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術後の再発予防のための抗がん剤について悩んでます

[管理番号:5560]
性別:女性
年齢:57歳
術後の補助化学療法について迷っています。
よろしくお願いします。
6月に受けた乳がん検診で左胸に腫瘤が認められたため要精密検査となり受診しました。
5mm程度のしこりがあるため針生検をおこなったところ、良性か悪性か不明ということでしこりと周囲を8月に部分切除し組織検査しました。
結果はアポクリンがんということでした。
浸潤経:8mm
ホルモン陰性
HER2陰性
核グレード1
乳管内進展なし
脈管侵襲は明らかではない
切除断片陰性
Ki67は11.8%
pT1bN0M0-pStage1A
悪性だったため9月にセンチネルリンパ節生検を実施
切除した3個は全て陰性
主治医としては術後の化学療法について、効果は5~7%くらいの上乗せなので悩むところ。
NCCNガイドライン上ではpN1miは考慮となっている。
やれることは全てやった方がいいと思うということで化学療法をすすめられました。
質問1:アポクリンがんは珍しくデータもあまりないため先生としても非常に悩ましいとおっしゃってます。
田澤先生のお考えをお聞きしたいです。
質問2:抗がん剤の開始時期についてはいつ頃までに決める必要がありますか?
また推奨する薬剤と投与期間をお聞きしたいです。
始めるのであれば、家庭の事情で3月くらいからにしたいのですが。
とはいえもちろん体が優先と考えております。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
大人しい(典型的な)アポクリン癌です。
トリプルネガティブは(ホルモン陰性、HER2陰性というだけで)実際は(単一の集団ではなく)「全く異なった性質の癌の寄せ集まり」と言えます。
実際には
1.抗癌剤が非常に有効なタイプ
2.(抗癌剤は効かないが)そもそも(抗癌剤をしなくても)予後良好なタイプ
3.(抗癌剤は効かないので)そもそも(抗癌剤をしても)予後不要なタイプ
以上に分けられます。
現時点ではトリプルネガティブを上記3つに分類する事ができない(マーカーがない)わけで、(他に治療がないので)原則として(上記1に準じて)抗癌剤が必須となっているわけです。
★ただ、質問者のような「大人しいタイプのアポクリン癌」は明らかに上記のうちの「2に相当」することが知られています。
 ガイドラインでは(髄様癌や浸潤性小葉癌と同様に)「通常の乳管癌と同じ治療が推奨」とされてはいますが…
 ガイドラインの内容を患者さんに伝える義務は(医師には)ありますが、治療方針として
 pT1b, pN0である質問者に「化学療法を勧めることは決して(私は)しません」
(医師の裁量の範囲内と思います。)
「主治医としては術後の化学療法について、効果は5~7%くらいの上乗せ」
⇒どこからでた数字なのか??
 どう考えても、そんなに(上乗せは)ありません。
 ★そもそも「無治療でも再発率は5%以内」だと思います。(大人しい8mmのアポクリン癌が再発することを想像することは私にはできません)
「NCCNガイドライン上ではpN1miは考慮となっている。」
⇒pT1bの誤りですよね?
 「センチネルリンパ節生検を実施 切除した3個は全て陰性」との記載に矛盾しています。
 ★ただ、(万が一)質問者の記載が正しいとしても…
  pN1mi(リンパ節微小浸潤)は予後には影響しないし、化学療法を勧める根拠にはなりえません。
「質問1:アポクリンがんは珍しくデータもあまりないため先生としても非常に悩ましい」
⇒アポクリン癌は珍しくも何ともありません。(年間300件以上執刀している私にとっては、日常的な組織型です)
「田澤先生のお考え」
⇒冒頭でコメントした通りです。
 
 私が化学療法を勧めることは決してありません。(医師の義務としてガイドラインの話はしますが…)
「質問2:抗がん剤の開始時期についてはいつ頃までに決める必要がありますか?
また推奨する薬剤と投与期間をお聞きしたいです。」

⇒上記コメント通り…
 全く不要です。