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両側乳がん 両側全摘 両側リンパ節郭清 再発率は?

[管理番号:241]
性別:女性
年齢:39歳
はじめまして。
両側乳がんで両胸全摘、両脇郭清しました。
左ホルモン陽性、HER2陰性 2a
右ホルモン陰性、HER2陽性2b
術前抗がん剤cef4回、ドセタキセル+ハーセプチン4回をして手術しました。
抗がん剤がきいて右の超音波4.3センチの腫瘍は触れなくなったのですが、術前検査では広範囲に点々と残っているとのことでした。

病理結果
左、リンパ0
大きさ(浸潤型)4.3cm範囲4.3×1.5cm
核異型度1
術全化学療法2a
右、リンパ2陽性
大きさ(浸潤型)*cm範囲8.2×6cm
核異型度2
術全化学療法1bでした。

右のリンパに残っていた事、抗がん剤+ハーセプチンの効果が1bだったこと
広範囲に残っている部分は確かリンパ管?の染み出たところ?とか?
などから再発、転移がとても怖いです。
しかも両胸なので他の人より再発率が上がるのではないか?
この程度の結果で判断するのは難しいかと思いますがどうか、よろしくおねがいします。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 状況を整理した上で、回答いたします。

状況の整理

※yp表示は(術前化学療法後の)病理学的ステージ分類です。
左乳癌 ypT2, ypN0, ypStageⅡA, NG1, luminal type
「術全化学療法2a」⇒これは「術前化学療法効果判定」で2a(2/3以上の癌細胞に高度の変化あり の事でしょう。
右乳癌 ypT2, ypN1, ypStageⅡB, NG2, HER2 type
「術全化学療法1b」⇒これは「術前化学療法効果判定」で1b(1/3以上2/3未満の癌細胞に高度の変化あり の事でしょう。
 術前化学療法はCEFx4後DTX+HERx4
 
 術後療法としては

  1. 術後照射:ypN1である右側には「乳房切除後照射」postmastectomy radiation thrapy(PMRT)は適応があります。(推奨度B)
  2. ハーセプチン単剤(残り14回程度)
  3. ホルモン療法

これら「1~3」は全て併用可能ですので、術後すぐに開始可能です。
 

回答

「右のリンパに残っていた事、抗がん剤+ハーセプチンの効果が1bだったこと、広範囲に残っている部分は確かリンパ管?の染み出たところ?とか?」
⇒(確かに)HER2 typeである「右」で「化学療法効果が1b」というのは意外な印象です。
 
「広範囲に残っている部分は確かリンパ管?の染み出たところ?」
⇒リンパ管侵襲(ly 3+)のような残存と思われます。
⇒このタイプは、やはり上記①術後照射の強い適応であると思います。
 
「両胸なので他の人より再発率が上がるのではないか?」
⇒両胸であることは関係ありません。
 質問者の場合には「左はluminal A相当(NG1)」であり、再発リスクは高くありません。
 結果的に「右の治療」が決め手となります。

  • HER2 typeでありながら、(ハーセプチンを含んだ)化学療法効果がやや弱い(1b)であること。
  • リンパ管侵襲が強い。

◎再発率が「何%」とは言えませんが、上記「1~3」をきっちりやる事が重要です。(再発を十分に抑える事が可能です)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

やはり厳しい状態なのですね。
ハーセプチンがあまり効かないタイプなのでしょうか。。
これからの、再発防止のハーセプチンをしてもあまり意味がないのでしょうか?
 
再発率は何%とは言えないとはなぜでしょうか?
厳しい意見でも大丈夫なので、先生の経験からの確率を教えていただきたいです。
 
もし、再発するとしたら時期的にいつ頃が多いでしょか?
右に対して何年再発がなければ安心出来るかも教えていただきたいです。
たくさん質問してすいません。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 前回は決して「厳しい状態」と思っての「回答」ではなかったのですが、「術前化学療法としてのハーセプチンの反応がやや悪い」とのコメントから少し誤解を与えてしまったのかもしれません。
 術後にきちんと「放射線とハーセプチンとホルモン療法」をやってもらいたいので、そのようなコメントとしましたが、決して再発リスクが高いと言いたかったわけではありません。
 それでは回答します。

回答

「ハーセプチンがあまり効かないタイプなのでしょうか」
⇒術前化学療法の効果判定からすると、そのように思います。
 だからと言って、「再発防止のハーセプチンをしてもあまり意味がない」訳ではありません。
 術前化学療法でのシチュエーション(腫瘍としての大きなボリューム)ではあまり効果が無くても、「術後のシチュエーション(ターゲットは極々小さな細胞レベル)」では効果を発揮する事は十分に考えられます。
※もともと、「HER2陽性乳癌に対する、術後補助療法としてのハーセプチン1年間」は「(術前化学療法をして)術前効果が確認できた人だけ」が対象ではありません。
 全ての「HER2陽性乳癌患者」を対象として「十分な効果」が証明されているのです。
★HER2陽性の場合には(術前化学療法の効果が比較的弱かったとしても)必ず1年間はハーセプチンを行ってください。
 
「再発率は何%とは言えないとはなぜでしょうか?」
⇒それは「T2N1でハーセプチンを含んだ化学療法の効果が1b」というような全てが合致した再発率のデータは存在しないという意味でした。
 敢えて申し上げますと、(サブタイプや術前化学療法効果は勘定に入れず)「ステージ2」としての「5年無再発生存」は81%です。生存率としては90%あります。
 
「先生の経験からの確率を教えていただきたいです。」
⇒私の経験上の数値も、そのような感じです。8割型は再発しません。
 
「もし、再発するとしたら時期的にいつ頃が多いでしょか?」
⇒これは「臓器」によって違いがでてきます。
●肝や肺などは2年以内が多いですが、「骨転移」は「10年以上してからの再発も稀ではありません」
 
「右に対して何年再発がなければ安心出来るか」
⇒(上記でコメントしたように)骨転移などは何年経っても安心はできないのですが、やはり「まずは2年」でしょう。
  
◎そこで再発しないように、しっかりと術後療法を行ってください。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

何度も質問に答えていただきありがとうございました。
今、自分がどのような状況なのかわからなく、不安でした。
ご丁寧に、接してくれたこと、忘れません。感謝しています。
これからの治療をしっかり行って、前向きに頑張って行きたいと思います。
ありがとうございました。
 

田澤先生から 【回答3】

 こんにちは。田澤です。
 「自分の病気を正しく理解する」ことこそが「前向きに治療にむかう原動力」になると思います。
 「放射線、ハーセプチン、ホルモン療法」沢山あることは、悪い事では無く、「武器が沢山あること」なのです。
 術前に(通常の)化学療法を乗り越えたのですから、「大変楽に感じる」ことと思います。
 頑張ってください。