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乳がんと肩こりの関連につきまして

[管理番号:4134]
性別:女性
年齢:40歳
妻が検診を受診し、乳がんと診断されました。
左乳房に1.9センチのしこり。
エコーの画像ではリンパ節は腫れておらず、ステージIとのことでした。
担当の先生からは温存手術を勧められました。
年内にMRI検査を受け、年明けに手術をする予定です。
妻は遠隔転移を疑っております。
というのは、だいぶ以前から左肩に肩こりがありこりがあり、最近は左手の指がピリピリするような感覚があるとも言います。
このことで、すでに骨に転移しているのはないかと心配しているのです。
先生に相談したところ、「状況から考えるとその可能性は低い。
骨シンチで調べることはできるが、仮に転移していたとしても、小さくて映らないのでは」、とのことでした。
もともと肩こりは慢性的なもので、これまでは妻も気にしていませんでしたが、今回、乳がんと診断されたことで、ナーバスになっているような気がします。
「指がピリピリする」と言い出したのは、乳がん検診を受受けてからのことです。
お忙しいところを恐縮ですが、ご意見をお聞かせいただきますと幸いです。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
世の中に正しい情報がないことは悲しいことです。
「乳がんの転移形式として最も多いのは骨転移」確かに、其の記載内容自体は正しい。
しかし、それはあくまでも(不幸にして)再発した場合の話であり、それは「初発治療(手術)」から数年も先の話です。(しかも早期の場合には、その9割はそれとは無関係に天寿を全うされます)
『今週のコラム 55回目 乳癌は「この状況」となっても「遠隔転移」を(めったには)起こさないのです。』をご覧になってください。
私が数千人もの(誇張抜きで)患者さんを直に診療してきて実感していることなのです。
「妻は遠隔転移を疑っております。」
「すでに骨に転移しているのはないかと心配している」

⇒全く無駄な心配です。
 この時点で、その担当医が「可能性は低い」ではなく、「可能性はない」と言い切ってあげるべきでしょう。
「仮に転移していたとしても」
⇒これも、(却って、不安を煽る様な)極めて「不適切な」コメントです。
 もしも記憶にあるのであれば、是非「delete」ボタンで削除しましょう。
「だいぶ以前から左肩に肩こり」
⇒単純な「肩関節周囲炎」なのか、「女性ホルモンによる刺激症状」なのかまでは判断がつきませんが「(原因が)骨転移でないことだけは1000%確実」です。
「最近は左手の指がピリピリするような感覚」
⇒頸椎症も候補には上がりますが(この場合には整形外科を受診するわけですが)…
 単純に(乳癌であるという)ストレスが卵巣機能に作用して「女性ホルモンによる症状が強くなっている」ように思います。(時系列的にみると)
「もともと肩こりは慢性的なもの」
⇒そもそも、このような「以前からある、慢性的なもの」を「乳がんと関連づける」ことは、あまりにも飛躍があります。(気持ちはわからないわけではありませんが…)
「今回、乳がんと診断されたことで、ナーバスになっている」
⇒まさに、これが回答です。
「ご意見をお聞かせいただきますと幸い」
⇒解りましたか??
 全く無駄な心配です。
 できれば、その主治医の口から「肩コリと骨転移は1000%無関係」と言ってあげて欲しいものです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
先日は、妻の乳がんと肩こりの関連につきまして、ご回答をいただき、
誠にありがとうございました。
その後、温存手術を経て病理の結果が出ました。
今回はその件で、質問をさせていただきたいと存じます。
組織型:浸潤癌(通常型)
腫瘍径:16×11mm
断端:5mm以内
核グレード:3
Ki-67:42%
リンパ節転移個数:0
病期:I期A
ホルモンレセプター:ER 陰性  PgR 陽性2%
HER2タンパク:3+
今後の治療については、主治医の先生から以下のように提案をいただきました。
抗がん剤:AC療法×3回、ドセタキセル×3回
ホルモン療法:タモキシフェン5年間、LH-RHアゴニスト2~3年
パーセプチン:1年間
放射線治療:抗がん剤治療終了後
手術前には、I期だろうとの診断を受けておりましたので、少々楽観をしておりました。
しかしながら、病理の結果、トリプルポジティブで、しかも核グレードが3であったことに妻も私も少なからずショックを受けています。
主治医の先生からは丁寧な説明をしていただき、このタイプの癌には抗HER2療法が効果的であることを理解はできました。
ただ、核グレード3ということから、5年後、10年後の再発・転移の不安を拭い切れないでいます。
誠に恐れ入りますが、田澤先生はどのような治療を選択するか教えていただけますと幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「どのような治療を選択するか教えて」
⇒あくまでも早期癌です。 pT1c(16mm), pN0, pStage1
抗HER2療法は「絶対的な治療」なので当然行うべきです。
 ただし、「早期」の場合は、担当医が提案している「アンスラタキサンは不要」です。
非アンスラサイクリンレジメン
①weeklyPTX+HER
②TC+HER
③TCH
上記より選択すべきでしょう。
通院回数は多いが副作用が少ない方がいいのであれば①を、そうでなければ②をお勧めします。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生
早々にご回答をいただき、誠にありがとうございました。
質問後、こちらのQ&Aの過去ログを拝見したところ、田澤先生が、低リスクの場合は、非アンスサイクリンレジメンを勧めていることが解りました。
お時間をとらせてしまい、申し訳ありませんでした。
再質問は原則一週間空けてということはわかっておりますが、先日の質問で書き漏れてしまったことが、その後、どうにも気になってきました。
数日後の通院で今後のことを決めなければならず、急ぎ再質問させていただくことを、何卒お許し下さい。
切除した箇所の浸潤癌以外の部分に、事前の検査ではわからなかった小さな非浸潤癌が3つ(だったと思います)見つかりました。
主治医の先生の話では、「病理担当からは、他にもあるのでは、という所見がついた」とのことですが、主治医の先生の判断は「追加手術の必要はなし」
とのことでした。
その時はそのまま納得をしたのですが、「断端5mm以内」との記述があり、これが気になってきました。
追加手術をして、さらに広範囲を切除する必要はないでしょうか?
また、このことが術後療法の選択(非アンスサイクリンレジメンを選択していいか)に影響を与えますでしょうか?
浸潤癌の核グレードやKi-67の数値が高いため、気になります。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「追加手術をして、さらに広範囲を切除する必要はないでしょうか?」
⇒再切除かどうかは、実際の手術の状況がないと全くわかりません。
 申し訳ありませんが、それについては「担当医の 再手術は不要」というコメントを信じてあげてください。
「また、このことが術後療法の選択(非アンスサイクリンレジメンを選択していいか)に影響を与えますでしょうか? 」
⇒無関係です。
 私はその考えは絶対に認めません。
 物事はシンプルに考えなくてはなりません。
 「局所療法は局所療法で片をつけるべき」であり、「局所療法の不首尾を(本当に不首尾かは不明ですが)全身療法で補う」という考えには全く賛成しません。
 「局所療法」と「全身療法」それぞれで「最善を尽くす」これに尽きます。
「浸潤癌の核グレードやKi-67の数値が高いため、気になります。」
⇒無関係です。
 
 

 

質問者様から 【質問4 ホルモン療法の継続等について】

性別:女性
年齢:42歳
昨年に3回ほど、質問させていただきました(管理番号4134)。
その節はありがとうございました。
その後の経過で気になる点があり、再度、田澤先生のご意見をうかがいたいと存じます。
昨年1月に左乳房の温存手術を受けまして、病理の結果は以下の通りでした。
通常型浸潤癌(充実性乳管癌)
腫瘍径 16×11mm
核グレード3 
Ki-67 42%
センチネルリンパ節転移 なし
ER 陰性  PgR 2%
HER2 3+
断端5mm以内
その後の抗がん剤、放射線治療を経て、そろそろハーセプチンが終了するという段階です。
また、タモキシフェンを服用中です(5年予定)。
まだ開始しておりませんが、LH-RHアゴニストを2~3年の予定と聞いております。
お聞きしたいのは下記の3点です。
①抗がん剤中から生理が止まっており、1年ほど経ちました。
先日、おりものが気になったので、婦人科を受診したところ、膣粘膜の収縮があり、膀胱炎のような症状が出て、炎症がおきているとのことでした。
他にも、指のこわばり、治療前に22.8だった血小板の値が14.5まで下がってきている
などのがってきているなどの症状もあります。
いずれもタモキシフェンの副作用でしょうか?
どれも日常生活に困るような重篤なものではないのですが、「ER陰性、PgR 2%」のために、今後もホルモン療法を続けることが、私の体にとって本当にいい事なのか疑問に感じております。
主治医は「この数値でもホルモン療法をやったほうがいい」との見解です。
田澤先生はどのようにお考えになりますでしょうか?
②最近、爪や皮膚の状態がよくありません。
特に爪がひどいです。
抗がん剤中はそれほどでもなかったのに、抗がん剤をしてから数か月後にそういうことが起こることはありますか? 白血球も抗がん剤をする前のような数値には戻ってこず、基準値の下限ぎりぎりのままです。
そういうことはよくあるのでしょうか?
③3ヶ月ごとに血液検査をしています。
CEA15-3ですが、9月が8.6、 12月が7.9、3月 が9.5でした。
この結果は気になるようなものではないですか?
お忙しいところを申し訳ございませんが、よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
「いずれもタモキシフェンの副作用でしょうか?」
⇒影響はしているでしょうが…
 化学療法閉経による症状のようです。
「田澤先生はどのようにお考えになりますでしょうか?」
⇒無理してまで継続する必要はありません。
「②最近、爪や皮膚の状態がよくありません。特に爪がひどいです。」
⇒化学療法閉経が影響しているようです。
 サプリメントなどを試してみては?
「③3ヶ月ごとに血液検査をしています。CEA15-3ですが、9月が8.6、 12月が7.9、3月 が9.5でした。この結果は気になるようなものではないですか?」
⇒私には…
 全く気になる要素が見当たりません。
 (1%の問題もなく)正常です。