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センチネルリンパ節陽性と乳房再建

[管理番号:790]
性別:女性
年齢:50歳

質問者様の以前の質問

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管理番号:390「腫瘤の硬さや数について」

 
 

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管理番号:880「リンパ節転移1個での化学療法の適応」

 
 

質問者様の別の質問

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管理番号:908「先生の存在で救われている患者たち」

 
 
いつもありがとうございます。
手術から3週間経ち、今は病理の結果を待っているところです。
乳房再建に関する心配事で質問させていただきます。
術前の検査ではリンパ節転移なしという診断だったため、一次再建でエキスパンダーを挿入し後日自家組織で再建するという予定でした。術中のセンチネルリンパ生検で転移がわかりリンパ節郭清しましたが、エキスパンダーは挿入されました。
リンパ節転移の数は病理の結果で分かりますが、全摘でもリンパ節転移ありなら放射線の可能性があるにもかかわらず、通常エキスパンダーを挿入することはあるのでしょうか?
形成外科の先生に聞くと、エキスパンダーの上から放射線をかけることもあるとのことでしたが、私がわかる範囲では欧米では比較的よくあることのようですが日本では一般的ではないのではないかと感じます。
私としては再建より乳がんの治療を最優先にしたいという気持ちでいっぱいです。
術中のセンチネルリンパ生検の結果でエキスパンダーの挿入を中止するという判断はなかったのか、病院によってはセンチネルに2個以上の転移がある場合は挿入しないという決まりがあると聞くのですが、これは病院の方針によってまちまちなのでしょうか?先生はこういったケースはご経験はおありですか?
また、エキスパンダーが挿入されている部分についての質問です。
通常シリコンインプラントでの再建では大胸筋をのばすために大胸筋の下にエキスパンダーを留置しますが、私の場合自家組織での再建を予定していたため大胸筋を伸ばす必要がないため大胸筋の上にのせていることも心配のひとつになっています。
再発は大胸筋のうえに起こると聞きますので、検査でみつけにくくないのか、大胸筋の上に異物がのっていることで刺激や炎症、アレルギー反応などで再発を誘因しないかなど心配でなりません。
以上、乳房再建についての質問ですが、これまでの多くのご経験を踏まえて乳腺外科のお立場からお答えいただけたらありがたく思います。
よろしくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「乳房再建(ティッシュエキスパンダーによる一次再建)」と「術中センチネルリンパ節生検陽性」ですね。
 乳房切除術後の放射線照射の適応についても「各施設間で対応が異なることもあり」
この問題は、「乳房再建が広まった当初より存在」していました。
 ガイドラインがある訳でも無く、各施設で「患者さんと事前に話し合いをしておく」事が多いです。

回答

「全摘でもリンパ節転移ありなら放射線の可能性があるにもかかわらず、通常エキスパンダーを挿入することはあるのでしょうか?」
⇒あります。
 これには3つの点が指摘できます。
①事前に「センチネルリンパ節生検で陽性ならば、再建しない」のような合意がなされていなかった。…合意なしに(患者さんの意志確認できないまま)勝手に術式変更はできません。
②乳房切除術後の放射線照射の適応についての施設による考え方…1個以上で照射するのか(推奨グレードB) 4個以上なら照射するのか(推奨グレードA) 1~3個での対応が異なります。
③放射線を照射するにしろ、「数カ月後、エキスパンダーを抜去してシリコンへ入れ替えた後に照射」という考え方も広まってきています。自家組織も同様の考え方となります。
 
「病院によってはセンチネルに2個以上の転移がある場合は挿入しないという決まりがあると聞くのですが、これは病院の方針によってまちまちなのでしょうか?」
⇒その通りです。
 但し(患者さん自身が眠っている間に行われる)「術式変更」となるので、その場合には「患者さんとの事前合意」が絶対的に必要です。
 
「先生はこういったケースはご経験はおありですか?」
⇒勿論あります。
 前病院では「センチネルリンパ節生検で陽性の場合には一次再建は中止する」という方針で、事前に合意を行っていました。
 せっかく待機していただいていた形成外科の先生に「今日は中止です。すみません」のようなケースも良くありました。
 江戸川病院では「乳房切除術後照射の考え方」の多様性を考慮し、個別に対応しています。
 
「再発は大胸筋のうえに起こると聞きますので、検査でみつけにくくないのか」
⇒胸壁再発は殆ど起こりません。(頻度的に)
 少なくとも「リンパ節転移陽性」と結び付ける必要はありません。寧ろ「手術で郭清した先のリンパ節(鎖骨下、鎖骨上など)」が問題となります。
 
 ○つまり「乳房再建を選択した時点」で「胸壁再発を見つけにくくするリスクは存在していた」訳です。
 そのリスクが「リンパ節転移陽性により著しく上昇する」訳ではないのです。
 
「大胸筋の上に異物がのっていることで刺激や炎症、アレルギー反応などで再発を誘因しないかなど心配でなりません」
⇒再発を誘因する心配はありません。
 ただ、そもそも「術式選択の時点」でその点も考えるべきものであり、「リンパ節転移陽性だった」事とは無関係です。