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HER2タンパク、遺伝子検査

[管理番号:2234]
性別:女性
年齢:47歳
昨年5月に右乳房にしこりがあり、近くの乳腺外科を受診。
その日に細胞診を受け、結果待ちでしたが確定されず、再度、針生検を受け、6月に乳がんと診断。
紹介状を書いてもらい、総合病院を受診。
超音波、CT、骨シンチ、MRIの検査を受けました。
しこりは10㎜と15㎜の2つ(右胸、下の内側) ホルモン受容体陽性乳がん
細胞グレード 1 転移はなし
と、言うことで、ホルモン治療を始めました。
7月からノルバデックス(タモキシフェン)服用、2週間遅れでゾラデックス注射をしながら、経過を見ていました。
時期と術式をいろいろ考えた結果、12月に右乳房全摘手術を受け、今、術後、1ヶ月と少しです。
年明けに病理の結果を聞くために、外来受診。
しこりの大きさ9㎜
センチネルリンパ節 0/3 転移なし
がん細胞のグレード 1
ステージ Ⅰ
ホルモン受容体陽性
と、ここまでは生検の結果と変わらずだったのですが…
HAR2タンパク 3+
と、聞かされました。
生検では、1+だったと言うことで、術後の抗ガン剤治療は必要ないと言われていました。
質問①HAR2タンパクが、1+??3+に結果が変わる事はよくある事でなのでしょうか?
現在、生検してもらった先生に担当医が依頼して、遺伝子検査(FISH法と言うのでしょうか)の結果待ちです。
検査結果でHAR2陽性ならば、パクリタキセル、ハーセプチン 12週毎週点滴+ハーセプチン単剤で1年の治療が必要だと言われています。
質問②田澤先生も同じ考えでしょうか?
質問③今、行ってるホルモン治療のみでは、転移、再発のリスクはすごくあがりますか?
質問④もう1点、この抗ガン剤治療をすぐに始めないで、1年後から始めるとすると、その効果、リスクはどう考えられますか?
2月のはじめに外来受診で遺伝子検査の結果を聞く事になっています。
今は不安な気持ちでいっぱいなのですが、それまでいろいろ調べたいと思って質問させていただきました。
よろしくお願いします。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
「ホルモン治療を始めました。7月からノルバデックス(タモキシフェン)服用、2週間遅れでゾラデックス注射をしながら、経過を見ていました。時期と術式をいろいろ考えた結果、12月に右乳房全摘手術」
⇒かなり長期間の「術前ホルモン療法」となります。
 御事情があったのだと思いますが、「閉経前の術前ホルモン療法は 推奨されません(推奨グレードC2)]
pT1b(9mm), pN0, luminalB(HER2陽性), NG1
 
「質問①HER2タンパクが、1+??3+に結果が変わる事はよくある事でなのでしょうか?」
⇒あまりありません。
 ただ比較的長期間の「術前ホルモン療法」をしているので、「HER2陽性の細胞が選択」された可能性はあります。(もしかすると、標本処理の問題など人為的なエコーにより針生検の標本の染色性が落ちていた可能性も否定はできません)
 
「現在、生検してもらった先生に担当医が依頼して、遺伝子検査(FISH法と言うのでしょうか)の結果待ちです。」
⇒通常は「HER2 3+ではFISH不要」となりますが、この場合には仕方がないでしょう。
 
「検査結果でHER2陽性ならば、パクリタキセル、ハーセプチン 12週毎週点滴+ハーセプチン単剤で1年の治療が必要だと言われています。」
⇒「low riskのHER2陽性乳癌」のレジメンとしては,この他にTC+HERもありますが、weekly PTXを用いるこのレジメンの方が「より副作用の面で楽」だとは思います。
 
「質問②田澤先生も同じ考えでしょうか?」
⇒同じです。
 「≦5mm」でない限りは「抗HER2療法を勧める」必要があります。
 
「質問③今、行ってるホルモン治療のみでは、転移、再発のリスクはすごくあがりますか?」
⇒ホルモン療法単独での再発率は「9%」となります。
 もともと「再発低リスク」なので「術後3年での抗HER2療法無しの再発率は4%」とかなり低いので「その期間における抗HER2療法による上乗せ効果」が計算できない状態とはなります。
 (一般的な)化学療法による(10年間の)上乗せは「3%程度」です。
 
「質問④もう1点、この抗ガン剤治療をすぐに始めないで、1年後から始めるとすると、その効果、リスクはどう考えられますか?」
⇒もともと「効果もリスクも限定的」なので、「数字としてはそれ程変わらない」と思います。