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乳ガンリンパ節転移について。

[管理番号:479]
性別:女性
年齢:43歳
田澤先生こんにちは。
いつも質問コーナーを拝見させてもらってます。
とても分かりやすく説明して下さってるので、私もお聞きしたくてメールさせてもらいました。
5月の初めに、細胞検査クラス4と診断され、エコーでリンパ節に転移もあるような事を言われました。リンパの細胞検査もしました。そしてPET検査もしました。
PET検査では、リンパ節に転移は見られません!
と言われたのですが、エコーでは写ってたのにPETでは写つらないというのはありますか?
とても心配です。その時に先生に質問するべきだったのですが、頭が回らずに質問出来ませんでした。
よろしくお願いします。
(2015年5月の質問)
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 リンパ節への細胞診はいいですが(腋窩は余程大きなリンパ節でない限りは針生検は危険でできません)、腫瘍に対しても細胞診をしているようですね。
 しかも「クラス4」当然、最初から(腫瘍には)針生検をするべきでした。
 質問者も結局「腫瘍に対して針生検を追加」したのでしょう。何故最初から針生検をしないのか?私には永遠の謎です。(勿論質問者を攻めている訳ではありません。私の愚痴です。すみません)

回答

「エコーでは写ってたのにPETでは写つらないというのはありますか?」
⇒あります。
 おそらく誤解がありそうなので、「腋窩リンパ節がエコーでどのように見えるか?」を記載します。
・腋窩には、正常なリンパ節がもともと沢山あります。
①正常なリンパ節は2相性(リンパ門という構造があり、やや平べったい)がある
②明らかな転移性リンパ節は2相性を失い、張りがでてくる(丸くなってくる)
③その中間(明らかな転移とは言えないが、正常ではないように見える)のリンパ節もある
 今回の質問者のケースでは、おそらく③なのでしょう。
 転移の可能性があるので「細胞診」をしたようですが、「結果はまだ」なのですね。
 反応性腫大といって「転移では無いが、腫れている(上記③に相当)」状態なのだと思います。
 一方でPET検査は「グルコースの取り込み」を見ています。
 つまり『いくら腫れていても、グルコースを取り込んでいない(活動性が低い)リンパ節は写らない』のです。
 
◎「エコーでは疑わしい」が「PETでは陰性」の場合には「形は気になるが、活動性が低い=結局転移ではない」事が多いのです。
 勿論、大人しい癌細胞は「活動性が低い」事もあるので、「転移でないと断言」する事はできません。
 手術時には「センチネルリンパ節生検」で確認する必要は当然あります。
 
 

 

質問者様から 【質問2 術前薬物療法について】

田澤先生こんにちは。前回、リンパ節転移について質問させていただきました。丁寧なご回答ありがとうございました。
また、再度質問させて下さい。
5月の初めから検査をして、やっと治療方針が決まって前進するのみと思ったのですが、手術の前に抗ガン剤が決まりました。
その後全摘手術の予定です。術前薬物療法に少し不安があります。
・浸潤がん
・しこりの大きさは、よく分からないそうです。4個位しこりがあって、それがつながっているみたいで、また乳頭の近くまで広がってるとの事です。
・ステージ2a
・リンパの転移はエコーでは見える感じみたいですがPETでは見られないとの事です。
・ER 陽性 PgR 陽性
・HER2 タンパク過剰発現 なし
・スコア判定1? スコア2?相当の所見を認められる。
・高増殖能 38パーセント
・ルミナールB
・抗ガン剤が、ドキソルビシン、エンドキサン、パクリタキセル
私の場合、どのみち全摘をしないといけないらしいのですが、それならば、手術を先にしてから、その後で抗ガン剤がいいのかと思ったのですが、先生が手術前がいいとおしゃってるのに、抗ガン剤が効かずに癌がそのまま転移していくとかを考えると術後がいいのでは?と言えませんでした。
また、乳ガンの治療は十人十色と聞くので、私にはやっぱりこの選択が良いのでしょうか?田澤先生の見解をお願いしたいのです。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 針生検の結果がでましたね。
 その結果からすると、主治医の「術前化学療法がいい」というコメントには明らかに「誤っている」と思います。

状況の確認

 cT2(2cm<腫瘍径≦5cm), cN0(リンパ節転移、画像上無との判断), cStage2A, luminal B(Ki67=38%)

術前化学療法の適応

◎絶対的適応は、
 ①「術前抗癌剤で腫瘍を小さくして温存手術を行う」です。
 これにあてはまるには『今の時点で腫瘍が(温存するには)大きい』『温存手術を希望している』この2点を満たしている必要があります。
 ⇒そもそも「腫瘍が、最初から小さい」とか「温存は希望していない」場合には、この理由は全く当てはまらなくなります。
 ★今回の質問者の場合のように、「腫瘍が多発していて、そもそも抗癌剤が効いても、(結局)温存術の適応外」であれば、全くあてはまりません。
○次に挙げる2つは、実は「根拠薄弱」であり「術前抗癌剤を勧める根拠とはなりません」
②「術後にどうせやるのだから、術前にやった方が良い」
⇒化学療法は「術前にやっても、術後によっても予後は同等」なのです。
 「術前にやった方がいい理由にはなりません」●術後でいいのです。
 
   
③「抗癌剤は術前にやると(効くか、どうかの)効果判定ができる」
 ⇒このような理由を言う医師も散見されますが、私は全く反対です。
 術前抗癌剤での効果はあくまでも「腫瘍が縮小するか?」で見ています。
 これが、「化学療法本来の目的である、再発予防に効果があるか?とは相手の大きさが異なります」
「術後の再発予防目的」では(目に見えない)「小さな相手に対する抑制効果」なので、「大きな腫瘍に対して縮小効果が乏しいとしても、再発予防効果に乏しい」とは限らないのです。
 

回答

「手術の前に抗ガン剤が決まりました。その後全摘手術の予定」
⇒担当医の、この方針は『明らかに誤り』といえます。
 理由は上記①に当てはまらない(★)からです。
 
「私の場合、どのみち全摘をしないといけないらしいのですが、それならば、手術を先にしてから、その後で抗ガン剤がいいのかと思った」
⇒まさにその通りです。
 質問者が正しいです。
 それでは何故「担当医は術前化学療法がいい」と思っているのでしょうか?
⇒想像ですが、上記②なのか③なのか、もしかすると「腫瘍が大きいと、手術が大変、小さくしてから手術した方が楽」という安易な発想かもしれません。
 
「抗ガン剤が効かずに癌がそのまま転移していくとかを考えると術後がいいのでは?」
⇒正しい考え方です。
 現実にそのような事は起こりえます。
♯例えば「効かない抗がん剤を4回(3カ月)施行したら」単に3カ月間「癌を放置」していたと同様の罪があります。
 
■術前化学療法を安易に勧めない理由
◎化学療法は「皆さんに必ず効果がある」とは限りません。
 効果の無い化学療法を行っている間に、「転移」したり「腫瘍が増大」する可能性があります。
 「術前抗癌剤」中に「腫瘍が増大」して、『慌てて手術へ変更』する事も私は何度も経験しています。
 
「私にはやっぱりこの選択が良いのでしょうか?田澤先生の見解をお願いしたいのです。」
⇒全く私も「質問者と同様の意見」です。
 理由も(質問者の考えている)その通りです。
 
 
◎ルミナールタイプ(しかもKi67 38%は決して高い値ではありません)で「術前化学療法」は基本的に勧められません。
 ご本人の強い希望(温存目的)に限るべきです。(それでもリスクを説明しなくてはなりません)
 「リスクを冒してまで、術前に化学療法」をする理由が私には全くみえません。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生こんにちは。
すみませんがまたご相談させて下さい。
田澤先生が術前抗ガン剤は進めないとアドバイスを下さったのに、主治医の進めもあり、迷いながらも術前抗ガン剤をしました。
ですが、やはり今となって術後にすれば良かったと思っています。
田澤先生には忙しい中、相談に乗って下さってるのに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
術前抗ガン剤を無事に終える事が出来たのですが、やはり全摘になりました。
同時再建もしました。
術中のセンチネル検査では、転移は認められなかったようで、リンパ郭清はしませんでした。
しかし、術後の病理結果で、0.2ミリの微小転移が見つかったそうです。
主治医は、おそらく、センチネルで微小だから、リンパにはいってないだろうとおっしゃってましたが、念のために、再建の時にリンパ郭清をした方がいいのか、無駄な郭清になるんじゃないかと悩んでるようでした。
田澤先生でしたら、どうされますでしょうか?
センチネルでの微小転移は、カウントされないと言われてますが、私の場合、術前抗ガン剤をしてるので、すでにリンパにも転移してしまってるのではないかと不安です。
主治医の事は、信頼してますが、田澤先生のご意見もお聞きしたくてメールさせてもらいました。
何度もすみません。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「術中のセンチネル検査では、転移は認められなかったようで、リンパ郭清はしませんでした。」「しかし、術後の病理結果で、0.2ミリの微小転移が見つかったそうです。」
⇒確認ですが…
 術前抗がん剤後の「センチネルリンパ節生検」をしているのは、「化学療法前画像診断で転移所見が無い」ことが前提です。
 それでよろしいですね?
 
「主治医は、おそらく、センチネルで微小だから、リンパにはいってないだろうとおっしゃってましたが、念のために、再建の時にリンパ郭清をした方がいいのか、無駄な郭清になるんじゃないかと悩んでるようでした。」「田澤先生でしたら、どうされますでしょうか?」
⇒これは(化学療法前の)画像診断で「転移無し」と判断しての「センチネルリンパ節生検」であれば、当然郭清は「省略」すべきです。
 
「センチネルでの微小転移は、カウントされないと言われてますが、私の場合、術前抗ガン剤をしてるので、すでにリンパにも転移してしまってるのではないかと不安です。」
⇒術前化学療法後は仕方が無いことなのです。
 あくまでも「化学療法前の画像診断」が頼りなのです。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生こんにちは。
すみませんがまたご相談させて下さい。
田澤先生が術前抗ガン剤は進めないとアドバイスを下さったのに、主治医の進めもあり、迷いながらも術前抗ガン剤をしました。
ですが、やはり今となって術後にすれば良かったと思っています。
田澤先生には忙しい中、相談に乗って下さってるのに、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
術前抗ガン剤を無事に終える事が出来たのですが、やはり全摘になりました。
同時再建もしました。
術中のセンチネル検査では、転移は認められなかったようで、リンパ郭清はしませんでした。
しかし、術後の病理結果で、0.2ミリの微小転移が見つかったそうです。
主治医は、おそらく、センチネルで微小だから、リンパにはいってないだろうとおっしゃってましたが、念のために、再建の時にリンパ郭清をした方がいいのか、無駄な郭清になるんじゃないかと悩んでるようでした。
田澤先生でしたら、どうされますでしょうか?
センチネルでの微小転移は、カウントされないと言われてますが、私の場合、術前抗ガン剤をしてるので、すでにリンパにも転移してしまってるのではないかと不安です。
主治医の事は、信頼してますが、田澤先生のご意見もお聞きしたくてメールさせてもらいました。
何度もすみません。
よろしくお願いします。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「術中のセンチネル検査では、転移は認められなかったようで、リンパ郭清はしませんでした。」「しかし、術後の病理結果で、0.2ミリの微小転移が見つかったそうです。」
⇒確認ですが…
 術前抗がん剤後の「センチネルリンパ節生検」をしているのは、「化学療法前画像診断で転移所見が無い」ことが前提です。
 それでよろしいですね?
 
「主治医は、おそらく、センチネルで微小だから、リンパにはいってないだろうとおっしゃってましたが、念のために、再建の時にリンパ郭清をした方がいいのか、無駄な郭清になるんじゃないかと悩んでるようでした。」「田澤先生でしたら、どうされますでしょうか?」
⇒これは(化学療法前の)画像診断で「転移無し」と判断しての「センチネルリンパ節生検」であれば、当然郭清は「省略」すべきです。
 
「センチネルでの微小転移は、カウントされないと言われてますが、私の場合、術前抗ガン剤をしてるので、すでにリンパにも転移してしまってるのではないかと不安です。」
⇒術前化学療法後は仕方が無いことなのです。
 あくまでも「化学療法前の画像診断」が頼りなのです。