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LCISと浸潤性乳管ガン

[管理番号:556]
性別:女性
年齢:41歳
初めまして。
宜しくお願いいたします。
3年前にLCISと診断され、MRI,エコー検査で経過観察を続けてきましたが、
先日、右胸に浸潤性乳管ガンが見つかりました。
マンモトーム生検の結果は、浸潤性乳管ガン、5ミリ、ステージ1b、
ムミナルAタイプと言う事でした。
今後は、部分切除手術後→生検、放射線、ホルモン療法と続くようです。
そこで質問なのですが、LCISと言うリスクがある中で、温存手術は適しているのでしょうか。
現在の主治医は温存を強く勧めており、全摘する必要はないと言う事です。
自分の中で、温存手術で大丈夫なのか、と言う疑問があるのですが、先生ならばどのようにお考えになりますか。
情報不足かもしれませんが、宜しくお願いいたします。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 「LCIS」ですね。
 通常は「浸潤癌発生のリスク因子」として経過観察される事が多いのですが、「3年後に浸潤性乳管癌が発生」したのですね。
 文面には記載が無いですが、「LCISとして経過を見ていたのは、やはり右なのでしょうか?」
♯LCISで「将来的に浸潤癌が発生する頻度」は「同側の方がやや高いながら、対側にも起こりうる」のです。
 LCISは「浸潤癌のリスク病変」なので、(予防的)乳房切除は通常行われません。(それ自体はあくまでもリスク病変として評価され、癌としては認識されません)
 但し、生涯で30%程度の「浸潤癌発生リスク」がある事には注意が必要です。

回答

「LCISと言うリスクがある中で、温存手術は適しているのでしょうか。」
⇒温存手術はリスクがあります。
 LCISは浸潤癌(浸潤性乳管癌/浸潤性小葉癌)のリスク因子であり、今回は実際に「浸潤性乳管癌」が発生しました。
 「浸潤性小葉癌」が発生したのであれば、「多中心性」なので、「全切除」が間違いなく安全です。
 しかし今回は、「浸潤性乳管癌」が発生しました。
 浸潤性乳管癌、それ自体は「多中心性」とは言えないので、温存でもいいように思えますが、「やはり、根っこにLCISが存在しての」発生です。
 もし今回「温存」しても「温存乳房内に再度、新規に浸潤癌が発生」するリスクは高い訳です。(生涯癌発生リスクが30%なのですから…)
 そうすると「今回の病変は十分に安全に摘出」できた。としても、「その乳房が将来的に安全」とは言えない。のです。(しかもLCISは放射線に感受性が低いとも言われています)
 ◎この治療方針については「十分なコンセンサスが無い」事を了解いただいた上で、私の意見としては、
 「乳房切除」をお勧めします。
 ♯ (実際に浸潤癌が証明されていない時点で)「経過観察をする事」と『実際に浸潤癌を発生した乳腺を経過観察する事』では全く意味が異なると私は思います。
 
 

 

質問者様から 【質問2】

田澤先生
情報不足の至らない質問に丁寧にご回答頂き、ありがとう御座いました。
大変分かりやすくご説明頂き、納得致しました。
大事な情報が抜けており申し訳ありません、LCISは左胸です。
LCISとは反対側の右側に「浸潤性乳管ガン」ができたと言う事でも、
やはり「温存」は向かないのでしょうか。
今後はLCISである左胸にも、
「ガン」が発生するリスクが高いと言う事ですね。
もうそれならばいっその事両胸を切除してしまいたい気分なのですが、
これは認められないのでしょうか。
お忙しいところ恐縮ですが、
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 LCISで経過観察中、「対側に浸潤性乳管癌」の発生ですね。

回答

『LCISとは反対側の右側に「浸潤性乳管ガン」ができたと言う事でも、やはり「温存」は向かないのでしょうか。』
⇒(私の考えでは)温存はリスクが高いと思います。
 LCISは「対側」にも浸潤癌を発生するリスクが高い事が知られています。
 (温存した場合)温存乳房内にまた「浸潤癌」が発生する可能性は通常より高いのです。
○あくまでも、「リスクが高い」といっているだけであり、「温存してはいけない」と言っている訳ではありません。
 「温存」しても、「定期的に乳房をチェック」し、再度「浸潤癌が発生」したら「次は全摘」という考え方も当然あります。(悪いと言っている訳ではありません)
 
『今後はLCISである左胸にも、「ガン」が発生するリスクが高いと言う事ですね。』
⇒勿論です。
 LCISは同側だけでなく、『対側にも浸潤癌発生のリスク』があるとは言え、「同側の方がリスクが高い」事も事実です。
 
「もうそれならばいっその事両胸を切除してしまいたい気分なのですが、これは認められないのでしょうか。」
⇒LCISの診断で「左も全摘」する事は微妙な問題です。
 LCISは「DCISのように癌として臨床上は扱わない」ので全摘される事は通常ありません。
 しかし、「本質的に非浸潤性小葉癌」ですから、「癌と言う診断名」のもと「乳房切除」することは、いわゆる「予防切除」とは異なります。
 実際に、そのような選択をされている方もいらっしゃると推測します(私自身はLCISで全摘した事はありません。部分切除は普通に行いますが)
 
 

 

質問者様から 【感想3】

田澤先生
お忙しいところ、早急な御対応に感謝致します。
本来ならば主治医に質問すべき事を、丁寧に分かりやすくご説明頂き、
自分自身が抱いている疑問が、クリアになりました。
私自身、温存にそこまでのこだわりがなく、
ただ再発のリスクをおさえる事のみが希望です。
それをもう一度主治医に伝えたいと思います。
ただ主治医は性格上なのか無口で、中々会話が成立しないのが現状ですが。
LCISに関しては通常、全摘はないと言う事ですが、
先生は部分切除は行ってらっしゃるのですね。
経過観察しかないと思っていたので、
それも希望として伝えてみようかと思います。
LCISの経過観察、浸潤性乳管ガンが見つかった3年間が無駄に思えるほど、
今回頂いた2回のご回答で、やっと疑問がなくなった感じです。
疑問を抱えながらも主治医に聞けず悩んでいたので、
先生のご回答が支えになりました。
また質問させて頂く事があると思いますが、
その時は宜しくお願い致します。
ありがとう御座いました。
 
 

 

質問者様から 【質問4 放射線治療と今後について】

田澤先生
前回は大変丁寧な御対応を頂きありがとうございました。
毎日お忙しい中、真摯に取り組んでらっしゃるお姿に、
ただただ頭が下がる思いです。
私の現在までの経緯は以下です。
結局、7月に温存手術を致しまして、現在はフェアストンを服用しながら、
これから放射線治療と言う段階です。
実は手術の段階から本当にこれで良いのだろうか、
と、自分自身納得出来ないまま進んでしまいました。
そして放射線治療は諸事情により、別の病院で行う事になり、
これを機に田澤先生がいらっしゃる江戸川病院にて、
今後の治療をお願いしたいと思うようになりました。
甚だ勝手なお願いですが、そのような事は可能でしょうか。
お忙しい所恐縮ですが、宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答4】

 こんにちは。田澤です。
 「LCISの対側に浸潤性乳管癌」でしたね。
 LCISは経過観察で、浸潤性乳管癌を温存手術したのですね。
 どうせ「対側の手術をするなら」(ご本人が望むならですが)LCISも摘出してしまっても良かったのではと思います。

回答

「これを機に田澤先生がいらっしゃる江戸川病院にて、今後の治療をお願いしたいと思うようになりました」
⇒放射線治療も当院希望ということでしょうか?
 それであれば、私が診察した上で「当院の放射線科へ紹介」します。
 
○一つ気になるのは「フェアストン内服」していることです。
 (両卵巣摘出でもしない限り)42歳では閉経前だと思うのですが、どういう御事情でしょうか?(タモキシフェンが使えない理由があるのですか?)
 ♯フェアストンは「閉経後乳癌」にしか適応はありません
 
 

 

質問者様から 【質問5 LCISと浸潤性乳管ガン】

田澤先生
大変お忙しい所、迅速にご回答頂き心より感謝致します。
実は前回の質問に対するご回答を待つ間にも気が急いてしまい、
翌日掛かり付けの病院に連絡を取り、
江戸川病院にて放射線治療をお願いしたい旨を伝えました。
詳細は控えますが、これが色々ありまして、
結局別の病院にての放射線治療と言う事になりました。
田澤先生にせっかくご厚意を頂いたのに叶わず、
本当に残念でなりません。
手術の時からそうなのですが、
やはり主治医、病院との相性が良くないのかも知れません。
つきましては放射線治療が終了次第、
先生に今後の事をご相談させて頂きたいと思っておりますが、
治療が終了した後でも受け入れて頂けますでしょうか。
ただ、左胸にも懸念が残っており、
どうしてもこのまま経過観察では納得し難いのです。
一度先生に直接ご意見を頂ければと思います。
二転三転、本当に申し訳ありません。
フェアストン服用につきましては、処方後ネットで調べ、
先生の仰る様に「閉経後」の使用と言う事でしたので、
後日主治医に確認した所、以下のような回答でした。
「そもそも製薬会社が閉経後のデータしか出さなかったからであり、
現在は閉経前でも保険適応されている。効果作用は同じ。
副作用も少ないので、このままで。」
ひとまず、そんなものかなと思い現在も服用を続けておりますが、
5年も服用するものですので、効果の程が私も気になっておりました。
このまま服用を続けても、再発防止にプラスになるのでしょうか。
万事がこのような状態ですので、患者個人の希望が通り辛い、
と言うか、我が道を行くの聞く耳もたずで、嫌なら他所へと言う感じです。
(直接的に言われた訳ではありません)
こちらの単なる愚痴で先生にお伝えすべき情報から外れ、
長々書き連ねた事をお詫び申し上げます。
先生の貴重なお時間を割いて頂き大変恐縮ですが、
宜しくお願い致します。
 

田澤先生から 【回答5】

 こんにちは。田澤です。
 質問者の状況は良く解りました。
 放射線照射終了後でも大丈夫です。
 納得した診療が重要です。