけないのだと思いました」
⇒その通りです。
 特に「ある程度の大きさ」のものは「万が一悪性だった場合には、(小さいしこりに比較すると)より大変なことになってしまう」という意識が必要です。
 
「癌がホルモン陽性だった場合、子宮+卵巣があるのとないのでは予後が変わってきますか?」
⇒(子宮は関係ありませんが)卵巣は影響があります。
 卵巣からの女性ホルモンを抑性するために「閉経前の」ホルモン療法があります。
 昔は「卵巣摘出=卵摘」という治療が行われていました。
 現在では「LH-RH agonist」という(3カ月に1回の)皮下注射で「卵巣機能を抑性する=卵摘と同等の効果を得る」方法があるため、「外科的侵襲のある」卵摘を敢えて「治療法」として挙げる事はありません。
 
「ホルモン療法で、子宮体がんの確率が上がるとも聞いています」
⇒その通りです。
最新のATLAS試験の結果
「ホルモン剤=タモキシフェン」の10年投与で『子宮体癌(と肺動脈塞栓をあわせた)死亡リスクは0.4%増加する』ことが解っています。
 ♯ 海外データなので、日本には殆どない肺動脈塞栓もリスクの中に含まれています。
一方で「乳癌死のリスク低下は12%」あります。(つまり、子宮体癌のリスクは増加するとしても、乳癌抑性の効果が30倍も高いので、ホルモン療法はやるべきなのです)
 
「乳がん手術の際、乳房と子宮と卵巣を一緒に摘出することは無理がありますか?」
⇒治療(乳癌の再発予防や子宮体癌の回避)からすると全く無理はありません。
 しかし、「保険適応」の問題があるでしょう。
 「子宮筋腫」と「卵巣のう腫」の病名があれば保険診療が成り立つとしても「婦人科の先生」が同意してくれるかの問題もありそうです。
 
◎画像診断(超音波)上、「癌の可能性がある」とはいっても、まだそこまでは考える必要はありません。
 ただ、『診断だけは、きちんとするべき』として、複数個所のマンモトーム生検を行いました。
 今後、「病理診断」を確認した上で、「結果を直視」して治療の相談をしましょう。
 
 

 

質問者様から 【質問4 手術の流れについて】

お返事をありがとうございました。
ついつい色々なことを考えて先走ってしまい、苦笑されていることと思います。卵巣と乳がんの関係がよくわかりました。PMSもあり、女性ホルモンに振り回されることにうんざりしています。
結果が出るまであと数日ですが、今の私の状況をもう一度確認させてください。(不適切な内容でしたら削除してください)
一本の乳管内に腫瘍が5個。乳頭に近い腫瘍は4年前に乳管内乳頭腫と診断(念のため針生研)。乳管の末梢(?)に3個(大きさはそれぞれどれくらいでしょうか?)。そのうちの1つから細胞診でクラス3b。一番大きい腫瘍(乳腺症?と言われてきたもの)の大きさが3.5cm(?)。マンモトームでは、クラス3bだったものと3.5cmのものについておこなった。リンパ節のエコーは、腫れは見えなかった。
この状況で、一番大きいものががんだった場合、進行度は大きさで決まるものではないと分かっていますが、先生の所見ではどんな感じでしょうか?
今、先生の書かれた「石灰化3部作」を読んで、手術までの流れをシミュレーションしています。
1.がんだった場合
迷わず全摘を希望しています。全摘の場合、広がり具合を見るMRIは不必要ですか?CTは必要なのですね。それとも、MRIかCTか選べますか?
「マンモトームの結果を聞く」
 ↓2~3日後?
「CT」or「MRI?」当日結果が出る?
 ↓2週間後?
「前日入院」
 ↓
「手術」
化学療法や放射線治療(全摘でも転移があった場合?)などは、術後に決定?
2.がんではなかった場合
「腺葉区域切除?」
2.a 腺葉区域切除でがんが見つからなかった場合。→治療終了
2.b 腺葉区域切除でがんが見つかった場合?→1.の「CT」or「MRI?」から?
数日待って直接お聞き出来れば済む話なのですが、よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 「苦笑されていることと思います」など、とんでもありません。
 私は、いろいろな反応の患者さんを見てきていますが、質問者の反応(というか、考え方)「自分の状況を細部まで、きちんと理解しようとする姿勢」は望ましいものと思っています。
 そのように「きちんと理解した上で、自分が何を望んでいるのか?」を明らかにしてもらえるのが「担当医として一番ありがたい」事なのです。

回答

「一番大きいものががんだった場合、進行度は大きさで決まるものではないと分かっていますが、先生の所見ではどんな感じでしょうか?」
⇒あの3.5cmの腫瘤が「癌」だとしても「全てが浸潤部」とは考えていません。
 非浸潤癌の中に「浸潤部分があるとしても」『浸潤径:2cm未満 cT1』『リンパ節転移無し:cN0』⇒(私の感覚では)cT1, cN0, cStage1(1期)と思います。
 
「全摘の場合、広がり具合を見るMRIは不必要ですか?CTは必要なのですね。」
⇒その通りです。きちんと理解されています。
 MRIは「あくまでも乳腺内の拡がり診断目的」なので、「全摘であれば勿論不要」です。
 CTは「全身チェック」なので「浸潤癌の診断」ならば行った方がいいでしょう。
 ただ、針生検で「非浸潤癌との診断となった場合」は本来不要となります。ただ、(針生検では浸潤部分が絶対にないと断言はできないので)その場合でもCTを撮ってもいいと思います。
「MRIかCTか選べますか?」
⇒選べません。
 MRIは「乳房しか撮れない(全身を撮ろうとしたら膨大な時間がかかり無意味です)」ので「全身チェック目的ならCT」「乳房内拡がり診断目的ならMRI」というように目的が異なります。
&nbsp
「マンモトームの結果を聞いた後のCT」
⇒(MRIと違って)CTは当日にできる可能性があります(当日の混雑具合によるので保証できるわけではありませんが…)
 特に質問者は「遠方から」なので、できるだけ当日に済ませたいとは思っています。
 
「「CT」or「MRI?」当日結果が出る?」
⇒この場合CTとなりますが、当日に結果が出ます。
 
「癌確定から手術までの期間:2週間後?」
⇒現在は3週間位となってます。
 
「化学療法や放射線治療(全摘でも転移があった場合?)などは、術後に決定?」
⇒その通りです。
 ここにホルモン療法も加えますが、術後に決定します。
 一応予想される術後治療を記載しておきます。(考え方の参考にしてください)
 まずは「①術後病理結果で全てが非浸潤癌だった場合」と「②一部でも浸潤部分があった場合」に分けます。(以下、乳房切除を前提とします)
 

  • 「①術後病理結果で全てが非浸潤癌だった場合」
    ⇒術後療法(放射線治療もホルモン療法も化学療法も)は一切不要です。
     
  • 「②一部でも浸潤部分があった場合」
    ・放射線照射
     これはリンパ節転移を認めた場合に検討します。(4個以上なら必須となります)
     ただし、「質問者の場合には、エコー所見からはほぼ可能性がない」と思います。
    ・全身療法(ホルモン療法か化学療法か?)
     ⇒基本的にサブタイプ(ホルモン療法が効くタイプなのか?HER2が陽性なのか?)によって決めます。
     ♯但し、浸潤径が5mm未満であれば(サブタイプが何であれ)化学療法は行いません。
     

「がんではなかった場合「腺葉区域切除?」」
⇒分泌があれば、そうしたいところですが、分泌が無い場合には『これら腫瘍を全て含むような乳腺部分切除』で代用します。
 
「腺葉区域切除でがんが見つかった場合?→1.の「CT」or「MRI?」から?」
⇒全くその通りです。
 
◎私としても、「病理結果をお話ししてから」上記のような内容を説明し理解していただくよりも、『このように事前に理解してもらう』事は「診療の確実性・効率化」にとても歓迎しています。
 ありがとうございます。
 
 

 

質問者様から 【質問5 前向きになりたいです】

告知を受けてから気持ちが前向きになれません。
先生は「結果を直視し治療の相談をしましょう」と言って下さいましたが、直視することが今はなかなか難しいです。
私の今の状況は、同一乳管に超音波画像上7mm~25mmの浸潤癌が多発。
病理検査報告書にはPapillotubular(乳頭腺管癌?)~scirrhous carcinoma(硬癌?)NG grade2と書かれています。
リンパ節もエコーで良く診て頂いて腫れはなかったとのこと。先生からはステージ2aと言われたと記憶しています。
ステージ2aということは、乳頭腺管癌よりも硬癌のほうが上回っているのでしょうか?つまり、浸潤径が大きいということでしょうか?小さい腫瘤も浸潤癌ということは悪性度も高いのでしょうか?
以前、「確率的に考える」と、乳癌が「たまたま同時期に多発」している事は少ないと回答を頂きましたが、同じ乳管内で転移したのでしょうか?
サブタイプを聞くのも怖いです。
今までのQ&Aで語りつくされた事かもしれませんが、手術の日までにどんどん進行してリンパ節にも転移してしまうのではないかと気が気ではありません。
何もせず、PCの前で検索ばかりしていても始まらないので、子宮と卵巣の検査に行ってきましたら、残った左の卵巣も皮様嚢腫らしいということが発覚し、気持ちがくじけてしまいました。やはり同時に手術はできないそうです。
またいつもの日常に戻ることが出来るのでしょうか?闘病という言葉は厳しすぎて逃げ腰になりますが、出来ることは全部やりたいと思っています。
先生、支えて下さいますか?
貴院には、気持ちを聞いて下さる場所が何かありますか?
 

田澤先生から 【回答5】

 こんにちは。田澤です。
 「他院での長い経過」を考えると、「急に乳癌と診断」された質問者の気持ちはお察しします。

回答

「ステージ2aということは、乳頭腺管癌よりも硬癌のほうが上回っているのでしょうか?つまり、浸潤径が大きいということでしょうか?」
⇒この文章を読むかぎり若干の「勘違い」があるようです。
 
◎乳頭腺管癌も硬癌も「どちらも浸潤癌」なので「どちらが優勢であっても浸潤径は一緒」です。
 つまり「乳頭腺管癌が全てを占める状況」でも「乳頭腺管癌と硬癌が混じっている状況」でも「全てを硬癌が占める状況」でも「最大浸潤径は同一」なのです。
 (前回、お渡しした)病理レポートにある「papillotubular ~ scirrhous typeの」という表現ですが、これは形態的に『純粋な乳頭腺管癌(papillotubular)と言える部分と(一部間質浸潤が目立つ)硬癌(scirrhous)に見える部分が混在している』という表現です。
 
◎基本は「乳頭腺管癌」です。
 乳管内病変(非浸潤癌)として乳管内を拡がり(レポートに記載してあるcomedo壊死を伴う顕著な乳管内進展という表現が一致します)、ところどころで浸潤(同一乳管内の多発浸潤といいます)して「しこりを形成」します。この状況です。
浸潤した状態で、この場合「乳頭腺管癌」と呼ばれますが、更に「1つ1つの浸潤部分」が大きくなる過程で「間質浸潤が強くなる」と(顕微鏡的には)「硬癌」と呼ばれます。
 「硬癌」には「純粋な硬癌」と「乳頭腺管癌などが浸潤増殖する過程で、一部が硬癌と解釈される場合(これを乳頭腺管癌崩れの硬癌と表現します)」の両方があるのです。
 
★先日「ステージ2A」とお話したのは「多発浸潤の内の最大径の腫瘍」の大きさを25mmと(超音波上)測定したからです。 cT2(2cm<腫瘍径≦5cm), cN0, cStageⅡAと判断したのです。  但し、先日もお話しましたが、「25mmの腫瘍は(両サイドにある)2つの腫瘍が乳管で連続している(つまり一つでは無い)」とも取れます。  私の「ステージ2A」との判断はあくまでも「触診で一つの腫瘍」と認識したからであり、『手術標本で結局は非連続(この場合は最大浸潤径が間違いなく2cmを切ります)としてpT1c(最大浸潤径≦2cm), pN0, pStageⅠとなる可能性』もあります。(この内容も、前回じかにお伝えしています)   「小さい腫瘤も浸潤癌ということは悪性度も高いのでしょうか?」
⇒全く関係ありません。
 「非浸潤癌として同一乳管内を拡がりながら」『浸潤した部分が腫瘤を形成』しています。
 つまり、「シコリとして認識される」部分(=腫瘤の部分)は「浸潤癌」であって当然なのです。
 
『乳癌が「たまたま同時期に多発」している事は少ないと回答を頂きましたが、同じ乳管内で転移したのでしょうか?』
⇒これも明らかに勘違いされています。
 先日の私の説明が不十分だったと思います。ここで再確認お願いします。
 
 今回の多発腫瘍は「乳管内にできた腫瘍(これは非浸潤癌の段階です)」が、乳管内を拡がる(伸びていく)過程で、そのところどころで、浸潤がおこり、『それぞれがしこりを形成』したものです。
 過程を以下に示します。
①1本の乳管(枝分かれも含めて)に広範囲に非浸潤癌が拡がった。
②その中のところどころで浸潤を(バラバラに)起こし、それぞれが「しこりを形成」した
 これは「広範な非浸潤癌に起こった多発浸潤」であり、「乳癌がたまたま同時期に多発」でもなく、「乳管内の転移」でもありません。
 御理解いただけたでしょうか?
 
「手術の日までにどんどん進行してリンパ節にも転移してしまうのではないかと気が気ではありません。」
⇒手術までの期間は「それ程長く」ありません。
 大丈夫です。
 世の中には「2カ月待ち」「3カ月待ち」も存在します。(それは流石に問題だと思いますが…)
 
「またいつもの日常に戻ることが出来るのでしょうか?」
⇒勿論です。
 私は実に沢山の患者さんが、「最初の絶望感」から「手術」、そして「術後療法」と乗り越えるたびに「日常へ戻っていく姿」をみています。
 今の質問者には「想像ができないのも無理は無い」と思いますが、『すでにゴールへ向って走り始めています』ゴールは(今は遠くに感じるかもしれませんが)ちゃんと見えています。
 
「出来ることは全部やりたいと思っています。先生、支えて下さいますか?」
⇒勿論です。
 お任せください。
 
「貴院には、気持ちを聞いて下さる場所が何かありますか?」
⇒「がん相談支援室」があります。
 詳細は、次回外来受診の際に「秘書」より説明してもらいます。
 
 

 

質問者様から 【質問6 卵巣嚢腫の手術について】

いつも明快な回答をありがとうございます。
当日は丁寧に説明して下さったにもかかわらず、あまり頭に入っていませんでした。
先日見つかった卵巣嚢腫ですが、エコーで3cm×4cmの大きさで類皮嚢胞(?)と言われMRIを撮るように言われました。
この腫瘍が良性であれ悪性であれ、出来るだけ早く摘出したいと思っています。
乳がんの手術後、どれくらいで開腹手術が出来るでしょうか?
また、乳がん手術後、化学療法となった場合、どのような順序でするのが良いでしょうか?
卵巣がんだった場合、抗がん剤はどのように使えばいいのでしょうか?
先生が支えて下さると言って頂き希望も見えてきたのですが、次から次へと心配事が出てきて苦しいです。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答6】

 こんにちは。田澤です。
 卵巣嚢腫「良性であれ悪性であれ、出来るだけ早く摘出したい」という事ですね。
 了解しました。

回答

「乳がんの手術後、どれくらいで開腹手術が出来るでしょうか?」
⇒特に期間を空ける必要はありませんが、全身麻酔を考慮して
 1週間くらいでしょう。
 
「乳がん手術後、化学療法となった場合、どのような順序でするのが良いでしょうか?」
⇒乳癌のサブタイプによります
 luminal type(ホルモン療法の感受性あり)であれば、「卵巣摘出」を先にする方が好いでしょう。
 luminal typeでない場合には、どうするか?
 術後の化学療法はあくまでも「再発予防」なので急がないことを考慮すると、ご本人の「良性であれ悪性であれ、出来るだけ早く摘出したい」という思いから「先に卵巣摘出」してもいいし、化学療法の後に「卵巣摘出」してもどちらでもいいと思います。
 ♯術後の化学療法は「急ぐ必要は無い」のです。
 
「卵巣がんだった場合、抗がん剤はどのように使えばいいのでしょうか?」
⇒その場合は「卵巣がんの抗がん剤」が優先します。
 以前、そのようなケースでは卵巣がんで「TC(乳癌のTCとは異なり、タキサン+カルボプラチンでしたが)」を用いていました。
 実は乳癌の再発予防で用いるTCはタキサン+エンドキサンなのですが、卵巣がんで用いるTCでも十分効果あります。(TCの略が異なり混同してしまいそうですが…)
 つまり、卵巣がんの抗がん剤を用いれば「乳癌の再発予防の抗がん剤は不要」なのです。
◎何も心配する必要はありません。
 
 

 

質問者様から 【質問7 3週間後に手術することになりました。】

いつも丁寧なご回答をありがとうございます。
卵巣と子宮は、乳腺の手術の3週間後に、開腹手術で全摘することになりました。
卵巣嚢腫は積極的に悪性を疑う所見ではないとのこと。
少しほっとしています。
乳頭腺管癌くずれの硬癌ということですが、性質は乳頭腺管癌と思っていてよいのですか?
乳頭腺管癌のホルモン陽性は少ないのですね・・・。
化学療法をする場合、どのくらいの期間なら空いても大丈夫ですか?
開腹手術はやはり化学療法の前にした方が、体力的には楽でしょうか?
食欲がわかず、体重が激減してしまいました。
2週間前、先生はエコーでリンパ節への転移は見られないとおっしゃって下さいましたが、エコーの所見と実際とのかい離はどのくらいありますか?
CTはまだこれからです。
気のせいかもしれませんが、しこりが大きくなっているような気がします。
また、乳首の真横の肋骨に近いところにしこりを触れます。
今まではなかったような気がします。
これはリンパ節ですか?また新たに腫瘍が出来たのでしょうか?
自分の状況を知るのも怖い、知らないのも怖い。
精神的に参っています。
手術まで2週間がとても長いです。
今まで張りつめていたものが切れそうです。
助けて下さい!
 

田澤先生から 【回答7】

 こんにちは。田澤です。
 「卵巣と子宮」についても、早速手配したのですね。
 その行動力を支持します。
 手術前は誰しも「不安がつのる」ものです。
 もう少し「手術前の期間」を短くしてあげられたら良かったのですが。
 ただ、病状が「その位の期間」では進行したりはしないので、御心配なく(ブランド病院では診断がつくまでも長いのに、更に手術までも2,3カ月待ちなのです。)

回答

「乳頭腺管癌くずれの硬癌ということですが、性質は乳頭腺管癌と思っていてよいのですか?乳頭腺管癌のホルモン陽性は少ないのですね」
⇒これは勘違いです。
 質問者の個人情報は勿論この場で言えませんが、もし「来週の受診までに知りたい場合」には秘書に「メールアドレス」をお伝えしていただければ、「メールでお知らせ」します。
 どうか、ご活用を
 
「化学療法をする場合、どのくらいの期間なら空いても大丈夫ですか?」
⇒「開腹手術後」と言う事ですよね。
 私は1週間もあれば、十分と思いますが、その点はむしろ「婦人科の先生に入院中に聞いておいてください」
 
「開腹手術はやはり化学療法の前にした方が、体力的には楽でしょうか?」
⇒順番的には、その方がいいでしょう。
 婦人科の先生も、「化学療法後」だといろいろ気にするでしょうから。
 
「エコーの所見と実際とのかい離はどのくらいありますか?」
⇒勿論エコー所見も単純に「転移疑いなし」と「転移確実」に二分されるわけではありません。
 実際は、①「転移は確実にない」~②「転移はほぼ無い」~③「転移の可能性は低い」~④「転移の疑いあり」~⑤「転移の可能性が高い」~⑥「確実に転移」まで様々な段階の所見があります。
 質問者の場合には、これらの内②「転移はほぼ無い」に相当し、乖離の確率は「およそ10%程度」です。
 
「しこりが大きくなっているような気がします。また、乳首の真横の肋骨に近いところにしこりを触れます。」
⇒心配ありません。
 来週の受診時には勿論確認させてもらいます。
 可能性として考えられるのは「マンモトーム生検による組織反応」でしょう。質問者の場合には一度に3か所も針生検(その内2箇所はマンモトーム生検)をしているのですから、硬くなったりするのは当然です。
 
「これはリンパ節ですか?」
⇒違います。
 乳房内リンパ節というものも存在しますが、腫大したりはしません。
 
「また新たに腫瘍が出来たのでしょうか?」
⇒そんな短期間で「触知するような」腫瘍増大は考えられません。
 大丈夫です。
 来週、超音波で見てみましょう。
 
「手術まで2週間がとても長いです。今まで張りつめていたものが切れそうです。助けて下さい!」
⇒来週早々には受診予定なので、しかもCTで「転移が無い事が確認(当然そう思っています)されれば」少し安心されるでしょう。
 秘書も心配していましたので、「心のケア」についてもご相談させてください。
 
 

 

質問者様から 【質問8】

ご心配をおかけしております。
リンパへの転移の可能性はほぼ無いと言って頂いているにもかかわらず、泣き言ばかりで申し訳ありません。
サブタイプがホルモン陽性ならば、子宮卵巣を全摘することも頑張れそうですが、乳頭腺菅癌のホルモン陰性が7割と聞いて、急いで卵巣を摘出せず乳がんのことが落ち着いてからの方が肉体的精神的にもましなのかなと思った次第です。
卵巣全摘は、更年期症状が強く出ることがあるそうで、普通はホルモンを補充しながら体を慣れさせるそうですが、私の場合はそれが出来ません。
更年期症状に耐えながらの化学療法に耐えられるのか自信がありません。
出来ることなら、せめてホルモン陽性であってくれたらと思っています。
サブタイプを聞くのは怖いですが、今私にとって一番気にかかることはホルモン陽性かどうかということです。
メールで結果を知らせて下さるとのことですが、なかなか一人で受け止める決心がつかず、受診まで目前となってしまいました。
もし悪い結果だとしても、どうか希望の持てるお言葉を添えて頂けたらと思います。
このQAのどこかで公開されていた秘書様のメルアドにメールを送らせて頂きます。
よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答8】

こんにちは。田澤です。
「乳頭腺菅癌のホルモン陰性が7割と聞いて」
⇒誤った情報です。
 乳癌全体としてホルモン陽性の確率は「7割」です。
 私の経験で言うと、
 組織型で言えば、充実腺管癌やアポクリン癌は「ホルモン陰性」が多く、『乳頭腺管癌はホルモン陽性が高い、おそらく9割くらい』だと思います。
 
「QAのどこかで公開されていた秘書様のメルアドにメールを送らせて頂きます。」
⇒15日のできるだけ早い時間帯にメールでお知らせします。
 ご安心を
 
 

 

質問者様から 【質問9】

病理結果の送付や心強いメッセージなど、お忙しい中いろいろと気を遣って頂いてありがとうございます。自分のことで精一杯で、お目にかかったときにきちんとお礼を申し上げることが出来なくて申し訳ありません。
今日も丁寧な診察をありがとうございました。CTでもエコーでも、リンパ節の腫れは見られなかったとのことで、とりあえずはホッと致しました。
前もって先生にお聞きしたいことはだいたい質問できたと思います。その場で疑問が沸いたらその場でお聞きするば良いのですが、何となく気後れしてしまい聞けませんでした。二度手間になってしまうこと、申し訳ありませんがこの場をお借りしたいと思います。
1つ目は、前回、画像診断と病理の結果との乖離は10%とご回答頂きましたが、もしその10%に入ってしまった場合でも、リンパに3個も4個も見つかるということは無いでしょうか?
2つ目は、先日見つけたしこりについて、これも同じ悪性腫瘍だと診断されましたが、次から次へと見つかるしこりについて、今までおとなしかったがんが急にスピードを上げて増殖し始めたのでしょうか?あるいは、ただ気付かなかっただけなのでしょうか?
3つ目は、最初から全摘を希望している場合、先生は気になっている腫瘤以外はあまり気に止めないものでしょうか?一般的に、しこりや乳頭分泌で受診した場合、他の病変についてはあまり追求しないものでしょうか?検診では全体を診るが自覚がある場合はほかの病変は見過ごされてしまうことがあるのでしょうか?上手な病院の掛かり方も知りたいです。
4つ目は、今日の診察で「ご家族はいらしてないのですか?」と聞かれましたが、実は私の状況はとてもシビアな状況なのでしょうか?ただ単に、入院と手術の説明を複数で聞いた方が良かったというだけなのでしょうか?
最初の診断と今の状況と比べて、「ここまでひどいとは思わなかった!」という状況でしょうか?
その場でお聞きすれば良かったのですが、長い道中ひとりで帰ることを考えると聞けませんでした。
個人的な内容で他の方には参考にならないかと思いますが、よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答9】

 こんにちは。田澤です。
 遠方よりご苦労様でした。
 「的確に自分にとっての疑問点」を見つけ「正確に表現して解決」する。
 病気に対してとてもいい姿勢だと思います。
◎今回の内容については「多発病巣がある際の、診断手順と術式決定」について、この「QandA」を読んでいる多くの方に参考になると思います。

回答

「1つ目は、前回、画像診断と病理の結果との乖離は10%とご回答頂きましたが、もしその10%に入ってしまった場合でも、リンパに3個も4個も見つかるということは無いでしょうか?」
⇒これはほぼ断言できますが、「3個も4個もと言う事はありえません」
 それは画像所見(エコーとCT)から間違いありません。
 
「2つ目は、先日見つけたしこりについて、これも同じ悪性腫瘍だと診断されましたが、次から次へと見つかるしこりについて、今までおとなしかったがんが急にスピードを上げて増殖し始めたのでしょうか?あるいは、ただ気付かなかっただけなのでしょうか?」
⇒これは、
 乳管内進展(非浸潤癌)している腫瘍が浸潤して「硬く触れる」ようになったものであり、「突然できた」わけではありません。
 
 質問者の場合には「乳管内病変で連続した浸潤癌が(組織診断で解っているだけでも)3個」あります。
 これは、(質問者の経過から考えて)乳管内病変として「同側乳腺内にはかなり広範」な拡がりを示している事を推測します。
 超音波では「乳管内病変は、それ単体では不明瞭」なのです。
 そうすると、どのタイミングかで、「その、ところどころが浸潤してマスを形成」します。
 今回の所見も「触診で全く触れなかったものが」触れるようになった事からも『乳管内病変が浸潤してマスを形成した』と考えます。
 「気づかなかっただけ」ではありません。
 
「3つ目は、最初から全摘を希望している場合、先生は気になっている腫瘤以外はあまり気に止めないものでしょうか?」
⇒優先順位を考えた診療を行います。
 決して「気になっている腫瘤以外は気にとめない」訳ではありません。
「最大病変もしくは主病巣」というものがあります。
 病変が多数存在している場合には、
 ①どの病変が最大病変か?
 ②病変が多数存在している場合には、ひとつには「診断を確実にするために(最大病変が良性で、それ以外で悪性が出る場合もあるのです)」もうひとつは「乳房温存術が可能かどうか」という意味で、『複数個所の組織検査を(私は)します』
 ③その後に(温存を希望される場合には)乳房MRIで「病巣の拡がりを確認」します。
 ④(超音波では不明瞭であるが)MRIで指摘された病巣の評価(所見が本物ならば針生検の追加)を行います。
 
 
 ★質問者の場合には
 そもそも(4年前に前医で乳管内乳頭腫と診断されていた)腫瘍①と、やはり(4年前に前医で乳腺症といわれていたが)「エコーでは癌が疑わしい」腫瘍②、更に今回(前医で細胞診クラス3bだけど)「やはりエコーでは癌が疑わしい」腫瘍③がありました。
 主病巣は腫瘍②であり、ただ「②が万が一良性であっても①や③が悪性の可能性も十分ある」と考えて、まずは「診断確定」を主目的として全て針生検(②③はマンモトーム生検)を行っています。
 結果として、「全てが浸潤癌」という診断となっています。
 ここまでが「最大病変及び、多発病巣の確定診断」です。
 
 ◎次のステップとして、「温存できるか? 切除を希望するのか?」となります。
  術式として「温存も考慮」する場合には、「乳管内病変」など全ての所見を拾い挙げ、「良性と判断できないものは、全て針生検」します。
 ★「木を見て森を見ず」という言葉がありますが、乳腺の診療もそうなのです。
 よく「超音波技師さんが」物凄い細かい所見をいちいちチェックします(それが仕事なので、それを否定している訳ではありません)
  「純粋な検診目的」ならば、それもいいかもしれません。
 
 但し、「本物の病変がある」場合に、最初から「全ての細かい所見を」チェックするのはナンセンスなのです。
 大事な事は「最大病変を見極める」その上で、「最大病変ではないけれど、癌の疑いがあるような複数の病変を認識」そして「診断、治療に必要な針生検を行う」ことなのです。
 
 基本的に多発病巣の場合には「最大病変で診断が付いてしまった場合」には、それが「温存術などのために必要ではないかぎり」その他の「小病巣を追求(針生検)することはありません」
 
「一般的に、しこりや乳頭分泌で受診した場合、他の病変についてはあまり追求しないものでしょうか?」
⇒上記に示した通りです。
「しこりで受診した場合」には、
他に「最大病変」がないか?もしくは「全く別の病変がないか?」必ず確認します。
ただし、「多発病変があった場合には、最大病変及び、診断に必要な病巣の評価が優先」されます。
その後、「術式などのために必要が生じれば」それ以外の「やや怪しい病巣」も明らかにします。
一度に4個以上の「針生検」をすることは(私でさえ)大変な事ですし、なにより「患者さんの負担となる」のです。
「乳頭分泌で受診した場合」にも、
やはり超音波で「腫瘤」が無いか?確認します。
そして、「乳頭分泌よりも重要な所見」がもしあれば、それらを優先します。
その上で、最終的に「優先順位が落ちたもの」の精査が必要であれば行います。
(例えば…  乳頭分泌が主訴で受診された方に「明らかに大きな癌」があれば、そちらの針生検を優先します。
 もしも「乳房切除の方針」となる場合には「乳頭分泌を乳管造影」して「小病変をみつける」意味がどの程度あるでしょうか?
 「木を見て、森を見ず」とならないような診療が必要なのです。
 
「検診では全体を診るが自覚がある場合はほかの病変は見過ごされてしまうことがあるのでしょうか?」
⇒上記に示した通りです。
 そもそも「検診」と「自覚があっての受診」では目的が異なります。
 「検診」であれば「細かい所見」をチェックします。
 「自覚があっての受診」の場合には優先順位が「自覚した腫瘤?」にあります。
  まず、「自覚している=気になっている」ものの正体は何であろうか?ここにポイントを置きます。
  ただ、だから「他の病変を見過ごす」事はありません。
  「自覚しているもの」が最大病変とは限らないからです。
  ただ、「検診」とは異なり、「優先順位をつけている」のにすぎないのです。
 
「上手な病院の掛かり方も知りたいです。」
⇒目的をはっきりさせることです。
 全く自覚症状が無いのならば、「気になるところはないので、異常がないかというのが目的」です。
 「気になる点があるのならば、「ここが気になるので、これが何なのか?をまずははっきりさせてください」その上で、「他も異常がないかしらべてください」
となります。
 
「4つ目は、今日の診察で「ご家族はいらしてないのですか?」と聞かれましたが、実は私の状況はとてもシビアな状況なのでしょうか?ただ単に、入院と手術の説明を複数で聞いた方が良かったというだけなのでしょうか?」
⇒ただ単に、「結果と入院案内の受診」の際には、御家族と一緒に来ている方も多いので、『話し始める前に確認』しただけです。
 一切他意はありません。
 私は「シビアな病状がもし、あれば」患者さん本人に隠したりはしません。(お年寄りで、家族が希望しなければ別ですが)
 
「最初の診断と今の状況と比べて、「ここまでひどいとは思わなかった!」という状況でしょうか?」
⇒全くそんな事はありません。
 腫瘍の多発は「進行度とは関係ありません」
 術式(乳腺を残すか、どうか?)に関係しているだけです。
 ◎cT1c, cN0, cStage1か、cT2, cN0, cStage2Aのどちらかです。(浸潤径については乳管内病巣がある場合には術前診断は困難となります)
Luminal typeでもあり、決して「進行した」状況ではありません。
 
 

 

質問者様から 【質問10】

初診から現在の診断に至るまでの経緯を、丁寧に詳しく教えて下さってありがとうございました。大変失礼な質問もありましたこと、申し訳なく思っています。
「木を見て森を見ず」とは、まさに私が不安に感じていたところであり、今の状況の原因としてそれもあったのではとの思いから、田澤先生はどのようにサーチされているのか良く知ることが出来て安心致しました。
面と向かってはなかなか質問も出来ませんが、このような場で不安や疑問、勘違い(たくさんありました)を一つ一つ丁寧に解きほぐして下さる先生に全幅の信頼を置くことが出来ました。手術は落ち着いて受けられると思います。一歩一歩焦らずに、前を向いていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答10】

 こんにちは。田澤です。
 解っていただけて良かったです。
 不安なまま治療を迎えるのはいいことでは無いのです。
 私は、沢山の経験(昔は苦い思いをした事もありました)をしてきているので、何がポイントなのか解っているつもりです。
 治療は私にお任せください。
 
 

 

質問者様から 【質問11 分泌型かコメド型か?】

先生や秘書さんに支えて頂きながらずいぶん落ち着きを取り戻してきました。
ありがとうございます。まだ病気を受け入れるには至っていませんが、治療をきちんとやっていけば、今はまだ、必ずしも受け入れる必要もないのかなと思っています。手術に関しては不安はありませんが、今度は術後の病理結果が心配になってきました。やはり頭を過るのは化学療法のことです。武器が多いほど良いのかもしれませんが、出来ればしたくないなというのが本音です。
乳頭腺管癌でホルモン陰性が7割と勘違いしたのは、コメド型(?)の場合のものを自分に当てはめたためかもしれません。私の生研の病理結果にはcomedoという言葉が出てきます。グレード2、ホルモン強陽性(具体的な数値は出ていませんが少なくとも60%以上?)、Her2+1(陰性)の乳頭腺管癌は何型(コメド?分泌?)になるのでしょうか?分泌型というのは乳頭分泌があったかどうかということも関係してきますか?(最初は血性乳頭分泌でしたが、ひょっとすると乳管内乳頭腫もあったのかも知れないとも思います)分泌型もコメド型も混在するということもありますか?ki67値は貴院では生研では出されないようですが、化学療法を追加するかどうかは20%以上かどうかが分かれ目ということですね。これは、最大病変の病理結果で判断するのですか?ki値が高くてもホルモン療法をきちんとすれば(私の場合は卵巣全摘)、化学療法をしない選択もありますか?
以上、よろしくお願い致します。
  

田澤先生から 【回答11】

 こんにちは。田澤です。
 「comedo型、分泌型」にかんしては、少々誤解され易い部分なので、その点を含めて回答します。
○石灰化の名前「・・型」としての用語
・comedo型(壊死型とも呼ばれる):癌細胞が乳管内を増殖する中で「乳管の中心部で癌細胞が壊死」を起こし、『結果として壊死した癌細胞に沈着した石灰化』
・分泌型:通常の乳管内に分泌された分泌物の中のカルシウムが沈殿しておこる石灰化
 
○非浸潤癌の分類としての「comedo型」と「非comedo型」
・comedo型(非浸潤癌) :病変部乳管の中心に壊死が認められ、(ニキビに似た形状を示す)核異型度が高い事が多く、浸潤しやすい。
・非comedo型(非浸潤癌):壊死を伴わず「低乳頭状」ないし「篩型」構造を示し、核異型度が低く大人しい

回答

「私の生研の病理結果にはcomedoという言葉が出てきます。」
⇒「comedo壊死を伴う顕著な乳管内進展も認められます」の記述についてですね。
 これは「浸潤部分の記載」ではなく、周辺の「乳管内=非浸潤部分」についての記載であることに注意が必要です。
 実際に「浸潤部分にはcomedo壊死=石灰化部分は認められない」のです。
 つまり「comedo型が核異型度が高い、non-luminal」が多いというのは、あくまでも「非浸潤癌」についての話しであり、(質問者の浸潤部分は)「通常の(壊死を認めない)核グレード2の」浸潤癌なのです。
 ○非浸潤部分(乳管内進展部分)が「comedo型」であっても「病変はあくまでも核異型度中等度の浸潤癌」なのです。
 
「グレード2、ホルモン強陽性(具体的な数値は出ていませんが少なくとも60%以上?)、Her2+1(陰性)の乳頭腺管癌は何型(コメド?分泌?)になるのでしょうか?」
⇒どちらのタイプでもありません。
 乳頭腺管癌は「非浸潤癌」ではないので「非浸潤癌の分類としてのcomedo/non-comedo」にも当てはまらないし、石灰化も認めません。
 
「分泌型というのは乳頭分泌があったかどうかということも関係してきますか?」
⇒「乳頭分泌」と「分泌型石灰化」は全く関係ありません。
 ♯「分泌」という用語が一緒なだけです。
 「分泌型石灰化」は(上記のように)乳管内で分泌物にカルシウムが沈殿しておこるものであり、「乳頭からの分泌があるか、どうか」とは全く関係ありません。
 
「分泌型もコメド型も混在するということもありますか?」
⇒石灰化として「分泌型石灰化」と「comedo型石灰化」が同一病変に存在する事はあります。
 しかし「乳頭分泌とは無関係」です。
 
「ki67値は貴院では生研では出されないようですが、化学療法を追加するかどうかは20%以上かどうかが分かれ目ということですね。」
⇒「Ki67のcut off値」は現在の考え方では、20では低すぎます。
 施設によって基準値がバラバラですが、当院では25~30と考えています。
 
「最大病変の病理結果で判断するのですか?」
⇒最大病変の「代表的な視野」でのカウントです。
 
「Ki値が高くてもホルモン療法をきちんとすれば(私の場合は卵巣全摘)、化学療法をしない選択もありますか?」
⇒luminal typeはあくまでも「ターゲットはホルモン療法」です。
 化学療法の上乗せについては「ご本人の意志を尊重」します。
 ちなみに、「質問者の場合のホルモン療法」は「卵巣全摘」後、エストロゲンレベルを採血で確認し、「閉経後ホルモン療法=アロマターゼインヒビター」を用います。
 
 

 

質問者様から 【質問12 術後の痺れなど】

いつも丁寧なご回答をありがとうございます。
先日は、入院手術、術後の精神的なケアなど大変お世話になりました。
自分の中では想定外のことばかりで、取り乱してしまいました。
頑張っていきますので、これからもよろしくお願い致します。
術後の痛みは殆どなく、腕もまっすぐ上がります。傷の部分も引きつる感じもありません。痛みのないのは有難いことですが、部分麻酔をしているような痛みのなさで、二の腕をつねってみても痛くありません。
また、脇のすぐ横の胸のあたりを触るとぐちゅぐちゅと音がします。
そして、術側の肋骨の下のあたりが腫れているような感じです。
うまく表現出来ませんが、ジーパンの腰の部分に贅肉が乗っている感じなのですが、左よりも右の方が余計に乗っかっている感じで、ぷるぷるしています。
これは放っておいて良いですか?
重いものは持たないように気を付けていますが、痛みがないので少々無理をしてしまっているかも知れません。
次の手術では右側は点滴や血圧測定もしないよう、伝えておいた方が良いですよね?
今日からノルバデックスを飲み始めました。
朝から吐き気があり、薬を飲んだ後吐いてしまったらどうしたら良いのだろうと考えてしまいました(今回は耐えましたが)。
飲んだ後吐いてしまったり、飲み忘れたりしたときはどうしたら良いですか?
よろしくお願い致します。
  

田澤先生から 【回答12】

 こんにちは。田澤です。
 術後の痛みなど無く何よりです。
 「朝から吐き気があり」という記載が気になるのですが、「ノルバデックスを飲む前」からのような印象ですが、大丈夫でしょうか?

回答

「部分麻酔をしているような痛みのなさで、二の腕をつねってみても痛くありません」
⇒腋窩郭清をしているので、感覚神経(肋間上腕神経)が一次的に麻痺をしているのです。
 少しずつ戻ると思います。
 
「脇のすぐ横の胸のあたりを触るとぐちゅぐちゅと音がします」
⇒これはリンパ節郭清をした後のリンパ液が少量あるかもしれません。
 ただ、退院日(術後2日目)に確認した時点で殆ど問題無かったので心配ありません。吸収されます。
 
「術側の肋骨の下のあたりが腫れているような感じです。うまく表現出来ませんが、ジーパンの腰の部分に贅肉が乗っている感じなのですが、左よりも右の方が余計に乗っかっている感じで、ぷるぷるしています。これは放っておいて良いですか?」
⇒これは乳房切除しているので、どうしても若干の浮腫みがでるのです。
 心配ありません。
 
「次の手術では右側は点滴や血圧測定もしないよう、伝えておいた方が良いですよね?」
⇒点滴は1年位は患側は避けた方がいいでしょう。
 血圧もできれば、その方がいいですね。
 
「飲んだ後吐いてしまったり、飲み忘れたりしたときはどうしたら良いですか?」
⇒飲んだ直後に吐いてしまったら再度内服してOKです。
 ♯ただし、「吐き気がするような時」にはそもそも(無理してまで)内服する必要はありません。(あくまでも予防投与なのですから)
 飲み忘れ…これは頻繁に相談されます。 午後(昼食後)までであれば、「内服」してもらい、それ以降となったら(翌日の内服と近すぎるので)その日は「休薬」(翌朝より再開)と案内しています。
 
 

 

質問者様から 【質問13 淡々と・・・】

腕の痺れや薬の飲み方についてのご回答、ありがとうございました。
また、朝の吐き気についても、こんな些細なことまで気にかけて頂いて、本当によく診て下さっているんだと感謝しております。
麻痺やリンパ浮腫の予防方法を調べたところ、リハビリ体操があるようなので実行していますが、あまり無理をしないほうが良いですか?
具体的には、窓を拭いたり腕を曲げて上下に動かしたり、背中側に手を回したりというのを気が付いたときにやっています。
胸のぐちゅぐちゅいう音はなくなったみたいです。脇に何か挟まった感じはあまり変化がないみたいですが、まだしばらくかかりますか?
朝の吐き気については、精神的なものだと思います。目が覚めると、しても仕方がない後悔や無念さ、不安などが押し寄せてきて食べられなくなってしまいます。気持ちを吐き出せると楽になるので、自分に合った場所を探すのが先決だと思います。ご迷惑かと思いますが、先生からの回答を読むのも支えになっています。お忙しい中、いつもありがとうございます。
 

田澤先生から 【回答13】

 こんにちは。田澤です。
 術直後の状況からみると、「淡々と」受け容れている様子に安堵しています。
 勿論、「気持ちの整理はそんなに簡単では無い」ことは重々承知しています。
 ただ、治療が始まったばかりの時点で「全てを理想的に受け入れる」事は誰にもできないことも事実です。
 「その時その時に必要なことをやっていく」中に、自然と生まれる「安心感」だけを重ねていけばいいのです。
 無理やり「強がり」を思っても「必ず反動」が来るでしょう。

回答

「リハビリ体操があるようなので実行していますが、あまり無理をしないほうが良いですか?」
⇒何しても結構です。
 質問者の場合には「通常のリハビリは全く不要」な位に術翌日から「腕の可動域もあった」ので、「何か運動」などもいいと思います。
 
「脇に何か挟まった感じはあまり変化がないみたいですが、まだしばらくかかりますか?」
⇒肋間上腕神経(上腕の内側の感覚)が一次的に麻痺しているせいだと思います。
 もう暫くかかるでしょう。
 
「しても仕方がない後悔や無念さ、不安などが押し寄せてきて」
⇒それは仕方が無い事です。
 ただ、「毎日受け止める」として「100回の時点より500回、500回より1000回受け止めると」 徐々に、(言葉は悪いですが)同じことに悩むのに飽きてくる筈です。
 「飽きるまで」同じことを考えればいいのです。
 
○この方面の専門家でもないのに、偉そうな事をいいました。
 ただ、私なりに「いろいろな患者さんと対峙して」得た結論なのです。
 
 

 

質問者様から 【質問14 ホルモン療法の薬の切り替えについて】

いつも暖かいメッセージをありがとうございます。相変わらず落とし穴にすっぽりはまってしまうこともありますが、以前に比べて数は少なく深さは浅くなっているように思います。先生の言葉のお蔭で、少しずつ前に進めている気がします。心と体が一致すれば、前を向けるのだと思いました。感謝しています。
ホルモン療法の薬の切り替えについてお伺いいたします。
以下、覚書きのような文章で申し訳ありません。私の理解について間違っていたらご指摘下さい。
ノルバデックス(閉経前):がん細胞のエストロゲン受容体に蓋をして、分裂出来なくする。エストロゲンを出なくするわけではなく、あくまでもがん細胞の受容体に対して効果がある。体の中にあるエストロゲンは、必要な場所にはちゃんと(ある程度?)届く。たとえば、骨の形成(大事なこと)。
アロマターゼ阻害剤(閉経後):閉経後は卵巣からはエストロゲンが分泌されなくなるが、副腎から出るホルモン(?)にアロマターゼという酵素が結びついてエストロゲンを作り出す。その酵素の分泌を抑え、エストロゲンが作られないようにする。
つまり、ノルバデックスはエサはあるが食べられないようにする。アロマターゼ阻害剤はエサそのものを与えない・・・という理解で良いでしょうか?
閉経後の内分泌療法では、ノルバデックスよりもアロマターゼ阻害剤の方が再発率が下がるというデータを見ました。上記の理解で良ければそのデータも納得できます。しかし、エストロゲンを必要としている正常細胞もあるのですよね。
今後の予防法について色々悩むと思いますが、どうぞ先生の豊富な経験と知識で導いて下さい。よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答14】

 こんにちは。田澤です。
 ホルモン療法、特に「閉経前」と「閉経後」について具体的に解り易く理解されていますね。
とてもいい事です。
 「気持ちが前向き」になっていることを歓迎します。
 
 

 

質問者様から 【質問15 報告です】

予定通り卵巣+子宮の摘出手術を終えました。入院中は婦人科の先生や看護師さんに、心も体も十二分にケアして頂き、無事退院することが出来ました。
心配していた更年期症状は、今のところ特にありません。
却ってイライラがなくなり、穏やかになれている気がします。退院してから結構アクティブに動き回っています。
入院中はノルバデックスは休薬していました(6日間)が、再開しています。
食事もきちんと摂れるようになり、睡眠も薬なしでも眠れています。脇の下の痺れ感はずいぶん無くなってきました。
普通はドレーンを入れてリンパ液を排出すると知って、今更ながら凄い先生に手術して頂けたのだと感謝しています。
これから化学療法をするかどうか決まると思いますが、迷うならやろうと思います。気力は正直言うと残っていませんが、気力が湧くのを待っていてまた後悔したくはないので、背中を押して下さい。
入院はもうしたくないので、頑張って通院します。
今後ともよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答15】

 こんにちは。田澤です。
 順調に婦人科も退院されたようで、良かったです。
 卵巣切除後の状況も、落ち着いているようですね。
 Luminal typeなので「Ki67待ち」ですが、次回受診の際には治療方針を相談しましょう。
 1つ1つ乗り越えている様で何よりです。
 
 

 

質問者様から 【質問16 放射線療法について】

お世話になっております。
先日の診察では、Ki値がカットオフ値を下回っているということで化学療法はしない方向で納得しましたが、以下の状況(特に①⑤⑥)でホルモン療法のみでの治療に不安があります。
①ly1v1
②浸潤径(15mm+15mmかもしれないけれど)30mm
③ki67 17%(luminalA)
④グレード2
⑤リンパ節転移1(もし15mmであれば何故転移があったのでしょうか?)
⑥いつからあった癌なのかわからない
⑦卵巣全摘 現在ノルバデックス服用→半年~1年後にアロマターゼに変更予定
全摘でもリンパ節転移があった場合、放射線照射により生存率を改善させることを知り、化学療法の上乗せが出来ないなら検討すべきと思い始めました。
全摘後の放射線照射について質問です。
1.放射線療法は局所療法であって、体のどこかにあるかも知れないがん細胞を叩くものではないように思うのですが、何故生存率が上がるのでしょうか?
2.どのくらいの生存率アップまたは遠隔転移率ダウンが見込めるのでしょうか?
3.先生はこの状況で放射線治療をすることについてどう思われますか?
4.術後2か月近く経ちますが、まだ間に合いますか?
ki値と化学療法のことで頭がいっぱいで、放射線治療の事はすっかり抜けていました。色々と先走る割には、大事なところが後手後手に回ってしまって申し訳ありません。よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答16】

 こんにちは。田澤です。
 pT2(30mm), pN1, luminal A
①ly1,v1
⑤リンパ節転移1
⑥いつからあった癌なのかわからない
 これらの内①は放射線照射の適応とは無関係であり、⑥は皆さんがあてはまる(質問者の場合は、前医で長い経過がある事を言っているのだとは思いますが…)事です。
 ⑤については、術後の治療相談の際に「リンパ節転移1個だと」推奨度はBとはいえ、「放射線の適応がありますけど、どうしますか?」と確認したのですが、質問者の頭の中は「Ki67で占拠されていた」のですね。
 大変失礼しました。
 私個人としては「リンパ節転移1個だけ」であれば、「放射線照射は積極的には勧めてはいない」のですが、ご本人の希望があれば「放射線照射の適応はあります」

回答

「1.放射線療法は局所療法であって、体のどこかにあるかも知れないがん細胞を叩くものではないように思うのですが、何故生存率が上がるのでしょうか?」
⇒これは、データで証明されている事であり、「その理由」を明確に説明できるわけではありませんが、
 例えば、「局所の血管周囲(に残っていた)癌細胞」が「放射線照射により死滅する」のような事だと思われます。
 この場合には、「放射線照射無しでは」その癌細胞が、やがて「血管に入り込む」ことが起きる可能性があります。
 
「2.どのくらいの生存率アップまたは遠隔転移率ダウンが見込めるのでしょうか?」
⇒いろいろな報告がありますが、10%~20%という数字が出ています。
 但し、M.D.アンダーソンガンセンターでの検討では、1978-1997では改善を認めたが、2000年以降では差が見られないとの結果でした。
 つまり、「全身療法の進歩」により、「放射線治療による生存率の改善幅は圧縮されてきている」事は間違いありません。
 
「3.先生はこの状況で放射線治療をすることについてどう思われますか?」
⇒冒頭でも記載したように、
 「リンパ節転移1個」では「遠隔転移・再発予防効果はあまり無い」と思っています。
 
 やはり、基本的に局所は「手術をきっちりすること」なのです。
 
「4.術後2か月近く経ちますが、まだ間に合いますか?」
⇒間に合います。
 術後の放射線治療は「術後5カ月以内に開始」が推奨されています。
 
○私は質問者の場合には「きっちりとホルモン療法が効くタイプ」であり全身療法としての「ホルモン療法」が効果的だと思うので、あえて「放射線照射は不要」とも思っています。
 ただ、「抗がん剤をしない」事による「気持ちや、体の余裕」があるならば「+α」としてのご希望にはそいます。
◎毎日(当院の場合には30回)遠方よりの通院は、質問者にとってどうなのかも、よく考えてください。