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娘の乳癌について

[管理番号:5622]
性別:女性
年齢:30歳
初めてお便りさせていただきます。
今年の7月から8月にかけて、娘と妻が相次いで乳癌と診断されました。
その後、いろいろなサイトを手当たり次第に見て回り、「乳がんプラザ」にたどり着き、このサイトで色々な勉強をさせていただいております。
その後、娘は9月上旬に、妻は9月下旬にそれぞれ手術を行っております。
二人とも最初は、自宅近くの病院で一時診断を受け、その後、東京のがん専門の大きな病院に転院しています。
数日前に、娘の術後の病理検査結果の説明があり、私も同席しました。
主治医の先生からの説明内容について理解できない点がいくつかあるため、田澤先生からアドバイスをいただきたく、ご教授お願いいたします。
1. 娘の状況
1) 年齢30歳(自分で胸に異常を感じ、初めて受診したときは29歳)
2) 既婚。
1歳11か月の長女あり。
本人は、二人目を希望している。
3) 術前の診断の概要
・左胸浸潤がん(硬がん)、多発している(違う乳管系にもある)
・ER(+)、PgR(-)、HER2陰性、
・リンパ節転移:画像上は転移なしと思われる。
・進行度:Ⅰと思われる。
・ki67の項目がなかったため、主治医に確認したところ、術前は検査しないとのこと。
4) 上記の内容を踏まえ、左胸全摘+乳房同時再建の手術を9月上旬に行いました。
手術直後に主治医から説明があり、センチネルリンパ節生検の結果は転移なしでした。
5) 数日前に、術後の病理結果の説明を受けました。
病理結果の簡単なレポートのコピーをもらいましたが、病理レポートを患者向けに簡単にまとめた内容でした。
そのため、各種の数値は定性的な内容となっていました。
以下が、報告書の内容です。
① 組織型:浸潤がん→一般型(硬がん)
② リンパ節転移:リンパ節転移なし
③ ERとPGR(ホルモン治療の有効性):ER(+)、PgR(+)
④ HER2(がん遺伝子の一つ):1+
→確認したところ陰性と話していました。
⑤ 脈管侵襲(リンパ節に行くまでの通り道にがんがある。):なし
なし
→後で調べましたら、リンパ管侵襲(ly)と静脈侵襲(v)のことと分かりました。
⑥ 核異型度(がん細胞の顔つき):2
→悪性度(がん細胞の顔つき)は、グレード判定をするものと思っていましたが、核異型度の結果のみが提示されました。
以下は、口頭で説明を受けた内容です。
・浸潤径13mmで広がりがあった。
(最大のがん) これ以外に乳首の近近くまでいくつものがんが見られた。
ステージはⅠ。
ルミナールタイプ。
6) これからの治療方針として、抗がん剤+ホルモン療法を進められました。
2. 田澤先生に教えていただきたいこと
1) 抗がん剤を進められたので、その理由を聞いたところ、悪性度(核異型度:2のことか)が高いためとのことでした。
また、これに加え、多発であること、若年性であることを説明されていました。
ルミナールタイプであることははっきりしていますが、ルミナールAなのかルミナールBなのかが
わかっていないのに抗がん剤を進めることはあるのでしょうか?
2) Ki67の数値を聞いたところ、Ki67は抗がん剤を適用するかどうかを
判断するために行うものであるため、他の要因で抗がん剤の適用が決まっている場合は検査しないとのことでした。
そうなると、娘の場合は、核異型度2、多発、若年性の理由で抗がん剤の適用が決まったことになります。
この判断は適切なのでしょうか?
3) 次の面談の時に、主治医の先生にKI67の検査を追加でお願いしようと考えています。
これは可能でしょうか?それとも、オンコタイプDXの検査をした方がよいでしょうか?
4) 癌細胞の顔つき(悪性度)を核異型度の数値で判断しているように見えました。
核異型度が2は、顔つきがよくないのでしょうか?
悪性度は核グレード分類で判定するものと思っていました。
また、娘の場合は、核分裂像スコアが不明のため、適切なグレードがわかっておりません。
この場合でも、顔つきの悪い(悪性度の高い)がんになるのでしょうか?
5) 娘は二人目の赤ちゃんを希望しています。
そのため、手術前には、受精卵の凍結保存を行っています。
今後の治療方針が①ホルモン療法療法のみの場合、②抗がん剤+ホルモン療法の場合の2つの場合で、どのような手順で治療を進めてゆけばよいのか、ご教授お願いいたします。
質問の内容に勘違いなどがありましたらお許しください。
この後、妻の病理検査の結果が出てくる予定ですが、その時もアドバイスを頂けたらと考えております。
ご回答、宜しくお願い申し上げます。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
その「がん専門の病院」の医師が何を根拠に「抗癌剤を勧めているのか」は私にはどうでもいいことです。
私が回答した後で「でも主治医が…」みたいな再質問は控えてください。
「1) 抗がん剤を進められたので、その理由を聞いたところ、悪性度(核異型度:2のことか)が高いためとのこと」
⇒全く根拠なし
「多発であること、若年性であること」
⇒これらも全く根拠なし
「ルミナールAなのかルミナールBなのかがわかっていないのに抗がん剤を進めることはあるのでしょうか?」
⇒ありません。
 誤った診療です。
「他の要因で抗がん剤剤の適用が決まっている場合は検査しない」
⇒HER2陽性やトリプルネガティブはその「他の要因」に当て嵌まりますが…
 「若年」とか「核異型度」などは全く誤りだと言う事は『今週のコラム98~101』を参照してください。
今週のコラム 98回目 ♯このグレーゾーンを「AとBに分ける」ためにOncotypeDXがあるのです。
今週のコラム 99回目 ★グレードは「参考程度」ということでいいですね?
今週のコラム 100回目! 「若いから」抗ガン剤をしましょう。は過ちなのです。
今週のコラム101回目 (Ki67が20代はluminal Aの可能性が圧倒的に高く)本当に「Aなのか、Bなのか迷うのは30代以降」と言えるのです。
「娘の場合は、核異型度2、多発、若年性の理由で抗がん剤の適用が決決まったことになります。この判断は適切なのでしょうか?」
⇒不適切です。
「次の面談の時に、主治医の先生にKI67の検査を追加でお願いしようと考えています。これは可能でしょうか?」
⇒可能です。
「それとも、オンコタイプDXの検査をした方がよいでしょうか?」
⇒その方が「より確実」です。
「核分裂像スコアが不明」
⇒??
 何故?
 その理由を主治医に確認してみましょう。(通常ありえないことです)
 もしも、その説明に納得できないのなら「病理のセカンドオピニオン」という方法もあります。
「この場合でも、顔つきの悪い(悪性度の高い)がんになるのでしょうか?」
⇒なりません。
「今後の治療方針が①ホルモン療法療法のみの場合」
⇒妊娠出産⇒ホルモン療法

「②抗がん剤+ホルモン療法の場合」

⇒抗癌剤⇒(3カ月は空ける)⇒妊娠出産⇒ホルモン療法