乳がん手術は江戸川病院・東京


[管理番号:5504]
性別:女性
年齢:48歳

いつも拝見させていただいています。

2017年7月 右胸浸潤癌診断(A病院にて)、
8月温存手術(B病院にて)を受けました。

【術後病理検査結果】(B病院)
浸潤径1.0×0.5 浸潤癌 ステージ1
術中センチネル陰性(リンパ郭清なし)
ly(0/3) v(0)  断端陰性 Her2陰性
明らかな転移所見なし グレード1
ER>90%(score 3b)  PgR>90%(score 3b)
MIB-1(Ki67) 33%

術前(A病院にて)では、
Ki-67が「平均して10~15%」との診断だったため、
「ルミナールA」とのことでしたが、
術後(B病院にて)の検査結果の数値が「hotspotで33%」とのことで「ルミナールB」と言われ、抗癌剤(TC×4)+タモキシフェン投与を勧められました。

抗癌剤の想定をしていなかったこともありOncotype検査をお願いして現在結果待ちです。

質問です。

①Ki-67は施設によって、平均値を用いたりhotspotで考えたりするためバラつきがあると読んだ事があります。

(そんなに大事なことが統一化されていないということでしょうか?)
→つまり、ルミナールAかBかが決まる基準も一定ではない
→結果、グレーゾーンが存在し、抗癌剤治療の追加判断に困る
→それをはっきりさせるためにOncotypeを用いる
という理解は正しいでしょうか?
(以前、先生のコラムで、「感覚的に」Ki67 ≦20だと ルミナール A、20 < Ki67 < 40 グレーゾーンとありましたが、これも考え方が様々あるということでしょうか。)

②そのような「グレーゾーンをはっきりさせるためにOncotypeを実施」というのは理解できるのですが、
その数値でいくつならルミナールA、もしくはBと判断されるのでしょうか。

(この理解は正しいですか?Oncotypeは高中低のリスク表示しかないようですが。)
ちなみに、中リスクだった場合の抗癌剤治療の追加について、
A病院の主治医「必ずしも必要とまでは思わない。
万が一の再発時に後悔すると思うならやってもいいのでは?」という意見ですし、
B病院の主治医「低リスク以外ならばやるべき。
抗癌剤治療の追加によって、
再発リスクが8%→4%ならば半減するわけで、この数%を重視すべき」という意見でした。
(この病院ではKi67が30%がcut off値のようです)

ご教示いただけたら幸いです。
宜しくお願いいたします。

        

 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。

今回の内容は(質問者は読んでいただいているようですが)全てコラムで紹介している内容といえます。
一番重要な考え方は、そのコラムの中の
『この「intrinsic subtype」はマイクロアレイを用いた分類であり、(研究室レベルのもので)一般診療には到底使えないのです。「どうやったら、(マイクロアレイを用いずに)一般診療でルミナールAとBにわけられるのか?」そこで白羽の矢がたったのが「Ki67」です。』
ということです。
つまり、そもそも「ルミナールAとBを分ける簡便法に過ぎない」ので、「正確に分けることは理論上不可能」なのです。
「だからグレーゾーンが出るのが当然(大前提)」なのです。

「ルミナールAかBかが決まる基準も一定ではない→結果、グレーゾーンが存在し、抗癌剤治療の追加判断に困る→それをはっきりさせるためにOncotypeを用いるという理解は正しいでしょうか?」
⇒その通りです。

「その数値でいくつならルミナールA、もしくはBと判断されるのでしょうか。」
⇒OncotypeDXは「Ki67よりは圧倒的に優れた簡便法」という位置づけであり、当然グレーゾーンが存在するわけです。(これも大前提と言えます)

「ちなみに、中リスクだった場合の抗癌剤治療の追加について、」
⇒これは(実は)次回の今週のコラムで出す予定ですが…

 中間リスクは「化学療法の上乗せはない」ことが証明されています。
 それでも「中間リスク」と一言でいっても幅広いので、「中間リスクの中で線引きするとすれば、どこか?」という議論は(言うまでも無く)昔から議論となっていました。

 その答えは(中間リスクの中の)「RS=25以下と26以上で分ける」というものです。(このデータも次回、紹介します)

 ☆ただし、Genomic Health社の担当者に直接、意見を求めると…
  「OncoytpeDXでは(低、中間、高)リスクに分けていますが、そこに拘らずに個々のレポートに書いてある上乗せ値で判断してください」と言われました。

「低リスク以外ならばやるべき。抗癌剤治療の追加によって、再発リスクが8%→4%ならば半減するわけで、この数%を重視すべき」
⇒この記載そのものが誤りです。

 実際には「化学療法による上乗せ」は 「リンパ節転移無」と「リンパ節転移有」で、かなり異なります。
  リンパ節転移有では「中間リスクでは殆ど3%以下」となるし、リンパ節転移無では「中間リスクでもRS<26の場合には数字上4%程度となる」のです。
  ♯このことは「今週のコラム99回目のグラフ」を見比べると理解できるでしょう。
   「リンパ節転移陰性」では「Tam Alone」群と「Tam + Chemo」群のグラフはクロスしないのに対し、「リンパ節転移陽性」ではRS=18でそららのグラフがクロスすることに注目してください。
        

 
 

 

質問者様から 【質問2】

コラム100回目について質問
性別:女性
年齢:48歳

迅速な回答ありがとうございました。

コラム100回目がとても興味深く、大変参考になりました。

ご尽力に感謝するばかりです。

その100回目のコラム、グラフのことで疑問がありまして再度のご質問です。
今週のコラム 100回目! 「若いから」抗ガン剤をしましょう。は過ちなのです。
①2つめの棒グラフを見ると、中間タイプに上乗せがない、と読むことができます。
ただ、よく見かけるような個々のスコアの書いてあるレポート(曲線グラフ)だと、中間リスクでも数%ながら上乗せがあることもわかります。
棒グラフと曲線のグラフはその点が矛盾しているようにも感じますが、どう解釈すればよいのでしょうか。

②3つめの棒グラフの解釈が少し難しいです。
「中間リスクのここに注目!」とある点。

「Known chemo~」「No or unknown chemo~」なども語句も含めて教えていただけますか?
③40歳以下のグラフ、右側部分が「BLOG」の項目に隠れて見えないので、データ全体を拝見したいです。

④これらのデータは、最新の情報と認識しておりますが、一般に公開されているものでしょうか?(先生方がどの程度認識されているものか?)もしくは、田澤先生だからご存じの情報なのでしょうか?
主治医と今後の治療方針を決める際に、参考にすることがあるかもしれず、
データの出所は?と聞かれた場合に困るので。

⑤再発について、先生は「再発した人は初発がそれなりに大きな腫瘍径だった→再発するべくしてそうなったケースが多い」と以前書かれていましたが、オンコタイプの結果を見るとやはり数%ながら再発のリスクはあるように感じます。
この検査を受ける時点で多くの方のステージは「早期」だと思うのですが、先生のご経験上、早期の患者さんではこれまで再発したケースがなかった、ということでしょうか?
⑥最近の記事で「pT1abN0の早期乳癌に対する術後化学療法は遺伝子によるリスク診断で高リスクの場合に有用な可能性【ESMO2017】」という記事を見つけましたが、これは100回目のコラムで書かれている内容と同じ意味ですか?「pT1abN0」の意味がわからなくて、理解できませんでした。

お忙しいところ恐縮ですが宜しくお願いいたします。

 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。

「棒グラフと曲線のグラフはその点が矛盾しているようにも感じますが、どう解釈すればよいのでしょうか。」
⇒そもそもグラフは連続しています。

 「ある値」で「階段状の不連続」とはならないのです。
 一方で「ある範囲の値(この場合にはRSが19~30)での再発率を2群間(ここではケモ無とケモ有)で比較(統計的処理)をすると(多少の傾向はあっても)
「統計学的有意」とはならないということです。

 ☆良く考えてもらえばいいのですが、
  こういう連続変数では「当然起こる事」なのです。
   RS=30 と RS=31 で突然「上乗せ」が「0から30になる」と思いますか??
   実際は、その2つの間には「それ程の差はない」でしょう。

   「RSが19~30」と「RSが31~」を比較して「上乗せが30%も違う」というのは、実際には前者は「RSが19~20代前半の値に引っ張られてて低値となり」いっぽう後者は「RSが30後半以上の際の値に引っ張られて高値となっている」と解釈します。

「②3つめの棒グラフの解釈が少し難しいです。「中間リスクのここに注目!」とある点。」
⇒アメリカの主要な癌登録であるSEER(Surveillance, Epidemiology, and End
Results)のdate baseを用いた集計なので、全ての治療の記録が載っているとは限らないという意味であくまでも「調べた限り(知る限り)=Known」と表現されているのです。

「Known chemo~」:「化学療法を行っていると記録のある症例」
「No or unknown chemo~」:「化学療法を行っていないと記録がある」もしくは(調べた限りでは)「化学療法を行ったという記録のない症例」

 この棒グラフは、中間リスクでは「No CT(化学療法をしていない症例」とKnown
CT(化学療法を行っている症例」で全くBCSM(breast cancer specific mortality:乳癌関連死)が同一であることを示す一方、
  低リスクでは寧ろ「No CT群の方がKnown CT群よりもBCSMが低い」となっており、高リスクでは明らかに「No CT群の方がknown CT群よりもBCSMが高い」結果を示しています。

 ☆私が「点腺の丸」で囲った「Intermediate」の下の数字「known Chemotherapy
34%」と「No or Unknown Chemotherapy 66%」は今回の『Intermediateの対象者の34%が(無駄に)抗癌剤をされていた』という事実を示しているのです。

「③40歳以下のグラフ、右側部分が「BLOG」の項目に隠れて見えないので、データ全体を拝見したいです。」

「④これらのデータは、最新の情報と認識しておりますが、一般に公開されているものでしょうか?」
⇒私はGenomic Healthの担当者から提供されたのですが、すでに発表されています。

「先生のご経験上、早期の患者さんではこれまで再発したケースがなかった、ということでしょうか?」
⇒そんなことはありません。(ただ少ない事は事実です)

 ただ、時々QandAでコメントしている様に…
 腫瘍径1cm以下となると…
 殆ど記憶を探っても無いのです。(忘れっぽくなっていることは事実ですが…)

「⑥最近の記事で「pT1abN0の早期乳癌に対する術後化学療法は遺伝子によるリスク診断で高リスクの場合に有用な可能性【ESMO2017】」という記事を見つけましたが、
これは100回目のコラムで書かれている内容と同じ意味ですか?「pT1abN0」の意味がわからなくて、理解できませんでした。」

⇒これは「abstract」を見る限りは…

 OncotypeDXではなく、MammaPrintを用いているようであり、
「浸潤径10mm以下リンパ節転移なし」において化学療法使用群の予後が良かったことが書かれていますが、統計学的有意差があったかどうかについては不明です。(サブ解析です)

お忙しいところ恐縮ですが宜しくお願いいたします。





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