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化学療法レジメンの「○○mg/m2」と「実際の投与量○○mg/body」の違い

[管理番号:1000]
性別:女性
年齢:51歳
 
 

質問者様の別の質問

質問が新たな内容のため、別の管理番号としました。
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管理番号:928「トリプルネガティブの術後化学療法」

 
 

質問者様の別の質問

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管理番号:1016「タキサン系の表記

 
 
田澤先生、今回もわかりやすくご説明してくださり、本当に色々な事が解決しました。ありがとうございました。
これで田澤先生の私の質問にお答えになる大変さを終わりにしてさしあげたいとは切に願っているのですが、またまた疑問が生まれてしまい、申し訳ないのですが、またよろしくお願い致します。
ACとAC療法、私の勉強不足でした。色々調べましたら判りました。お手数おかけ致しました。
FECとECの件、私は今回FECをしていただきましたが、もし副作用がきつく出たら、次はECに変更ということも出来るのでしょうか?
アバスチン(ベバシズマブ)の治療は、どこの病院でもやっていらっしゃるのですか?私の通っているところは、まだおたずねしていないのですが、どうもやっていない感じなのです。
もし、再発や転移した場合、アバスチンとタキソールの併用の治療は、私には効くのでしょうか?
保険がきくようになったので月8万円と知りましたが、それを何ヶ月続けるのでしょうか?
田澤先生のおっしゃるとおり、最初にきちんと、PTXで治療した方がいいと思うのですが、再発したときの事を考えるととても怖いです。もう何も出来ないということになるんですよね。
私が飲めないカプセルの件ですが、コンタックの大きいやつのサイズで、とても飲めないサイズでしたので、点滴にしていただきました。
昨日のお昼に抗がん剤をしていただいたのですが、今現在、翌日の夕方なのですが、何の副反応も出ていません。逆に、精神的にボロボロで食欲が無かったのに、今はすごく食べれるようになりました。すごく不思議です。
副反応はこれから出るのですか?
全く副作用の無い方も何人かおられて、バリバリ仕事をなさっているそうです
。大変うらやましいです。
でも、副作用が無いということは、抗がん剤の効き目が悪いというような事はないのでしょうか?
この前の、田澤先生のご回答で、「質問者が行う予定であるFEC(100mg/2)x6では600mg/m2しか投与されないので安全量なのです。(心筋障害の可能性がゼロとは言えませんが…)
とありました。
それで気になったのは、
私が昨日していただいたのは、フルオロウラシル(5FU)を750㎡、エビルビシン塩酸塩を150㎡、シクロホスファミド(エンドキサン)を750㎡です。
田澤先生が100で×6で600mg/㎡しか投与されないので安心量とおっしゃっているのと、ずいぶんかけはなれている気がして気になりました。
○○大学医学部付属病院のパンフレットを私の行っている病院ではないのですが、渡されまして、それを読むと、Fは、500mg/㎡、Eは、75~100mg/㎡、
Cは、500mg/㎡だと書いてありました。
ただし、年齢、症状、体重にもより、変化するそうですが、
気になるのは、「適宜減量する」と書いてあることです。「適宜増減する」なら安心なのですが・・・。
それでは、増やしたりしないということでしょうか?
私の行っている病院の担当の看護師さんにお尋ねしてみましたら、
私の体表面積は1.473で、それではそれぞれ、Fが500、Eが100、Cが500で妥当だが、それに、年齢や症状を考え、治癒を目指すことが目標なので、1.5倍の量なのだそうです。
これは、どうお考えですか?
毎回毎回多い質問、本当にご面倒だと思いますが、よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「化学療法」についてですが、「質問者も看護師も」大変な勘違いをしています。
 この機会に「正しく」理解していただければと思います。
 化学療法のレジメンとして「Fは500、Eは100、Cは500」というのは実際には「Fが500mg/m2, Eが100mg/m2, Cが500mg/m2」 のことを指しており、(体表面積が1.5m2の場合の実際の投与量は「Fが750mg, Eが150mg, Cが750mg」となります。
★FEC(100)という治療はFEC(100mg/m2)の事であり、FEC(100mg/body)の事ではありません。
♯ mg/m2というのは「体表面積当たりの量」であり、実際にはこれに体表面積を掛け算する事となります
  mg/bodyというのは「実際の投与量」です。
 つまり、100mg/m2を体表面積1.5m2の人に行う際には 実際の投与量は100mg/m2 x 1.5m2 = 150mg/bodyとなります。

回答

「もし副作用がきつく出たら、次はECに変更ということも出来るのでしょうか?」
⇒これは通常、大丈夫です。
 ただし、最近は何処の病院でも(江戸川病院でも勿論そうですが)レジメン登録制度で「厳しく管理」されています。
 (その病院でECレジメンが登録されていない)可能性もあります。 
♯FEC(100mg/m2)は 5Fu 500mg/m2, E 100mg/m2, C 500mg/m2
 EC(90mg/m2)は 5Fu 500mg/m2, E 90mg/m2, C 600mg/m2
 となり、FECから5Fuを抜いて、Eを100mg/m2⇒90mg/m2へ減量しただけでは無いのです。
 C(エンドキサン)を500mg/m2⇒600mg/m2へ増量しなくてはならないので、『副作用のためにFECから減量しました』では通らないのです。
 
「アバスチン(ベバシズマブ)の治療は、どこの病院でもやっていらっしゃるのですか?」
⇒乳腺外科医がいる病院でベバシズマブをやっていない病院は考えられません。
 もしかして、「そこの医師のポリシー」でベバシズマブは不要と考えているのかもしれません。
 
「再発や転移した場合、アバスチンとタキソールの併用の治療は、私には効くのでしょうか?」
⇒効くと思います。
 ベバシズマブ+パクリタキセルは「私が経験した中でも」最も「効果が実感できる」治療法です。
 他の薬剤で「ピクリとも反応しなかった」場合でも、「有効である事が非常に多い」です。
 ○私事でなんですが、ベバシズマブに感銘を受けて 
 「乳がん骨転移に対するベバシズマブ併用パクリタキセル療法の有用性」日本医師会雑誌 144巻 1号 91~96頁 2015-04-01(2015年4月)で論文発表したばかりなのです。
 
「それを何ヶ月続けるのでしょうか?」
⇒再発治療には「術後補助療法のような期限はありません」
 「効いている限りは継続」しますし、「効果が落ちれば」中止します。
 
「PTXで治療した方がいいと思うのですが、再発したときの事を考えるととても怖いです。もう何も出来ないということになるんですよね」
⇒これは勘違いです。
 タキサンだけでも、DTXもあるし、(PTX既治療でも)Bev+PTX(bevacizumab+pacritaxel)も大丈夫です。またnab-PTXもあります。
再発治療は何でもありなので、ビノレルビンもカペシタビンもTS-1もエリブリンも… 乳癌の化学療法は極めて豊富なのです。
 
「逆に、精神的にボロボロで食欲が無かったのに、今はすごく食べれるようになりました。すごく不思議です。副反応はこれから出るのですか?」
⇒おそらく、当日の「調子良さ」には「前投薬であるステロイド」も関係してそうです
 また、「消化器系の副作用」も2~3日目にピークが来ることが多いです。(結局、殆ど副作用の無い人もいらっしゃいます)
 
「フルオロウラシル(5FU)を750㎡、エビルビシン塩酸塩を150㎡、シクロホスファミド(エンドキサン)を750㎡」
⇒質問者は勘違いされています。
(5FU)を750㎡⇒750mg、エビルビシン塩酸塩を150㎡⇒150mg、シクロホスファミド(エンドキサン)を750㎡⇒750mg の間違いです。
 体表面積は1.473とあるので、それぞれ5Fuは500mg/m2なので(500mg/m2 x 1.473m2 = 736.5mg≒750mg) 同様にエピルビシンは100mg/m2なので(100mg/m2 x 1.473m2 = 147.3mg≒150mg)、エンドキサンも同様に行っているのです。
 ♯ つまり、このレジメンはFEC(100)『5Fu:500mg/m2, E:100mg/m2, C:500mg/m2』なのです。
 
「100で×6で600mg/㎡しか投与されないので安心量とおっしゃっているのと、ずいぶんかけはなれている気がして気になりました」
⇒上記説明で御理解いただけたでしょうか?
 (体表面積をかけて)150mg となりますが、質問者が行っているのも『100mg/m2のレジメン』なのです。 総投与量も「600mg/m2」となります。
 
「それでは、増やしたりしないということでしょうか?」
⇒(レジメン登録されている容量にたいして)増やす事は「決して行ってはいけない」ことです。
 抗がん剤は厳しく「レジメン管理」されています。
 その最も重要なところは、「臨床試験で安全性が確認されている容量を超えていないか?」のチェックです。
 「誤って増量してしまう」と(冗談抜きで)「死の危険」があります。(抗がん剤は危険な薬剤なのです)
 
 FEC(100mg/m2)の承認なのに 「担当医の判断で」『副作用も大丈夫そうだし、FEC(150mg/m2)でやってみようか?』などは全くあり得ない事なのです。
 ♯そのような事をやっていたら、「抗がん剤治療は凶器」となってしまいます。
 
 ○それに対して、「減量」は「患者さんの副作用の程度」によって「自由に行うことが許されている」のです。
 
「私の体表面積は1.473で、それではそれぞれ、Fが500、Eが100、Cが500で妥当だが、それに、年齢や症状を考え、治癒を目指すことが目標なので、1.5倍の量なのだそうです。」
⇒これは「看護師の勘違い」です。
 先ほどから「再三」コメントしたように「レジメンを超えて」増量などあり得ない話です。
 「Fが500、Eが100、Cが500で妥当」というのは「Fが500mg/m2, Eが100mg/m2, Cが500mg/m2 ≒ Fが750mg, Eが150mg, Cが750mg」の事です。 決して1.5倍にしているのではありません。
 
 ○その看護師は大変な勘違いをしているようなので、質問者から教えてあげてください。