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今後の治療について

[管理番号:917]
性別:女性
年齢:45歳
お忙しいところ申し訳ありません。
今後、手術や治療を始めるにあたり、とても心配になっております。
どうぞよろしくお願いいたします。
私としては、すぐに手術をした方が良いのか、腫瘍が小さくなるまで先延ばしにして良いのか不安を感じております。今のところリンパ等に転移はありません。乳房MRI、PET 検査済です。
主治医より今後の治療の説明を聞きました。
ルミナールAなので、ホルモン療法単独でノルバデックス錠を服用していき数ヶ月後、腫瘍(3センチ3ミリ強)が小さくなってから部分切除手術と言われました。もし薬の効きが悪いようなら化学療法(抗癌剤)も検討するとのことです。
この薬を服用中は癌が大きくなったり、絶対とは言えないが、転移することは無いと聞きました。
〈病理組織結診断、所見〉
一部で乳腺周囲の脂肪組織へ浸潤もある管腔形成の明らかな異型上皮集塊を認め、乳頭腺管癌から一部硬癌へ移行しているようなパターンのinvasive ductal carcinomaです。ホルモンレセプター等の検討を追加します。一部に管内の病変も含みます。分布をみるためにCD10も追加します。
核グレード1(核異型スコア2、核分裂像スコア1)
組織学的グレード1(腺管形成スコア1,核多形性スコア2,核分裂数スコア1)
〈病理組織診断免疫染色後、所見〉
CD10の染まりからは、一部は確かに管内の病変でしたが、ほとんど管内の病変ではありませんでした。
ER:95% PgR:90% HER:1+だが若干2+の疑いの部分あり、Ki67:20%
(結果)
観察領域 
HER2:39
Chr17:25
シグナル比 1.56
(判定)
HER2遺伝子 像幅なし
HER2 Score 1+(~2+) 
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 cT2(33mm), cN0, cStageⅡA, luminal A
 驚いた事に「術前内分泌療法を勧められている」のですね。
 「閉経前術前内分泌療法は基本的には勧められない。化学療法禁忌例や拒否例以外では臨床試験でのみ行うべきである」 乳癌学会ガイドライン推奨度C2です。

回答

「私としては、すぐに手術をした方が良いのか、腫瘍が小さくなるまで先延ばしにして良いのか不安を感じております」
⇒冒頭に記載した通りです。
 術前内分泌療法は(特に閉経前では)決して勧められるものではありません。
 質問者は「小さくして温存」をご希望なのでしょうか?
 ⇒もし、それであれば(術前内分泌療法ではなく)術前化学療法をするべきです。
 ただし、「luminal Aであるので抗がん剤の効果はあまり強くはありません」
 私は「luminal typeに術前化学療法はお勧めしません。しかし『術前内分泌療法は、もっとお勧めしません』
 
 つまり、「安全を考える」のであれば「手術先行」(乳房切除? 乳房切除+再検?)だし、「小さくして温存を狙う」のであれば(強い効果は期待できないとはいえ)「術前化学療法を行うべき」と思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

メッセージ本文:
早々のお返事を有難うございます。
しっかりと教えていただけて随分安心出来ました。
cT2(33mm), cN0, cStageⅡA, luminal A
 
驚いた事に「術前内分泌療法を勧められている」のですね。
 「閉経前術前内分泌療法は基本的には勧められない。化学療法禁忌例や拒否例以外では臨床試験でのみ行うべきである」 乳癌学会ガイドライン推奨度C2です。
田澤先生に教えていただいたこの事は、初めて知りました。
病理検査前、主治医は全摘手術で、話を勧めてくれていましたが、手術に立ち会うベテラン?医師
が、病理検査結果を聞くときに挨拶にこられて、私の場合は、どっちを選んでも予後は同じだから
全摘手術でも温存手術でも選べる。温存を選ぶならホルモン療法で腫瘍を小さくして手術をしたら
良い。子どもが受験生で慌ただしいだろうから来年3月に手術しても大丈夫だと言われて、何もわ
からない私は、温存手術でお願いしておりました。
私は、温存することよりも、再発することが1番の心配で安全を考えております。
田澤先生のお陰で、勇気がでました。
セカンドオピニオンを受けようと思います。
田澤先生の病院が近ければ絶対にお願いしたい所ですが、遠方なため無理なのが残念です。
最後に1つ質問をさせて下さい。
乳癌は進行が遅い傾向があるようですが、私の場合は目安として最低どれくらいまでに手術を受け
たら良いものでしょうが?
お答えできる範囲でどうかよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 質問者が正しい方向で治療に進めそうでよかったです。
「子どもが受験生で慌ただしいだろうから来年3月に手術しても大丈夫」
⇒私は乳腺外科医として、このようなコメントには反対です。
 乳癌の手術は「治療の中で最も負担の少ないもの」だと認識しています。
 しかも「手術をしてしまえば」その後の治療には「余裕がでてくる」のです。
 
 私であれば、次のようにコメントするでしょう。
 「乳癌の手術は入院期間も短いし、その後の制限もないので早く手術をしてしまった方がいい」
 「そうすれば、御家族ともども安心さえるでしょう。その上でお子さんの受験に備えましょう」

回答

「乳癌は進行が遅い傾向があるようですが、私の場合は目安として最低どれくらいまでに手術を受けたら良いものでしょうが?」
⇒3カ月は長いと思います。
 一見、変わらないように見えても「体の中で何が起こるかは解らない」のです。
 安易に「延ばすのはよくありません」
 やはり2カ月以内でしょう。