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乳がんと診断されました

[管理番号:4819]
性別:女性
年齢:50歳
田澤先生
初めて質問させていただきます。
先生の回答にはいつも迷いがなく、読んでいると心が楽になります。
とても多くの方が救われていると思います。
こうした場を作り、ご多忙の中運営してくださっていること、心から感謝いたします。
本日50歳になりました。
出産経験はありません。
何年も前からしこりのようなものがあることを感じていましたが、しこりはコロリとした感じではなく、組織に張り付いており手で掴めるような感じでした。
また、少し弾力があるように感じ、乳腺なのか骨なのか、判断がつかずにいました。
また、乳房の痛みも頻繁にあったので、きっと乳腺が多い体質だから痛むのだろうと深刻に感じておらず、診察を受けたことはありませんでした。
でも2ヶ月ほど前に鏡を見たところ、しこりのあたりに横長の引きつれのようなくぼみが出てるのに気付き、ゾッとしました。
そして3日前にようやく乳腺専門のクリニックにて診察を受けた次第です。
その場で乳がんと診断されました。
触診、マンモグラフィー、エコーでの判断です。
左乳房の外側、かなり脇に近い場所から乳頭に向かって、掴める感じのしこりです。
エコーで見たところ、外側に原発らしき1センチ大のしこり、そこから少し離れたところにもうひとつ同じ位の大きさのしこりがあります。
2つに見えるけれど、これは原発から繋がっているひとつのがんと推測されるので、大きさは合わせて3センチ弱とのことです。
原発はねじれて組織を巻き込んでおり、そのためくぼみが現れたそうです。
大きさがあるのに、エコーで脇には何も映らずとてもキレイな状態なので、大人しいタイプのがんではないか、とのことでした。
その後、針生検をしていただいたのですが麻酔の効きが悪く、筋膜にくっついていて薬が浸透しにくいのかもとおっしゃっていました。
結果を伺うまでにあと1週間ほどかかります。
結果を受けて、粛々と治療にあたるだけと覚悟はしているのですが、やはり不安な気持ちになります。
結果を受けるまでに、少しでも心の準備をして、その場で質問するべきこともまとめておきたいので、先生のご意見をお聞かせいただけませんでしょうか。
1.大人しいがん=進行が遅いがん、と言うことでしょうか。
2.脇のすぐ近くなのに脇に何も映らないということは、リンパの転移はない可能性が高いと考えられるのでしょうか。
3.リンパ転移がなければ、腫瘍が大きくてもルミナールの結果が出る可能性はあるのでしょうか。
4.3センチ弱、組織の巻き込みあり、筋膜に近い(くっついている?)状況では、浸潤が大きいと判断されるのでしょうか。
全摘は免れないのでしょうか。
過去のQAも読ませていただきましたが、きっと的外れな質問や重複した質問もあるかもしれません。
本来なら、もっとしっかり読み込んでから質問するべきと思いながらも、気持ちが焦っております。
お忙しいところ恐縮ですが、なにとぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「1.大人しいがん=進行が遅いがん、と言うことでしょうか。」
⇒そういうことです。
「2.脇のすぐ近くなのに脇に何も映らないということは、リンパの転移はない可能性が高いと考えられるのでしょうか。」
⇒そのようです。
 ♯リンパ節転移の(術前画像)診断は、あくまでもエコーでおこなうのです。
「3.リンパ転移がなければ、腫瘍が大きくてもルミナールの結果が出る可能性はあるのでしょうか。」
⇒大きな誤解があります。
 リンパ節転移の有無(ステージに関係)とサブタイプ(腫瘍の性質)とは無関係です。
 ♯ただ、「何年も前から…」という記載からは「経過のわりに進行が遅い=大人しい=ルミナールタイプでは?」という想像はできます。
「4.3センチ弱、組織の巻き込みあり、筋膜に近い(くっついている?)状況では、浸潤が大きいと判断されるのでしょうか。」
⇒質問者のいう「浸潤」とは?
 もしも腫瘍の「浸潤径」のことなら、「3センチ弱」となりそうです。
 「筋膜に近い(もしかして筋膜に直接浸潤があるかもしれない)」事は「浸潤の大きさとは無関係」です。
「全摘は免れないのでしょうか。」
⇒物事は整理してシンプルに考えましょう。
 「温存できるか?」は「乳腺内の拡がりのみ」で判断します。(リンパ節転移の有無や筋膜浸潤の有無等、全く無関係です)
 ☆腫瘍を十分なマージンをつけて切除した際に、「残存乳房に十分な整容性が期待できる(形が保たれる)」ことだけが条件なのです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

4819.乳がんと診断されました
田澤先生
いつも色々勉強させていただいています。
先日はお忙しい中、質問にお答えいただきありがとうございました。
針生検の一時報告が出ましたが、調べても良く分からないところがあるので
また質問をさせてください。
病理組織診断 一時報告
1.2)Adequate,malignant;Invasive ductal
carcinoma,left brest,biopsy.
所見
1)2本の乳腺組織(10㎜;8㎜)であり、いずれも湿潤性管癌組織からなります。
2)2本の乳腺組織(5㎜;4㎜)であり、いずれも湿潤性管癌組織からなります。
1、2)では下記の組織所見を認めます。
Histologic type,invasive ductal
carcinoma(scirrhous);
Histologic grade ,2;
Nuclear grade,1;
Structural atypia score,3;
Nuclear atypia score2;
Number of mitotic figures,<5/10 HPF;
Fibrotic focus, ;
Fat invation,+;
Tumor necrosis,-;
Tumor-infiltrating lymphocyte,-,ly0,v0;
Perineal invation,-;
Non-invasive component,-.
ER,PgR,Ki67,HER2-FISHの結果は後日ご報告いたします。
1.
Histologic grade ,2; Nuclear grade,1;
と言う結果は総合で核グレード1と言う判断で合っていますでしょうか。
2.
コラムで核グレードとKi67は似ていると書かれているのを読みました。
この結果でも同様にKi67は低いことが予想されますか?
3.
検査前のエコーでは脇のリンパ転移や腫れはないとの診断でした。
Tumor-infiltrating lymphocyte,-,ly0,v0;
検査結果も同様の診断と考えていいのでしょうか。
4.
前回、腫瘍が同じ乳管内に2つあり浸潤径は合計で3cm弱との答えをいただきました。
ただしエコーで角度を変えて見ると、もうひとつさらに大きい悪性を疑う腫瘍があるとのことです。
それが悪性であった場合、湿潤径が合計で5cmを越えなければリンパ転移なしでステージ2a、5cmを越えるとステージは2bとなるのでしょうか。
5.
湿潤径が大きいと他の組織にがん細胞が触れる面積が広くなるため遠隔転移のリスクは高くなると認識していますが、リンパ浸潤や脈管浸潤がなかった場合でも遠隔転移リスクは左右されず同等でしょうか。
6.
私は乳房にくぼみ、Dimpling sign 現れています。
これは脂肪組織に浸潤したがんがクーパー靭帯を巻き込んで起こる症状だと書かれているのを読みました。
他の組織に浸潤が深いことはステージや遠隔転移リスクに影響するものなのでしょうか。
もうすぐER,PgR,Ki67,HER2-FISHの結果とMRIの結果が出ます。
結果を伺うまでに、状況を整理して心の準備をしておきたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「1.Histologic grade ,2; Nuclear grade,1;と言う結果は総合で核グレード1と言う判断で合っていますでしょうか。」
⇒核グレード(Nuclear grade)に構造異型度(腺管形成スコア)を加えると組織学的グレード(Histologic grade)となります。
 
 (参考までに)
『核グレード』は①核異型の点数+②核分裂の点数の「2項目の和」です。
 ①核異型 弱い:1点
    中間:2点
    強い:3点
 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点
    5~10個  〃   :2点
    11個以上  〃  :3点
○『核グレード(NG) 核異型の点数+核分裂の点数』
    2点、3点 :核グレード(NG)1 
    4点    :  〃    2
    5点、6点 :  〃    3 
ここに「構造異型度(腺管形成スコア)」を加えて
①核異型の点数+②核分裂の点数+③腺管形成の点数の「3項目の和」としたものが
「組織学的グレード」です。
①核異型 弱い:1点
    中間:2点
    強い:3点
 ②核分裂 5個未満(10視野で):1点
    5~10個  〃   :2点
    11個以上  〃  :3点
 ③腺管形成 腫瘍の75%超で明らかな腺管形成:1点
       〃 10~75% 〃     :2点
       〃 10%未満   〃     :3点
 ○『組織学的グレード(HG)核異型の点数+核分裂の点数+腺管形成の点数』
    3点~5点:組織学的グレード(HG)1
6点、7点:   〃       2
    8点、9点:   〃       3
「2.コラムで核グレードとKi67は似ていると書かれているのを読みました。この結果でも同様にKi67は低いことが予想されますか?」
⇒その通りです。
 核グレードの中でも核分裂とKi67は関連してきます。
「3.検査前のエコーでは脇のリンパ転移や腫れはないとの診断でした。
Tumor-infiltrating lymphocyte,-,ly0,v0; 検査結果も同様の診断と考えていいのでしょうか。」

⇒脈管侵襲がない(ly0, v0)は、あくまでも「参考程度」です。
 あくまでも術前診断は画像診断(超音波)です。
「湿潤径が合計で5cmを越えなければリンパ転移なしでステージ2a、5cmを越えるとステージは2bとなるのでしょうか。」
⇒その通りです。
 前者がpT2, pN0, pStage2Aとなり、後者はpT3, pN0, pStage2Bとなります。
「リンパ浸潤や脈管浸潤がなかった場合でも遠隔転移リスクは左右されず同等でしょうか。」
⇒その通りです。
 あくまでも予後因子は「浸潤径」と「リンパ節転移」だから、それでステージが決まるのです。
「他の組織に浸潤が深いことはステージや遠隔転移リスクに影響するものなのでしょうか。」
⇒上記と同様、無関係です。