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・リンパ節転移の医師の判断と、ペットCTの画像判断との相違について。 ・リンパ転移ありで廓清後のホルモン療法の再発効果について

[管理番号:2431]
性別:女性
年齢:58歳
田澤先生。
乳がんの診断後、すがるように毎日このページを拝読しています。
 先日すべての検査が終了し、当月末に左乳房の全摘を受けます。
皮膚に近いため、皮膚も乳首上部を中心に斜めに切除します。
 昨年12月末に、毎年マンモと超音波で定期検診を受けていたクリニックで35ミリの乳がんを発見した時には驚きました。
愚痴ですが、毎年受けていて、早期発見にはならなかったからです。
その時針生検(圧迫止血はなかったです)をした以後、チクチクの痛みが出現し、硬いしこりを自分でも自覚するようになりました。
結果は悪性腫瘍と判定されましたが、その先生は性質的に良くないタイプ、だが抗がん剤もホルモンも効果的だと助言されました。
 1月中旬に紹介状で別の病院を受診した折には何と50ミリに腫大していました。
遺伝子検査でHer2(ー)、免疫染色:ER
Allredscore8、PgrAllredscore6、、Ki67:25%程度、AR
(+、90%程度)、CK5/6(ー)、EGFR(ー)、E-cadherin(+、
>90%)、34βE12(+、cytomembrane30%程度)、p53:1%程度
とあります。
内容についての説明はなく、理解できていないため、羅列しました。
申し訳ありません。
現主治医は、ステージ2Bであること、
抗がん剤の効果は期待できないため、術後はホルモン治療単独になるとの説明です。
「何しろ、この大きさですから、リンパ転移はあると考えておいてください」と言われ、ホルモン治療のみで今後はどれくらい生存できるのか、不安感情に支配されています。
仕事の上でも管理職の立場上、自分のことが第一なのですが、仕事のことも頭のすみをかすめます。
 ペットCTでは、遠隔転移はなく、「レベルⅠの左腋かリンパ節に軽度の集積を認める(SUVmax=1.02)転移は否定できませんが、内部に脂肪濃度もあり、非特異的なリンパ節です」とあります。
その日に、超音波検査で生検結果、採取した検体は悪性所見なしでした。
 その結果にて安心していたのですが、主治医は腫瘍の大きさから、絶対的にリンパ転移はあるとの話です。
術中に行うセンチネル生検の結果を待つ以外には、不安を持ち続けるしかないでしょうか。
長々となり、申し訳ありません。
タイトルの2点について、ご多忙の中、先生のご回答をお願い致します。
 付け加えまして、乳房切除時、エキスパンダーを入れますが、オペの病院でホルモン治療を受けながら、再建術を別の病院で行うことは保険上でも可能なのでしょうか?オペ病院でも再建術は実施していますので、先生の心象を悪くしないかというのも気がかりですが。
 

田澤先生からの回答

こんにちは。田澤です。
cT2(35mm), cN0, luminal type, Ki67=25%
「何しろ、この大きさですから、リンパ転移はあると考えておいてください」
⇒意味不明です。
 腫瘍径が大きくても(そもそも35mmはそれ程の大きさとは言えません)「リンパ節転移が無い」ことなど幾らでもあります。
 しかも今回は(PETはそもそも不要ですが…)PETでもリンパ節転移は否定的だし、腋窩リンパ節の細胞診(これも不要!!)でも陰性なのです。
 何を根拠に「リンパ節転移がある」としているのでしょうか。全く呆れます。
 結果は確かに「センチネルリンパ節生検で解ること」なので、それ以上追及する必要はありません(そもそもセンチネルリンパ節生検を行うのに、術前に腋窩リンパ節の細胞診など全く無用!!)
 私であればcT2, cN0, cStage2Aとします。
 
「付け加えまして、乳房切除時、エキスパンダーを入れますが、オペの病院でホルモン治療を受けながら、再建術を別の病院で行うことは保険上でも可能なのでしょうか?」
⇒大丈夫だと思いますが…
 そこはきちんと病院に確認すべきです。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
 先日は、リンパ節転移についてペットCTと医師の判断の相違について、お答え頂いた者です。
 近々入院を控えていますが、お蔭様にて先生のお言葉で気持ちがとても安定しました。
早く悪性腫瘍を切除する!ことに気持ちが前向きになることができました。
心より御礼申し上げます。
医師の言葉ひとつで、
患者の心身をこのように左右するものだと、実感しています。
 マンモトーム以後、痛みが続いていましたが、この2~3日は痛み
も、軽減しています。
主治医が言う「この大きさですから、リンパには転移があると思ってください」は、昨年末12月(下旬)日にマンモトームした数価(35ミリ)から、紹介状にて1月(中旬)日の初診時にエコーで計測した数値(51ミリ)を指しています。
 「内出血も想定できるが・・・」とのことです。
田澤先生は、「35ミリ」と表現されておられました。
私の腫瘍は、51ミリ?35ミリと考えるものでしょうか?
 大きいから、予後はしょうがないでしょ?と、主治医の言葉が冷ややかに突き刺さり、今ひとつすっぽり信頼できないで悩んでいるところです。
 実は、患部の乳頭を温存できないかと質問したことが、主治医の気に障ったのではないかと推察しています。
MRIの結果を観て・・・との
返答でしたので、結果の日に再度質問致しました。
乳頭に近いため、できず、予後を優先するとの回答に、無論私も同意致しました。
 ご多忙の中、心苦しいのですが、宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

こんにちは。田澤です。
「この大きさですから、リンパには転移があると思ってください」は、昨年末12月(下旬)日にマンモトームした数価(35ミリ)から、紹介状にて1月(中旬)日の初診時にエコーで計測した数値(51ミリ)を指しています。 「内出血も想定できるが・・・」とのことです。」
⇒「腫瘍径」で「リンパ節転移」を判断することはできません。
 「大きいから、リンパ節に転移がある」などと言うコメントは「まともな乳腺外科医」とは思えませんが…
  
「田澤先生は、「35ミリ」と表現されておられました。私の腫瘍は、51ミリ?35ミリと考えるものでしょうか?」
⇒これは、さすがに「画像も見ていない」のでコメントしようがありません。
 実際は「手術標本で、顕微鏡レベルでの評価が必要」なのです。
 
 
「大きいから、予後はしょうがないでしょ?と、主治医の言葉が冷ややかに突き刺さり、今ひとつすっぽり信頼できないで悩んでいるところです。」
⇒医師としてというより、「人間としておかしい」ように思います。
 
 

 

質問者様から 【質問3】

左乳房癌全摘出を終え、3月(上旬)日に退院しました。
都内総合病院の患者の中でも、先生のQ&Aは頼りになるサイトと
患者間で話題になっておりました。
 3/(上旬)、手術の結果が出ておりました。
<所見>:左乳腺全摘検体
<主病変>:左CD area、Bt+SNB→Fr(-)
断端(ー)
腫瘍径:5.5×3.0、浸潤径:5.5×3.0
組織型:2a2
組織型(WHO4th):Invasive carcinoma of no special type.UICC 7th:pT
3、pNO
NA:2、MC:2→NG:2
TF:3→HG:II(7)
組織学的波及度:f(+)、脈管侵襲1y0(HE)、v0(HE)
in situ(+):cribriform、cribriーcomedo.
EIC(ー)、comedo necrosis(+)、石灰化(ー)、TIL:0(#
3)、背景:乳腺症(++)
<免疫染色>
ER ALLredscore 8
PGR allredscore 5
HER2:2+(中等度陽性20%程度、弱陽性50%程度)、Ki67:20%程度
<リンパ節>
術中迅速診断(0/2)
でした。
 「何しろこの大きさですから、リンパ転移はあると考えて・・・」につきまして、先生のご見解通りになりました。
麻酔がかかる直前まで、
きっと大丈夫と言い聞かせていました。
本当に有難うございました。
 上記の結果を踏まえて、主治医から抗がん剤の提案が初めてもたらされました。
そのため、オンコタイプDXの検査を提示されております。
 高額ではありますが、自分のためなので受ける意向ですが、中間域が幅広いので、本当に指針となるのか見当がつきません。
 先生のお考えを参考にしたいと思い、再度ご相談致しました。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答3】

こんにちは。田澤です。
pT3(55mm), pN0, NG2, luminal type(Ki67=20%)
一番気になるのは「HER2が2+となっている」ことです。
これは(当然ながら)FISHやっていますよね?
「「何しろこの大きさですから、リンパ転移はあると考えて・・・」
⇒リンパ節転移がなくて何よりです。
 世の中には、最初から(センチネルリンパ節生検をせずに)腋窩郭清をしてしまう乳腺外科医が存在することに注意が必要です。(その挙句、0/12とかなった日には目も当てられません)
「上記の結果を踏まえて、主治医から抗がん剤の提案が初めてもたらされました。」
⇒まずはHER2のFISH待ちでしょう。
 もしもHER2-FISH陽性であれば、「抗HER2療法の適応」となるため、オンコタイプDXなど全く無駄な検査となります。
 
「先生のお考えを参考にしたいと思い、再度ご相談致しました。」
⇒上記コメント通りです。
 まずはFISH待ちです。
 考えるのは、「それから」です。
 
 

 

質問者様から 【質問4】

貴重な相談の中、先生のご回答から、貴重な情報を漏らしておりましたので、情報のみ追加させていただけないかと思い、再度投稿を致しました。
〇遺伝子検査
 Her2/neu gene amplification(DISH法)判定:増幅なし
 Her2/CEP17 ratio:57/48=1.19倍
 主治医からはHER2(ー)と説明を受けております。
 私が調べたところですが、フィッシュ法とデッシュ法は同等の考え方で宜しいようですが。
〇オンコタイプDX検査を主治医が勧める理由
 ・Ki67:20%が引っかかっている
 → 田澤先生のご見解では、20%では高い数値とご判断なさらない こ
  とが多いと受け止めていますが。
 ・腫瘍径・浸潤径の大きさが気になる
  腫瘍径:5.5×3.0(×4.0cm)、浸潤径:(#9-14):.5×3.0cm
  
 ルミナルタイプについても、まだ主治医の見解は示されておりません。
最後に病理組織診断報告書のコメントを記しました。
「比較的境界明瞭な充実腺管癌の所見。
腫瘍内に壊死変性像、繊維化、
出血が見られる。
周囲脂肪組織に浸潤を示す部あり。
周囲に乳管内病変
を伴う」とあります。
 主治医もできるだけ、無用な抗がん剤を使いたくないとの考えですが、
Ki値がどっちつかずなので、費用面がクリアできれば検査を受けませんかとの提案です。
 貴重な相談コーナーなのに、情報が欠けていたば かりに心苦しいのですが、明後日主治医に回答予定のため、先生のご助言を求めさせて頂きました。
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

こんにちは。田澤です。
DISH(-)だったのですね。
そうするとpT3(55mm), pN0, NG2, luminal typeA(Ki67=20%)
ルミナールタイプAでリンパ節転移陰性ですから「迷う必要」なく「ホルモン療法単剤」とします。
「〇オンコタイプDX検査を主治医が勧める理由」
 ・Ki67:20%が引っかかっている
 → 田澤先生のご見解では、20%では高い数値とご判断なさらないこ
  とが多いと受け止めていますが。
 ・腫瘍径・浸潤径の大きさが気になる
  腫瘍径:5.5×3.0(×4.0cm)、浸潤径:(#9-14):.5×3.0cm

⇒私にとっては、何ら「迷う要因」とはなりません。
 Ki67=20%はSt. Gallen 2015では「グレーゾーン」ではありますが、実際のvotingでは「20-30%」に境界があるとする意見が最も多いのです。
 20%はluminal Aと文句なく考えます。
 また、浸潤径ですが、これもSt.Gallen 2015でのvotingで(luminal Aでの抗がん剤の適応には)「腫瘍径は全く考慮しないが6割以上」なのです。