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センチネルリンパ節生検について

[管理番号:4561]
性別:女性
年齢:47歳
田澤先生、宜しくお願いします。
今の私の診断結果です。
病名 非浸潤性乳管癌
   Tis N0 M0(病期0)
病状 ホルモン弱陽性
   異形度 1
   Ki67 低~中等度
   遠隔転移無し
上記診断で再来週、乳房温存手術を予定しています。
日本乳癌学会のサイトに『非浸潤性乳癌の場合、理論的にはリンパ節転移は起こらないためセンチネルリンパ節生検を行う必要はないと考えられる』と書いてあったので、担当医に術後の病理検査の結果で浸潤があったらセンチネルリンパ節生検を受けたいとお願いしました。
担当の先生に納得していただいたものの、
どうやらこんなお願いをしたのは私が初めてのようです。
もしも、病理検査の結果本当に非浸潤性乳癌だったとして、センチネルリンパ節生検しなかった時、転移に気付かず数年後後悔するのではないかと不安になりました。
そこで、田澤先生に質問です。
①田澤先生の過去の経験から非浸潤性乳癌の方でリンパ節に転移があった方はいたのでしょうか?
やはり田澤先生も手術と一緒が良いとお考えでしょうか?
②センチネルリンパ節生検について
生検の合併症はどの位の確率で起こるものなのでしょう?
全員でしょうか?
合併症は一生続くものなのでしょうか?
何卒宜しくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

「日本乳癌学会のサイトに『非浸潤性乳癌の場合、理論的にはリンパ節転移は起こらないためセンチネルリンパ節生検を行う必要はないと考えられる』と書いてあった」

⇒ただし、この(術前診断として)「非浸潤性乳癌」というところが曲者です。
 「外科的生検」での診断であれば、「手術してみたら、浸潤癌だった」という事態は想定しなくてもいいですが、「通常は針生検での診断」なので「手術してみたら(病変全体としては)浸潤部分があった」ということがありえます。
 その際には、(後日)「追加手術としてセンチネルリンパ節生検を行う」ことになるわけですが、「2回手術をするよりも、1回で済ませたい」というジレンマがあります。
 だから通常は(私もそうですが)「余程、非浸潤癌の可能性が高い」場合以外は、(術前針生検で非浸潤癌であっても)「最初からセンチネルリンパ節生検を併用する」ようにしています。
 ♯「手術が2回となる」以外にも(手術操作により)「正確なセンチネルリンパ節生検とはならないのでは?」という危惧もあります。
「①田澤先生の過去の経験から非浸潤性乳癌の方でリンパ節に転移があった方はいたのでしょうか?」
⇒膨大な数なので(残念ながら)「あくまでも記憶」ですが…
 最終診断(術後の病変全体)で非浸潤癌でリンパ節転移が有った人はいません。
 ♯ただし、以前に「他院で手術した方の中でリンパ節再発したので、手術標本を再検討してもらったけど、浸潤癌が見つからなかった」ケースが1例だけ記憶にあります。
 更に言えば、「術前診断で非浸潤癌⇒術後に浸潤部分が見つかった」ケースでも「センチネルリンパ節転移陽性だった人は記憶に無い」のが実情です。
「やはり田澤先生も手術と一緒が良いとお考えでしょうか?」
⇒冒頭で示したような理由(「万が一、手術が2回となる」「再手術でのセンチネルリンパ節生検では不正確となる可能性がある」)から、そうは思いますが…
 実は私自身、上記のような理由(術前診断で非浸潤癌⇒術後に浸潤部分が見つかったケースでもセンチネルリンパ節転移陽性だった人はいない)で、「(術前診断で非浸潤癌なら)省略してもよいのではないか?」と考え始め、以下のようにしています。
 1.ガイドライン上は(外科的生検以外での非浸潤癌との診断では)「センチネルリンパ節生検を行う」ことが推奨されている。
 2.ただし、実際には「針生検での非浸潤癌での診断でもセンチネルリンパ節生検で陽性となることは殆ど無い(少なくとも私の経験ではない)」
 以上をお話しした上で、「低異型度(low grade)非浸潤癌」の方には「センチネルリンパ節生検の省略」を勧めています。
 
★つまり、当院の患者さんであったなら、(私の方から)「センチネルリンパ節生検の省略のお話をした」と思います。
「②センチネルリンパ節生検について生検の合併症はどの位の確率で起こるものなのでしょう?」
⇒これは「手術精度が影響」するので、一概にいうことはできません。
「全員でしょうか?」
⇒さすがに、そんな医療機関はないでしょう。
 
 通常は「センチネルリンパ節生検では起こらない」と理解すべきです。
「合併症は一生続くものなのでしょうか?」
⇒もしも起こった場合(通常は起こりませんが…)、それは一生続く事もあります。
○私の考えでは…
 センチネルリンパ節生検だけであれば、(多少の違和感はある程度あるとしても)「問題となるような合併症(浮腫など)はない」ものであり(そこに「センチネルリンパ節生検の存在意義」があるのです)
 腋窩郭清をした場合でも「通常は浮腫等起こらず」ある一定の条件(通常の範囲よりも深い部分「レベルⅢではなく、レベル1の背中側」を郭清せざるを得なかった場合)でのみ起こるものと考えます。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

前回は親切丁寧に御回答頂きありがとうございました。
お陰様で無事、手術も終わり以下のような診断結果となりました。
非浸潤性乳菅癌
癌の大きさ(浸潤径)0cm(広がり0・9
cm) pTi s
断端5ミリ以内への広がり、なし
脈菅侵襲 リンパ菅:ly0 静脈:v0
悪性度 2
エストロゲン需要体 陽性
プロゲステロン需要体 陰性
ホルモン剤が余り効かないとの事なので、
子宮筋腫と腺筋症もあるためホルモン剤はやらずに、来月より放射線治療のみ予定してます。
温存と放射線はセットであるという事を理解して手術したのですが、最近では放射線治療をやらない場合があるという事をを知りました。
ガイドラインでは放射線治療は推奨し、田澤先生も勧めていらっしゃるのをこちらのサイトから見つけました。
病理の結果、担当の先生からは再発の可能性は1%以下であるというお話しでした。
放射線科の先生のお話しでは将来二次癌の可能性が2%~3%あるとの事。
二次癌の可能性の方が高いのに何故放射線をやるのか?疑問が湧いて来てしまいました。
再発の不安に加え、二次癌の不安まで増えるようで…。
一度しか出来ないのなら、再発するか分からないものに放射線するより、再発してからのが良いのではないか?とも思うのですが?
放射線科の先生のお話しでは、再発した場合、今よりもっと辛い治療しなくてはならないから、放射線はやった方がいいとの事でした。
再発の治療というのはそんなに辛いものなんでしょうか?
今回は幸い非浸潤でしたが、再発では非浸潤で見つけるのは難しいのでしょうか?
再発と二次癌、どちらの治療が辛いものなのか?
我が儘な疑問ばかり、すみません。
放射線する、しない、どちらを選ぶにしても後一押し足りない思いで、質問してしまいました。
何かお言葉頂けたらと思います。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
質問者は大きな勘違いをしているようです。
「病理の結果、担当の先生からは再発の可能性は1%以下であるというお話しでした。放射線科の先生のお話しでは将来二次癌の可能性が2%~3%あるとの事。」
⇒この「再発の可能性」というのは「遠隔転移再発」のことです。
 温存乳房内再発は「術後照射なし」では「10年で15%程度」ある筈です。(照射することで、それが1/3程度まで低下します)
 放射線による二次がんの発生が2-3%もあるとは思いませんが、少なくとも「10%より高くはない」ということです。