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乳癌とワキの下のはりの関係

[管理番号:53]
性別:女性
年齢:41歳
 
はじまして。
今年に入り、自覚症状はありませんが、市から無料券をいただいたので、マンモグラフィーの検査をうけました。
結果、要精密検査で、別病院を紹介されました。
説明を聞いたときは、今はっきりと病気が見つかったわけではないが、もしも…ということがあるから……というような感じでした。
なので、なにもないと思っている一方で、かなり前から時々ワキの下がはっているというか、何かを挟んでいるような感じがあり、それは何か癌と関係があるのか…と多少の不安もあります。
1年前には、石灰化は見られるが異常なしという結果でした。
1年もたたないうちに、悪化ということもあるのでしょうか。
別病院での予約日時が少し先のため、気にしないでおこうと思いつつ、不安が募ります。
 
 

A.回答

 こんにちは。田澤です。
 状況は解りました。
 以下の3点が不安の原因となっているようです。
①最初の病院で「もしも…」みたいな「曖昧な事を言われた」
②自覚症状(腋の下の張り)
③1年前の石灰化(石灰化はあるが異常なし)
 
 これらの事で悩んでいる方はかなり多く、他の多くの方にも大変参考になる質問です。
 ありがとうございます。
 

状況の確認

 今回「要精査」となっていますが、残念ながら「その中身についての記載」がありません。
 「要精査」の場合は「石灰化、要精査」、「腫瘤疑い、要精査」、「局所的非対称性陰影、要精査」)の3通りがあります。
 これら要精査の中身については、検診結果に記載があることも多いのですが、検診によってはこれら中身の記載がなく、ただ「要精査」としか記載されていないこともあります。
 その場合には、自分の「要精査」が上記(石灰化or腫瘤疑いor局所的非対称性陰影)の何れなのかは診察した医師に確認しましょう。
 
 今回は、質問の流れ(1年前の石灰化はあるが異常なし)からすると、「石灰化、要精査」だと推測し、まずはそう仮定して回答します。
※但し、今回の要精査が石灰化以外(「腫瘤疑い、要精査」もしくは「局所的非対称性陰影、要精査」)の可能性もあるので、最後にその場合の回答も示します。
 

回答(石灰化、要精査の場合)

 乳癌と「腋の下の張り」の関係は無いと、ほぼ断言できます。
 なぜ、そのように言えるのかというと、
 「腋の下が張る」原因として圧倒的に多いのは「乳腺症」です。
 
●その一方で乳癌が原因で「腋の下が張る」場合は以下の2つしか考えられません。

  • 乳腺に明らかなしこり(乳癌)があり、更に腋窩リンパ節転移がある場合
  • 乳腺には異常無く、腋窩部付近の乳腺や副乳にしこり(癌)がある場合

⇒ただし、これら2つ共に、病院を受診して見逃される事は全く考えられません。勿論「今はっきりと、病気が見つかったわけではないが…」みたいな曖昧な表現になることは決してあり得ません。
 
 
◎但し、「石灰化、要精査」には注意が必要です。
「1年前の石灰化は良性と判断され要精査とならなかった」
⇒今年「石灰化、要精査と指摘された」となれば、この1年で石灰化が増加している可能性があります。
 要精査となる石灰化は「癌が原因である石灰化である可能性」が20%以上あります。 
※石灰化の原因については、トップページの「石灰化」を参照してください。
⇒石灰化の原因の大部分は「乳癌以外が原因」であり、ごく一部が「乳癌が原因」であることも理解してください。
 
 「癌が原因である石灰化」は、マンモグラフィーだけが唯一の所見です。最初は超音波では見えません(勿論MRIは無意味です)
 やがて増殖し「しこり」を形成するとようやく、超音波で見えてきます。(この間は半年以上、1~2年以上かかることも珍しくはありません)
 今回の医師の「今はっきりと病気が見つかったわけではないが、もしも…ということがあるから……」という発言は
 今現在超音波で異常所見が無いけど、「もしも、癌が原因である石灰化であれば 半年後、1年後に増加し、結局癌だった。という可能性もある」という事を意味しています。
 「その施設にステレオガイド下マンモトーム生検(以下ST-MMTと略します)が無い」もしくは、「ST-MMTに積極的な姿勢がない」のどちらかでしょう。
 「だから経過を見る必要があります」という結論になっていると思います。
 
◎私は、「要精査となった石灰化」であれば、是非ST-MMTを勧めます。(その結果、もし癌であれば、「究極の早期発見」となるし、幸いにも癌で無ければ、「本当の意味の安心」が得られるからです)
 「別病院の予約がこれから」という記載がありますが、「石灰化、要精査」の場合には、その病院にST-MMTがあるのかを事前に調べておいた方がいいと思います。
 

今回の要精査が「腫瘤疑い、要精査」もしくは「局所的非対称性陰影、要精査」であった場合

 この場合には、超音波で異常所見を認めていなければ特に心配はありません。
 この場合の医師の発言「今はっきりと病気が見つかったわけではないが、もしも…ということがあるから……」の真意は、単に自分の超音波技術に100%の確信が無いから「念のため」としての発言だと思います。
 それであっても、「腋の下の張り」が影響とするような「明らかな所見」を超音波で見逃すはずは無く、心配はありません。
 

最後に

 このように、要精査という場合には、「何が原因の要精査か?」まで把握するようにしてください。(本来、診察した医師がはっきりとお話すべきですが)
 病院での検査は超音波で殆どすべての事が解るのですが、例外的に「石灰化」だけは、超音波では解らないので、
 ◎石灰化の場合には、必ず事前に調べて「ST-MMTのある病院」を受診するようにしてください。
 
 ステレオガイド下マンモトーム生検の無い施設で石灰化の診察をすべきではありません。
 ※早期発見のチャンスを逃す可能性があるからです。
 
 

 

質問者様より感想

 昨日、ワキの下のはりと乳癌との関係についてのメールをしましたが、早速のお答えをありがとうございました。
 すごく詳しく分かりやすい内容で、なんだか少し落ち着きました。
 次に行く病院のことも、しっかり調べます。ありがとうございました。