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のう胞と診断

[管理番号:299]
性別:女性
年齢:44歳
先日お風呂で左胸にしこりを見つけ、今日病院に行きマンモと超音波で検査した所、両胸に乳腺のう胞が2つずつありました。
診断だけで詳しい検査はせず、経過観察しますので、1年後に来てと言われたのですが詳しい検査はしなくても大丈夫なのでしょうか?
 

田澤先生からの回答

 おはようございます。田澤です。
 「嚢胞」の診断をどう考えるかですね。
 超音波所見をどう考えるか(それ以上の精査:組織診をするべきかどうか?)
 少々長くなりましたが、大事なところなので回答のあとに示します。

回答

「両胸に乳腺のう胞が2つずつありました。診断だけで詳しい検査はせず、経過観察しますので、1年後に来てと言われたのですが詳しい検査はしなくても大丈夫なのでしょうか?」
⇒大丈夫です。
 「嚢胞」の診断は画像診断(超音波)だけで問題ありません。
 以下に、「超音波所見と組織診断すべきか?」についての(私の経験に基づいた)基準を示します。

超音波所見と組織診断

超音波所見 組織診断すべき?
明らかな「嚢胞」 不要
(嚢胞を疑うが)形状が歪で腫瘍との鑑別を要する (この場合は、むしろ)細胞診
境界明瞭、扁平、楕円形の条件を満たす(線維腺腫と断定できる) 不要
良性所見(線維腺腫、乳腺症など)を疑うが、断定はできない 組織診断を提案する(但し、経過観察を希望されれば、それでも問題ありません。とします)
癌の可能性がある 是非、組織診断を勧める(どうしても経過観察を希望した場合には、3カ月など短期フォローとする)
癌の疑いが強い 組織診断を行う(可能な限り、説得します)

 

補足 細胞診と組織診
(通常のバネ式針生検/マンモトーム生検)

診断能力 細胞診 <<< 組織診
 ※つまり細胞診には「診断エラー」が十分起こりえます。
 これは単純に「採取量」の違いに起因しています。
 
 「細胞診」は通常麻酔無で行うので(細胞量を採取しようと)「中で針を動かすと」大変な痛みがあります。
 それに比較すると、「針生検は(バネ式にしろ、マンモトームにしろ)麻酔をきちんと効かせて」行うので、(患者さんにとっては)むしろ痛みは少ないのです。
 
★この(QandAでもたびたび、出てくるのですが)明らかに「癌を疑っておきながら」まずは「細胞診」をして、「その結果がクラス5だから」(1週間後位に)改めて「針生検を行う」
 のような「大変無駄な」診療が見受けられます。
 最初から「針生検」をすべきであり、そうすれば患者さんにとっては「細胞診の痛さ+(貴重な)1週間」を無駄にしなくて済むのです。
 
★★私の考えでは、細胞診の利用価値は唯一「嚢胞の中身を抜く」目的だけです。それ以外に「細胞診を選択する意味は全くありません」
 ※嚢胞の中身を抜く目的は①(大きな嚢胞で)中身を抜く事で疼痛軽減の可能性が有る場合 ②超音波画像上、(嚢胞を強く疑うが)確信が持てない場合 などがあります。