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両側乳癌で左右タイプが違う場合

[管理番号:3005]
性別:女性
年齢:54歳
左側の乳癌は自分で気付き、病院に行った所1cm程で進行はゆっくりでホルモン剤が効くタイプです。
と言われ手術日を決め、全身チェックをした所造影のMRIで右側にも病変がありました。
全身検査は血液検査、
上内臓の造影CT、乳房の造影MRI、骨密度、エコー(乳房、心臓)呼吸機能です。
一応生検しましょうと言われ、結果癌でした。
こちらの右側はHER2プラスでホルモン剤が効かないタイプだと言われ、大きさは2cm弱程度でした。
画像を見ると丸くなく、少し長く変形しているように見えました。
同時に手術します。
両側部分切除の温存予定です。
わたくし、他にも嚢胞があちこちにありまして、子宮はナボット卵、悪性になる事もあると言われてます、縦隔嚢胞、胆嚢にも嚢胞があります。
質問
1. 右側を全摘する可能性はあるのでしょうか?
2. 部分切除の場合と全摘では再発や遠隔転移は違いますか?確率はどうですか?
3. 骨シンチや、ペット検査は必要ではありませんか?
4. 治療は左側はホルモン剤対応で、右側はHER2プラスなので、化学療法をします。
ハーセプチンの治療もします。
左右違いますが、ホルモン剤も使うということですか?
5. 化学療法しても左側には効かないのでしょうか?
6. 化学療法は組み合わせがありますが、最善の薬剤の組み合わせはどのようなものですか?
7. 乳癌になった事で体の嚢胞が癌化する事はありますか?
沢山の質問ですみません。
お願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
両側同時乳癌ですね。
両方とも早期のようなので、たまたま左に気付いたことがターニングポイントとなり
ました。大変良かったです。
「1. 右側を全摘する可能性はあるのでしょうか?」
⇒MRIで確認しているようなので不要でしょう。
 
「2. 部分切除の場合と全摘では再発や遠隔転移は違いますか?確率はどうですか?」
⇒再発とは局所再発のことですね?
 局所再発は「全摘では≒0」「部分切除では(断端の問題など手術により影響しますが)概ね10年で5%前後」と考えましょう。
 遠隔転移は「全摘でも部分切除でも同じ」です。
 ♯確率は術後にしかわかりません(術後病理結果の詳細が必要)
 
「3. 骨シンチや、ペット検査は必要ではありませんか?」
⇒そんな検査は不要です。
 遠隔転移などありません。
 無駄どころか有害なのです。(医療被曝を過小評価してはいけません)
 
「4. 治療は左側はホルモン剤対応で、右側はHER2プラスなので、化学療法をします。ハーセプチンの治療もします。左右違いますが、ホルモン剤も使うということですか?」
⇒そういうことです。
 
「5. 化学療法しても左側には効かないのでしょうか?」
⇒右に比べれば効きにくいだろうと[予測」されますが、そもそも「左右を区別する事は無意味」です。
 術後補助療法は「全身療法」なので「左右を区別することは無意味」なのです。
 
「6. 化学療法は組み合わせがありますが、最善の薬剤の組み合わせはどのようなものですか?」
⇒抗HER2療法は「スタンダードレジメン(アンスラサイクリンを含むレジメン)」と
「非アンスラサイクリンレジメン」があります。
 スタンダードレジメン(アンスラサイクリン+タキサン+ハーセプチン)は最も強力ですが、(リンパ節転移無など低リスクでは)非アンスラサイクリンレジメン(タキサン+ハーセプチン)が使われるようになっています。
 ♯この流れは、もともと心合併症の多い欧米の事情があります。 アンスラサイクリンは心毒性があるのです。
 だから、どちらのレジメンを用いるのかは慎重に考えましょう。
 
「7. 乳癌になった事で体の嚢胞が癌化する事はありますか?」
⇒ありません。
 
 嚢胞は「乳管が詰まることで、乳管内の分泌液が貯留しているだけ」です。そもそも腫瘍でさえもありません。