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術後抗がん剤治療の開始時期について

[管理番号:785]
性別:女性
年齢:51才
田澤先生、はじめまして。
なかなか抗がん剤治療に進めず焦る日々です。
4月下旬に右乳房全摘手術+センチネル生検、病理結果はトリプルネガティブ[リンパ節転移なし、ステージⅠ、グレード1、脈管・リンパ侵襲なし、浸潤径12㎜]でした。
当時の主治医(執刀医)より「点滴の抗がん剤をするほどではないから」との理由でUFTを勧められ5月上旬から内服していましたが、内服1か月半後の血液検査で肝機能の数値が悪化していて、服用中止になりました。
その時の元主治医の対応と、それまでの説明の少なさに不安を覚え転院しました。
その後、現在の主治医の納得のいく説明のもと、EC→Tをすることにしたのですが、肝機能がなかなか回復せず、今は消化器科で治療(ミノフィット注射)を続けています。
ここで本題の質問です。
もし順調にいってもEC開始は8月下旬、術後4か月も経過してしまいます。Tに入るのは11月、こんなに遅くなっても効果は大丈夫なのでしょうか?
素人の発想で、TCで両方の種類の薬を早い時期に体に入れ終わった方が効果があるのでは?と考えてしまいます。3ヶ月で治療が終わることにも魅かれます。
副作用が殆どないと言われたUFTでこれほど重篤な症状が出たこともあり、半年間無事完遂できるか心配です。
散々回り道してしまい、これ以上後悔したくないので、思い切って田澤先生に質問させていただきました。よろしくお願い致します。
 

田澤先生からの回答

 こんにちは。田澤です。
 pT1c(12mm), pN0, NG1, triple negativeですね。
 UFTは「経口抗がん剤」で唯一「術後補助療法での適応」がありますが、「標準治療」ではありません。

回答

「もし順調にいってもEC開始は8月下旬、術後4か月も経過してしまいます。Tに入るのは11月、こんなに遅くなっても効果は大丈夫なのでしょうか?」
⇒全く問題ありません。
 術後補助療法はあくまでも「再発予防」です。
 じっくり開始しても何ら問題ありません。(これが術後に行う最大の利点といえます。腫瘍がある状態で数カ月何もできないとは雲泥の差なのです)
 
「TCで両方の種類の薬を早い時期に体に入れ終わった方が効果があるのでは?と考えてしまいます。3ヶ月で治療が終わることにも魅かれます。」
⇒質問者の状況で計算すると、
 TC療法による再発率減少効果は5.9%⇒「アンスラタキサンEC⇒DTX」は8.3%となります。
 その差は「僅か2.4%」です。
 
「副作用が殆どないと言われたUFTでこれほど重篤な症状が出たこともあり、半年間無事完遂できるか心配」
⇒私は「トリプルネガティブの術後補助療法」の標準としては「アンスラタキサン」としていますが、2つの理由で質問者ではTCでもいいと思います。
①早期であり、グレードも1であること
②肝予備力が低い(薬剤性肝障害が起こり易い)
 是非、TCで完遂してください。
 
 

 

質問者様から 【質問2 術後抗がん剤治療について】

お忙しい中すぐにご回答いただき、とても感謝しております。
治療開始時期に関しては、先生のお答えで安心し、焦らず肝機能の回復を待ちたいと思います。
大変恐縮ですが、新たな二つ質問にお答えいただけますでしょうか?
①再発率減少効果の具体的な数値を示していただき、とても参考になりました。
 更にお願いですが、私の場合の無治療再発率(または再発しない確率)も教えていただけますか?そこに前回教えていただいた数値を足せば(あるいは引く)いいのですよね?
②田澤先生がTC療法を勧めて下さった理由に、TC療法の方がアンスラタキサンと 比べて肝機能への影響が少ないということはありますか?それとも期間が短い分、 肝臓へのダメージも少なくてすむという解釈でよろしいのでしょうか?
以上、よろしくお願いいたします。
 

田澤先生から 【回答2】

 こんにちは。田澤です。
 pT1c(12mm), pN0, NG1, triple negativeですね。

回答

「私の場合の無治療再発率(または再発しない確率)も教えていただけますか?そこに前回教えていただいた数値を足せば(あるいは引く)いいのですよね?」
⇒無治療での再発率 19.8%です。
  ⇒(TC療法で)13.9%
  ⇒(アンスラタキサンで)11.5%
 
「TC療法の方がアンスラタキサンと比べて肝機能への影響が少ないということはありますか?」
⇒あります。
 TCはアンスラタキサンと比較して
 ①薬剤の数が少ない(アンスラサイクリンが無い)
 ②期間が短い(3カ月 vs 6ヵ月)