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乳癌術後について

[管理番号:2221]
性別:女性
年齢:51歳
田澤先生 はじめまして よろしくお願いします。
いつも拝見させいただいています。
田澤先生のわかりやすく親身なご回答をみてとても参考にさせて頂いております。
半年ほど前に乳癌温存手術を受け、病理レポートでは-Rt C,5×4㎜循環(浸潤径)/13×6×4
㎜(病変全体) papillotubular carcinoma,NG1,g,ly-,v-,ER+,PgR+,HER2:-,sn(0/1).
肉眼的に、40×35×13㎜大の検体。
25×5㎜大の皮膚が付属して切除されている。
割面では、4×3㎜大、境界明瞭な黄白色充実性病変を認める。
組織学的には、核小体明瞭な類円形腫大核と好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞が、小胞巣や小腺管、癒合腺管を形成し、浸潤、増殖している。
浸潤性乳管癌、乳頭線管癌>硬癌の所見。
最大腫瘍径は5×4㎜大、病変全体の広がりは約13×6×4㎜大。
途中に生検搬痕があり、DCIS成分の拡がりは分断している。
腫瘍は乳腺内にとどまる。
脈管侵襲は明らかではない。
腫瘍細胞のNuclear gradeは1相当(核異
型:中等度(score2)、核分裂像:4個程度/10hpf(score1)。
HER2には陰性、estrogen
receptor陽性(90%以上、moderate)、progesterone receptor陽性(60-70%、weak-moderate)、MIB-1陽性率は10-15%程度。
浸潤型乳管癌、乳頭線管癌 篩状に増殖する乳管内成分も見られる。
乳頭側の切片にわずかに腫瘍(乳管分のDCIS)を認め、深切り切片では消失したため断端は陰性であるが、近接している。
また、もうひとつの小さなDCIS成分が、深部剥離断端から0.5mmと近い。
背景乳腺には、乳管乳頭腫症や嚢胞形成などmastopathicな変化を認め、一部にcollagenous spherulosisを認める。
という結果でした。
主治医にはそのとき乳頭の近くと胸壁の筋肉に近い部分に一ミリ程度の癌細胞があると言われ、追加手術をするか放射線治療をするか選択してくださいと言われ、放射線治療を選択しました。
今となってはその1ミリの癌が残っているのではないかと心配でなりません。
そこで、質問させていただきます。
放射線治療後に受ける追加手術のメリットとデメリットを教えていただきたいのと、もしこのまま経過観察をするしかないのなら、どの様な頻度でどの様な定期検診をうけるのがベストなのか、また、タスオミンを飲んでいるのですが、この薬だけで充分なのでしょうか。
長々と長文になってしまい大変申し訳ありません。
大変お忙しいと思いますがよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
pT1a(5mm), pN0, luminalA
文句なしの「超早期癌」再発低リスクです。
「乳頭側の切片にわずかに腫瘍(乳管分のDCIS)を認め、深切り切片では消失したため断端は陰性であるが、近接している。また、もうひとつの小さなDCIS成分が、深部剥離断端から0.5mmと近い」
⇒どちらも「近接してはいるが」断端陰性です。
 担当医の「乳頭の近くと胸壁 の筋肉に近い部分に一ミリ程度の癌細胞がある」というコメントには「頸をかしげます」
 
「放射線治療後に受ける追加手術のメリットとデメリットを教えていただきたい」
⇒メリットは「乳房内再発のリスクを減らす可能性がある」ということであり、 デメリットは「もう一度手術をすることによる(金銭的、身体的)負担」と「温存乳房の変形(程度についてはそれ程にはならないようですが…)」です。
 
「もしこのまま経過観察をするしかないのなら、どの様な頻度でどの様な定期検診をうけるのがベストなのか」
⇒私の印象では「特別な注意は不要」に思います。
 私ならば(他の患者さん達と、全く同様に)「3カ月に1回の視触診、超音波」と「1年に1回のマンモグラフィー」です。
 
「また、タスオミンを飲んでいるのですが、この薬だけで充分なのでしょうか。」
⇒「十分すぎ」な位です。
 pT1a, pN0で「タスオミンで不十分」だとしたら、「タスオミンで十分な症例など、何もない」ことになってしまいます。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

先日はお忙しい中とてもわかりやすくご回答頂きましてありがとうございました。
たびたび申し訳ありませんが質問の方よろしくお願い致します。
「乳頭側の切片にわずかに腫瘍(乳管分のDCIS)を認め、深切り切片では消失したため断片は陰性であるが、近接している。
また、もうひとつの小さなDCIS成分が、深部剥離断端から0.5mmと近い」
→どちらも「近接はしているが、」断端陰性です。
とご回答頂きましたが、病理診断の結果が出た時、私は主治医から追加手術をするか追加の放射線治療にするか選択するように言われ、放射線治療を選んだのですが、今となってはそれで良かったのかとても不安です。
田澤先生ならどちらの治療を進められるのでしょうか?
また、放射線治療を終了した後に追加手術を受けるメリットとデメリットをご回答頂いたのですが、田澤先生でしたらメリットとデメリットのどちらを優先した方が良いとお考えでしょうか?
今から追加手術をする必要はあるのでしょうか?
PTla(5㎜)、pNO,luminalAで再発低リスクと言って頂いたのですが、どのくらいの再発率なのでしょうか?
いつも大変お忙しい中、申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「近接はしているが、断端陰性」「田澤先生ならどちらの治療を進められるのでしょうか?」
⇒放射線照射です。
 
「また、放射線治療を終了した後に、追加手術を受けるメリットとデメリットをご回答頂いたのですが、田澤先生でしたらメリットとデメリットのどちらを優先した方が良いとお考えでしょうか?」
⇒私なら「追加切除」しません。
 
「今から追加手術をする必要はあるのでしょうか?」
⇒(断端陰性だから)「不要」と思います。
 
「PTla(5㎜)、pNO,luminalAで再発低リスクと言って頂いたのですが、どのくらいの再発率なのでしょうか?」
⇒ホルモン療法単剤で「9%」となります。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

田澤先生こんにちは
いつもわかりやすく丁寧にご回答頂き有難うございます。
先日は先生に診察して頂きとても安心しました。
本当にいつも有難うございます。
大変恐縮ですがまた質問の方よろしくお願い致します。
大腸内視鏡検査を受ける事になったのですが、当日に下剤のモビプレップを飲むのですが
現在タモキシフェンを飲んでいますが飲み合わせは大丈夫でしょうか?
また検査の前の腸の動きを弱める薬や鎮痛剤、弱い麻酔など術後もうすぐ一年になりますが
そのような薬を使っても身体に影響はないのでしょうか?
大変お忙しい中申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
「当日に下剤のモビプレップを飲むのですが現在タモキシフェンを飲んでいますが飲み合わせは大丈夫でしょうか?」
⇒全く問題ありません。
 
「検査の前の腸の動きを弱める薬や鎮痛剤、弱い麻酔など術後もうすぐ一年になりますがそのような薬を使っても身体に影響はないのでしょうか?」
⇒乳癌の術後は「何の制限」もありません。
 術後2週間から「制限無」と考えて大丈夫です。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

田澤先生こんにちは
いつも検診では、お世話になっております。
田澤先生のお言葉だけが心の支えになっております。
お忙しいなか大変恐縮でございますが、よろしくお願いいたします。
術後すぐにタモキシフェンを飲み始めて3ヶ月後に生理が止まってしまい、止まってから一年たったので主治医に伝えたところ閉経したかどうか、一応血液検査はしたのですが、血液検査もあまりあてにならないし、薬をかえたとたん生理がきて、薬の効果がなくなり予後が悪くなるかもしれないし、私のように再発率が低いタイプはあわててアロマターゼにする必要はないとの事でした。
そこで質問なのですが、
?本当に血液検査では、閉経かどうか
わからなく、あんまりあてにならないのでしょうか。
また、一度の血液検査ではわからないのでしょうか。
?再発率が低いと本当にあわててタモキシフェンからアロマターゼにかえる必要はないのでしょうか。
?薬をかえたとたん生理が来たら、予後が悪くなるのでしょうか。
?閉経しているかもしれないのにこのまま2年~3年、もしくは5年タモキシフェンで、予後はかわりないのでしょうか。
?エストラジオールが12
卵胞刺激ホルモンが27.60だったのですがこの数字は閉経しているのでしょうか?タモキシフェンでは、子宮体ガンのリスクが上がると聞き、出来ればアロマターゼにかえたいのですが、田澤先生でしたらどうしたら良いとお考えでしょうか、また切り替えるとしたら、どのタイミングでアロマターゼに切り替えられるのでしょうか。
長文になってしまい申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
最終月経から1年過ぎた状態を閉経と言います。
私の患者さんでは、上記を確認した場合(自己申告ですが)血中エストラジオールを測定し閉経値(10代前半)を確認したらアロマターゼインヒビターへ変更しています。
「?本当に血液検査では、閉経かどうかわからなく、あんまりあてにならないのでしょうか。」
⇒結局、卵巣周期が残っている場合には(その周期によって)低値となる時期があるので「あてにならない」ということになります。
 ただし、「最終月経から1年」経っていれば(卵巣周期は失われている事が通常なので)血中エストラジオールの測定で判断できます。
「また、一度の血液検査ではわからないのでしょうか。」
⇒最終月経後暫くは(卵巣周期が残っていて)「たまたま低い時期に測定しただけ」という事態が起こりえますが…
 最終月経から1年経過していれば「何時測定しても同じ」と考えていいのです。
「?再発率が低いと本当にあわててタモキシフェンからアロマターゼにかえる必要はないのでしょうか。」
⇒そもそも「タモキシフェンでも十分だから」という担当医の考えも理解できます。
 (最終的にはアロマターゼインヒビターへ変更すべきだとは思いますが)「慌てて」変更する必要はありません。
「?薬をかえたとたん生理が来たら、予後が悪くなるのでしょうか。」
⇒これは事実です。
 だから「きちんと閉経を確認」して慎重に切り替える必要があります。
 ♯最終月経から「間が無い」のに変更すると、このようなケースもあります。(必ず最終月経から1年間はおいて、更に血中エストラジオール測定すべきなのです)
「?閉経しているかもしれないのにこのまま2年~3年、もしくは5年タモキシフェンで、予後はかわりないのでしょうか。」
⇒数パーセントは変わってきます。
 「慌てる必要はない」事は事実ですが、今後1年以内には変更すべきです。
「?エストラジオールが12 卵胞刺激ホルモンが27.60だったのですがこの数字は閉経しているのでしょうか」
⇒閉経です。
「?タモキシフェンでは、子宮体ガンのリスクが上がると聞き、出来ればアロマターゼにかえたいのですが、田澤先生でしたらどうしたら良いとお考えでしょうか」
⇒担当医が「1回の血液検査では…」というのであれば、3カ月後あたりに「もう一度測定」してもらいましょう。
 「2回とも閉経値」であれば、担当医も「ぐうの音が出ない」でしょう。
「また切り替えるとしたら、どのタイミングでアロマターゼに切り替えられるのでしょうか。」
⇒冒頭でコメントした通りです。
 質問者の場合には「切り替え」しています。