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乳がんの動くしこりについて

[管理番号:4955]
性別:女性
年齢:27歳
田澤先生、はじめまして。
5月末に、ふと2センチほどの縦長(楕円形?)のしこりが上部内側にあることに気づき、
乳腺科を受診(触診・エコー)したところ、恐らく良性のものだろうから3ヵ月経過観察しましょうと言われました。
なんとなく不安になって別の病院へ行ったところ、
再度触診・エコーで、恐らく良性だけど念のため細胞を検査しましょうと言われました。
結果、悪性(乳がん)であることが分かりました。
(クラスまでは教えてもらっていません)
そのあとすぐ、太い針を指して組織診をし、CTとMRIを受けています。
結果は2週間後です。
しこりは硬い方だと思うのですが、
自分で触った時に左右にコリコリ動いている感じがあります。
(上下には動きません)
目に見えて分かる症状も全くなく、大丈夫だろうと2度も言われて安心しきっていたので、
まさか乳がんだなんて思っていなかったのでショックです…
動くものは早期と書かれているのを見ましたが、
若いと進行が早いという噂も聞き、毎日が不安です。
今の症状で、転移していたり進行していることは考えられますでしょうか。
経過観察となったしこりでも、ある程度進行していることがあるとすれば、もし念のため検査していなかったらと思うとぞっとします。。
先生のご意見をお伺いしたいです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
状況から「早期であることは間違いなし」です。
それは進行癌を「おそらく良性のもの」と判断する筈がないからです。(その点は御心配なく)
「動くものは早期」
⇒これ自体は殆ど無意味です。
 殆どの乳癌が「動く=大胸筋浸潤がない」のがあたり前なのです。
 癌が乳腺内から、大胸筋へ直接浸潤すると「大胸筋に固定される」から「動かない」となるわけですが、よほど「乳腺の奥」に無い限り、そう簡単には「大胸筋浸潤はしない=動くのがあたり前」なのです。
「若いと進行が早いという噂」
⇒全くの「噂」です。
 全く事実無根です。
「今の症状で、転移していたり進行していることは考えられますでしょうか。」
⇒ありません。
 冒頭でもコメントしましたが…
 進行癌なら「診察して、すぐ解る」のです。
 早期だから「良性だと思うけど…」となるのです。(その位は信じてあげましょう)
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生、こんにちは。
前回は先生のお言葉にかなり気持ちが楽になりました。
ありがとうございました。
病理結果が出ましたので、改めてご相談させていただきます。
浸潤径: 2.5cm
グレード3
ホルモン陰性
HER2 100%強陽性
ki67 : 60~70
(覚えている情報だけですみません)
MRIとCTの画像から転移は見られなかったため、
ステージ2Aと診断されました。
ただ、悪性度が高く増殖が早いタイプなので
すぐに術前抗がん剤を進められ、
年齢のことも考えて全摘も進められました。
術前抗がん剤は、しこりを小さくするためだけで
術前・術後で効果は変わらないと読みましたので
先に手術を希望しましたが、
1ヶ月は先になるので、その期間何もしないよりは
はやく治療をはじめてほしい、とのことでした。
今のところ、
術前抗がん剤→半年後に手術→分子標的療法
の予定ですが、先生はどう思われますでしょうか。
また、どの記事を見ても
HER2タイプ・ki67が高い・グレード3・若年性は予後が悪い、再発リスクが高いとしか書かれておらずやはり不安に押し潰されそうです。。
上記の治療で、他の乳がんのタイプと同じくらい
予後の状況や再発・転移リスクは改善されますでしょうか。
また、1ヶ月後の手術も待てないくらい進行が早いということでしょうか。
お忙しいかとは思いますが、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「ただ、悪性度が高く増殖が早いタイプなのですぐに術前抗がん剤を進められ」
⇒全くナンセンスです。
 術前抗がん剤の根拠になりません。
 私は「小さくして温存」以外の術前抗がん剤は認めません。
「年齢のことも考えて全摘も進められました。」
⇒だったら、術前抗がん剤をする意味が全くありません。
 手術すべきです。
「術前抗がん剤は、しこりを小さくするためだけで術前・術後で効果は変わらないと読みましたので先に手術を希望しました」
⇒正しい理解です。
「1ヶ月は先になるので、その期間何もしないよりははやく治療をはじめてほしい、とのことでした。」
⇒1カ月なら、全く問題ありません。
 それより長くなるなら、術前に1回位(術後に行うべきものを)前倒しすればいいのです。
「今のところ、術前抗がん剤→半年後に手術→分子標的療法の予定ですが、先生はどう思われますでしょうか。」
⇒私は、そんな「無意味な術前抗がん剤」を認める事はありません。
「どの記事を見てもHER2タイプ・ki67が高い・グレード3・若年性は予後が悪い、再発リスクが高いとしか書かれておらずやはり不安に押し潰されそうです。」
⇒そんな記事を見ても「百害あって一利なし」です。
「上記の治療で、他の乳がんのタイプと同じくらい予後の状況や再発・転移リスクは改善されますでしょうか。」
⇒その通りです。(術前に行っても術後に行っても効果は同じ、ただし術前に行った場合もしも効かなかった場合には手術不能となります)
「また、1ヶ月後の手術も待てないくらい進行が早いということでしょうか。」
⇒それは誤解です。