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異時性両側乳癌の化学療法について

[管理番号:4144]
性別:女性
年齢:45歳
田澤先生、はじめまして。
いつもこちらのQ&Aを参考にさせて頂いております。
ご多忙な中懇切丁寧に質問に答えてくださるご姿勢に頭が下がります。
どうぞよろしくお願いいたします。
今年8月、右乳がん術後8年目に左乳がんが見つかり、9月に全摘手術いたしました。
術後の化学療法について相談させてください。
8年前 右乳がん
28、21、19mmの多発腫瘤、腋窩リンパ節転移少なくとも4個以上、levelⅡにリンパ節転移あり、T2、N1、M0。
右CNB:2a2 f ly(-)v(-)HG3 ER(-)PgR
(-)HER2(1+)Ax LN FNAC meta(+)の診断
術前化学療法 FEC100×4→3wTXL×4
手術 Bt+Ax(level2)
右病理:浸潤部遺残微小、f ly(-)v(-)HG2 margin(-)ER(-)PgR(-)HER2(0)pN1(1/20)化療効果 Grade2
術後、胸壁、鎖骨上窩に50Gy/25frの照射施行。
今年8月 左乳がん
定期検査にて11mmの腫瘤みつかり、CNBにて浸潤性乳癌の診断
左CNB:2a2 ly(-)v(-)HG2 ER(Allred
TS7)PgR(Allred TS0)HER2(1+)Ki67
90% 遠隔転移なし
手術 Bt+SN(リンパ節に転移なし)
左病理:18mm(非浸潤性の部分含めて35mm)グレード3 ER
(7)PgR(6)HER2(1+)ly(+)v(-)margin
(-)Ki67 60~70%
術後、アブラキサンを3週に1回4クールの予定で現在3クール目まで終えたところです。
化学療法終了後、ホルモン療法の予定です。
化学療法の薬剤選択にあたってTCも候補にあったのですが、右乳がん術後に右腕リンパ浮腫を発症しており、むくみの副作用を懸念してアブラキサンの選択となりました。
Kiが高値であること、グレード3であることに加えて遺伝子検査の結果、遺伝性乳癌(BRCA2変異陽性)であることがわかり、再発が非常に心配です。
その為、タキサン単独ではなく、この後アンスラサイクリンを追加したいと主治医に申し出ましたが、8年前の右乳癌でFEC4クールをしており、許容量としては残り半分以上あるが、1から2%の上乗せ効果よりも心毒性のリスクが懸念されるとのことでした。
心毒性のリスクをとるか、再発のリスクをとるか、心が揺れています。
田澤先生でしたらどのような治療法をご提示なさいますか?
お忙しい中恐縮ですが、ご回答の程よろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
異時性両側ですね。
pT1c(18mm), pN0, luminalBとなります。
標準治療としてはTCとなります。(過去にアンスラ+パクリタキセルをしていることからもTCが最適と言えます。)
「術後、アブラキサンを3週に1回4クールの予定で現在3クール目まで終えたところです。」
⇒アブラキサンは「適応外」診療です。
 1. 本剤の手術の補助化学療法における有効性及び安全性は確立していない。(アブラキサンの添付文章より抜粋)
「化学療法の薬剤選択にあたってTCも候補にあったのですが、右乳がん術後に右腕リンパ浮腫を発症しており、むくみの副作用を懸念してアブラキサンの選択となりました。」
⇒ドセタキセルによる浮腫は「一時的」だし、「下半身」中心なのでTCを避ける理由としては…
「8年前の右乳癌でFEC4クールをしており、許容量としては残り半分以上あるが、1から2%の上乗せ効果よりも心毒性のリスクが懸念されるとのことでした。」
⇒これは担当医の判断に大賛成です。
 アンスラサイクリンによる心不全は(ハーセプチンによるそれとは全く異なり)不可逆性なのです。
 万が一、そうなったらQOLを著しく損ないます。
 
「心毒性のリスクをとるか、再発のリスクをとるか、心が揺れています。」
⇒それだったらTCをとるべきでしょう。
「田澤先生でしたらどのような治療法をご提示なさいますか?」
⇒TCです。
 決して「アンスラサイクリン」追加はしません。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、先日はお忙しい中ご回答頂きありがとうございました。
アブラキサンは適応外、アンスラサイクリンは心毒性のリスクによるデメリットの方が大きい為決して追加はしない、追加するならTCがよいと言うことですね。
8年前の術前化学療法でFECにより劇的に腫瘍が縮小し、タキソールではほとんど変化がなかった為、アンスラサイクリンによる治療効果にどうしても期待してしまうのですが、不可逆性の心毒性を考えると追加するべきではないと納得いたしました。
そこで今度はTCを追加するかどうか悩んでしまいます。
主治医はリン
パ浮腫を発症している場合、TCによるむくみは一時的でなく元に戻らないことが多いからと心配されていました。
浮腫はとても厄介ですが、
命には代えられません。
TCを追加した場合としない場合の再発率を教えて頂けますか?
またTC以外に追加できる治療は何かありますか?
先生はよくサブタイプは治療法を検討するためのものであり、予後はあくまでもステージによるとおっしゃっていますが、私のようなケースでも同様に考えてよろしいのでしょうか?どうしてもグレード3、ki60~70%、遺伝性という事で悲観的になってしまい、やれることはすべてやりたいと切実に思うのです。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「TCを追加した場合としない場合の再発率を教えて頂けますか?」
⇒15%(ホルモン療法のみ)
 10%(ホルモン療法+TC)
「またTC以外に追加できる治療は何かありますか?」
⇒ホルモン療法をきちんとやることです。
「サブタイプは治療法を検討するためのものであり、予後はあくまでもステージによるとおっしゃっていますが、私のようなケースでも同様に考えてよろしいのでしょうか?」
⇒その通りです。
 やるべきことをやるだけなのです。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生、こんにちは。
以前異時性両側乳がんの術後化学療法について
相談させて頂いたものです。
その節はありがとうございました。
またご相談させてください。
悩みましたが結局TCは追加せず、12月末にアブラキサン4回目を終了後、ノルバデックスを1月から服用しています。
2月の初めに昨年9月に全摘した左側の傷跡上、脇から1cmぐらいのところにしこりができているのに気がつきました。
すぐに主治医に診ても
らい、傷跡にできた肉芽だろうが念のためと針生検をしたら局所再発でした。
CTと骨シンチをしましたが遠隔転移、脇のリンパ節転移は見られませんでした。
2月中旬に局所麻酔により腫瘤摘出を行い、病理結果が先日でました。
しこりの大きさは16mmで癌のサブタイプは9月に全摘した際のものとほぼ同じ、全摘した際lyが+だったので、残っていたものが出てきたのだろうとのことでした。
今回摘出したものは脈管侵襲がない、断端陰性、胸筋も薄く削ったがそこにも癌はなかったので、放射線や追加の抗がん剤はしない、万が一また局所再発したらまた摘出すればよいとのことでした。
こちらで局所再発について勉強させて頂いていますが、田澤先生は局所再発の場合放射線治療をなさっているように思うのですが、脈管侵襲や状況によってしない場合もあるのでしょうか?また化学療法の追加はやはり不要ですか?
今回はセンチネルリンパ節生検もしていませんし、本当に腋窩や胸壁に放射線をしなくてもよいのか不安です。
もし放射線をしたほうがよい場合、江戸川病院でトモセラピーをお願いすることは可能ですか?
自宅から1時間30分程かかりますが、可能なら頑張って通うつもりでいます。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「12月末にアブラキサン4回目を終了」
⇒なぜ、「保険適応を守らない」のか、(担当医に対しては)全く理解に苦しみます。
「脈管侵襲や状況によってしない場合もあるのでしょうか?」
⇒御高齢出ない限りは「すべき」です。
「また化学療法の追加はやはり不要ですか?」
⇒不要です。
「今回はセンチネルリンパ節生検もしていません」
⇒局所再発に「センチネルリンパ節生検など、不要」です。(そもそも初回手術の際にセンチネルリンパ節生検しているので、不可能です)
「江戸川病院でトモセラピーをお願いすることは可能ですか?」
⇒可能です。
 その場合には、「担当医から、直接、放射線科宛」に紹介状を持って「直接、放射線科を受診」してください。
 ♯乳腺外科を介する必要はありません。
 
 

 

質問者様から 【質問4】


*****
再質問をする場合は、原則として1週間程度あけてからお願いします。
*****

田澤先生、早速のご回答をありがとうございました。
やはり脈管侵襲がなくても局所再発には放射線治療すべきということですね。
放射線治療をすべきなら、すぐにでも主治医に紹介状をお願いしに行きたいので間をおかずに再質問して申し訳ございません。
主治医は昨年9月の初発時、リンパ節転移がなかったものに対して放射線治療をしたら予後がいいというエビデンスがない、放射線をすることによるデメリットの方が大きいということで放射線治療には反対でした。
今回の局所再発は全摘からわずか5ヵ月で起こっていて、あくまでも取り残したものを追加で切除した、これで手術が完結した、脈管侵襲があれば放射線を考えたがないのでしない、また局所再発したら腫瘤切除すればいいとのことでした。
田澤先生は局所再発後の放射線治療についてどのようなお考えでしょうか?
「高齢でない限りはすべき」という理由について具体的に教えて頂いてもよろしいでしょか。
また照射すべき範囲はどの部分になりますか?
狙うべき腫瘤がなくなった場合でもリニアックよりトモセラピーの方が優れていると思われますか?
放射線治療は同じ部位に対して1度しかできない事を考えると万が一再発した時のためにカードは残しておいたほうがいいのでしょうか?
お忙しいところ質問ばかりして本当に申し訳ございません。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
再質問は1週間を守ってもらわないと「無法地帯」となりQandAの寿命?に影響するかもしれません。
どうか御留意ください。
「田澤先生は局所再発後の放射線治療についてどのようなお考えでしょうか?」
⇒「全摘後の局所再発」は、本来「あってはならない」ものです。
 その「あってはならない」ことが起きた以上、「最大限の予防策」を講じないわけにはいかないでしょう?
 術後の治療に「アブラキサンのような適応外診療」を行い、(平気で)「取り残しだから…」などと言っている様な医師がどう考えるかなど、私には「全く」興味がありません。
「また照射すべき範囲はどの部分になりますか?」
⇒胸壁全体です。
「狙うべき腫瘤がなくなった場合でもリニアックよりトモセラピーの方が優れていると思われますか?」
⇒あまり変わらないと思います。
「放射線治療は同じ部位に対して1度しかできない事を考えると万が一再発した時のためにカードは残しておいたほうがいいのでしょうか?」
⇒全く無意味です。
 そもそも「全摘後の局所再発」などあってはならないものであり、「最大限の予防措置」を行うべきです。(再再発など、想定する事自体、誤った考え方です)