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再発防止のための抗癌剤治療について

[管理番号:2461]
性別:女性
年齢:40歳
はじめてご相談させていただきます。
よろしくお願い致します。
右胸の非浸潤性入管癌という診断で先月、全摘出手術と同時再建手術を受け、現在エキスパンダーが入っている状態です。
そして先日、病理診断の結果を伺いました。
最大6㎜の浸潤癌が見つかり、リンパ節にも1つ(1cm)転移があったそうです。
ER/PgR ともに >80%
HER2 陰性
Ki-67 20-30%
そこで再発防止としてホルモン治療と抗癌剤投与を提案されました。
切除さえすれば治ると思い全摘出にもそれほど抵抗なく手術を受けたものの、再建の痛みや手術による心身のダメージもあって、状況がすっかり変わってしまったことに大きなショックを受けました。
とにかく抗癌剤が怖くて怖くて書物やネット情報を読み漁っては副作用に余計に怯え、なんとか代替療法がないものだろうかと勉強しているうちに、ホルモン治療まで怖くなり、しまいには手術そのものが正しかったのかと疑うまでになってしまいました。
本当に気が変になりそうでした。
今は少し落ち着いて、ホルモン治療は前向きに考えています。
ただ、やはり再発防止としての抗癌剤治療はリスクが高すぎる気がして受け入れる気になれません。
田澤先生なら、どのような治療を提案されますか?
やはり抗癌剤を勧められますか?
あと治療法とは直接関係ありませんが、最初は抗癌剤を強制ではないものの、割と強く勧められた印象でした。
でも私が抵抗があることを伝えたからか、考えることに疲れているからか、最近は選択は自由で焦らなくてもいいと言われるようになりました。
強く勧められたというのも私が拒絶するからそう感じただけかもしれません。
でも強い抵抗感を示したことで少し諦められたのでは…悪い言い方をすれば見放されつつあるのではないかと感じたりもしてしまいます。
きっと勝手な思いばかり伝えて厄介な患者なのだと思いますが、この先、治療方針を話し合っていく上でどういう姿勢で臨んだらいいか、お医者様の立場から何かアドバイスをいただけたら助かります。
何卒よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1b(6mm), pN1, luminal
十分な早期癌です。
「腫瘍径(浸潤径)が小さい」ことは最大の武器です。
「とにかく抗癌剤が怖くて怖くて書物やネット情報を読み漁っては副作用に余計に怯え、なんとか代替療法がないものだろうか」
⇒危ない所でした。
 決して「代替療法」など選択すべきではありません。
 
「田澤先生なら、どのような治療を提案されますか?やはり抗癌剤を勧められますか?」
⇒pT1bで「ルミナールタイプ」なのだから、「抗がん剤は勧めません」
 ホルモン療法単独(本来ならば35歳未満に勧めるべきである)LH-RHagonistの併用も(40歳であれば)いいとは思います。
 
「きっと勝手な思いばかり伝えて厄介な患者なのだと思いますが、この先、治療方針を話し合っていく上でどういう姿勢で臨んだらいいか、お医者様の立場から何かアドバイスをいただけたら助かります。」
⇒気持ちは良く解ります。
 「術前診断」と「術後診断」の乖離に伴って「思ってもみなかった化学療法を提示」されたのだから、「当然の心理状態」とも言えます。
 術後療法として「一刻も争う緊急事態からは、程遠い」のですから、「メリットとデメリットについて納得のいくまで話し合い」することです。
 ♯気持ちが焦るのであれば、「ホルモン療法を開始してしまう」のも十分ありです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
こんにちは。
先日は抗がん剤についての質問にお答えいただき、ありがとうございました。
一刻を争う緊急事態からは程遠い、という先生からのお言葉でかなり気持ちに余裕ができた気がします。
担当医でもない先生からためになるお言葉をたくさん頂戴でき、感謝しかありません。
ただ色々怖がっていても仕方ないので、先生のご助言もあってホルモン療法を始めてみました。
抗がん剤に関しては私の拒絶が酷かったせいか、
絶対に必要というものでもなかったからかはわかりませんが、話が出なくなりました。
最近では閉経前でもエキセメスタンを使い効果が高い場合もある、と説明を受けましたが、
途中で変更することも可能なので、まずはスタンダードなノルバデックスを服用しています。
1カ月経ったらリュープリンの投与も提案されています。
田澤先生からも併用はありだと回答いただきましたが、過去の相談内容を拝見していても微妙な年齢なのかなと思っています(先日41歳になりました)。
ノルバデックスだけでも皮膚の痒み、足の急激な冷え、ホットフラッシュ…と地味ながら不快な副作用がありますので、
そんなに効果が見込めないのなら薬を増やしたくない気持ちもあります。
一方でリンパ節に1つ(1cm)転移がありましたので、
リュープリンを投与しないことによって危険性が高まるのも怖いな、とも思います。
エキセメスタンではなくノルバデックスを選択したことも含め、
今後どう考えればいいか、ご教示ください。
よろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「最近では閉経前でもエキセメスタンを使い効果が高い場合もある、と説明を受けました」
⇒これは誤りです。
 ①エキセメスタンは日本では「閉経後」にしか適応がない
 ②エキセメスタンが閉経前でも有効であるというデータは、あくまでも
LH-RHagonistとの併用に限られています。⇒海外では「エキセメスタン+
LH-RHagonist併用」として閉経前に用いられていますが、日本では適応外です。(乳癌診療ガイドラインでも推奨していません)
 
「エキセメスタンではなくノルバデックスを選択したことも含め、今後どう考えればいいか、ご教示ください。」
⇒タモキシフェン(ノルバデックス)で正解です。
 (私自身が必ずしも賛成しているわけではないのですが)この3月に論文の出た
「ASCO」のガイドラインでは(SOFT試験の結果にあまり左右されず)『リスク低減のために(年齢にかかわらずに)卵巣抑性(LH-RHagonistの使用など)を行うべき』となっています。
 その意味では「LH-RHagonistの併用」は考慮してもいいと思います。