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全摘か温存か、または皮下乳腺全摘か

[管理番号:209]
性別:女性
年齢:43歳
新たな質問で度々申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
先日の回答で、温存+放射線照射は、全摘より局部再発の点で劣るとありましたが、皮下乳腺全摘はいかがでしょうか?やはり、胸をなくすのは大変恐怖です。皮下乳腺全摘は一般的な手術ではないですか?できれば、皮膚や乳頭や乳輪は残して、後にインプラントを入れたいとおもいます。
よろしくお願い足します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「皮下乳腺全摘」ですね。
 それでは回答します。

回答

「皮下乳腺全摘はいかがでしょうか?」
⇒質問者が希望しているのは「皮下乳腺切除術」ではなく、(乳頭、乳輪を残した)「乳輪乳頭温存乳房切除術」の事ですね。
 「皮下乳腺切除術」は、(乳頭を含む乳腺を全切除するが、皮膚は極力残す)乳房切除術のことで、更に(乳頭及び乳輪も残すものを)「乳輪乳頭温存乳房切除術」といいます。
※用語が解りにくいので、「乳房温存術」と「乳房切除術」との位置関係を示すと
 乳房温存術 < 乳輪乳頭温存乳房切除術 < 皮下乳腺切除術 < 乳房切除術 となります。
 
●「皮下乳腺切除術」については「十分な評価機関があり」安全性が保障されています。
 これに対し、「乳輪乳頭温存乳房切除術」については、「局所再発が許容範囲」という報告は多くありますが、「十分な経過観察期間」とは言えず、乳癌学会の推奨度はC1(根拠は十分ではないが、細心の注意のもとで行うことを考慮しても良い」となっています。
 
■温存術での「局所再発部位の80%は腫瘍床(腫瘍がもとあった部位)」であり、その点では「放射線照射を省略した温存術」よりは「乳輪乳頭温存乳房切除術」の方が十分安全とは思います。
ただ、「あくまでも乳腺を残す場合には、術後放射線照射が原則」だと、思います。
「乳輪乳頭温存乳房切除術」は「この原則を無視して、乳頭部分の乳管を(放射線照射なしで)温存する」特殊な方法であることは認識しておく必要があります。